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われら闇より天を見る の商品レビュー

4.2

206件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2022/09/09

超★5 テーマは『愛』 今年の海外ミステリー上位に間違いなく入る、超推し! #われら闇より天を見る スゴイ本を読んでしまった… 重厚かつ複雑な人間ドラマ。そして個性豊かで、人間味と気丈な精神をもつ愛しむべき登場人物たち。もう最高です! ■レビュー かつての凄惨な事件から30年...

超★5 テーマは『愛』 今年の海外ミステリー上位に間違いなく入る、超推し! #われら闇より天を見る スゴイ本を読んでしまった… 重厚かつ複雑な人間ドラマ。そして個性豊かで、人間味と気丈な精神をもつ愛しむべき登場人物たち。もう最高です! ■レビュー かつての凄惨な事件から30年、さらなる不幸の渦に巻き込まれる彼ら。まず物語としての規模が大きすぎて、まるで海外ドラマをフルシーズンを見たかのようです。 ミステリーとしての真相も超強烈で、読んだ読者は『愛』 を知ることができます。 そして原題の "We begin at the end"の意味を知った時、明日からまた仕事に勉強に頑張ろうと思わせてくれる作品です。 特に本書の抜群な点は、登場人物の人間描写が超イイんですよ。 自分の娘にしたいような素敵な子が登場しちゃいましたよ、主人公のお姉ちゃん。 何度も何度も心の扉をノックしても、不幸にまみれた人生しか知らない彼女は決して扉を開いてくれない。 その名の通り無法者だった彼女が、少しずつ『愛』という縁がめぐってきた時、心の扉が少しずつ開いてくる。 しかし神様は残酷、さらなる試練を彼女に与える。 胸を張って自分の未来を歩んでほしい。強く強く生きてほしい。あーもうガンバレ! おとうとくんも可愛すぎるでしょ。 純粋で素直で力いっぱい甘えてくる、こんな子を守るためなら、私はどんなことでもしそう。 そして刑事の彼ですよ。 30年間も背負い続けてしまった、バカがつくほど真面目で未練の塊のアホ。 しかし誰よりも強い意志をもっている、バチクソカッコイイ男なんです。 一人のためにここまで出来たら、俺の人生には意味があったと胸をはって言えると思います。 他にもおじいさん、弁護士の彼女、ボーイフレンドの彼など、恵愛あふれる人でいっぱいな本書。愛情の切り取り方がめっちゃ上手で、全編通してツライ話にもかかわらず、優しい気持ちに包まれました。 ちょい長いけど1週間もあれば読めます。 超絶いいお話なので、死ぬまでには絶対読め! ■推しポイント おじいさんのセリフ「誇りに思っているぞ」 私も親をやっていますが、こんなセリフを子供に言えるか自信がありません。 これを言えるということは、誰よりも子供を信じてあげて、愛しているのはもちろん、知っていなければなりません。 何を思い、何に迷い、何と戦い、何を楽しんで、何を悩んで、何が好きで、何が嫌いか。皆さんは自らの子供のことを、ちゃんと知っていると言えるでしょうか。 そして時を経て、お姉ちゃんがおじいさんに投げかけたセリフですよ(※436ページ 最後の一行。知りたい人は読んでね) もうこれだけで3杯はメシが食えるし、2,530円を払った価値があります。 最高に素敵なお話、こんな本に出会えて嬉しいです。 純粋にそう思える本でした。

Posted byブクログ

2022/09/04

これぞ海外ミステリーという醍醐味を存分に味わえる傑作。30年前に起きた1人の少女の死をきっかけとして、複雑にもつれた人間関係が描かれていく。 ケープ・ヘイヴンという小さな町を舞台に、その町の警察署長と、酒と薬に溺れる母親と幼い弟の面倒を見る13歳の少女が主人公だ。自らを“無法者”...

これぞ海外ミステリーという醍醐味を存分に味わえる傑作。30年前に起きた1人の少女の死をきっかけとして、複雑にもつれた人間関係が描かれていく。 ケープ・ヘイヴンという小さな町を舞台に、その町の警察署長と、酒と薬に溺れる母親と幼い弟の面倒を見る13歳の少女が主人公だ。自らを“無法者”と呼び、2人を守るためなら暴力をも辞さない少女が素晴らしい。 物語は直球のように見えるが、結末までに二転三転どころではない展開をする。その複雑な構成と綿密に張られた伏線に舌を巻くと共に、人のもつ多面性に感じ入った。

Posted byブクログ

2022/09/01

 これは凄い。おそらく今年、一押しの作品である。  ミステリーではあるけれど、それ以上に重厚な人間ドラマだ。二人の主人公が凄い。どちらも個性がしっかりとしている。少女ダッチェス13歳。ウォーク警察署長、難病との闘病中&勤務中。どちらも惑星のように独立し、人を惹きつける個性と魅力...

 これは凄い。おそらく今年、一押しの作品である。  ミステリーではあるけれど、それ以上に重厚な人間ドラマだ。二人の主人公が凄い。どちらも個性がしっかりとしている。少女ダッチェス13歳。ウォーク警察署長、難病との闘病中&勤務中。どちらも惑星のように独立し、人を惹きつける個性と魅力を持っている。  物語は、30年前のショッキングなシーンで幕を開ける。若きウォークがシシーを発見する。陰惨な姿で路傍に転がるシシーの死体を。このプロローグのシーンでは未だ後のヒロイン少女ダッチェは生まれてもいないが、発見された少女シシーは、ダッチェの母スターの妹である。  そして30年後。現在。波に侵食され、崖上の家が崩れ落ちてゆく海岸に見物客が群れるシーンで物語は再スタートを切る。悲鳴の中で家の土台が海に呑まれてゆく。土地の名はケープ・ヘイヴン。ここに物語は展開する。飽きれるほど骨太かつ複雑な物語が。  ダッチェの母スター。捨てばちで、薬中で、売春婦のように自堕落でありながら、美貌に恵まれたダッチェの母親。そして彼女の娘ダッチェ13歳。その弟ロビン5歳。スターが子供たちを顧みないゆえ、ダッチェは、まるでロビンの母親のように家族としての優しさを引き受ける。同時に外敵への厳しさも引き受ける。  ダッチェは自分を<無法者>と呼ぶ。あたしは危険な無法者なんだよ、と。その通り、彼女のタフさには目を見張るものがある。言動のすべてが無法者みたいだ。そのようでしか生きるすべはない、とでも言うように。<無法者>という鎧しか彼女を守す術はない、とでも言うように。  一方、臨時職員二人しかいない田舎警察の署長ウォーク。体を蝕まれつつ、過去と現在の村のすべてを把握すべく務め、あらゆる人に誠実に全力で対処する。善なる魂の持ち主ウォーク。彼は平凡な存在であれ、あまりに魅力的だ。弱く、力のない人間であるからこそ、魂の方は一筋縄でいかないくらい一途でタフだ。  ダッチェとウォーク。つまり二人の境遇も年齢も異なる主人公が、どちらも精神的にとてもタフだという魅力と、逆境とも言うべき苦しみを備える主人公を本書で貫いてゆく。  物語を通して、嫌と言うほどの紆余曲折・社会の矛盾・許せない悪業・罪深い魂などが連綿と登場するのだが、それらはダッチェとウォークの眼を通して読者は感じ、知らされる。堆積する矛盾や、悲しみを掻き抱きながら彼らの物語は疾走する。  一方、この物語の背景としての自然の美しさは、かけがえのないものである。ケープ・ヘイヴンの海。モンタナの大空。美しくも厳しい自然描写は、本書がミステリーであることや、人間の悪い側面も抉り出そうとしてゆく作品であることを、ともすれば忘れさせてしまう。  第一部のケープ・ヘイヴンで殺人が勃発する。30年ぶりに出所したヴィンセントの沈黙。彼を取り巻く疑惑と懸念の嵐。  無法者少女ダッチェの物語は、第二部で、舞台を大空と大地の世界モンタナへと移す。祖父ハルの登場。ハルと孫娘(無法者)の縮められない距離感が、何とも心に痛いが、ロビンの幼い純真さが温度をもたらす。美しいモンタナの自然も。牧場の牛馬たちも。人々も。  雄大なスケールの物語は、終盤になりミステリー作品としての集中度を高め、人間関係図は徐々に明らかとなってゆく。犯人は炙り出され、罪には罰が与えられてゆく。疾走感。複雑な、いくつもの動機が絡み合ったカラクリの中で、無法者ダッチェも、警察署長ウォークも、互いに重要な役割を果たす。  本書は、全体を読後に俯瞰すると、ミステリーというよりもむしろ壮大な人間ドラマとして集約される肉厚な大作である。何よりも人間と人間との葛藤を様々な立場から描き切り、そして文化や文明、貧富と時代、土地とそこに生きる人間模様と相互軋轢。そうした事象を、悉く浮き彫りにさせてゆくドラマチックな力作なのである。  二人の光る個性が、スケールの大きな物語と、その世界を、小気味よいほどに切り裂いてゆく終盤は圧巻だ。苦しみあがきつつも彼らのたくましさと優しさとが、ただひたすらに愛おしい。泣ける傑作である。

Posted byブクログ

2022/08/29

数十年前の事件が熾火のように残る町。 事件の加害者として服役していた男の出所を機にまた運命が蠢き出す。 これは鮮烈。忘れられない。

Posted byブクログ

2022/11/09

視点が錯綜することと時系列も大きく変動するのでとっつきにくい。 ダッジェスは大人に対して異常なほど反抗的だがその理由に説得力が乏しい等、欠点を上げればいくつもあるが、言葉にできない閉塞感のような今の時代の空気を表わしたミステリだと思う。

Posted byブクログ

2022/08/24

自分のことを無法者と呼ぶ少女ダッチェスとその弟ロビン。30年前の事件を引きずり続ける警察署長のウォーク。その事件はダッチェスの叔母が亡くなり犯人はウォークの親友。そこから新たな事件が始まりダッチェスが翻弄されていく。事件とその奥にある関係者たちのつながりや思惑。その大人たちに振り...

自分のことを無法者と呼ぶ少女ダッチェスとその弟ロビン。30年前の事件を引きずり続ける警察署長のウォーク。その事件はダッチェスの叔母が亡くなり犯人はウォークの親友。そこから新たな事件が始まりダッチェスが翻弄されていく。事件とその奥にある関係者たちのつながりや思惑。その大人たちに振り回されながら自らの運命に抗おうとするダッチェス。無法者と言うだけあって強気ではあるけれどロビンへの思いとなんとかしようとする真っ直ぐで無鉄砲なところがとてもいい。でもそれがどんどん自分を追い込んでいく。終盤のダッチェスのとる行動とその時の感情は苦しくなるほど。希望が、救いがと願わずにはいられないような場面が続く。発売前からtwitterなどですごく話題になっていたけれどそのハードルを軽く超えてくる傑作だと思う。

Posted byブクログ