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私の文学史 の商品レビュー

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17件のお客様レビュー

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2024/07/28
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熱狂からの離脱、という考えに 自覚がありすぎてショックを 受けつつ、 私自身も最近、一つの何かに受動的に没頭する ことへの虚しさや 無を感じていたので これだこれだこの言葉だ…と胸に刻んだ 終始、町田さんの声で脳内再生された。

Posted byブクログ

2024/07/12
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 創作に向かう姿勢が大いに語られていてとても面白い。小説とは何か、文学とは何かを追求し続けている。先日読み終えた保坂和志の『書きあぐねている人のための小説入門』と同じだ。行きつくところは違っていても、同じ姿勢で追求し続けている。  去年見た『ザ・ホエール』という映画の主人公が大学でエッセイの書き方を教えていて、繰り返し語られるエッセイで重要なことが、町田さんと全く同じで驚く。  表現に自覚的な人は考えていることが似てくるのだろうか。たまたま最近読んだり見たりしたものに共通点があっただけだろうか。  自分は漫画家なので、漫画について「はたしてそれが漫画なのか」と追及することがあるかと言えば全然ない。だからこの体たらくなのか。素晴らしい作家の皆さんがそうなので、もっと気にしたほうがよさそうだ。

Posted byブクログ

2024/03/28

なぜ町田康が好きなのか。作品に対して自分がぼんやり感じてはいたことと町田康自身の言葉で説明されていたことに乖離がなく嬉しかった。なぜだか。 まず文体。 最近は文体の時代ではないのかな、というのには納得というか共感。主義主張、もしくは物語の価値が強い気がする。個人的に、物語を読むの...

なぜ町田康が好きなのか。作品に対して自分がぼんやり感じてはいたことと町田康自身の言葉で説明されていたことに乖離がなく嬉しかった。なぜだか。 まず文体。 最近は文体の時代ではないのかな、というのには納得というか共感。主義主張、もしくは物語の価値が強い気がする。個人的に、物語を読むのは面白いのだが感動は薄いのである。物語や主義は、私は消費してしまうみたいだ。 言葉を疑うということと、オリジナリティに拘泥しないこと。本当にこの言い回しは真実なのか?と追求するだけでなく、自分らしさにこだわるほうにも寄らない。どこにも身を置かない感じが、町田の文体なんじゃないか。 また笑いについて。 「この世の真実こそがおもしろいことなんです」 ーーよくわかる。それが“interesting ”なときもあるし、“笑ろてまう”なときもある。おもしろいことを虐げているとおもしろくない、というのもわかる。 ところで井伏鱒二読みたくなった。一幅の絵のようなエピソードを「なんかわからんけどいいなぁ」と感じることは、日常でもよくある。 純文学が好きなのだが、たぶんこのせい。 それと 昔のものが好きだというシンプルな話。 自分も子どもの頃から時代劇や落語が好きだったため、もとから町田の世界観に惹かれる素養があったんだろね。 最後に翻訳の話。 要するに言葉の選び方の話であるが。 「決定された一個しかない言葉ってないんですね。その人がそれをどういうふうに使っているかというのは、いつでも考えないと」 これは人と会話しているときにすごく感じる。同じ日本語を使っていても、実は相手と自分は違う意味で用いているなという感覚。そして自分の言語が自分にしか通用していない恐怖というか。 「共通で、絶対に疑いようのない言葉だけ使って、誰もそれを疑わないというものにしていくと、結局何も言うてないのと一緒だし、何も聞いていないのと一緒やな」 そのとおりと思う。今、それでケンカしている人らをよく見る。お互い言っている意味が理解できてない状態で戦っている。 そして「人間はたまらなく孤独」で、 「自分しかわからん魂」に形を与えたい。そのために言葉で塗り固めていく。 文学の最終的な目的… と、書いているとキリがない。 ただなんか、自分の考えと町田康の言ってることに乖離がなく嬉しかった、とか感じている自分が恥ずかしいやつだなと最後に。 自意識。

Posted byブクログ

2024/01/24
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 ギケイキシリーズを読んで新たに盛り上がってきた個人的な町田康に対する熱。著者の背景を知れそうな1冊があったので読んでみた。自身を振り返りながら、手の内こんだけ明かすの?と読者が心配になるくらいに創作の秘話を語っており、めちゃくちゃ興味深かった。ブログ等で駄文を綴る私のような人間、ひいては文字で何か伝える人全員に刺さる内容だと思う。  小説家の中ではかなりマルチな仕事が特徴的であり、そのスタイルに至るまでの流れを幼少期に読んだ本から影響を受けた作家など様々な要素を踏まえて語っている。対談やインタビュー形式ではないことで自分語りをせざるを得ないがゆえの情報量がふんだんに詰まっていた。また講義を書籍化しているのでかなり読みやすいし、著者の書き言葉ではない語り口を味わえてよかった。(本著内にもあるとおり話し言葉を文学へ積極的に取り込んだ1人ではあるが、それとはまた別の「talk」という意味で)  文章を書くことに対する著者の態度、考えが個人的には一番興味深かった。どちらかといえば破天荒な小説が多いので直感的かと思いきや想像以上に理詰めで何がオモシロいのか?に関する考えが解像度高く明らかにされている。それは長いキャリアを振り返って見出した解かもしれないが、それにせよこれだけ自己分析して語ることのできる作家はどれだけいるだろう。小説においては文体論がめちゃくちゃオモシロかった。音楽のミキシングをアナロジーとして文を書くときにどんな要素をどれだけ入れ込むかが大事だという話はかなり勉強になった。以下引用。 *時折、ある一つのトーンで埋め尽くされて、本人は「カッコいいな」と思ってんやろうなという文章ってありますね。「恥ずっ!」みたいな。それは仕事でもあると思うんですけど、カッコよさだけで塗り固めていると、やっぱり、響きがない。*  随筆の書き方の話も納得することばかりで著者曰く、おもしろいことは「本当のこと」だと著者は主張していた。何気なく文章を書いていると、自意識に絡め取られたり、社会などを想定してどうしても少なからず建前の要素が入り込んでしまう。そこに引っ張られずにシンプルに本当に感じた気持ちを書くのが一番オモシロいと。著者は西村賢太をそこで引用しており、まさに!と思ったしベクトルは別だけども植本一子さんの日記がオモシロいのも同じ理由だろうなと感じた。  作品語りもめちゃくちゃオモシロくて特に井伏鱒二の『掛持ち』という小説の紹介内容は完全な門外漢でも思わず読みたくなる内容だった。また終盤の古典論も興味深く流行りものに対する熱狂の嘘くささから身を置くために古典があるという話や、そうやって今の時代と距離を取ることで人間の本質を見つめることができる古典の良さなど、まさしくギケイキシリーズを読んで感じたことが言語化されていた。  そしてラストにある「魂の形を自らの言葉で塗る」という章がマジでとんでもない。「文学の言葉の中で生きたい」というテーマで自分の魂と言葉の関係性を語っているんだけど、全文引用したくなるレベルでかっこよかった。大衆、社会の影響を受けて思考停止で使ってしまう言語をオートマチック言語と名付け、それに対して文学で抗っていく姿勢の表明が本当に痺れた。一番好きなところだけ引用。まだまだ読めていない作品だらけなので、ゆっくり楽しんでいきたい。 *自分しかわからん魂を持っていることが、人間はたまらなく寂しいんです、孤独なんです。だから、この、自分しかわからん魂を一人一人が持っているということに対して形を与えたいんです。(中略)魂って形がないですから、言葉によって塗り固められるから、言葉がしょうもなかったら、魂がしょうもないということとイコールになってまうんです、文学化したときに。その魂に形を与えて、外側に出して、自分も他人も見るというふうにした場合、それが、しょうもない言葉で、一色の自動的な言葉で塗られたというのは、それはしょうもない話なんです。*

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2024/09/06

北杜夫作品を笑いながら読んでいたら「そんなの読んだら頭おかしくなる」と親に心配された。というエピソードを取り上げられていましたが、私は町田先生の作品で同じ経験をした人間です。

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2023/11/07

小学生の時に早く歴史の授業が始まらないかと低学年の頃から考えていたの同感。 そして特にこの中で気になったのは、北杜夫さんの本に関する事が書いてあった辺り。 影響されて、思わず『船乗りクプクプの冒険』を電子に入れちゃったぐらいだ。

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2023/08/15
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 12回に亘って語られた内容を文章化したものです。   「オートマチックでない言葉遣い」で「脳のバリア」を突破することが重要とのことでした。  あとは、クスクス笑える語り口はさすがだなあと。本書でもよく笑いましたw    それにしても表紙の町蔵さんかっけえ。アラーキー撮です。

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2023/07/13

表現者としての所信表明。講義で喋ったことを元にして文字に起こした一冊なので、全編を通して一人語り。『夜を走る』は買っちゃった。

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2023/08/04

作家の文学観が俯瞰できてたいへん興味深い。 が。 読みにくい、というかわかりにくい。けばとりをちょこちょこっといじった程度に思える。 本書は講義から起こしたものなので、町蔵さんの語り口を生かす、という編集方針はわかるのだが、何を言っているのうまく伝わっていない箇所が多く、非常にも...

作家の文学観が俯瞰できてたいへん興味深い。 が。 読みにくい、というかわかりにくい。けばとりをちょこちょこっといじった程度に思える。 本書は講義から起こしたものなので、町蔵さんの語り口を生かす、という編集方針はわかるのだが、何を言っているのうまく伝わっていない箇所が多く、非常にもったいない。 ここは語り口を生かしつつも説明的な文章を文語体で敷衍したほうが読者にはよく伝わるのではないかしらん。 話を聞いていて面白かったのに文に起こすとそうでもない、ということはままあることだけど、今回はもそっと手を加えたほうがよかったと思う。 などと言いつつ、本書で取り上げられたもののうちで家にある井伏鱒二と筒井康隆を読み直そうかと思う自分がここにいるのであります。 「作家の文学論」を読む楽しみは、文学論で作家が触れた作品へと流れていくことで、読んだことのない作品も「この人が推してるなら読んでみよう」など自分の読書世界が広がっていく。なので自分の興味外にある北杜夫『遥かな国 遠い国』や、『宇治拾遺物語』なんぞもトライしてみたい。

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2023/02/17

気になる人の自分語り、そしてこの表紙とくれば図書館選択肢なしで即購入しました。本当のことばだからおもしろい。それが活字になると本当と言っていることばだからもっとおもしろい。言ってみればわからないけどわかるおもしろさかなぁ。こんな講座知ってたらぜひ生で12回受講したかった。

Posted byブクログ