遠い指先が触れて の商品レビュー
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僕と私の輪郭が交わりほどけて溶け合う。 触れているのは僕なのか私なのか。私の知覚が僕に流れ込み、僕の触覚が私をとらえる。 あるはずのない指先のその先にあるのは誰の感覚なのか。 同じ施設で過ごしたらしい僕と私。 覚えていない幼いころのこと。重ならない二人の記憶。 記憶…そう、自分という存在を形作っていくその源である「記憶」。 その記憶の揺らぎ。 人の記憶というものの存在。あるかなきか。本当にあったことと記憶の祖語。 薄れていく記憶のカケラ。失われた記憶の行き先。形のないものの輪郭をなぞっていく。 僕の、あるいは私のその輪郭。 そこにあるべき何か。それをたどる今はない指先。 島口大樹が紡ぐその縁取り。 圧倒的な描写で目の前に浮かぶ文字の景色。 目の前にあるのは文字の列。でも見えるのだ、そこに映像が。 今まで経験したことのないような浮遊感。足元が揺れる。私の一部もそこに溶け出す。この小説の中で他我のにじみに身体をゆだねる。こんな体験は初めてかもしれない。
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今作は自分には全く合わず。 視点の入れ替わりという、斬新な手法は私には忙しく理解に苦しんだ。 しかしながら、毎回新しいことにチャレンジしてくるところは素晴らしい。
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