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日本インテリジェンス史 の商品レビュー

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18件のお客様レビュー

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2023/01/13

 インテリジェンス専門家の小谷賢先生の新刊。余談だが、NHKを見てた時、同先生が戦国時代の戦術についても語っており、知識のカバーの広さに驚愕した。  戦後日本のインテリジェンスについて日本語で読める概略史は、インテリジェンスの特性もあり、なかなかないため(おそらく本書が初)、大変...

 インテリジェンス専門家の小谷賢先生の新刊。余談だが、NHKを見てた時、同先生が戦国時代の戦術についても語っており、知識のカバーの広さに驚愕した。  戦後日本のインテリジェンスについて日本語で読める概略史は、インテリジェンスの特性もあり、なかなかないため(おそらく本書が初)、大変参考になった。  本書は、戦後の日本におけるインテリジェンス機関の歴史について、特に①なぜ日本で戦後、インテリジェンス・コミュニティが拡大せず、他国並みに発展しなかったのか、②戦前の極端な縦割りの情報運用がそのまま受け継がれたのか、という二点に焦点を当てる。  本書の最初に書かれているとおり、日本のインテリジェンスの本質的問題点として、各省庁の行政事務のために情報収集する傾向があること(縦割り)、予算及び人員、情報活動に関する法制度の未整備が挙げられる。縦割りは、まさに②に関することであるが、戦前の陸軍と海軍の断絶と比較すると、国家安全保障会議(NSC)及び国家安全保障局(NSS)の創設により、だいぶ改善したように感じる。  法制度(情報保全と国民の監視のジレンマ)に関しては、本書最初に引用されていた西独の情報機関の元首長であるラインハルト・ゲーレン氏の言葉「政府は、情報機関を在来の公務員規約でがんじがらめにするか、機関のために例外を認めるか選択する。後者を選んでも、公的資金運用の管理は大きく損なわないため、多くの国は後者を選んだ」という言葉が印象的。日本は例外的に前者を選んでいるものの、第2次安倍政権の際に特定秘密保護法が採択されたのがいかに大きな前進であったかわかる。願わくば、スパイ取締法案に関しても何かしらのモメンタムが欲しいところ。  寡聞ながら、国際テロ情報収集ユニット(CTU-J)の存在は初めて知った。以下、備忘録 ・CTU-J(国際テロ情報収集ユニット)は、海外におけるテロ情報の収集に特化。戦後初の対外情報機関といえる。 ・筆者の対外情報機関の定義は、①政策部局から独立し、インテリジェンス機能に特化、②政策決定者や政策中枢に対して情報を報告する制度が確立、③海外での情報収集や工作活動のためのアセット(偽名パスポートやリスク管理のための防衛要員、本国への情報伝達の安全なライン等を有すること)、④諸外国の対外情報機関がカウンターパート、対等な関係を認識、⑤民主主義国家ならば、組織の根拠法を持ち、議会による監視対象となる。 ・CTU-Jは、警察官僚を長とし、その下に外務省や警察、公安調査庁のテロ専門家を集める。組織は外務省に属するものの、実際の運用は内閣官房に設置された国際テロ情報集約室が担い、その責任者は内閣官房長官 ・NHKの取材によると、CTU-Jが例外的に外務省公電ではない独自の通信手段を有している可能性あり

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2023/01/04

内閣情報調査室(内調)、公安調査庁、外務省国際情報統括官組織、防衛省情報本部、警察庁外事情報部など、国家の政策決定や危機管理のための情報を扱う行政組織・機関であるインテリジェンス・コミュニティの戦後日本における変遷を辿り、①なぜ日本では戦後、インテリジェンス・コミュニティが拡大せ...

内閣情報調査室(内調)、公安調査庁、外務省国際情報統括官組織、防衛省情報本部、警察庁外事情報部など、国家の政策決定や危機管理のための情報を扱う行政組織・機関であるインテリジェンス・コミュニティの戦後日本における変遷を辿り、①なぜ日本では戦後、インテリジェンス・コミュニティが拡大せず、他国並みに発展しなかったのか、②果たして戦前の極端な縦割りの情報運用がそのまま受け継がれたのか、もしくはそれが改善されたのかを考察。 戦後日本のインテリジェンス・コミュニティの歴史については知らないことが多く、勉強になった。縦割りでそれぞれ権限も弱かった状態から、内閣情報調査室を中心に各機関の情報の統合・共有が進み、政策決定や危機管理に資するというインテリジェンス本来の役割が果たせるようになってきた流れを理解することができた。 戦後日本のスパイ事案や情報漏洩事件などの事例も豊富に紹介されており、興味深かった。日本はスパイ天国だとの言説には触れたことはあったが、1964年の東京五輪の選手団や役員として大量の工作員が入ってきていたということなど、実際にこんなにも事案が発生していたのかと吃驚した。

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2022/10/01

【本書の問いは主に二つの点にある。①なぜ日本では戦後、インテリジェンス・コミュニティが拡大せず、他国並みに発展しなかったのか、②果たして戦前の極端な縦割りの情報運用がそのまま受け継がれたのか、もしくはそれが改善されたのか、というものだ】(文中より引用) 戦後日本のインテリジェン...

【本書の問いは主に二つの点にある。①なぜ日本では戦後、インテリジェンス・コミュニティが拡大せず、他国並みに発展しなかったのか、②果たして戦前の極端な縦割りの情報運用がそのまま受け継がれたのか、もしくはそれが改善されたのか、というものだ】(文中より引用) 戦後日本のインテリジェンス・コミュニティや組織の変遷を、公開情報を基に丹念に追った一冊。日本人の手による戦後日本のインテリジェンス通史として、現時点で読める中ではもっとも客観的かつまとまった内容に仕上がっていると思いました。著者は、日本大学危機管理学部で教授を務める小谷賢。 やっぱり公開情報をつなげていくだけでも結構な骨格は明らかになるもんだなと☆5つ

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2022/09/23

戦後日本の縦割りICの姿を描く。 G2の支援を受けた旧日本軍諜報機関は軍復活を悟られ失敗。吉田茂/CIAの庇護下で外事公安警察と公安調査庁が対共産党/治安維持機関として分立する。 緒方竹虎/村井順により内閣調査室が作られるが、外務省の横槍や不祥事で分立したままICは船出を迎え...

戦後日本の縦割りICの姿を描く。 G2の支援を受けた旧日本軍諜報機関は軍復活を悟られ失敗。吉田茂/CIAの庇護下で外事公安警察と公安調査庁が対共産党/治安維持機関として分立する。 緒方竹虎/村井順により内閣調査室が作られるが、外務省の横槍や不祥事で分立したままICは船出を迎える。その中心は警察だった。自衛隊も別班/別室を作り、内調指揮下で電波情報収集にあたるが、IC各部門はバラバラに対応しており、しかもそれぞれでソ連に情報が流出しており杜撰な有様だった。それでも警察の出向者中心に何とかまとまりがあった。秘密保護法制は整備されず、情報は「回らず、上がらず、漏れる」 公調→破防法対象機関の監視 警察→中心。治安維持(左右翼/中ソ北) 外務省→海外情報の入手 内調→情報集約(警察の下) 自衛隊→軍事情報、電波傍受(内調の下) 冷戦後、公調は政治家の支援を受けられず対外進出を図るが、厳しい状態となった。テロ対策や北朝鮮の脅威が課題となる中、外務省はIAS、自衛隊は情報本部(後藤田正晴)、内閣は衛星情報センター(野中広務)、中央情報機構改革(町村信孝)を通じて組織改革や情報共有策がなされた。その本丸は秘密保護法制であり、特定秘密保護法や国際テロ情報収集ユニット(安倍晋三、北村滋)で結実した。さらに国家安全保障会議と事務局の整備で政策と情報の分離も実践。首相ブリーフィングを行う内閣情報官の下ICが再編された。 今後の課題として筆者はサイバー情報(対中)、公開偽情報対策(対露)、経済安全保障、ファイブアイズ加盟のための法整備、民主的統制を挙げる。 インテリジェンスの入門書は読んでいたので理論と実践の関わりが感じられてよかった。教科書通りのIC改革が行われていた。今後は、より強力な法整備による組織強化が必要だろうが、それには民主的統制も含め国民の広範な賛意が必要だろう。一般的なインテリジェンスのイメージを払拭することが不可欠だと感じる。また、今の対中インテリジェンスはどうなっているのか気になった。多分機密事項なので教えてくれないだろうが、台湾有事が近づいている今、民間の情報漏洩を含めた議論がないのは気になった。

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2022/09/22

戦後の日本の諜報史である。USAや中国に関しては全くふれておらず、ソ連にやけに詳しい。しかしこの手の本が今まで新書で書かれることがなかったので基本書となるであろう。

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2022/09/11

焼け野原から縦割りの復興、緒方竹虎の野望と死去。 冷戦中の米国の下請けとしての個別の発展。 それらを全て塗り替えて、諸外国並みにインテリジェンスコミュニティを引き揚げた安倍晋三(第二次政権) 政治的には、安倍晋三一人でインテリジェンスコミュニティを適正化したようなもんだ。これ...

焼け野原から縦割りの復興、緒方竹虎の野望と死去。 冷戦中の米国の下請けとしての個別の発展。 それらを全て塗り替えて、諸外国並みにインテリジェンスコミュニティを引き揚げた安倍晋三(第二次政権) 政治的には、安倍晋三一人でインテリジェンスコミュニティを適正化したようなもんだ。これだけで国葬に値する国家への貢献。 つうか、居なくなるのが早すぎだよ・・・ しかし、国際テロ情報収集ユニット(CTU-J)が戦後日本発の対外情報機関とは思わなかった。過小評価してた。

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2022/09/01

読む世代によって感想は異なると思う。 冷戦前に日本で起きていた事案。 冷戦後に起きていても記憶に残ってない事案。 国際関係で色々と知らない事案があったことを痛感。 そして秘密保護の必要性も理解できた。 開示されないこと、開示しない理由に納得できないこと。 理解できるような説明が...

読む世代によって感想は異なると思う。 冷戦前に日本で起きていた事案。 冷戦後に起きていても記憶に残ってない事案。 国際関係で色々と知らない事案があったことを痛感。 そして秘密保護の必要性も理解できた。 開示されないこと、開示しない理由に納得できないこと。 理解できるような説明ができていたなら漏洩なのかもしれない。 インテリジェンスコミュニティについて本当に考える機会になった。 ※評価はすべて3にしています

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2022/08/05

占領期の旧軍の復活構想から、冷戦期の警察を軸にした再建、現代のNSC創設まで。「国家の知性」が胎動する、戦後75年の秘史。

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