自転しながら公転する の商品レビュー
日常の中にある些細な出会いや出来事が、いかにして人の人生を変えるのかを描いた連作短編集。主人公たちが「自分の軸(自転)」を守りながらも、他者との関わりや環境の変化(公転)によって成長していく様子が鮮やかに紡がれています。 特に印象的だったのは、物語の中に登場する「カフェの店員と常...
日常の中にある些細な出会いや出来事が、いかにして人の人生を変えるのかを描いた連作短編集。主人公たちが「自分の軸(自転)」を守りながらも、他者との関わりや環境の変化(公転)によって成長していく様子が鮮やかに紡がれています。 特に印象的だったのは、物語の中に登場する「カフェの店員と常連客」のエピソードです。ある女性が仕事に行き詰まり、ふと立ち寄ったカフェで、無意識に店員に悩みを打ち明けてしまいます。店員は特別な助言をするわけではなく、ただ「あなたらしくいてください」と温かい言葉をかけるだけでした。このシーンは、言葉そのものよりも、相手をただ受け入れるという行為の大切さを教えてくれました。 また、「手紙を書き続ける男性」のエピソードでは、長年にわたり誰かに感謝の手紙を送り続けることが描かれています。その手紙が、ある時相手に届き、感動をもたらす場面がとても心に残りました。相手のことを思い続ける小さな行動が、時を経て人の心に温かな灯をともすのだと感じました。 この作品を通じて学んだことは、自分の人生における「軸」を大切にしつつ、他者との関わりによってもたらされる変化を恐れずに受け入れることの重要性です。孤独や不安を感じる時こそ、周囲の人々や何気ない出来事が、人生を好転させるきっかけになることがあります。自分一人では気づけない成長の機会を見逃さず、時には誰かに頼ったり、逆に支えたりすることが、人生の豊かさにつながるのだと感じました。
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面白くて、ほとんど一気読みしてしまった。 仕事に恋愛に親の事にと、様々な悩みを抱える30代女性には刺さる作品だと思う。 小さなエピソードにもすごく共感できる部分があり、自分の過去を苦く思い出しながら「分かる、分かるよ~」と読み進めた。 更年期障害に苦しむ母親視点のストーリーがある...
面白くて、ほとんど一気読みしてしまった。 仕事に恋愛に親の事にと、様々な悩みを抱える30代女性には刺さる作品だと思う。 小さなエピソードにもすごく共感できる部分があり、自分の過去を苦く思い出しながら「分かる、分かるよ~」と読み進めた。 更年期障害に苦しむ母親視点のストーリーがあるのも良かった。
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母親の看病のために地元に戻りアパレル店員として働くアラサーの都が恋に仕事に親の介護に不安と悩みと痛みを抱えながら幸せになる生き方を模索する物語。女性ならおそらく誰もが都が抱える漠然として正体のない不安に対して共感できる部分があると思う。 劣等感とか嫉妬妬みとかコンプレックスに押しつぶされそうになりながら少しの自尊心と幸せになりたい強い気持ちで自分の人生を生きてやろうと足掻く都の姿は読んでいて時にムカついて時に辛くなり時にエールを送り最後は都なりの幸せを手にしたことにホッと胸を撫で下ろし笑顔になれるそんな作品。 でもなー。賛否両論あるのは分かってるんやけど私はエピローグはいらん派でした。
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恋愛のこと、分かる………分かるよって 夫と結婚すると決めた時のことを思い返しながら読んだ。 結婚する、じゃなくて「連帯」という語感が、私にもピッタリきた。 話題になってるけど、ずっとミステリーの気分で 表紙が綺麗って理由だけで買って積読してたけど、 なんでもっと早く読まなかった...
恋愛のこと、分かる………分かるよって 夫と結婚すると決めた時のことを思い返しながら読んだ。 結婚する、じゃなくて「連帯」という語感が、私にもピッタリきた。 話題になってるけど、ずっとミステリーの気分で 表紙が綺麗って理由だけで買って積読してたけど、 なんでもっと早く読まなかったんだ、、、と自分にツッコミを入れたくなります(笑) 苦しくて、悩んで悩んで、怠惰なときもあるけど 目まぐるしく悩んで泣いて、 30代、辛いねぇって分かる分かる、 それは都ちゃん、違うと思う。 この掛け合いを心の中で巡らせながら 読む手が止まらなくなる。 貫ちゃんしっかりしろよー!! どんだけダメンズやねんって思いながら。 都は最後何を決めるのか。 決めるってものすごくエネルギー使う。 決められない人に贈りたい、1冊です。
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わかる!わかる!そう! 30代独身、仕事に恋愛に親に…共感でしかなかった。 悩んで迷って泣いて自滅したり笑ったり、この小説を読めてよかった。
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30代に読んでたら刺さっていたかも。正直、都の事はあまり好きでは無い。30にもなって、目標もなく生きてきて、不意に結婚を意識し始め、そのくせ求めるものは多い。ボランティアで広島に行った際のメンタルの弱さ、自分1人では何も出来ない未熟さが表れていて、情けなく思った。
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とっても心に響いた、何度も都と自分を重ね合わせた作品だった。 わたし自身、現状結婚願望が無かったのだが、この作品を読んだり、実際の自分の両親のことを考えたら結婚願望が沸いてきた‥。 特に「何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく。幸せに拘れば拘るほど、人は寛容さを失くしていく。」の言葉は深く胸に刺さった。 そよかが都に対して、「料簡が狭く、狭量だ」と言う場面では、わたしも自分自身が料簡が狭く、狭量だということに気付いた。相手に対して望みすぎることが多々あるので、そこは気をつけたい所存。 その後の都と貫一の伊豆旅行の場面では、「この話をしたらふたりの関係性は一つ進むかもしれないが、それと同時にふたり関係性を終わらせてしまう可能性もある。でももうずるずるとこの関係性を続けるのも限界だった」という都の気持ちも痛いほどわかった。 自分の価値観に新たな視点を入れてくれた大切な一冊。
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弱くてみっともない部分を抱えながらも、自分の人生と真っ直ぐ向き合っていく登場人物の姿が人間らしく、共感できる部分が多かった。 完璧じゃない、綺麗すぎない、その絶妙な加減がとてもリアル。
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とても良かった。都の人間らしさ、貫一の掴めなさ、桃枝の正直さ、時子の豪放磊落ともいえる奔放さ、父親の脆い頑なさ、キャラクター全員が魅力的だった。 こんなに読んでいて気持ちいいのは、山本文緒さんがどの人物にも正しさを投影していないことだ。家族に貫一を引き合せるシーンで完璧に振舞ってみせた貫一も、底知れなさが先立ってしまったり。都が絵里とそよかに相談したときに意見が割れたり。誰にも「こうするのが幸せだよ」「こうすればいいんだよ」と背負わせていない。 ボランティアに行くのだって、言ってしまえば偽善だ。やらない善よりやる偽善というが、"やる偽善"を推奨しているのでもない。都もボランティアを通して成長したとかそんな綺麗事ではなくて、ただ転換点を迎えるきっかけを掴んだに過ぎない。 成長物語という美談ではない。まさに自分でいろんなことを思い悩んで自転しながら、勝手に進んでいく毎日を生きて公転していく。ただ変わっているだけ。 良すぎる作品に出会うと語りたおしてしまうのが文字オタクの怖いところだな〜 人生って自転しながら公転している。でもそれって外的要因で勝手に地軸が傾いて、今があるだけ。回っているのも自力じゃない。そういう風になっているから。どう思い悩んでも、答えが出ても出なくても自転も公転もする。幸せって人間が勝手にうだうだ考えているだけで、まあどのみち回るんだもんね、と思った。 そんなすっきりした事実がぽんと置かれた感覚になる小説だった。 余談 特に私が好きだったのは桃枝と時子の関係。友達にしては親しくないような、知人にしては仲のいいような。きっと桃枝もそうして考えることが度々あったのだろうが、「にしては」って何だ。形なんてそれぞれで、その関係の名がなんであれ素敵な関係に変わりない。時子のからっとした明るさがあってこそ成り立った関係に思えるが、時子からみた桃枝が気になるところだ。歳を重ねるにつれ狭く薄くなっていくコミュニティのなか、こんな友達がいるのは羨ましいと思わされる。
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主人公があまり自分と似た女性ではなかったので、共感がいまいち持てず、入り込めなかった。 同じ30代だが、同じタイプの読者なら共感できるポイントがたくさんあって読んでいて楽しいと思う。 こんな女性もいるのかと客観的に最後まで読んだが、最初のエピローグの答え合わせをできたのが良かっ...
主人公があまり自分と似た女性ではなかったので、共感がいまいち持てず、入り込めなかった。 同じ30代だが、同じタイプの読者なら共感できるポイントがたくさんあって読んでいて楽しいと思う。 こんな女性もいるのかと客観的に最後まで読んだが、最初のエピローグの答え合わせをできたのが良かった。 ベトナム人に嘘でも心動かされてほしくなかった。
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