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君のクイズ の商品レビュー

3.5

1101件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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  3. 3つ

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2024/08/21

『観覧者もMCもスタッフも、みんな本庄絆のミスに気づいていた。舞台袖のディレクターが慌てた様子で、インカムに向かって何かを喋っていた。想定外のトラブルに、困惑のどよめきが広かっていた。「ママ、クリーニング小野寺よ」本庄絆はそう口にした。「え?」思わず僕は声を出していた』 定期的...

『観覧者もMCもスタッフも、みんな本庄絆のミスに気づいていた。舞台袖のディレクターが慌てた様子で、インカムに向かって何かを喋っていた。想定外のトラブルに、困惑のどよめきが広かっていた。「ママ、クリーニング小野寺よ」本庄絆はそう口にした。「え?」思わず僕は声を出していた』 定期的に視聴している訳ではないのだけれど「あの本、読みました?」で編集者がこの作家のことをべた褒めしていたので気になった。もちろん直木賞を取った本のことは知っているけれど、天邪鬼なので読んではいない。 率直に言うととてもよく練られた本だなと思いつつ、作家が後のことはほとんど考えないで執筆しています、と言っていた言葉が頭の中でもやもやと繰り返されることになった。それは本書のカラクリとも似た問いであり、だからこそ尚更のこと気になってしまうのだ。 対戦型のクイズにおいて、問題文が出題される前に回答できたことを巡る本書は仕掛けの多い本だ。仕掛けを伏線と捉えるなら、書きながらこれら全てを考えることは無理なんじゃ無いかと思いつつ、話が進展していく中で数々の疑問は回収されて行く。実はそういう謎解きの要素で読者をぐいぐいと引張って行くようだけれども、合間合間にライトノベルにでも出て来そうな(今時の言葉で言うところのアオハルな)エピソードも挿入される。ただし、ベートーヴェンとは違って、そんなきれいなモチーフは惜しげも無く消費される。 主題は飽くまで、果たして問題文を聞かずに回答することは可能だったのか。主人公がその問いに対する答えを追求する中で、もう少し大きなテーマが見え隠れする。それはクイズという様式を逸脱することに象徴される「メタ」あるいは「次元の繰り上がり」という概念。例えば、戦争には国際法という「決まり」はあるけれど、それを逸脱しても「勝てば官軍」という有無を言わさぬ力の論理もある。それでも「法」は意味を持ち得るのか否か。硬く捉えればそんな問い掛けも見えて来る。最後まで読むとそんな倫理観に関するテーマだけが印象として残る。 エンターテイメント小説として読み飛ばすように読んでしまえばそれまでのことなのだけれども、折角なので少し穿った見方もしておきたい、そう思わせてくれる一冊。

Posted byブクログ

2024/08/21

まるでスラムドッグミリオネアのように、クイズを答えながら主人公の人生を追っていく展開。 ミステリーとしてはインパクトは弱めだけど、結構楽しかった。 問題の一部から全体を予測するテクニックが、トッププレイヤーには当たり前なのだろうが、知識と経験と論理力から成り立ってるあたりとか。...

まるでスラムドッグミリオネアのように、クイズを答えながら主人公の人生を追っていく展開。 ミステリーとしてはインパクトは弱めだけど、結構楽しかった。 問題の一部から全体を予測するテクニックが、トッププレイヤーには当たり前なのだろうが、知識と経験と論理力から成り立ってるあたりとか。 最後の本庄絆との会話が、物語の閉めかたとして少し物足りない感じだったのがちょっとだけ残念だった。

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2024/08/20

面白かったです。早押しクイズが好きな人には刺さる内容だと思います。どこか、『スラムドッグ$ミリオネア』を想起させるような構成で、クイズと人生の関わりや、早押しクイズの奥深さを知ることができました。

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2024/08/17

人が死なないミステリー小説を(前に読んだのが何だったかも覚えていないくらい)久々に読んだ。 クイズが出題され、仮説をひとつひとつ丁寧に消化していきながら最後の答え、動機にまで隙なく組み立てられて、ミステリーとしては面白い、エンターテイメントとしては最高、見事な小説だった。 ただで...

人が死なないミステリー小説を(前に読んだのが何だったかも覚えていないくらい)久々に読んだ。 クイズが出題され、仮説をひとつひとつ丁寧に消化していきながら最後の答え、動機にまで隙なく組み立てられて、ミステリーとしては面白い、エンターテイメントとしては最高、見事な小説だった。 ただでも個人的な好みとして、登場人物(三島、本庄 両方)に感情移入はできなかったし、その結末、結論でいいのか?とは思った。最後まで書ききってほしかったな、と思った。 まぁ、問題定義的な小説ではなく、ライト小説だからいいのか、好みの問題ですね。。。 ~~~ ミステリーを読むとき、行ったり来たりして読むのが好きで、かつ2回通読することにしているが、この本は読み返しなく一気に3時間くらいで読み切ったうえで、もう一度読み直すことをしないことにした。たぶん、読み返したら、理に合わないことが見つかる気がするから。

Posted byブクログ

2024/08/15

面白い本を読みたい人、この本があるよ! クイズ番組はいつの時代でも人気のあるコンテンツ。君のクイズは題名だけ見ると恋愛小説かとも思われる題名だけど、読み始めてすぐに違う、これはクイズの本だと思った。 主人公はクイズに一生懸命な男性。クイズにハマってしまう人の気持ちってこういう感...

面白い本を読みたい人、この本があるよ! クイズ番組はいつの時代でも人気のあるコンテンツ。君のクイズは題名だけ見ると恋愛小説かとも思われる題名だけど、読み始めてすぐに違う、これはクイズの本だと思った。 主人公はクイズに一生懸命な男性。クイズにハマってしまう人の気持ちってこういう感じなのかもと思うくらいリアル。映画化したらきっと面白いと思うな。そんな彼がクイズの対戦相手について考えていく本。この本を読むとクイズが気になる、クイズ番組が気になるようになってしまうかも。

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2024/08/15
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面白い。小川哲すごい。 問題を一問ずつ振り返りながら、核心に迫っていく構成が絶妙で美しい。 クイズを金儲けの道具と考える本庄絆と純粋な競技と捉える主人公三島玲央の対比が見事。 最後まで名前のみで登場しない坂田泰彦が、全ての黒幕で、本庄はそれを利用しただけだった。坂田は番組を盛り上げるために、答えられなさそうで答えられる問題を準備していたというのが真相。 アンナカレーニナの、「あんなカレーにな」の話は面白い。 日本一低い山が天保山から日和山に変わったという話も面白い。野島断層、OPTT、CNS、Undertale、事象の地平面、など全てが興味を惹かれる。 このあと本庄絆はYouTubeチャンネルでどんな番組を作るのだろうか。ゼロ文字押しの真相を語るのは良いが、そのあとはどんな内容にするつもりなのだろうか。 舞城王太郎の「熊の場所」の話良かったように思うが、いじめを受けた場所と取り除くことができなかった説明部分は腑に落ちない感じがした。 私は資格試験を受けるとき、問題そのものだけではなく、作者の意図から回答を導き出すことをしているのだが、それに近いものを感じた。 良かったところp144 「クイズが僕を肯定してくれていた。君は大事なものを失ったかもしれない。でも、何かを失うことで、別の何かを得ることもある。君は正解なんだークイズが、そう言ってくれているみたいだった。」 「あの本、読みました?」2024/6/13に小川哲がゲスト出演した時に作品紹介された。

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2024/08/14
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競技クイズにおいてクイズプレイヤーはなぜ無茶な早押しができるのか?みたいなことが詳細に書かれていてためになった。 個人的に後味は悪い。 SNSで芸能人の一部を切り貼りして勝手に盛り上がる気持ち悪いファンとか、最後本庄がオンラインサロンを作るとかいうリアルな嫌さがあった。 面白い!よりも嫌さが勝った。

Posted byブクログ

2024/08/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

タイトルと表紙の装丁と帯に惹かれて書店で手に取ってみた。 冒頭だけ読んでみたがぐぐっと引き込まれ、そのまま購入してしまった。 書店で読んで面白そうだなと思う本は少なくないが、その日にお持ち帰りしてしまうことは珍しい。それほどまでに、本書にはひきこまれてしまった。 ジャンルとしてはミステリーということになっているが、どちらかというと人間心理を描いたヒューマンドラマ、というように思えた。 ミステリーとして楽しめたかというと必ずしもそうでない部分が多い。 途中から筋が見え始めてしまったのだ。 むしろ読者に筋を読ませてかつ、それを上回るラストを提供する狙いであるようにも思える。 大会でのクイズ解答中はもちろん、大会前や大会後の心情描写も細やかで自然とストーリーに没入し、主人公三島玲央はもちろんライバルである本庄絆にも共感してしまっていた。 本庄の金を稼ぐためのクイズ、三島の論理的に正解を導き出すクイズ、クイズにも様々なスタイルや哲学があり、それぞれにプライドがあるのだと思う。 (読者としては三島スタイルを応援してしまうのだが。) 個人的にはクイズ界隈のことを知れたのが面白かった。 どうやってクイズの勉強や対策をしているのか、クイズの種類やテクニックなどなど。 一文字押し、ですが問題、読ませ押しなどについて本書を読んで初めて知った。 なるほどなぁと思いつつ、こういう周辺情報を知ってからクイズ番組を改めてみるとより楽しめそうな気がした。 また、知識量=クイズの強さでないことも知り、なるほどなぁと思った。 知識量だけで戦うわけでなく、早押しの速さや誤答の可能性を考えた場合のメンタリティなど、単純に知識量だけでないことが分かり、クイズの深さを知った気がした。 フィクションではあるものの、クイズ界の有名人達がどのようにSNSやYouTubeなどを使って発信したりコミュニケーションしてるかというのも垣間見れて面白かった。基本地頭が良い人ばかりだと思うので、戦略的かつ効果的な利用をしているなと思える。リアルでもクイズ関連のコンテンツを見るのが好きなので、少し裏側を知れた気もして楽しかった。

Posted byブクログ

2024/08/12

なぜ問題文0文字で答えられたのか。 クイズに関する内容が少し多くは感じましたが、その真相が知りたくてどんどん読み進められました。 すぐに読めるので短い時間に楽しむにはとてもいいと思います。

Posted byブクログ

2024/08/10
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 直木賞作品『地図と拳』から著者作品を読んでいるが、いろいろジャンルの異なる世界を、うまくまとめるものだと感心する。  本書は、近年、人気の(もう、流行りは過ぎた?)クイズ番組を題材にとっている。賞金のかかった対戦で、相手に不正、ヤラセの疑いが生じる。とはいえ、公式な大会でもなければ、民放の番組内の出来事。冷静に考えれば、ニッチな小さな世界で、仮にヤラセだとしても、番組を面白くするための演出と言われれば、それまでのようなお話。  それを、主人公が、自分の人生をも振り返るかのように、問題となった放送回を振り返りながら、果たしてヤラセがあったか否かを推理していく。  ”自分の人生を・・・” そうなのだ、主人公が語るように、 「クイズとは必然的に参加者の人生についての競技」  と思わせるだけの、論の展開がお見事。クイズが、すなわち人生。となると、本書のタイトル、「君のクイズ」も、つまりは「君の人生」ということになる。 「人生というクイズの中で、僕は誤答をした。その結果、誤答罰を受けることになった。」  だれにでもあることだ。あの時、あちらの解答をしておけば、と。  ただ、人生というクイズには正解がない。あるいは、すぐには明示されない。それでも、我々は、選択を迫られ、自分が正解と考える解答を選んで進んでいく。  そんな大きな選択の話にも思いを馳せることのできる、ニッチな話。お見事。

Posted byブクログ