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ギフテッド の商品レビュー

3.1

53件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    11

  3. 3つ

    27

  4. 2つ

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2023/01/28

美しかった母が最期を迎える 娘の腕には幼い頃の火傷の跡を塗りつぶすための刺青がある 死の匂いを感じながら、最期を見届ける娘にもまた生の熱量はない 扉の軋む音と鍵の回る音のリズムは、歓楽街の不協和音と曖昧な今日を断つ音 命の扉が閉じる音を自分はまだ想像がつかない

Posted byブクログ

2023/01/28

第167回芥川賞候補作品。 タイトルの「ギフテッド」は、「天賦の才能を持つ人」という最近流行りの意味で使ってはなさそうだ。 「娘にのしかかってくる母の重さ」を皮肉的にギフテッド(贈られた)と言っているのかな。 母の死を通しての「ダメな母Xダメな娘(by吉田修一さん)」の和解を...

第167回芥川賞候補作品。 タイトルの「ギフテッド」は、「天賦の才能を持つ人」という最近流行りの意味で使ってはなさそうだ。 「娘にのしかかってくる母の重さ」を皮肉的にギフテッド(贈られた)と言っているのかな。 母の死を通しての「ダメな母Xダメな娘(by吉田修一さん)」の和解を描く。 和解というか許容?そこまで行かないか? 娘は母を受容するくらいまではできたのかもしれない。 いずれにしても少しだけ救いはある。 母が娘に贈ったのかもしれない最後の詩。 この詩が… 深いようなそうでないような。 意味があるようなないような。 ただ、極めて文学的だ。 本作品はこの詩にたどり着くための小説、と言えるのかもしれない。 母と娘の微妙な距離感がもやもやと心に残る。

Posted byブクログ

2023/01/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

鈍く重く虚しい。読めば読むほどしんどい。を通り越し、感情が死んでいくようだった。できれば目を逸らしていたいことばかり。 「ギフテッドはタバコの跡のことに違いない」という書評を聞いたが、私はそうは思わなかったのでそんな見方もあるのかと驚いた。母が持っている(と思い込んでいるだけで実際には無い、先天的な)才能のことだと思った。 作品の主人公は絶対にこの語り手だが、彼女の心を支配する主軸、つまりこの話の主役はずっと母だ。 自分には才能があると信じて死ぬまでプライドを守る母の姿は、とても愚かで滑稽に見えてしまう。しかしそんな彼女だからこそ持っている、生命力のようなものがある。別に素敵なものではない。人間らしく、無様。でも、彼女がギフテッドだったら絶対に持てなかったものだ。 ギフテッドじゃないのにギフテッドぶることを生涯やめなかった。母親であることよりも芸術家であること・魅力的な女であることを迷わず選んだ。一心不乱にもがいて見苦しく生きてきた。だからこそ得られた謎のエネルギー。はっきり言って幼稚だし、自分勝手で迷惑極まりないのに、なんだか見捨てられない、謎の圧力。これを確かに持っていた。 でもこの圧力を生命力をエネルギーを、感じ取ってあげられたのは、娘とあのおじさんの2人しかいない。生涯を通してたったの2人だ。これは普通に生きる人間としては十分な数だが、たくさんの人に認められるべき才能がある(はずの)人間にしてはあまりにも少なすぎる。 なぜこんなに少ないのか。 ギフテッドじゃないからだ。 たくさんの人を惹きつけることなんかできない。そんな才能ないのだということをありありと見せつけてくる。 この、世間にとっての存在感のなさと、対照的に娘らの中では大きすぎる存在感との対比が、とても虚しくて、沁みてくるものがあった。 また、最後にくる「わからないことを、わかっちゃダメだ」「わかることだけを、わかりなさい」という言葉、そして最後の詩がとても印象的だった。全体的に暗〜い夜の空気の中で圧倒的に目立っていた。効果的な明暗対比になっていて、迫力があった! ほとんどひらがなで書かれているのが、無垢を演じる母の白々しい輝きを思わせる。あるいはもう命が絶える直前の弱々しさかもしれない。どちらにしても儚く、同時に揺るがない芯のようなものがある。 この母や、彼女が発する言葉を、美しいなんて言いたくないし、思わない。でもこの話の中で圧倒的に真っ白に光っている。自分のために生きてきた母が、死ぬ前に娘のための母親であろうとしたから、光って見えたのかもしれない。ずーっとずーっと発光したがっていたのに、求めなくなった瞬間にだけ光れたのだとしたら、かなりの皮肉である。 さらに主人公の姿はその光のせいで見えなくなっていき、最後には読み手の視界から消えてしまった、と感じた。主人公がだんだん消されていく新しい読書体験に圧倒された。 母は、才能で自ら光ることも、娘を照らすことも、どちらもできずに死んだことになる。望んだことを何にも叶えられなかった。それどころかむしろ娘に呪いを残していて、これからも娘の中に存在し続ける。母がい続けることで、娘の中に娘自身はいなくなる。なんとも辛辣な話だ。 まばゆくハッピーなレモンイエローの装丁、併せて本文の広めの余白には、中身に似合わない余裕のある明るさを感じる。暗さ倍増。これもまさに内容との明暗対比で、うまい!母に似合わない黄色のパジャマのよう。 母と子が不穏に混じり合う装画を見ると、タバコの件はやはり母子の繋がり(あるいは呪い)の証なのだろうか。親が子どもを自分の一部と思ってしまうことの恐ろしさたるや…! 主人公は、止められてもまだタバコを吸っている。母が死ぬ前に断ち切ろうとしたのにそれでもやめないのだから、自らすすんで繋がりという呪いをかけているのね。母の思い通りになんかしないということが、母の呪縛が解けないという結果に繋がる。そう思うと娘も娘で何も思い通りにいっていないんだな。 それでも最後は、ああ、失ったなあ、と、静かに死を感じた。とても良い終わり方だと思った。 関係性を主人公の感じ方・受け取り方で表現していたりとか、色んな面で、技巧的にすごく上手な作家さんだと思った。 ただ、今の私にとっては、重苦しさが甲高い音でキンキン鳴らされているような感じがずっとしていて、辛かった。風景の長い描も、暗さを積み重ねるだけで、新しく心を動かすことはほとんどできなかった。この空気に飲み込まれないように慌てて読み終えた。本質的なところをもっと深く探りたい気もしたが、そんな余裕は持てなかった。 私には合わなかったけど、おもしろい作品だった。

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2023/01/14

景の描写が的確ですごくうまい。感情の見えないところを見せる表現。すのうまさに映画のようだと思ってしまうが映画のようだというのも不遜で、次回作(すでに出ている)を読みたくなった。

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2023/01/02

図書館にリクエストしてから2ヶ月以上待たされたが、118ページしかない薄い本なので、あっという間に読了した。 シングルマザーに育てられ、新宿でホステスとして働く若い女性のお話……というか、死にゆく母と娘との最後の日々を淡々と綴った作品だった。“毒親”というほどひどくはないと思うが...

図書館にリクエストしてから2ヶ月以上待たされたが、118ページしかない薄い本なので、あっという間に読了した。 シングルマザーに育てられ、新宿でホステスとして働く若い女性のお話……というか、死にゆく母と娘との最後の日々を淡々と綴った作品だった。“毒親”というほどひどくはないと思うが、当事者ではないからわからない。ここには書かれなかった出来事も多々あるのだろう。 著者の経歴から鈴木いづみを思い出したが作風はまったく違った。当たり前か。 第167回芥川賞候補作。

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2022/12/25

頭の中で映像としてイメージしやすくて、読みやすかった。親と話ができている時間を大切にしようと思う。 わからないことをわかっちゃだめ。

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2022/12/16

言葉にしがたいことがふんだんに書かれていた、と感じた。 この本全体が詩であるかのような読後感だ。 なんて不器用で、孤独で、寂しくて、餓えていて。 そして、その奥にじんわりと温かい気持ちやしたたる涙、不安感が抑え込まれていて。 この母子は似た者同士だ、と思う。 鎧の脱ぎ方を忘れてし...

言葉にしがたいことがふんだんに書かれていた、と感じた。 この本全体が詩であるかのような読後感だ。 なんて不器用で、孤独で、寂しくて、餓えていて。 そして、その奥にじんわりと温かい気持ちやしたたる涙、不安感が抑え込まれていて。 この母子は似た者同士だ、と思う。 鎧の脱ぎ方を忘れてしまった。そんな人たちのように感じた。

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2022/12/14

死が近い母親を、幼い時の記憶を蘇らせながら心情を描いているという、それだけの話かな。 タイトルとどういう関連があるのだろうか?

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2022/11/25

描かれた生活ぶりとしては、かなり荒んでいますが、芯に凛とした品と、潔さを感じます。ギフテッドとは、そういう、親から与えられた内面的なものを言ってるのかな〜。読みが浅いのかな。

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2022/11/21

母と娘をめぐる長い終わりの物語。 読みながら、骨の芯まで深く静かに染み込んでいくこの感覚はなんだろうか。 淡々と文字が重ねられているが、その奥底にドクドクと脈打つ人間の熱を感じる。 文中に登場する一節に象徴されるように、簡単にわかったという言葉を口にしてはいけない気がした。 鮮や...

母と娘をめぐる長い終わりの物語。 読みながら、骨の芯まで深く静かに染み込んでいくこの感覚はなんだろうか。 淡々と文字が重ねられているが、その奥底にドクドクと脈打つ人間の熱を感じる。 文中に登場する一節に象徴されるように、簡単にわかったという言葉を口にしてはいけない気がした。 鮮やかな色を放つ作品ではない。 だが、より複雑に混じり合った暗く染まった色を感じるのは悪くない。 寧ろ浸っていたくなるような引き込まれる魅力に溢れていると思う。 表現一つ一つが洗練されていて、作者の底知れない奥深さを感じた。

Posted byブクログ