犬小屋アットホーム！ の商品レビュー

大山淳子(著者)

2024/10/18

　入居に掛かる費用は無料。各個室で犬をパートナーとして生活することが唯一の条件。
　そんな不思議な老人ホームが舞台のヒューマンファンタジー。本編５章とプロローグ及びエピローグからなる。

　　　　 　＊　＊　＊　＊　＊

　大山淳子さんのうまさがよく出た作品でした。

　丘の上に建つ瀟洒な建物。
　ドッグランを備えた寛げる庭園。
　清潔でゆったりした食堂や浴場などのパブリックスペース。
　常駐する医師を含め、スタッフも揃っている。そして何より、入居費用が一切掛からない。
　それがホーム・ニーシャシャン。まったくもって申し分ない施設です。

　ただしホーム・ニーシャシャンに入居できるのは、身よりも行き場もない老人と犬。入居条件は人と犬がペアになり共同生活することのみ。

　いくら慈善事業とはいえ現実にはありえない設定です。なのに読むにつれ気にならなくなります。ストーリー構成が巧みで惹きつけられてしまうからです。

　入居者だけでなくマダムやスタッフたちの人生にも、つい寄り添いたくなります。できるものなら入居犬の犬生にまで寄り添ってやりたくもなります。猫派の自分でさえそんな気持ちにさせられました。

　それにしても『猫弁』をはじめとして読者を大山淳子ワールドにいざなう巧みさは本当に見事だと思います。ストーリーテラー・大山淳子さんの才能を再認識した作品でした。

2023/02/18

老人ホーム・ニーシャシャンを舞台にした5話収録の連作短編集。

この老人ホームは年齢制限なし、入居金不要、食堂利用は無料。
唯一のルールは犬とペアで暮らす事。

犬好きの私としてはまさに夢の様なホームで、実在するなら入居したい。

このホームに入居して来る人々や犬達は皆それぞれに事情を抱えている。
刑務所を出所したばかりの元ヤクザや余命宣告を受けた男、元麻薬捜査犬に保健所から救われたマルチーズなど。

ペアを組み触れ合う事で相乗効果が生まれ、生きる意味を見出していく。

言葉を交わせなくても心は通じ合う。
読後は温かな余韻が残る。

2023/02/16

犬好きなのでタイトルに犬と付くと読みたくなる。
読了後の暖かい気持ちになるれ大人の童話。犬と人が互いに補い合って幸せな関係で共存できるって簡単なようで難しいと思う。
こんな夢のような施設があるなら是非とも入居したい。
支配人の横須賀くんのお話がラストに心に沁みた。

2023/01/15

いいなあ。私も晩年はわんこと暮らしたいです。相性を見抜くマダムはすごいと思いました。猫ちゃんが好きすぎて、なヘレンが好きです。

2023/01/05

訳アリの人と、訳アリのイヌが共に支え合い、共に生きることを条件とした施設のような所。老後、ひとりぼっちになってしまったら見つけて欲しいなぁ、と、ふ、と思ってしまった。何も飼った事はないのだけれど。基本的には優しいお話。償わなくていいの？と思う人もいるけれど、まぁ、それも含めて浄化されていく最後なのかな、とも思いました。

2022/12/28

行き場のない人を入居させるホーム。そこには行き場のない犬たちもいる。ここに入居する条件は犬の世話をすること。

人も犬もワケあり…。それでもここで幸せに暮らすようになる。
素敵なお話しです。

2022/12/24

犬をパートナーとして世話をする代わりに、衣食住を保証される「ニーシャシャン」。
ニーシャシャンに連れて来られる犬も人も、それぞれにドラマがあり、じんわり温かいオムニバス短編集でした。

どれも泣きそうになりながら読みましたが、一番のお気に入りは支配人の横須賀の「犬小屋」。

父が医者で、横須賀も当然の様に医学部へ入ったけれど、途中で兄が父の跡を継ぐと思い、獣医師の道へ転科してしまう。
夢を持って動物保護センターへ勤めたが、そこは殺処分の現場でもあって…

横須賀の動物を救いたかった気持ちが次第に病んでしまった過程が切なかったけれど、横須賀もマダムと出会えた事で救われてホッとしました。獣医師としてではないけれど、ニーシャシャンで働けて良かったです。
父とは生前に和解して欲しかったですね…

2022/12/16

猫小屋アットホームがあったらいつか入居したい。選んでもらえないかもしれないけど（笑）

行き場のないわんちゃんとそのお世話をすることが条件で入る人たちの場所なので、犬好き、動物好きにはつらいシーンも出て来ます。