キッズ・アー・オールライト の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
《キッズ・アー・オールライト》子どもたちは大丈夫。 心強く、希望に満ちたこの言葉の、その裏にあるオールライトじゃない現実よ。 ヤングケアラー、日本で生まれ育った日系ブラジル人、在留外国人、そして半グレ。 裏通りへ、社会の隅へ、日の当たらないところへ、と追いやられていく子どもたち。彼らの声を誰が聞き、彼らの未来を誰が掬い取るのか。 自分の身の回りにもいる彼らに対して、何気なく目をそらしてはいまいか。そこにいるのにいないものとして通り過ぎてはいないか。 元被虐待児で施設出身者である河原の、自分の過去と向き合いながら今目の前にいる子どもたちへそそぐまなざしの真摯さに胸をうたれる。その手から零れ落ちる子どもたちへ感じる無力感が胸に迫る。 鳶の親方として働きながらパパ活少女たちの無償窓口となっているシバリ。正しい事ではない。でも正しさだけを押し付けてもそこからはじき出された子どもたちの行く先はもっと暗い世界しかない。自分を闇から救い出してくれた日系ブラジル人との約束を果たすために踏み込んでしまう一歩。その代償と結末。 大人の犠牲になるヤングケアラーである少女や、大人たちに搾取され生きるため罪を犯す日系ブラジル人の少年。二人が手を伸ばすのはそんな子どもたち。 愛知県を舞台にしたこの小説は、決してフィクションではない。今、この時も、愛知県の片隅で、いや、日本中のそこかしこで、過去も今も未来も失った子どもたちが絶望の闇に堕ちていく。 丸山正樹は徹底して社会的弱者のそばに寄り添い続ける。けれどその姿勢は、優しさや甘さにだけ基づいているわけではない。 どんなにがんばっても変わらないこともある。無力感の中で離す手もある。 そんな現実をありのままにさらけ出す。そして突きつけるのだ、「あなたには何ができますか」と。 このタイトルにNOTを加えないために、今、私たちにできることは何なのか、と。
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ヤングケアラー、在日外国人の子どもたち…「普通」の子どもたちの輪の中に入っていけず、学校から遠ざかってしまう子どもたちがいることを知ることができた。そして、そんな子どもたちに対して、大人ができることはなんだろう、と考えさせられた。 物語に出てくるNPO「子どもの家」のメンバーは、...
ヤングケアラー、在日外国人の子どもたち…「普通」の子どもたちの輪の中に入っていけず、学校から遠ざかってしまう子どもたちがいることを知ることができた。そして、そんな子どもたちに対して、大人ができることはなんだろう、と考えさせられた。 物語に出てくるNPO「子どもの家」のメンバーは、児相でも警察でも対処できないようなケースに対して、多少「強硬」なやり方でも子どもたちを救おうと活動している。彼らのように、子どもたちの何気ない言葉から、SOSを読み取って、何かしらの行動をすることが、周りの大人にできる唯一のことではないかと思う。 子どもに仕事を押し付けるのが保護者の責任放棄になる一方で、「何もできない自分」を責める子どもたちにとっては、誰かの役に立っているという実感が生きる希望にもなる。その線引きは難しいけど、子どもの声はどんなに小さいものでも聞き逃さず、耳をすましていきたいと思う。
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まずはこの題名でロック好きの私にとって思い出すのが、「キッズ・アー・オールライト」イギリスのロックバンドザ・フーのドキュメンタリー映画であり楽曲でもある。 丸山正樹さんがまたやってしまいました。 ヤングケアラー、日系ブラジル人の居場所これらを題材にした社会問題を考えさせられる素晴...
まずはこの題名でロック好きの私にとって思い出すのが、「キッズ・アー・オールライト」イギリスのロックバンドザ・フーのドキュメンタリー映画であり楽曲でもある。 丸山正樹さんがまたやってしまいました。 ヤングケアラー、日系ブラジル人の居場所これらを題材にした社会問題を考えさせられる素晴らしい作品でした。そしてとても印象に残ったセリフで河原が悩む言葉に共感しました。「はたして自分は彼らに「将来」を考えさせ、「未来」に希望を抱かせることかできるのだろうかー。 「ピアカウンセリング」や「レスパイト」などの専門用語への関心 あなたも読んで共感して下さい。感動して下さい。
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