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しろがねの葉 の商品レビュー

4.1

397件のお客様レビュー

  1. 5つ

    119

  2. 4つ

    185

  3. 3つ

    68

  4. 2つ

    8

  5. 1つ

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2023/01/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ここ最近で一番感動した。一人の女性の泥臭い生き様を読めて本当に良かった。直木賞受賞も納得の作品。 千早茜さんのデビュー作『魚神』に少し似ていて懐かしさもあり、それに実在する地方を舞台にしているためか説得力がプラスされた感じ。終始ゾクゾクさせられ、主人公・ウメに対する理不尽な扱いに胸苦しくなり、真っ正直に生きるウメの言動に感動し何度も泣いた。 人生は綺麗事では済まされない。血と泥と涙の混ざり合ったウメの生涯は、のんびりとぬるま湯につかる現代人の私の胸をグサリと突き刺すかのようだった。 銀(しろがね)に魅せられ踊らされた男たち。そしてそんな男たちを陰ながら支える女たち。 「目が曇れば山に呑まれる。銀に目が眩んでも同じことじゃ。おまえはちゃんと眼(まなこ)をひらいておれ」 人生の師に幾度となく言いつけられた言葉通り、ウメはどんな時も眼をひらき己の感情の赴くまま、銀の眠る過酷な山で精一杯に生き抜く。愛する男たちを何人も見送り、最後一人になってもなお静かに山を見守り続ける。 生きることの辛さも哀しみも喜びも、全てを全身全霊で受け止めて。なんという包容力。だから誰もが良くも悪くも目を離さずにいられなくなるのだ。 「銀山のおなごは三たび夫を持つ」 この言葉を知って、千早茜さんは今作を書くことに決めた、と聞いた。 ただ3回結婚を繰り返すという訳ではもちろんない。 銀山に挑み病に侵される男たちを一心に支え励まし慰める女たちの深い心情に思いを巡られせると悔しさに涙が出る。 石見銀山へは何度か訪れたことがある。今はどちらかといえば、観光客目当てのレトロな街並みをお洒落に演出した街、という印象。 その中で思わずゾクっとなったのは五百羅漢。銀山の採鉱で亡くなられた人々の霊を供養するために創られた石像がたくさん安置されていて圧巻だった。 銀山に命をかけた男たちの魂があれらの石像に込められていると思うと、とても感慨深い。 今作に思いを馳せながら、再び銀山を訪れたくなった。今作を読了した後では銀山に対する印象もきっと変わるはずだ。

Posted byブクログ

2023/01/21

直木賞受賞おめでとうございます!!!! ずっとずっとこの日を待ち焦がれていました 千早茜さんの美しい言葉や世界観が大好きで ファンになってからは新刊が出るたびに追いかけてきました だから直木賞を受賞され 嬉しくて涙がでた! 繊細さの中に 凄みがあり... 燃えるように...

直木賞受賞おめでとうございます!!!! ずっとずっとこの日を待ち焦がれていました 千早茜さんの美しい言葉や世界観が大好きで ファンになってからは新刊が出るたびに追いかけてきました だから直木賞を受賞され 嬉しくて涙がでた! 繊細さの中に 凄みがあり... 燃えるように熱く “生きる” 強さを感じた 千早茜さんの熱い想いが より純化し 様々なものを削ぎ落し 磨かれていく... まるで黒い刃物のごとく 鋭い文体に変わってきている!! 終盤を迎えるにつれ 徐々に光が増していく!! 石見銀山の全てをのみ込むような暗闇から一転... 混じりけのない銀の光を観たような気にさせられ... 最後はあまりの眩しさに瞼を閉じ... 強烈な光を瞼を透かして感じたほどだった!! めちゃくちゃ抽象的な表現だけど...笑 初めて手掛けた時代小説だとは思えないほど 生と性がタペストリーのように織り交ざりあい 匂い立つところが素晴らしかったです!!!!

Posted byブクログ

2023/01/21

江戸時代の農村の飢餓の話は小学生の時読み、衝撃を受けた。人が働くってなんだ。食っていくってなんだ。 炭鉱で働けば命は短い。毒対策をするのは覚悟がない?どんな生き方なんだ。 使い捨てにされる男たち。子を産む使命の女たち。 人間が駒として使われている。 鉱物を得て富を成す。けれどいつ...

江戸時代の農村の飢餓の話は小学生の時読み、衝撃を受けた。人が働くってなんだ。食っていくってなんだ。 炭鉱で働けば命は短い。毒対策をするのは覚悟がない?どんな生き方なんだ。 使い捨てにされる男たち。子を産む使命の女たち。 人間が駒として使われている。 鉱物を得て富を成す。けれどいつか山は寂れる。 キツい話だけれど山の生きている情景、人々の心持ち、情に和まさせる生き方が描かれて嫌いじゃない。

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2023/01/20

物語の舞台は戦国末期の石見銀山…両親とはぐれたウメは天才山師の喜兵衛に拾われる…ウメは喜兵衛から間歩のことや山の植物のことなどの知識を得て、自ら望んで間歩に入り手子として働き出す…年月が経ち成長したウメは、女であることから間歩に出入りすることを禁じられてしまう…。喜兵衛もまた山師...

物語の舞台は戦国末期の石見銀山…両親とはぐれたウメは天才山師の喜兵衛に拾われる…ウメは喜兵衛から間歩のことや山の植物のことなどの知識を得て、自ら望んで間歩に入り手子として働き出す…年月が経ち成長したウメは、女であることから間歩に出入りすることを禁じられてしまう…。喜兵衛もまた山師としての采配を振るうことが世の変化によりできなくなったことから、石見銀山を去ることになる…。ウメはそれに不条理を感じながらも、女として銀堀を支え家族を持つことになったが…銀堀はやがて肺を病み短い命を閉じるのが常だった…。喜兵衛、隼人、龍…ウメを愛した男達と、そのウメの一生を描く…。 読み終えた日にこの作品が直木賞を受賞したとの発表がありました。大河小説なので読みにくいだろうと思っていましたが…そんなことは全くありませんでした!読んでよかったと思いました。 千早茜先生の文章には、鮮やかな色があります。喜兵衛が緑で、隼人は赤、龍は青かな…特に隼人との別れの場面では、胸が痛くなりました…。せつないけれど、「男は女がおらんと生きてはいけんのじゃ」と思わせるウメの魅力、読み終えたときの静かな読後感も堪能できました!

Posted byブクログ

2023/01/17

男か女かが現代以上に強く意識されていた時代、それでも自分は自分だと、叩き込まれたことを胸に、女であることにも生い立ちにも過去にも予想される未来にも折り合いをつけて真っ直ぐ生きていく主人公の強さと美しさが響いた。

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2023/01/15

時代は戦国末期、世界遺産にも登録されている石見銀山が舞台。 凶作の影響で拾われ娘となってしまった主人公ウメが、死と隣り合わせに銀の採掘に勤しむ男たちのそばで成長し、たくましく生き抜いていく姿を描いた作品だ。 男性優位の時代がいつから始まったのかは諸説あると思うし、女性という理由...

時代は戦国末期、世界遺産にも登録されている石見銀山が舞台。 凶作の影響で拾われ娘となってしまった主人公ウメが、死と隣り合わせに銀の採掘に勤しむ男たちのそばで成長し、たくましく生き抜いていく姿を描いた作品だ。 男性優位の時代がいつから始まったのかは諸説あると思うし、女性という理由でやりたいことが自由にできない、ということが当時の人々にとってどのくらい切実だったのかは多分分からないので、テーマの一つであると思われるフェミニズムの部分に関しては、実はあまりピンと来てはいない。 本作はそれよりも「なぜ命を賭して働くのか」「愛する男に先立たれた女性の生き方」というテーマのほうが個人的には考えさせられた。冒頭に書いた「死と隣り合わせ」というのは、採掘中の落盤や滑落による事故死だけではなく、坑道内で発生する粉塵やガスなどによって肺や気管支を痛め、死期を早めるということも含まれている。「銀山やまのおなごは三たび夫を持つ」という言葉が作中に出てくるが、実際主人公ウメの周囲でも次々に男が早死にしていく中で、それでも銀の採掘を止めない男たちの仕事に賭ける矜持と、後に残された女性たちが選んだ道には心打たれるものがあった。 著者の作品を読んだのは初めてなんだけど、文章は抑制が効いてかつ想像力が広がっていく感じがして、とても上手いと思った。性描写自体はそこまで多くないにも関わらず全体的に官能の香りが漂ってくる筆致も、なかなか新鮮で読んでいて面白かった。

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2023/01/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

直木賞候補作。 すごく面白かったし、男も女も生きていくのは大変だと思った。 読んでいて旦那を愛おしく思えた。 今まで石見銀山のことを全く興味を持ったことがなかったけど、そこで生活する人たちの人生を垣間見れて面白かった。 女も男に頼るだけではなく自分を養っていかなければ…と思わされた。 千早茜さんの本を読んだのは2冊目だけど、他の本も読みたくなった。

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2023/01/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

銀山での「女の一生」。読み終えて、なんかすごくずしっとしたものが胃にある感じがする。三十を過ぎたら長寿のお祝いをした、と言われるくらい短命な男たちと愛を、子を、家族を育むこと。きりきりした痛みみたいなものが残った。

Posted byブクログ

2023/01/09

戦国末期の石見銀山。稀代の山師・喜兵衛に拾われた夜目の利く少女・ウメ。男のように銀掘なりたいと願った少女が、運命に翻弄されながら選んでいった生きる道。 千早さんには珍しい時代背景と舞台。荒々しい山の男たちと力強く人生を切り開いていく女の一生を描く物語はそれでも文章があまりに情緒...

戦国末期の石見銀山。稀代の山師・喜兵衛に拾われた夜目の利く少女・ウメ。男のように銀掘なりたいと願った少女が、運命に翻弄されながら選んでいった生きる道。 千早さんには珍しい時代背景と舞台。荒々しい山の男たちと力強く人生を切り開いていく女の一生を描く物語はそれでも文章があまりに情緒的で前半はちょっと私の好みじゃないな〜と。 それでもウメが愛した3人の男たちが三人三様で魅力的で、どちらかというと男たちの物語として読んだ。 短い命を賭して銀を掘る男たちを見送る女の哀しさや、それでも逃げ場もなく生き続けるしかないやるせなさ。 ウメに逃げろと言われた時の龍の言葉、 「銀がなくなっても、光るなにかを人は探すと思います。それで毒を蓄えても、輝きがなくては人は生きていけない。無為なことなどないんです」 胸を打たれました。 なんのために生きるのか。そんなことを考えた読後でした。

Posted byブクログ

2023/01/08

Amazonの紹介より 第168回直木賞候補作! 男たちは命を賭して穴を穿つ。 山に、私の躰の中に―― 戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。 天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。 しかし徳川の支配強化によ...

Amazonの紹介より 第168回直木賞候補作! 男たちは命を賭して穴を穿つ。 山に、私の躰の中に―― 戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。 天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。 しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。 生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇! 今までの千早さんの作品というと、しっとりと丁寧で繊細な文章が印象的だったのですが、今回の作品では一味違っていました。人間の心に秘めた激しさや艶かしさの要素が前面に出ていて、より人間が生き生きとしている印象でした。 主人公が体験する壮絶な人生。主人公を含め、女達の生き様や男達の欲望むき出しの描写が濃密で、悲しく切なかったですが、生きることの凄まじさを感じました。 まさか性描写が描かれていたとはちょっと驚きでした。 ポワンとした雰囲気とは違い、獣臭さといいましょうか、人間らしさが表現されていて、千早さんが一皮剥けたような印象を受けました。 男社会だからこそ感じる女達の心の葛藤。ある人は石見銀山へ行けないという葛藤、ある人は「男」を待ち続ける心の葛藤など戦国時代での色んな女を垣間見ました。 男の方は、愛する女のために尽したり、本能のままに生きたりと欲望むき出しの表現が、男臭さも相まって、リアルな人間を垣間見たように感じました。 中盤までは、退屈な部分もあって、なかなか前に進まない印象だったのですが、それ以降は激動の展開になっていき、世界観にひきこまれました。 実際に存在する石見銀山。フィクションではあるものの、「銀」をめぐる人間の攻防戦に新たな一面を見ました。

Posted byブクログ