菓子屋横丁月光荘 金色姫 の商品レビュー
「菓子屋横丁月光荘」の5冊目。 冒頭、修論に明け暮れて、秋が来て、冬になり、大晦日から元日になる、ただ守人の生活を描いているだけなのだけど、十年一日のごとく馬齢を重ねていく身にとっては、時間の移ろい 時間の流れが愛おしく思えるような描写が続き、やはり、ほしおさんの文章はいいなぁ...
「菓子屋横丁月光荘」の5冊目。 冒頭、修論に明け暮れて、秋が来て、冬になり、大晦日から元日になる、ただ守人の生活を描いているだけなのだけど、十年一日のごとく馬齢を重ねていく身にとっては、時間の移ろい 時間の流れが愛おしく思えるような描写が続き、やはり、ほしおさんの文章はいいなぁと思う。 そこから、川越の近くに伝わるお正月の繭玉飾り作りの話になり、養蚕やそれにまつわる「金色姫」の伝承へとつながっていく。 ほしおさんの本を通じて、それほど遠い昔ではない日本のそこかしこにありながら、もはや見かけることもなくなった風景や行事について知ることが多いがこれもまたそのひとつ。 このことと、思いがけないはとことの再会からつながった祖母の記憶と、守人と同じく家の声が聞こえ喜代さんが燃やす命の存在の、それぞれがうまくつながった部分はとても良かった。 一方、伝承の強烈な内容とともに養蚕における女性の役割への言及などなかなか面白いと思いつつ、後で効いてくるところがあるとはいえ、やや頁を割き過ぎと思うところはあり。 久しく付き合いのなかった親戚との再会の話は、その後の会う人会う人にこの話を繰り返すという感じで、守人の境遇を考えるとまあいいんだけど、お話としてはあまり面白みを感じないところはあった。
Posted by
ついに親戚と再会。祖母との思い出の場所を訪ねたり、激似と噂の曽祖父の写真と対面したり、実り多い日々。風間の血筋にもう一人くらい、家と話せる人がいたら良かったのにな。 卒業式の後の木谷先生とのひとときが素敵。
Posted by
前の巻までに高まってきた緊張感がほぐれていく展開。 守人はとうとう修士論文を提出し、大学院を出る。 同じ「家の声を聞くことができる」喜代さんとの別れ。 重病の父を介護する安西さん姉妹にも、お互いの理解が生まれてくる。 守人の後輩石野さんも、だんだん自分の道を見つける。 そして、...
前の巻までに高まってきた緊張感がほぐれていく展開。 守人はとうとう修士論文を提出し、大学院を出る。 同じ「家の声を聞くことができる」喜代さんとの別れ。 重病の父を介護する安西さん姉妹にも、お互いの理解が生まれてくる。 守人の後輩石野さんも、だんだん自分の道を見つける。 そして、守人はとうとう遠野の家に引き取られて縁が切れてしまっていた母方の親戚である風間一族と再会し、自分の過去を次第に受け入れられる心境になっていく。 今までのさまざまな問題が少しずつ整理され、新しい局面へ移行する。 こんなにあれこれ「解決」してしまって、次の巻はどうなるの? といらぬ心配までしてしまうが…。 物語として、とても感動的な場面が多かった。 この巻は「金色姫」とあるように、蚕、養蚕のエピソードが随所に配されている。 蚕を育てた人々の営みや思いも描かれ、興味深い。 私の育った場所も昔は養蚕が盛んだったと聞いているので、そのせいでどこか懐かしさを感じるのかもしれない。 人と深いかかわりを持つこの生き物が、完全に形を変え、かたや絹糸となり、かたや羽化して次の世代を生む。 こういう営みのなつかしさだけでなく、厳しさもうかがわせるところが深みがあってよかった。 その繭ともかかわりが深い喜代さんが、この巻でとうとう亡くなる。 体という重荷から死によって解放され、自由になるという考え方にはっとする。 理想的な死の受け入れ方のように思う。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
【収録作品】第一話 繭玉飾り/第二話 金色姫/第三話 桜のあと 「家の声」を聞くことができる大学院生・守人。今回は、父方の祖父に引き取られたあと、音信不通となっていた母方の親戚との再会と、大切な人との別れが描かれる。 大きな流れのなかにほんのひととき存在する人という生き物を愛おしく思わせてくれる。温かい気持ちになれる作品。
Posted by
今作は小説というより民族学や歴史学のようなちょっと硬い雰囲気だった。特に、お蚕さんの件は勉強になったけどなかなか進まなくていったいどういう展開になるのか?と心配していたらはとこ登場。 色々なことが一気に判明したからこれでラスト?続編ある?
Posted by
守人もいよいよ院生生活も終わる。いろいろ続いていた話がクリアになって行く。終わりっぽい感じもするんだけど、まだ続くのかしら。着地点はどこ?
Posted by
「繭玉飾り」 各々進む道が決まっていく中で。 理由は分からないが寂しいという感覚があるというのは、それだけ楽しいと思えた色んな出来事があったからこそ感じることなのかもしれないな。 そこに居続けたいと思うほど心地良い場所なのだろうが、残していく者の事はどうなのだろう。 「金色姫」...
「繭玉飾り」 各々進む道が決まっていく中で。 理由は分からないが寂しいという感覚があるというのは、それだけ楽しいと思えた色んな出来事があったからこそ感じることなのかもしれないな。 そこに居続けたいと思うほど心地良い場所なのだろうが、残していく者の事はどうなのだろう。 「金色姫」 人と人との繋がりから見つかる。 ある日突然、貴方の親族ですと言われても信じられなくて戸惑うのが普通だろうし会う事に積極的になれないのは仕方のない事ではないだろうか。 一人では思い出せなかった記憶なども、再会出来たからこそ知る事が出来たのかもしれないな。 「桜のあと」 出会いもあれば別れもある季節。 気にしていないように見えても心のどこかでは引っかかり考えていたからこそ、報告を聞いた時に涙を流したと同時に安堵したのかもしれないな。 他の者には分からない世界だとしても、聞くことは苦ではなく一人でも楽しんでいただろうな。
Posted by
主人公・守人と同じように家の声を聞くことができる喜代さん(友人田辺の祖母)との優しい交流が良かった。孤独で閉ざされていた守人の心が、いつの間にか柔らかく開かれていて、たくさんの人たちとつながり広がっている。そこに喜代さんとの出会いがあり、さらに自分を肯定する気持ちを持つことができ...
主人公・守人と同じように家の声を聞くことができる喜代さん(友人田辺の祖母)との優しい交流が良かった。孤独で閉ざされていた守人の心が、いつの間にか柔らかく開かれていて、たくさんの人たちとつながり広がっている。そこに喜代さんとの出会いがあり、さらに自分を肯定する気持ちを持つことができたと思う。
Posted by
月光荘、やっぱり優しい物語。喜代さんが繭玉作りに出かけられたところ、守人と話したいと思ったこと、いいなと思った。(うちのおばあちゃんも何か楽しみができるといいのだけれど。)遠野物語や繭の伝説、子どもが聞くには怖い話かもしれないけれど、知るべきお話だと思う。自然と共に生きる。 最後...
月光荘、やっぱり優しい物語。喜代さんが繭玉作りに出かけられたところ、守人と話したいと思ったこと、いいなと思った。(うちのおばあちゃんも何か楽しみができるといいのだけれど。)遠野物語や繭の伝説、子どもが聞くには怖い話かもしれないけれど、知るべきお話だと思う。自然と共に生きる。 最後の場面では涙が出たけれど、イナクナラナイと月光荘も喜代さんの家も言ってくれた。喜代さんが幸せなら、それでいい。
Posted by
『活版印刷三日月堂』繋がりで読み始めて5作目。 もともと静かに流れていた物語でしたが、守人くんの周りに大きな変化が。 ガラス越しに見ていた風景から風を感じるようになったような… 蚕のお話しはとても興味深い。
Posted by