オスとは何で、メスとは何か? の商品レビュー
オス/メスはゼロイチで確定されているモノじゃなくて、一個体でも行ったり来たりするんだよ、という話。昨今の性多様性みたいな風潮に対して、生物学としてどんな知見があるのかと期待して読んだが、明確な答えは無かった。なので、ちょっとモヤる感じ。丁寧な説明で、良い本だとは思うけど。 内容...
オス/メスはゼロイチで確定されているモノじゃなくて、一個体でも行ったり来たりするんだよ、という話。昨今の性多様性みたいな風潮に対して、生物学としてどんな知見があるのかと期待して読んだが、明確な答えは無かった。なので、ちょっとモヤる感じ。丁寧な説明で、良い本だとは思うけど。 内容としては、前半は人間以外の動物における性の動態の事例。鳥・魚・昆虫などを例に、メスに擬態するオスやオスに擬態するメス、状況によって一個体でもオスになったりメスになったりする魚がいたりと、かなり興味深い。 中盤は、性を決定するメカニズムとして、遺伝子と性ホルモンが解説される。これに関しては、割と常識的な話という印象。「第二次性徴までの子供は見た目の男女差って小さいよね」とか、「すね毛が生えてない男性もいるし、ガタイがデカくて筋肉ムキムキな女性もいるよね」というのが、生物の仕組みとして裏付けされる。 最終章では、性指向や性自認などの脳の問題が取り上げられるのだけど、これに関しては「現時点では、よく分からん」ということで、少し肩透かし。今後の研究が待たれる、という感じ。 総論。 帯に「常識が変わる」とあるけど、人間の性の話については、常識的な説明で誇大広告気味かな。環境によってオス/メスを行き来する魚がいたとしても、人間はそうなってはいないのだから、それをもって人間社会の常識が裏返る話ではない。というのが自分の感想。 でも、丁寧に解説されているので、本としての好感度は高い。そんな感じ。
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とても楽しい。やさしい語り口で読みやすいので中学3年生ごろから読める。生物学、医学基礎研究の楽しさがわかるので、進路選択前の高校生にもおすすめ。遺伝子に関しても分かりやすく学べる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
遺伝子とホルモン分泌によってオス・メス化、脱オス・脱メス化がされることで、性がスペクトラム上に決定される。 この原則によって、性指向、性自認の多様性の蓋然性が示される。 なるほど人間の直観的な理解というのは往々にしてアテになるが、また往々にしてアテにならない。社会科学だとか、理系の基礎研究だとかの重要性を「直感的」に理解するためには、こういう「目から鱗」を体験するのが1番いいかもしれない。
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https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000886832022.html
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「性は2つの対立する極として捉えるべきではなく」とある割には、オスメスが両端にある1軸のスケールであることに変わりはなく、ゼロイチのデジタルではなくてオスメス両端が100で真ん中0の連続値、というだけで拍子抜けした。 オス軸メス軸の交差で2変数の4象限じゃないんだ?そういう表現の...
「性は2つの対立する極として捉えるべきではなく」とある割には、オスメスが両端にある1軸のスケールであることに変わりはなく、ゼロイチのデジタルではなくてオスメス両端が100で真ん中0の連続値、というだけで拍子抜けした。 オス軸メス軸の交差で2変数の4象限じゃないんだ?そういう表現の方が適切な場合もありそう。 細胞に性がある、という話も、性ホルモン受容体の遺伝子の活性化の効かせ方に性差があるから、だとしても、性差を見えなくするくらいの個体差=遺伝的多様性もあり得るのが遺伝子の発現では? 一度オス寄りまたはメス寄りにスイッチ入ったなら一つの個体に0を越える細胞はあり得ないってことだろうけど、そのオス100%メス100%の特徴の最大値の位置取りは何によってそうなっているわけ?という疑問。細胞の性がどちら寄りか?は雌雄での遺伝子の発現のしやすさの差→機能差、というのはわかるけど、性別でしか生まれない差なのか?とか。 性差があるとして、じゃあその性別での分布は?ていう。だいぶ重なってんじゃね?
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私達にある2つの性。言葉にすると、2つにしっかり別れた、別個のものと感じる。 しかし現実世界ではそうだろうか? 2つの性の関係について、科学的知見から語ったもの。 面白いし、ラベリングの理解しやすいという良い点と、良くない点について考えるきっかけになった。
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社会学だけではなく、生物学からも「性スペクトラム」の必然性が唱えられ、支持されていることに心強い物を感じる。
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性は決して二極性のものではなく、オスからメスへとグラデーションのようにスペクトラム状に分布する表現形である。言われてみて考えてみればこれ以上当たり前のことはないように思う。この本を読むと人の「男女」というものが単に作られた制度にしか過ぎないと言うことがよく分かる。いい加減日本の社...
性は決して二極性のものではなく、オスからメスへとグラデーションのようにスペクトラム状に分布する表現形である。言われてみて考えてみればこれ以上当たり前のことはないように思う。この本を読むと人の「男女」というものが単に作られた制度にしか過ぎないと言うことがよく分かる。いい加減日本の社会制度も作り直す時期に来ている、とそこまで思いが到ってしまう、そんな本であった。
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精子を作るのがオス側で、卵を作るのがメス側で、性別は両極端だけではなく、間に100%から0%までスペクトル上に分布している、 性ホルモンと遺伝子がその位置を決める、 という話。 魚の中にはオス側からメス側にジャンプするものもいる。 人間においては成長過程でスペクトル上を移動するの...
精子を作るのがオス側で、卵を作るのがメス側で、性別は両極端だけではなく、間に100%から0%までスペクトル上に分布している、 性ホルモンと遺伝子がその位置を決める、 という話。 魚の中にはオス側からメス側にジャンプするものもいる。 人間においては成長過程でスペクトル上を移動するのが一般的である。 性ホルモン受容体遺伝子に変異が起きて、ホルモン受容体の機能が完全に消失するのが性分化疾患の一例で、性自認の変化につながったりする。 「男は〜」「女は〜」みたいな大きな主語で語ることに意味はないということはよく分かる。
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生き物の知識が増えてくると、不思議だなあと思うことがいろいろと出てくる。 オスとメスの多様な在り方もそのうちの一つ。 ・カクレクマノミは多くがオスでもメスでもない個体で、群れの状態によりオスになったりメスになったりする。 具体的には、群れの中で1番大きいものがメスで2番目がオ...
生き物の知識が増えてくると、不思議だなあと思うことがいろいろと出てくる。 オスとメスの多様な在り方もそのうちの一つ。 ・カクレクマノミは多くがオスでもメスでもない個体で、群れの状態によりオスになったりメスになったりする。 具体的には、群れの中で1番大きいものがメスで2番目がオス、その他はオスでもメスでもない。 メスがいなくなるとオスがメスに性転換し、その他の中で一番大きい1匹がオスになる。 ・オキナワベニハゼはオスになったりメスになったりする。 メス同士が出会うと大きなメスがオスになり、オス同士が出会うと小さなオスがメスになる。 ・ウミガメやワニは孵化するまでの温度の違いでオスかメスかが決まる。 ・昆虫はオスがいなくてもメスだけで子孫を残せるものがたくさんいる。 オス・メスの識別は、精巣を持つのがオス、卵巣を持つのがメス、という定義らしい。 だが、そのように2極化するのではなく、両者は連続していてその中でどの位置にいるかと考えるのが「性スペクトラム」。 本書はこの仮説をもとにして遺伝子と性ホルモンの研究・調査の結果を説明したものだ。 ときおり男性脳・女性脳という言葉を聞くが、魚での研究でも脳に性差があるという調査結果が得られている(らしい)。 「性自認」と「性志向」が脳の性を議論するのに重要らしいが、これはヒトで調べるのが信頼性が高そうだと思う。 魚に性自認がありますか?と聞くことはできないですから。 自分は「男」「女」「男でも女でもある」「男でも女でもない」が性自認。 自分の恋愛対象は「男」「女」「男と女の両方」が性志向。 だが、脳の研究がまだまだ進んでいないので、脳の性の識別などはまだまだ先のこと。 何をどう調べればいいのかも分かっていないので、膨大な数の調査をヒトで行う必要がある。 脳を調べられて、「あなたは男でも女でもなく、恋愛対象は男と女の両方ですね」などと診断されることは当分ないでしょう。 生き物は複雑すぎて不思議なことだらけだ。だから謎を解きたくて興味が湧くのですけれど。
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