嫉妬/事件 の商品レビュー
私は自分がひとつの規格のシリーズに属し、その限りにおいて取り替えのきく存在であることを確認させられたのだった。もちろん私はこの論理を裏返し、彼に対する私の執着においても、若い男であることによる彼の有利さが大きく働いたと認めることができたはずだ。けれども当時の私は、客観的にものを考...
私は自分がひとつの規格のシリーズに属し、その限りにおいて取り替えのきく存在であることを確認させられたのだった。もちろん私はこの論理を裏返し、彼に対する私の執着においても、若い男であることによる彼の有利さが大きく働いたと認めることができたはずだ。けれども当時の私は、客観的にものを考えるよう努めたいとはまったく思っていなかった。それどころか、自己欺瞞によって手に入れることのできる愉快さと強引さに頼って、絶望に抗おうとしていた。
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最も印象に残ったのは中絶の表現云々以上に、インターンの医師の態度。 医学部生が文学部生のことを「自分と同じ側の人間」と捉えているのは今の日本社会、大学システムからするとかなり異質では? 研修医が文学部生をアカデミックな仲間として受け止めるなんて考えられないよ。
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たまたま本屋でノーベル文学賞作家というフレーズに惹かれて購入。 小説ではないため、物語としては今ひとつ。ただ、ノーベル賞受賞の理由を読み、納得した。
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読んだ印象は、文学だった、ということ。 訳者のあとがきを見ると、『嫉妬』も『事件』も小説ではないのだそうで、自伝的「文章」「テクスト」なのだそうだ。すごい。
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面白かったんだけど、中絶手術の様子が生々しすぎてトラウマ級に辛かった。ちょっともう一度読める気がしないです。 人工中絶が合法化していない&技術が発展していない時代、女性はそれだけ過酷な方法で自分の身を守っていたんだということがよく伝わりました
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凄い本を読んだ。 ノーベル文学賞を受賞されたので、その時に買っておいたのだと思う。ずっと積読でした。 『嫉妬』という作品と『事件』という作品の2篇が1冊になっている。 淡々としている文ですが、ものすごく強い力があって心が揺さぶられ震えた。 読み進めていくうちに複雑な感情が湧いてくる。 恐怖とか悲しみとか安堵みたいなものが、ぐちゃぐちゃに掻き回されて1つになったような感情だった。 読後も心の中がまだ小さく小さくザワザワしている。 それでも暗いイメージはなく、陽射しの明るいイメージが残った本だった。 「わたし」の自己対話を通して、読者も「わたし」の「経験」を体感するような本だと思った。 余韻が物凄い。 ずっと心に残り続けている。 著者の思いの強さというか、そういうものの強い力で私の心はこの本に引き止められている。 この本を読んで、読書とはただ目で文字を追って読むだけの行為ではなく明らかに体感するものなんだと改めて実感した。 想像を遥かに超えました。 『事件』の方は『あのこと』というタイトルで映画もあるので観ようと思っています。 覚悟して観ないと。 こんなにも心が揺れたのは久しぶりかもしれない。 感動ってすごいな。
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読み友さん、読んでいた本。気になっていた。☺ 一日に没頭した2作品。あまりに、生々しくて読むのが辛かった中絶に関する【事件】 【嫉妬】、誰にでもあるかもしれないし、ここまではないかもしれないし。 久しぶりに翻訳物。やっぱりよかった。 アニー・エルノー。フランスの作家さんで、ノーベ...
読み友さん、読んでいた本。気になっていた。☺ 一日に没頭した2作品。あまりに、生々しくて読むのが辛かった中絶に関する【事件】 【嫉妬】、誰にでもあるかもしれないし、ここまではないかもしれないし。 久しぶりに翻訳物。やっぱりよかった。 アニー・エルノー。フランスの作家さんで、ノーベル文学賞を受賞された方です。
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妄想の代償と行動の反動と、様々な感情にただ振り回されて心が占有される様「嫉妬」 優生手術の実態を克明に描き、苦悩と戦った女性と、権利に苦悩する息苦しさを謳う「事件」 一歩違えば嫉妬していたかもしれないし、油断していれば事件に巻き込まれていたのかもしれない。一人称で記されてい...
妄想の代償と行動の反動と、様々な感情にただ振り回されて心が占有される様「嫉妬」 優生手術の実態を克明に描き、苦悩と戦った女性と、権利に苦悩する息苦しさを謳う「事件」 一歩違えば嫉妬していたかもしれないし、油断していれば事件に巻き込まれていたのかもしれない。一人称で記されているからこそ他人事じゃなく感じる。生まれた環境が違う、自分の境遇を呪う、なんて自分と他人を比べることがあると思う。そんな表層の話ではない。真に相手や時代に向き合ったとき、見える本性を読んだ気がする。
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別れた恋人のSNSを覗きみたり... いつまでも引きずってたり、 忘れられなかったり... そんな経験がある中で「嫉妬 」で刺さりまくり、穴があったら入りたくなる。 でも、この作品のおかげで自分を客観的に見ることができた、大切な作品。ありがとう。
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「彼をもう一度自分のものにしたかった」 当時真実だったただ一つのこと、私はそれをけっして口にしないつもりだったけれど、それは、「あなたと寝たい、そして、あなたにもうひとりの女性を忘れさせたい」だった。他のことはすべて、厳密な意味において、フィクションにすぎなかった。 これが...
「彼をもう一度自分のものにしたかった」 当時真実だったただ一つのこと、私はそれをけっして口にしないつもりだったけれど、それは、「あなたと寝たい、そして、あなたにもうひとりの女性を忘れさせたい」だった。他のことはすべて、厳密な意味において、フィクションにすぎなかった。 これが嫉妬の誕生でしょう。 精神と肉体のステータスを満たすもの、満たしているものを喪失する、奪われる危険性にたいしてだとか、自分が手にできないものに対して抱かれるのではないでしょうか。 また、それにたいして"努力をしていない"であったり、"努力の程度"が低い者ほど強く抱く傾向にあると感じます。 それには個人差があり、人や物に対しての関心の度数、指数的なものなのかとも… たいていの場合、その事柄に囚われ、占拠、占領され、用事として忙殺されているのは自分だけなのですが… それを理解していたとしても、それを作り出している環境、状況が変わらない限り、なかなか解放されないものだとも感じています。 サルトルがいう「他者の視線の中での自己の位置づけ」という考え方を認識するのも大事かと思います。 作者は書くことによってしっかりその事実を認識し、それからの解放を試みます。それは彼女にとって"やり方"であり、もっとも有効な手段だったのです。 時折、次のような可能性を垣間見ることがあった。もし彼が私に突然、「彼女とは別れる、きみのそばに戻る」と言ったなら、私は絶対的な幸福の一分間、ほとんど耐え難い感動の一分間ののちに、エネルギーの尽き果てた感じを、オルガスムのあとの体の弛緩に似た精神的弛緩を覚え、そして、自分はいったいどうしてこれを得ようとしたのだろうと自問するだろう。 では、自分にとっての解放の手段は何か? "それが全ての世の中ではない。この世は相対的である" あくまでも人生の主人公は自分自身であり、その舞台でスポットライトを浴びているのは自分なので、嫉妬なんかしてたら"カッコ悪い"ので、カッコよく生きる思考に転換しないとですかね。
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