世界は五反田から始まった の商品レビュー
「焼け野原になったら、何が何でも戻ってきて、杭を打とう。」帯のこの言葉に吸い寄せられるように手に取りました。戸越銀座で町工場を営む星野家。本書は著者のファミリーヒストリーですが、庶民の目線で描く(著者風に言えば)「大五反田」の戦前〜戦後史とも言えます。小林多喜二の小説の舞台となっ...
「焼け野原になったら、何が何でも戻ってきて、杭を打とう。」帯のこの言葉に吸い寄せられるように手に取りました。戸越銀座で町工場を営む星野家。本書は著者のファミリーヒストリーですが、庶民の目線で描く(著者風に言えば)「大五反田」の戦前〜戦後史とも言えます。小林多喜二の小説の舞台となった場所、品川大空襲、武蔵小山の満蒙開拓団など本書で初めて知ったことも多いです。自分は著者と同年代でとうぜん祖父母や父母も同年代。また「大五反田」に多少縁のある自分としても興味深く読みました。おススメです!
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「私の世界は五反田から始まった」祖父が千葉の田舎から出てきたのが五反田〜戸越銀座で著者は3代目。 自分ちの歴史とこの界隈の歴史(特に戦争について)が書かれていた。 もっと軽い読み物かと思ったらけっこう重かった。 祖父・父エピソードの繰り返しがしつこく感じたが、この辺りに住み、働い...
「私の世界は五反田から始まった」祖父が千葉の田舎から出てきたのが五反田〜戸越銀座で著者は3代目。 自分ちの歴史とこの界隈の歴史(特に戦争について)が書かれていた。 もっと軽い読み物かと思ったらけっこう重かった。 祖父・父エピソードの繰り返しがしつこく感じたが、この辺りに住み、働いているので土地勘があり、自分が今住む地域の過去が知れたのは面白かった。 学生の頃、人民服を着てたと書かれており、変わった人だなと思ったら親の影響で共産党支持者のようだ。 昔はよかったと感じるのは人の常だが、高層ビルに反対し、戸越・ムサコ商店街の代わりようを嘆く様は区議会だよりを読んでるようだった。(共産党は基本的に何でも反対している) 戸越銀座商店街はしょっちゅう店が変わり、パチモン屋みたいなのも多いので私も残念に思っているが、商店街の人の選択の結果。地元の人で魅力のある商店街にしてもらいたい。
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「んなこたぁない」から始まり、「いや、あるかもしれない」、そして最後は「そうに違いない」、読書中の私に思考をそのまま文字にするとこうなる。 「世界は五反田から始まった」、いやに挑発的なタイトルと言っていい。私は現職のオフィスが五反田であり、JR山手線を通勤で利用しているが、駅の...
「んなこたぁない」から始まり、「いや、あるかもしれない」、そして最後は「そうに違いない」、読書中の私に思考をそのまま文字にするとこうなる。 「世界は五反田から始まった」、いやに挑発的なタイトルと言っていい。私は現職のオフィスが五反田であり、JR山手線を通勤で利用しているが、駅の階段に本書の広告が大きく掲示されていて、見るたびに「んなこたぁない」と思っていたのだが、読後の今はこう思っている。「世界は確かに五反田から始まった」と。 本書は五反田で町工場を営む家系に生まれ育った著者が、亡くなった祖父が残した日記を元に、ファミリーヒストリーを語るという構成になっている。しかしながら、本書が作品として素晴らしいのは、そのファミリーヒストリーがさながら日本の太平洋戦争をどう一つの家庭が生き抜いたか、という類い稀な戦争史になっているからである。 そういう点で、本書は著者の一人称で描かれてはいるのもの、実質的な主人公は千葉から一人この地に移り住んで工場を創業して家族を作った祖父と言える。祖父が創業した町工場の事業が少しずつ拡大し、戦争中には軍需品の部品づくりをしながら妻や子供たちを埼玉に疎開させ、終戦末期の大空襲で全てが焼け落ちる・・・、その歴史を現代の五反田の姿と対比させながら、物語っていく。 一見、極めて個人的な話のように見えて、そこには確実に一種の普遍性につながるリンクがある。そのリンクをこうまでにクリアに作品の中に表現するこの手腕に強く感動し、本書のタイトルに強く賛同するのであった。
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五反田の近く、戸越銀座で育った著者。 実家は祖父の代から続く町工場である。 本書はその祖父の半生を中心に五反田界隈の街の変遷や戦時中の出来事などが書かれている。 戦争と言って思い起こすのは、原爆であるが、市井の人々は空襲という恐怖も味わっていたのである。 本書を読んで改めて身に染...
五反田の近く、戸越銀座で育った著者。 実家は祖父の代から続く町工場である。 本書はその祖父の半生を中心に五反田界隈の街の変遷や戦時中の出来事などが書かれている。 戦争と言って思い起こすのは、原爆であるが、市井の人々は空襲という恐怖も味わっていたのである。 本書を読んで改めて身に染みた。というのも、私自身過去に五反田の近くに住んでおり、本書に出てくる地名に馴染みがあったから、街の風景を思い出しながら読むことができたからだ。 馴染みのある地名が出てくると、俄然身近に感じる。 あのあたりも関東大空襲で焼けたのだそうだ。 今でも残る五反田独特の雰囲気や、その周辺の下町の様子を思い浮かべ、当時の人の営みに触れることができたような気がする。
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とてもインパクトのある、しかし、ややふざけた感じの「世界は五反田から始まった」という題名。中身は星野家の家族三代と、彼らが住んだ五反田という土地についての物語だった。 外房から上京し、五反田近辺に工場を持った星野博美の祖父は、亡くなる前に手記を残した。星野博美は、それをベースに、...
とてもインパクトのある、しかし、ややふざけた感じの「世界は五反田から始まった」という題名。中身は星野家の家族三代と、彼らが住んだ五反田という土地についての物語だった。 外房から上京し、五反田近辺に工場を持った星野博美の祖父は、亡くなる前に手記を残した。星野博美は、それをベースに、更に調査を加え、五反田に住みついた星野家の物語を書いている。クライマックスは、終戦の年の、五反田周辺も巻き込まれた、米軍による東京・城南地区への空襲であるが、五反田近辺の大正、あるいは、戦前からの歴史も交えて、面白い物語となっている。たしかに、星野博美にとって、世界は五反田から始まっているのだ。 私の祖父も自伝を残してくれている。自費出版であるが、製本された立派なものである。私の母親の父親なので、世代的には私よりも二代前ということになる。星野博美の本書を読んでいても思ったのだが、二代前の人物である祖父の生活・暮らしぶりは、二代後の私の生活・暮らしぶりと全く違う。その間の時代の変化はすさまじいものがあったということだ。大分県国東半島で生まれた祖父が長崎県五島列島で生まれた祖母と知り合い、私の母親が博多で生まれた。母親は大分県出身の父親と知り合い、京都で私が生まれた。私の亡くなった妻との間の子供達は埼玉と川崎で生まれ、私の二度目の結婚相手の妻はタイ人であり、子供はバンコクと神奈川県で生まれている。 本書を読んで、自分自身の家系についても思いをはせたが、家族三代の物語というのは、ダイナミックなものであり、また、巡り合わせのものでもある、と改めて思った。
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※このレビューにはネタバレを含みます
(借.新宿区立図書館) 星野博美さんのルーツもの(と言っていいのかどうか?)。戦前の「大五反田」史。祖父の手記を縦糸に関連情報を集めて大正5年から戦災までの五反田周辺さまざまを描く。軍需工場、共産党員(無産者)、満州開拓、そして空襲下などが描かれる地域史と言っていいだろうと思われる。個人的に城南地域はほぼテリトリー外だが興味深く読めた。 内容とは関係ないが奥付の2022年7月1日(初版?)第1刷、同10月10日第2版第1刷、同11月25日第3版第1刷というのは本当だろうか?従来の印刷物はそんなに版を変えられないはずだが、出版が電子化されるとできるのかな?ちょっと気になった。
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明治36年生まれの祖父が大正5年に芝白金三光町の町工場で働き始め、戸越銀座で住居と工場を構え、昭和49年に自宅で71年の生涯を閉じた。五反田を中間地点とする東京生活の起点と終点に当たる。 筆者は私より若いが、祖父母、父母の生きた時代が重なり、五反田、武蔵小山、NTT病院、中島飛行...
明治36年生まれの祖父が大正5年に芝白金三光町の町工場で働き始め、戸越銀座で住居と工場を構え、昭和49年に自宅で71年の生涯を閉じた。五反田を中間地点とする東京生活の起点と終点に当たる。 筆者は私より若いが、祖父母、父母の生きた時代が重なり、五反田、武蔵小山、NTT病院、中島飛行機の武蔵野製作所、ICU大学・・・知り合いの住んでいる場所や行ったことがある場所が重なり、とてもリアルに読める。スペイン風邪、満州開拓団、小林多喜二、東京大空襲など、昔の話ではなく、ついこの間のことだったのだと感じられる。「焼け残ったら戻ってきて杭を打て」との言い伝え。戦争の記録は重いが、生き残る知恵が詰まっていると思えば、読み継ぐべきと思う。
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偶然とはあるもので、本を読まないムスメが「この本街中にポスターが貼ってあるのに本屋で売り切れてたんだけど、見つけたから買ったんだー」と見せてくれたのがこの本。 しかし、ちょうど私もこの本を読んでいた。多分この本は、本屋さんで題名を見て、ブクログに登録して、図書館に予約したんだと思...
偶然とはあるもので、本を読まないムスメが「この本街中にポスターが貼ってあるのに本屋で売り切れてたんだけど、見つけたから買ったんだー」と見せてくれたのがこの本。 しかし、ちょうど私もこの本を読んでいた。多分この本は、本屋さんで題名を見て、ブクログに登録して、図書館に予約したんだと思うのだが。 そして、ムスメは、もっと軽い話だと思って買ったんだろうなと、思いつつ、かく云うわたしもそのくち。 こんなに面白い戦前戦後の大五反田界隈の話とは思わなかった。 そして、戦前戦後のこの街の生活が、ステレオタイプな説明ではなく、庶民の目線ではどうだったか、書いてあり、感慨深かった。 特に、自分も著者と同じく戦前戦後を終戦記念日で分けて考えていたが、当時の人々にとっては、自分の家が焼ける前と焼けた後で、気持ちを切り替えて、力強く生きていたことを著者の祖父の話で理解した。
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渋谷に育った私(産まれて数年は父の故郷九州に居たので若干ロンダリング)にとって、大五反田は近いけれどほとんど縁がなかった地域。それが高校生の頃、実家が引越して通学や通勤の乗換駅である中延や五反田が生活圏の一部になったから本書に出てくる路線や地名の雰囲気はよくわかる。関東大震災の前...
渋谷に育った私(産まれて数年は父の故郷九州に居たので若干ロンダリング)にとって、大五反田は近いけれどほとんど縁がなかった地域。それが高校生の頃、実家が引越して通学や通勤の乗換駅である中延や五反田が生活圏の一部になったから本書に出てくる路線や地名の雰囲気はよくわかる。関東大震災の前年に麹町で(文字通り乳母日傘で)生まれ育った母が「語り部」気質だったのか、戦前と戦後では価値観をガラリと変えなければならなかったこと。人間、死ぬ気になったらなんでもできること。ふつうの人は戦争したら損するだけ。だから戦争だけはしちゃいけないと何度も何度も繰り返し聞かされた。著者とはほぼ同世代だが高度成長期の子どもだった私にとって戦争の話は昔話しに思えて、話半分で聞き流していたことを今になって悔やんでいる。
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東京住みでありながらこのへんの地域には全然馴染みが無いものの、地図を見ながら興味深く読めた。戦時中の話、自身の生家の工場の話、祖父の書き遺しから紐解くあれこれ。満州開拓移民の話は全く知らぬことだった。お祖父さんとても聡い人だなぁ。
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