遠い指先が触れて の商品レビュー
児童養護施設で育った2人が再会し、失った記憶を取り戻そうとする。 視点人物が移り変わり、主語が変わる。それは2人の人が一つに溶け込んでいくような、2人の関係性が密になっていくのを表しているようにも感じる。 そして、2人が兄弟であったことが過去の記憶を知ることにより判明する。 そこ...
児童養護施設で育った2人が再会し、失った記憶を取り戻そうとする。 視点人物が移り変わり、主語が変わる。それは2人の人が一つに溶け込んでいくような、2人の関係性が密になっていくのを表しているようにも感じる。 そして、2人が兄弟であったことが過去の記憶を知ることにより判明する。 そこまでは2人が1人であったような文体から、関係性はより強固な血縁の繋がりがあるのだとわかったのにも関わらず、2人が離れていく様が文体からも伝わる。 そして、最後の場面。 お世話になっていた児童養護施設長の言葉。 「あんまり覚えてねえんだけどなあ、お前さんがそう言ってくれるなら嬉しいこっだな」 記憶にこだわる登場人物とは、一線を画した考え方の持ち主。でもこの作品で伝えたいのはこれが全てなのかもしれない。 今までの島口作品とは違う万人ウケする読みやすい一作だと感じる。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
久しぶりにこんなに良い本が読めた、凄かった 素敵な言い回し(何回読んでも理解できない表現もあったけど)がたくさんあって全体的にお洒落だったし、 一文のうちに語り手が代わるのも、読んでいて心地よかった。 記憶を見てからの鬱展開に自分もかなりショック受けてしまった、、 一志のそれからを、ふとした時に度々考えてしまうと思う 心に残る作品だった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
⚫︎感想 ストーリーでは二人の記憶が一つに収束していき、描き方では「僕」と「私」の視点が混ざり合い一つに見えるようにも仕掛けてあって、文章でこういう試みができるんだなぁと思った。 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 「一緒に、失くした記憶を探しに行こう」。彼女の言葉で、僕らの旅は始まった。 過去を奪うものたちに抗い、ままならない現在を越えていく、〈愛と記憶〉をめぐる冒険。 デビュー作『鳥がぼくらは祈り、』、芥川賞候補作『オン・ザ・プラネット』を超える、鮮烈な飛躍作! 「ねえ、覚えてる?」--両親を知らずに育ち、就職した僕〈一志〉のもとに、見知らぬ女性が訪れる。 〈杏〉と名乗る彼女は忘れていた過去を呼び起こし、僕の凡庸で退屈な日常が変化していく。 不可視のシステムに抵抗し、時間の境界を越える恋人たちの行方は――?
Posted by
遠い指先が触れてというタイトルがとても難解な気がしてましたが、冒頭の電車内での一志の世界の認知の仕方に思いを馳せていく中で、 「彼の毛髪に触れた感覚はなかったが、左手の、ないはずの指先に、触れた感覚はある」「いつからか事実になり、そして誰がいったかの記憶は欠落していた」 特にこの...
遠い指先が触れてというタイトルがとても難解な気がしてましたが、冒頭の電車内での一志の世界の認知の仕方に思いを馳せていく中で、 「彼の毛髪に触れた感覚はなかったが、左手の、ないはずの指先に、触れた感覚はある」「いつからか事実になり、そして誰がいったかの記憶は欠落していた」 特にこの二文は我々読者にも想像がし易いしく何かがあったが無いように感じたり、自己認知から別の人から言われた事実が呑み込めなてないことは日常生活でもたまに起こり、あるべきであるとう事象において変更を余儀なくされるとこのように心と体が乖離するような経験はよくあります。 一志のように身体の損傷、怪我や恋人との急な別れ、職場でも移動などect.. その中でもふわふわ生活していた一志に杏という女性との接触により自分の中で欠落していた記憶に対して動き出していくというのがストーリーです。 一志は受け身で自身に記憶が欠落しているかもしれないという以前から他人軸のような発言が多く、反対に杏は自分軸で好奇心から大山へたどり着く道を探し行動する果敢さがストリート通して一貫しているから最後の結末へたどり着いたのだともいます。 私自身自己認知と他者の評価が一致しなく生きているのだけどふわふわしてるように感じることは多々あります、それでも世界は回りますしきっと今自分が見えている世界で創造を膨らます以上の世界があると思います。 両親に守られていた幼少期のように、自分の器以上の事を理解しようとして杏のように再度記憶を消してある種壊れてしまうようなら、一志のようによくわからない事はそっといていくというこは一つの選択肢なのかもしません 指は最初からなかったですが遠くの何かに触れるという表現が考え深く読了後もふわふわした感じがした好きな小説でした。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
人称が入れ替わる独特の文体なので、 なんとなく、彼と彼女が溶け合うような感覚でふわふわと読んだ。 小さな頃の記憶って、この物語のような外部要因がなくても 親や親戚から聞いた(聞かされた)話のツギハギだったりするので、 記憶の不思議さを感じる。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
主人公の元へ、児童養護施設で一緒だった「杏」と名乗る女性が訪ねてくる。 杏が語る2人が幼少時にされた事とは─。 タイトルと装丁で読んだんですが、すごく内容にマッチしてると思う。 意識があっちへ行きこっちへ行きする、「僕」と「私」が混じりあっていく、のを文章に起こしたような文体。 (文学的なんだけど、この本の後は理路整然としたミステリーを読みたくなった) 「失った記憶も私の人生の一部だから」~ってテレビドラマのテンプレみたいな台詞を読みながら、児童養護施設ってことは十中八九ろくでもない児童虐待の記憶では…?と思ってたけど。知らない方が幸せなこともあるよね。 芥川賞系統だな~って、後味。
Posted by
ここで展開される視点の切り替え方は斬新だ。 章ごとに語り手が切り替わるのはよくある手法だけど、この作品では同一の文章内でも切り替わる。 これにより自我と自我を認識する自分、自分の自我に気づいているであろう相手の意識が溶け合っていく。 新しい才能だ。
Posted by
文字のボリュームと文章の雰囲気から「わりとサクッと読めるかな。」という最初の印象は早々に外れる。 僕の視点と彼女の視点が1ページの中で何度も入れ替わり、じっくりたどるようにしか読み進められない。 二人の関係性を表しているのだろう。 次回の芥川賞候補になりそうな作品。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
混じり合いの文章は意外に、さほど違和感なく良かった。 展開的には何となく読めるので、早く、早くと読み進めたくなる。 だからだろうか、終わり方が消化不良だった。 純文学はそういうものなのかもしれない。 けれど個人的には、何らかの希望が見えたり 一応のおさまりがついている小説が好きだ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
前作のオンザプラネットが記憶について描いた作品だとすれば、今作は記憶とそれをどう認識するか、みたいなところはまで話が及んでいるような気がした。 普段の思考をそのまま書いたような曖昧さは読みづらさがあるものの、引っ掛かりのある作者にしか書けないようなもの。 島口さんの描く小説はなんか残るんだよな。 一志と杏の視点がいつの間にか入れ替わってるとこは面白い書き方だなって思った。セックスのシーンに関してはその境界が曖昧になって、直接的な言葉は使ってないのに、溶け合い、交わってるのがわかった。 彼にしか書けない書き方だなって思う
Posted by
- 1
- 2