しろがねの葉 の商品レビュー
歴史を舞台に千早さんらしい男女を描いた小説。いつにもまして人間の五感と情景が生き生きと描かれた文体だった。 ここぞというメインのシーンではないものの、何度かあった主人公が言う「色がつく」ことに関する文章がとても良かった。いずれも主人公が若い時期を通り抜けた後の時期での描写で、...
歴史を舞台に千早さんらしい男女を描いた小説。いつにもまして人間の五感と情景が生き生きと描かれた文体だった。 ここぞというメインのシーンではないものの、何度かあった主人公が言う「色がつく」ことに関する文章がとても良かった。いずれも主人公が若い時期を通り抜けた後の時期での描写で、著者がここのところ現代小説で扱っていた中年に差し掛かる年代の主人公の描き方よりも非常に本質を捉えたものだったと思う。 歴史小説か(すなわち、舞台設定がどうか)という話ではなく、著者の作品が広く読まれるようになった10年近く前(『あとかた』や『男ともだち』)の頃から、一段レベルアップしたことを実感させる作品。『正しい女たち』よりも著者の良さが出ていると思う。今後、読者としてもしっかりこの著者のパワーアップについていかねばと思わされた。
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どんなに辛い境遇にあっても、なぜ生を選ぶのか なぜそこまで強くいられるのか 頑張ればその先に幸せがあるというわけでもないのに 地獄を見てもなお、這ってでも生きるということって 同じ命なのに
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後半になればなるほど 切なくて、苦しくて、 すべてかかえて生きていくって かんたんではない。と、思いました。
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石見銀山での人々の生き様が詳細に描かれていて、なかなか読み応えがある。 山師に教わった知識をフルに活かして、銀山で大活躍する女性を期待していたけど、、、。やっぱり事実に沿ったお話にすると、女性の位置ってそうなのね。 そこだけが切なくて個人的には残念。
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現在から約400年前の石見銀山を舞台にした作品。自らの意志に関わりなく山での暮らしを余儀なくされたウメという少女の成長を通して、銀に取り憑かれた男たちの姿を生き生きと描き出す。 このウメがいい。女だてらに男ばかりの坑道に入り込み、人より優れた夜目を活かして重宝される。だが正に女で...
現在から約400年前の石見銀山を舞台にした作品。自らの意志に関わりなく山での暮らしを余儀なくされたウメという少女の成長を通して、銀に取り憑かれた男たちの姿を生き生きと描き出す。 このウメがいい。女だてらに男ばかりの坑道に入り込み、人より優れた夜目を活かして重宝される。だが正に女であるがゆえに入坑を拒まれる羽目に陥る。このあたり、女性作家ならではの筆致で読ませる。 これまで読んだ千早さんの作品とはだいぶ印象が異なる力作だった。
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「人は人無しでは生きていけない」ということを感じた物語。ウメの成長の中で繰り返される出会いと別れ。儚さや悲しさの中に、救いのある温かみも感じられた。
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大好きな千早さんの新刊。 はじめは歴史系?と読みづらそうと思いきや、読みやすく没頭出来る文体。 後半からは涙の連続。仕方ないと思いつつ逃れられない別れに泣かずには読み進められない。 「生きることを選ぶ、それがどれほど強靭な選択か」と島本さんの帯文言に大きく納得。
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