道 の商品レビュー
人生は「もしもあの時...」の繰り返し。やり直しができたとして、それは成功するのか。ライトなSFっぽい平行世界をテーマにした小説で、内容的にはかなり好きだった。 後半、主人公は自分が前にいた世界に置いてきてしまった妻と義妹を心配して戻ろうと考えるのだが、私自身は割とドライなところ...
人生は「もしもあの時...」の繰り返し。やり直しができたとして、それは成功するのか。ライトなSFっぽい平行世界をテーマにした小説で、内容的にはかなり好きだった。 後半、主人公は自分が前にいた世界に置いてきてしまった妻と義妹を心配して戻ろうと考えるのだが、私自身は割とドライなところがあるのでもう置いてきてしまったものは仕方ないんだから放っておけばいいのにと思ってしまった(笑) 誰かひとりいなくてもどうにか会社が回っていくように、いなければいないでみんなどうにかするよ。特に妻は困ったところで自業自得な気が...
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すごくリアルな設定の中に、ファンタジー要素があり、人生観とか哲学的な考察に深く考えさせられる。白石一文の本領発揮といえるようなすごい小説だった。 パラレルワールドと言ったらいいのか。食品メーカーに勤める功一郎は、愛する娘を事故で失い、妻は精神を病み、人生に行き詰まる。が、ある絵...
すごくリアルな設定の中に、ファンタジー要素があり、人生観とか哲学的な考察に深く考えさせられる。白石一文の本領発揮といえるようなすごい小説だった。 パラレルワールドと言ったらいいのか。食品メーカーに勤める功一郎は、愛する娘を事故で失い、妻は精神を病み、人生に行き詰まる。が、ある絵画を通じて過去に戻り、娘を事故から救い出すことに成功し、娘が死なない世界線の自分として生き直す。 「あの失敗がなかったら」「あの事故さえ起きなかったら」。でもやっぱり人生の幸不幸はそんな単純なものではない。うまく飛び移った先の世界でも功一郎には別の苦難が待っている。 はじめは荒唐無稽なSFみたいに見えた話だが、この小説のすべては、最終盤で人麻呂が語る世界観にあるのではないかと思う。 すなわち、意識的ではないにせよ、何かの手段を使って別の世界からやってきた自分に「弾き飛ばされ」、この世界を「選び取ってきた」存在が自分で、今の環境は自分自身が選んできたものだという。それが永続的に繰り返されている、それが人生の永遠性だという。 もはや哲学的、宗教的な意味あいさえ感じられ、もしかしたらそれがほんとうの世界の成り立ちなのかも、と思わせる。 捨ててきた元の世界には戻れないことがわかるが、なぜならそれは唯一「人生に与えられた無限の可能性を否定することだからね」。後戻りではなく、自分で選んで前に進むしかないのだ。 はあー、深い。読み終わって、誰かと感想を語り合いたくなった。良い映画を観たときみたいに。 ひとつ残念だったのは、義妹の碧が全く好きになれなかったこと。彼女と功一郎が、恋愛になりそうなあぶない感じは、読んでてあんまり気持ちのいいものではなかった。
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悲しくて辛くてたまらない時 自分の生きる道を選び直せたならと思うことがある。 あの時違う道を選んでいたなら、 あの時あんなことをしないでいたならと。 でもね、そうそう上手くはいかないらしい。 この物語の中では、いくら違う道を選び直したとしても 同じだけの総量の困難がちゃんと待ち受...
悲しくて辛くてたまらない時 自分の生きる道を選び直せたならと思うことがある。 あの時違う道を選んでいたなら、 あの時あんなことをしないでいたならと。 でもね、そうそう上手くはいかないらしい。 この物語の中では、いくら違う道を選び直したとしても 同じだけの総量の困難がちゃんと待ち受けている。 そりゃそうよね。 楽しいだけの人生なんてあるわけがないし 辛いこと悲しいことが起きない人なんて いるわけがない。 何度道を選び直したとしても 絶対に手放したくないものを大切に生きて行こうと改めて思うのでした。
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大学生だった娘の交通事故死から家族は悲嘆に暮れ 一日が無事に終わることだけを考え過ごしている。 ある日、功一郎はスタールの絵画『道』を使い 再び人生のやり直しを試みる。 あの時と同じように。 いろいろな世界を行き来するが そこは、全く混乱することなくスムーズに読み進めることができた。 ラスト、人麻呂の言葉がおもしろかった。 〈移った世界にもともといた自分自身を弾き飛ばす〉 なるほど。 弾き飛ばした自分も飛ばされた自分もそれぞれの世界で生きている。 謎なのが渚の不倫だ。 いい母親である必要は無いけれど。 生きることに執着しているとも思えない。 彼女の何がそうさせてしまうのだろう。 渚がとても気になる。
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いわゆるタイムリープ兼パラレルワールドもの。 受験失敗、娘の事故死、義妹の死 を起点として 人生をやり直していく。 エンディングはイマイチだが、なかなか楽しめた。
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久しぶりの白石一文らしい快作 整形と同じで満足できる世界なんか存在しないのに理想を求めて繰り返してしまう。 不幸の総量はどの世界も同じでそのなかから自分の幸せを探すしかないのか。
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人生にはifがいつも何処かにある。 あの時ああして居れば、人生どうなって いたのか。 人は必ず一度は考えた事があるはずだ。 この主人公の様に亡くなった娘を助けたい 一心で不思議な絵の中に新たな人生を 見出し娘の命を救うが、そこには彼の知らない 不穏な家庭生活や早すぎる義妹の死。 ...
人生にはifがいつも何処かにある。 あの時ああして居れば、人生どうなって いたのか。 人は必ず一度は考えた事があるはずだ。 この主人公の様に亡くなった娘を助けたい 一心で不思議な絵の中に新たな人生を 見出し娘の命を救うが、そこには彼の知らない 不穏な家庭生活や早すぎる義妹の死。 人生の路は常に枝分かれしていて、どの路 を選択するのは常に自分なのだ。
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小説のスタイルとして、記憶喪失、幽霊や生き返り、実は双子、全部夢だった、そしてこの本みたいなタイムリープは、嫌いです。設定に無理がある話には感情移入できない。
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本の雑誌年末ランキング・ミステリ部門から。何となく読まずに来た氏の作品だけど、ミステリ部門でオススメのものがあるとなると、ではこの機会に、と手に取ったもの。帯を見れば分かることだけど、比較的早い段階で、タイムリープありな世界だと知らされる。そこで、そういえばコロナ以降、やはりタイ...
本の雑誌年末ランキング・ミステリ部門から。何となく読まずに来た氏の作品だけど、ミステリ部門でオススメのものがあるとなると、ではこの機会に、と手に取ったもの。帯を見れば分かることだけど、比較的早い段階で、タイムリープありな世界だと知らされる。そこで、そういえばコロナ以降、やはりタイムリープものをリアルタイムで読んだことを思い出す。そちらもやはり大御所(荻原浩)の手になるものだった訳だけど、世界的に歴史的大事件が頻発する不安な世の中、皆がifを思い、作品化したくなるってことか。どうしても、コロナの世にならなければ…っていう恨みが頭をよぎってしまうのかも。で、本作における一つの答えは、パラレルワールドを見ても、ネガポジの総和はイコールになるのでは、ってところ。なるほど。
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単なるエンターテイメント的なタイムスリップ小説とは異なり人生において色々と考えさせられる内容で一気読み。。 どういった状況になるのか?分からないが、過去に戻る手段(顔も知らない父から伝えられたニコラド・スタールの絵画“道”の前に立つ)を手探りで試み、不遇な現在の状況の根源を正す為、自分自身の生きる時代に移りその時代の生活を送るが。。。 人生色々な道が用意されていて今不遇な道だと思っていても過去別の道を選んだとしても別の苦難が待ち構えている教えの様だと感じる内容だ。 4度の時代移動した生活の中で外部環境のズレ、周りの状況から手探りで移動目的を果たすストーリーはちょっと複雑で頭が付いて行けない部分も有る。 唐沢功一郎は大手食品メーカーの品質管理スペシャリストで役員待遇で娘美雨が事故死して鬱病となる妻渚とその看病で一緒に住んで貰っている渚の妹の碧との生活境遇に絶望感を抱き、過去高校受験で経験した時代を移る方法を再度試す。2度目の移動した時代で娘美雨の事故を回避させ、その時に若手女優の霧戸ツムギを事故から救う。その縁でツムギが性癖の悪い若手男優から付き纏われその後、男優を殺し自殺する未来を回避させる為、絵画“道”を使い過去男優との関係を回避させる。功一郎自身の生活は、美雨も生き、渚は元気に過ごすが渚は務め先社長と不倫を重ねていた事実を悟り、渚の介護で世話になっていた碧が脳梗塞で亡くなる。この選んだ道の時代も決して幸せな状況で無い。何とか碧を救いたい功一郎は、美雨の彼氏が信頼に足る見極めを付けて2度目移動前の時代へ3度目の時代移動を試み碧の脳梗塞の予兆から検査をさせて救う、然し渚は鬱病が改善はするものの再度元の務め先に戻る過程で碧を介護不要で元の生活の別居を持ちかけ功一郎が不倫の事実を知っている事を碧から聞く。功一郎は、この時代が2度目移動前と少し違う違和感を覚えると共に渚はこれからも不倫相手の社長と寄りを戻す予感を察知し、目的の碧も救い、渚も鬱病から改善した事からやるべき事をしたこの時代から碧との新たな人生を期待し4度目の移動を決意する。この時代の絵画“道”が2度目の移動の九大敷地内の人麻呂邸に在る事を確信して絵画“道”の鍵となる人麻呂と逢い父から託された絵画“道”の経緯とこの不思議な時代移動の深み(全く同じ時代には移動出来ない事、移った時代に居た自分は弾き飛ばされ別の道に移動し飛ばされた事実を知らずにその時代を生きる)を知らされ人麻呂こそ自分の父では無いか?との疑念を持って終わる。
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