せいいっぱいの悪口 の商品レビュー
感想 時間は過ぎていく。人は息をする。次の世代に自分を渡す。そんな営みの繰り返し。気づいてしまうと重たいから見えないフリをする。
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日常がただ書かれているブログを読むのが好きな人なら、もしかしたら楽しめるのかもしれない。学校の先生であり歌人でもある方のようなので、そのような暮らしに興味がある人も面白く読めるのかも。あとがきで、著者と百万年書房の編集者の方のやりとりが書かれていて、著者の「(前略)そういう安全...
日常がただ書かれているブログを読むのが好きな人なら、もしかしたら楽しめるのかもしれない。学校の先生であり歌人でもある方のようなので、そのような暮らしに興味がある人も面白く読めるのかも。あとがきで、著者と百万年書房の編集者の方のやりとりが書かれていて、著者の「(前略)そういう安全なところから、守られたところからものを言い、違う立場の人を傷つけてしまわないか、すごく怖いです」(p218)という懸念は、この本の中でほぼ唯一ひきつけられた言葉なのだけど、それに対する編集者の返答が、なんだそれ? というような返答で、著者はその返答にいい意味での衝撃を受けたようですが、なにそれ? どういう編集者さんなんだろう? と思い、調べてみて、あー、そういう経歴の編集者さんなんだ、苦手な本ばかり編集してらっしゃるなあ、と思ったのでした。
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240905*読了 少しずつ、本当に少しずつしか読めない、読んでは立ち止まってしまうエッセイと日記。 もっと先が読みたくて、いつもはどんどんページを繰ってしまうのに、この本だってそうなはずなのに、かろやかに重い堀静香さんの言葉はそれを許さない。 時間をかけてゆっくりと味わいきっ...
240905*読了 少しずつ、本当に少しずつしか読めない、読んでは立ち止まってしまうエッセイと日記。 もっと先が読みたくて、いつもはどんどんページを繰ってしまうのに、この本だってそうなはずなのに、かろやかに重い堀静香さんの言葉はそれを許さない。 時間をかけてゆっくりと味わいきった今。忘れたくない、と思う。この本を読みながら感じたことごとを。 堀静香さんは同い年。 同じ年、子を持つ母、そんな共通点から親近感を抱くし、妙に意識をしてしまう。 自分ってどうしようもないな、なんでこうなんだろう、死への恐怖、誰もが抱く感情をていねいに言語化できる人。 ほとんどの人が素通りしてしまう気持ちを、引き留めて言葉にする人なのだと思う。 堀さんは自身をふつうの人だというけれど、確かに壮絶な人生を送ってこられたわけではないと思うけれど、見過ごしてしまうような、誰にでも起こるようなそんなふつうの出来事を私はこんな風に切り取れない。 ただ、素通りしてしまう。 自分にはこんな表現はできない、と思うことが圧倒的すぎてもう嫉妬なんて抱けないはずなのに湧く嫉妬心。 私も同じこと考えていた、と共感する面と、そこまで考えている人がいるのだと気づかされる面と。 あぁ、敵わない。 その感性が妬ましくて、羨ましくて、自分の無能さに呆れて、でも諦められない。 子どもが生まれてからの文章が特にいい。 ぐいぐい刺さって、そして抜けない。 我が子をこの世に産んでしまったこと、この先すべての不幸から守れないこと、葛藤の繰り返し。 私もずっとそのループの中にいて、寝顔や寝息で小さく動くお腹や頬の産毛にどうしようもない愛おしさを抱えては死にたくないと願っている。 出会いのきっかけは、京都での文学フリマだった。 本は何よりも好きだけれど、同人には縁があまりなく、初めて赴いた。 この本の出版社である百万年書房のブースで、社長であり編集者である北尾さんとお話しして、この本を勧められた。 堀さんは短歌の創作活動をされていて、とてもおもしろい方で、初めてお一人だけでの著作を、それもエッセイを出版されるのだと。 「せいいっぱいの悪口」、タイトルがぐいぐいと襟元をつかむ。いいから読んでみろよ、と読書のこびとに言われるがままに、北尾さんが書かれた出版についての本と一緒に購入した。 あとがきに堀さんと北尾さんの出会いのエピソードが書かれてあって、堀さんにお会いしたことはなく、お顔も想像上の顔なのに、妙にくっきりと北尾さんが浮かぶのだった。 北尾さんは著者の話題性よりも、自分でこれはと思える人を発掘することを重視する編集者さんで、手がけてこられた本の中には、その方の初めての著作も多いのだという。 読み終えて、この本と出会うためにきっとあの文学フリマに訪れたのだと勝手に得心する。 兵庫県から阪急電車に長く揺られたのは、そのためだったのだ。 本の中にもあった、運命論をしみじみと思う。
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とても病んでどうしようもない時にこの本を読んで救われた。他の本の内容があまり入ってこなかったのだがこの本だけは読めた。等身大の飾らない自分を書かれている感じがしてとっても親近感が湧いた。面白く病める時間を忘れさせてくれた。
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堀さんの文体 一筋縄では行かない性格 夫への愛 生徒への想い 日常の中で明るさを探してちゃんと大切にしているところ がすごく良くて 読み終わってしばらく放心した
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「今は重たいかも…」と一旦寝かせていた本。あらためて読み始めると、一気に惹き込まれた。読書にもタイミングがあるなぁ。 自分に自信がまるでなくて、それでも自己顕示欲が強い。認められないけど、認めて欲しい。わかるな、この感覚。 ⚫今日生きていることも、昨日生きていたことも全部本当。明日生きたいことも本当。今がす べてで、いや多分そうじゃない。適当で怠惰で、あなたが好きで、自分がずっと許せない。事故が怖い。病気が怖い。何が起こるかわからないから五年後が怖い。二〇年後はもっと怖い。 今がずっといい。でも今が信じられない。なのに今しかない。 ⚫「いつ死ぬかわからない、だから今を生きなきゃね」は、やっぱり、どうしても難しい。だっ て日々はこんなにも退屈で、平凡で、怠惰で、孤独で、めまいがする。
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すごく時間かけて読んだ。わかる、わかると、何回も涙が出そうになった。 最初の「自分にずっと、怒っている」という一文が頭から離れない。どうしてあの人になれないのか、どうして自分は自分でしかないのか。そして、なぜこんなことで悩んでしまうのか、当たり前のことを受け入れ難いのか。わたしも、自分に怒っている、ずっと。これは永遠の課題である。 ・個人的に好きな箇所メモ p80 何が起こるかわからないから、今を大切に生きるのだろうか。他人のような、自分の声に無理に納得するようにあいまいに頷いて、なぜだか今、こんなにも不安。 p59〜 はみだしながら生きてゆく p188〜 躑躅のマゼンタ、伊勢エビの赤 最後の段落本当に大好き、声を大にして言いたい。
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人生の一部であり全て。世界の一部であり全て。 静かに涙しながら読みました。儚い美しさが込められている。
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友人からもらって読んだ。最近気になる本が立て続けにリリースされている百万年書房の一作目。同年代の方の子育て事情について知る機会も少ないので日記を読んで自分の子育てを相対化できて良かった。 エッセイと日記が交互に登場する構成になっている。著者は歌人でもあり、エッセイの中でそのときの感情にあわせた短歌が紹介されているのがユニークでオモシロかった。エッセイは主に生活を巡る話なんだけども、その中での厭世観や死恐怖症的な話、自他のどうしても埋まらない溝などについてポエジー成分多めで書かれている。このバランス感覚の文章はあまり読んだことがなく個人的には若干ウェットに感じた。ただこう感じたのはタイミングの問題なのかなと思うし、本著に書かれている感情の機微について思い当たる節は多々あった。個人的にはエッセイよりも圧倒的に日記が好きだった。コロナ禍の日本のカントリーサイドでの市井の暮らしを知る機会はなかなかないし文章がとても読みやすい。著者の視点や感情の表現がこれまたユニークで著者が短歌やエッセイを書く前のネタ帳を見ている感覚でオモシロかった。
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生きるとか死ぬとか もう会えなくなったしまった彼についてとか 子どもを産む産まないこととか そして産んだ後に思うこととか 自分の頭の中をのぞいてるみたいなところもあって 居なくなってから あの時一言でも返していたらとか たらればになってしまう自分 そんな自分も嫌だったり。 忘れることなんてないんだから 子どもに対しての こんな怖い世の中に産んでしまった自分の責任とな 産んでなんて頼まれてないのに 産んでしまって。子が辛い思いをしない保証なんてないのに。 それでも愛しくて産んだことが奇跡のようで いまの自分にぴったりなエッセイだった
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