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ウクライナ戦争は世界をどう変えたか「独裁者の論理」と試される「日本の論理」 の商品レビュー

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24件のお客様レビュー

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2022/11/21

【はじめに】 テレ東Bizの動画でウクライナ戦争に関する情報を積極的に発信をしていた豊島晋作。動画もほとんど見たと思うが、フェアな視点で安心して見ることができた。報道局の元モスクワ支局長を務めていてロシアの状況にも通じている同氏が、まだ終りの見えないこのタイミングで書籍にまとめた...

【はじめに】 テレ東Bizの動画でウクライナ戦争に関する情報を積極的に発信をしていた豊島晋作。動画もほとんど見たと思うが、フェアな視点で安心して見ることができた。報道局の元モスクワ支局長を務めていてロシアの状況にも通じている同氏が、まだ終りの見えないこのタイミングで書籍にまとめたものだ。 【概要】 本書の構成は以下の通り。 第一章 ”終末の時代”再び 第二章 ウクライナ戦争はなぜ起きたか 第三章 戦時下のウクライナから 第四章 ”ロシアと戦う国々”の論理 第五章 プーチン大統領暗殺は起きるか? 第六章 中国・習近平の「台湾侵攻」 第七章 試される「日本の論理」 第一章では現状の分析を行い、ロシアがなぜ戦闘初期において敗れてしまったのか、そしてこの先に核兵器の使用がありうるのかを分析している。ロシアは単純に兵站の問題や制空権を取れなかったという誤算、情報戦における劣位などが挙げられている。そして、ロシアの核兵器の使用の可能性を軽視するべきではないと警告する。もちろん期待も込めてその可能性は低いとしながらも核戦争が起こるシナリオはゼロではないとして、この章のタイトルを”終末の時代”再びとしている。 続く第二章は、歴史を振り返り、ロシアがこの戦争を起こすに至った論理を整理している。ウクライナとロシアの関係を考える上では複雑な歴史と、第二次世界大戦の独ソ戦の記憶を抜きで語ることはできない。ロシアは本質的に無秩序よりも強い独裁者を求めているのだという言葉もその背景を踏まえると悲しくかつ恐ろしい。 第三章はウクライナから見たこの戦争を取材の結果も踏まえて描写する。戦争による大気汚染がひどいというのは実際にその場にいる人でないとわからないことだ。 第四章はこの戦争をめぐる国際関係を論じている。NATOに関する分析が重きを占めており、NATO拡大の抑止の観点ではウクライナがその意を強くするであろうことに加えて、フィンランド、スウェーデンが加盟申請をしたことでプーチンの思惑が大きく外れてしまった。白眉とも言えるのが、アフリカ諸国の分析である。ケニアのキマニ大使による感動を覚えるようなスピーチとともに、多くの国がロシアを非難「しない」側に回ったという現実にも目を向ける。また、インドもロシア非難の決議で棄権に回ったことにより、世界人口の半分はロシアを非難していないということも指摘する。日本での報道はある程度は西側の論理に沿ったものであり、世界には他の見方も存在するのだということを忘れるべきではないのだ。 第五章はプーチン暗殺の可能性を論じている。ナチスドイツでもヒトラー暗殺の試みは行われたのだから、可能性はゼロではない。しかし、結論としてその可能性どころかプーチンを権力の座から引きずり下ろす勢力も見当たらないとしている。 第六章が、ウクライナ戦争が与える影響として日本の立場から最も注視しなければならない事項として著者が挙げる「台湾侵攻」である。中国は、ウクライナの状況を見て台湾侵攻に当てはめてシミュレートしていることだろう。間違いなく中国は、台湾侵攻の「意図」と「能力」を有している。ウクライナが起きたのであれば、台湾で同じことが起きないということはできないと考えるべきだろう。 第七章は、それを受けて日本が何をするべきかを著者なりにまとめたものである。台湾侵攻についてリアリティをもって事前に考え、準備することを主張している。ここで、著者は明らかに現実主義者であり、軍備強化とそのための法整備に傾いているように見える。ウクライナの本でありつつ、著者の主張したいことはこの章に凝縮されているのではないか。 【まとめ】 しっかりとした分析を、筋道立ててわかりやすく説明している。著者の主張も明確だ。おそらく結果論も含めた批判も覚悟しているだろう。骨太の本だと感じた。引き続き動画も出していくだろうから注目をしていきたい。

Posted byブクログ

2022/09/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 ウクライナ戦争開戦(2022/2/24)前から、たまたま見ていた「テレ東Biz」の豊島キャスター著作。開戦半年という絶妙のタイミングで出してきた。  振り返るつもりで読んでみたが、もはやかなり先を見通して、中国台湾戦争勃発を視野に、如何に日本は論理を組み立てていくかというところまで話している。  第1章、2章は開戦に至る経緯などの反芻にほどよい。  第3章「戦時下のウクライナから」は、テレ東BizなどメディアでUpdateした情報収集したほうがよいかな(7月以前の情報で、2か月ほど古い)。第4章「ロシアと戦う国々の論理」は、もはや参考程度に。  第5章「プーチン大統領暗殺は起きるのか?」は、ちょっとセンセーショナルで中盤の山かなと読んだが、できるかできないか、できるとしたら何を根拠に、どんな状況なら、という、あくまで思考訓練的なお話だった。  我々、日本人として重要なのは、最後の2章だろう。ウクライナ戦争は、あの地域だけの話ではなく、大国ロシア、隣国ウクライナの関係は、中国=台湾間に置き換えて考えるべきという話だ。  第6章「中国・習近平の台湾侵攻」。 「世界経済は、アメリカ、中国のふたつのエンジンで飛ぶ飛行機である。両国で世界のGDPの約40%を占める。世界全体の2%にも満たないロシアとはレベルが違う。」  この差をどうみるか?!  一朝一夕に、すぐ開戦とはならないと見る向きが大多数だが、今は、その準備の段階だという論調で本書は書き進む。 本当の危機は2030年代だと。  そして、恐るべきは最終章、「試される日本の論理」だ。  2030年代に至るまで、その準備期間に、外交手腕、経済力、政治力を駆使した戦争回避の提案もあるのかと思ったが、中国が台湾侵攻を準備を始める第1段階から、戦争勃発の第2段段階、米軍参戦の第3段階、それぞれのシミュレーションと、そのための準備や、準備できない障害(法整備、軍事力、世論等々)を述べていることだ。  もはや、台湾侵攻は不可避のことだと言わんばかりに・・・。  ロシア・ウクライナ戦争の教訓のひとつとして、ウクライナ大統領の動きがある。 「世界の指導者たちに、ゼレンスキー大統領は一つの発信のかたちを示したと言える。」  日本の国家元首はこれが出来るか? あるいは、日本国民はトップを支持し、自らも国を守る強い意志、姿勢を示せるのだろうか? 「人は、自ら困難を乗り越えて戦おうとする人を助けたいと考えるものである。ウクライナ人が自ら闘ったことが、多くの物理的支援につながったことは忘れるべきではない。」  は、とても大きな示唆だと思った。  湾岸戦争の時に、金だけ出して・・・と、世界的に評価されなかった当時が思い出される。

Posted byブクログ

2022/08/27

ウクライナ戦争から見えて来る、台湾のリスクについて概要を理解。政治的決断をどこまで早く適切にできるか、意思決定の究極的な形を想像した

Posted byブクログ

2023/01/10

自分は相内アナのファンだが、一緒にモーサテやってる豊島アナの本を読んでみた 大変勉強になって、本当に読んで良かった それにしても相内アナと仕事できるのは羨ましい限りだ

Posted byブクログ