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約束された移動 の商品レビュー

3.7

26件のお客様レビュー

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2023/07/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

いつもの小川さんらしく、登場人物たちには名前がなくて殊更注目されるような人物ではないんだろうなと思っても、登場人物たちの仕事はぴったりとその世界に収まっている。 代わりがおらず、万が一他の人がその仕事をすればそれは取り返しがつかないほど全く違うかたちにその世界を変えてしまうんだろうなというくらいに。それに、変わってしまった世界になると前のことなどすぐ忘れられてしまうだろう。 そんな些細な人の一瞬を切り取る小川さんの目線は優しい。薄っすらと漂う狂気や、抑え込まれないグロテスクも、この尊さはなくならない。さすが小川さんだ。 普段、自分のしている仕事は代わりがきくと思っていて、仕事のためにはそれが良いんだろうけど(不測の事態があっても続く、とかで)、時折こんな仕事が羨ましくなります。登場人物たちの働き方にはプライドがあるし。 「ダイアナとバーバラ」「黒子羊はどこへ」「巨人の接待」が特に好きでした。

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2023/05/03

六篇のお話から成る短編集。読み終わった後、自分の感情がうまく言葉にできなかったのですが、改めて思い返すと優しさと奇怪さとグロテスクな要素が絡み合っているお話ばかりだったからだと気付きました。 それでいて、なぜか静謐な雰囲気が保たれているのが不思議です。 それぞれのお話の主人公の...

六篇のお話から成る短編集。読み終わった後、自分の感情がうまく言葉にできなかったのですが、改めて思い返すと優しさと奇怪さとグロテスクな要素が絡み合っているお話ばかりだったからだと気付きました。 それでいて、なぜか静謐な雰囲気が保たれているのが不思議です。 それぞれのお話の主人公の名前が出てこないのはダフネ・デュ・モーリエの『レベッカ』を思い出しました。

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2023/02/14

1番ゾクゾクしたのは『約束された移動』 泣いたのは『ダイアナとバーバラ』 1番早く読み切ったのは『寄生』 本をめくる時、その娘はたしかにそこにいるのに 自分とはもう全く別の世界にいるんだろう、 という彼女の感覚がお気に入り。

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2023/02/05

初期の小川作品に顕著な、静謐な物語世界の中にあるグロと悲哀が最近の他の作品よりも際立っていてよかった。

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2023/01/24

一目は奇怪だ。 全部思い込みで独りよがりなのでは、と思う。 けれど「一目」の向こう、事実の奥、真実と呼べるものをどれだけ知っているのかと自問するとき、それは各々の胸内にしか息づかないことを風を受け止めるように思い出す。 秘密、誇り、傷痕…… いろいろな名がつくかもしれないそれを...

一目は奇怪だ。 全部思い込みで独りよがりなのでは、と思う。 けれど「一目」の向こう、事実の奥、真実と呼べるものをどれだけ知っているのかと自問するとき、それは各々の胸内にしか息づかないことを風を受け止めるように思い出す。 秘密、誇り、傷痕…… いろいろな名がつくかもしれないそれを、本を開くときだけ、読み手もひそやかに共有している。 (藤本可織氏の解説も素敵です)

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2023/01/15

「約束された移動」「ダイアナとバーバラ」「元迷子係の黒目」「寄生」「黒子羊はどこへ」「巨人の接待」“移動する”物語、六篇。 ここに収められている作品に登場する老人たちの、穏やかな立ち居振る舞い、言葉づかい、仕事ぶり、そして、熱帯魚、子羊、小鳥、子供たちとのふれあい、そのどれもす...

「約束された移動」「ダイアナとバーバラ」「元迷子係の黒目」「寄生」「黒子羊はどこへ」「巨人の接待」“移動する”物語、六篇。 ここに収められている作品に登場する老人たちの、穏やかな立ち居振る舞い、言葉づかい、仕事ぶり、そして、熱帯魚、子羊、小鳥、子供たちとのふれあい、そのどれもすべてが美しい。 それらは、人目につかず、ひっそりとした佇まいなのだけれど、普通と違ってどこかずれてしまっている、その哀しさがまた美しいと思える。 一旦この物語に足を踏み入れてしまうと、読み終わるのがもったいないとさえ思ってしまう。 濃密で不思議な魅力のある、独特な世界。

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2022/12/29

ため息出る。。 「約束された移動」は、大きな人生のうねりだけではなく。 不特定多数のうちのたったひとり、 自分だけに差し出される手によって(しかしそれさえも錯覚なのだけど) あらゆる移動は約束され、人々は自分の還る場所に還ってゆける。 喪ったものを少しの間だけ愛でて、そっと閉...

ため息出る。。 「約束された移動」は、大きな人生のうねりだけではなく。 不特定多数のうちのたったひとり、 自分だけに差し出される手によって(しかしそれさえも錯覚なのだけど) あらゆる移動は約束され、人々は自分の還る場所に還ってゆける。 喪ったものを少しの間だけ愛でて、そっと閉じて、また還る。今は無くても、愛でていた事実について、あなたと私が証人になる。 『薬指の標本』でも思ったけどそんな描き方をしているかんじがする

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2022/12/01

穏やかで静かに進んでいるような雰囲気なのに、不気味さや不穏も存在している。 移動に関わる様々なプロフェッショナルたちの思考が新鮮で、深く考えされられます。

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2022/11/26

小説の中でだけ展開される優しい世界。 ファンタジーといえばそうなんだろうけど、読んでいるときはそう感じさせない。けれど本を閉じるとその感覚は失われる。ま、小説なんだから当然なんだけど、それにしても上手いよね。

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2022/11/14

ハリウッド俳優Bの泊まった部屋からは、決まって一冊の本が抜き取られていた。Bからの無言の合図を受け取る客室係・・・「約束された移動」。ダイアナ妃に魅了され、ダイアナ妃の服に真似た服を手作りし身にまとうバーバラと孫娘を描く・・・「ダイアナとバーバラ」。今日こそプロポーズをしようと出...

ハリウッド俳優Bの泊まった部屋からは、決まって一冊の本が抜き取られていた。Bからの無言の合図を受け取る客室係・・・「約束された移動」。ダイアナ妃に魅了され、ダイアナ妃の服に真似た服を手作りし身にまとうバーバラと孫娘を描く・・・「ダイアナとバーバラ」。今日こそプロポーズをしようと出掛けた先で、見知らぬ老女に右腕をつかまれ、占領されたまま移動する羽目になった僕・・・「寄生」など、“移動する"物語6篇、傑作短篇集。 先日小川洋子さんのエッセイが面白かったのと、装丁が美しくて手に取りました。小説は初めて。 すごい独特だなと思った。フィクションだとすぐに分かるファンタジーな世界観なのに、ぞっとするほどリアルな描写もあったりして、そのアンバランスさが魅力なのかな。ちょっと怖さもあって、私にはまだ早かったかも。分かったような分からないような宙ぶらりんで読み終えてしまった。筆者としてはそれでいいのかもしれないけど、どこがと説明できない何かが歯に挟まった気持ち悪さみたいなものが残っている。バーバラの話が一番ほっとする終わり方だった。

Posted byブクログ