無垢なる花たちのためのユートピア の商品レビュー
とても素敵で幻想的な世界観だけれど、基本的に、著者の仕事観や人間関係の悩みなどの、ごく私的な問題意識がそのまま反映されたような内容。文体やスタイルなど舞台装置は凝っている一方で、キャラクターの性格や思考、物事の捉え方は、あまりに平凡すぎて面白味がない。居酒屋で友達の愚痴を聞いてい...
とても素敵で幻想的な世界観だけれど、基本的に、著者の仕事観や人間関係の悩みなどの、ごく私的な問題意識がそのまま反映されたような内容。文体やスタイルなど舞台装置は凝っている一方で、キャラクターの性格や思考、物事の捉え方は、あまりに平凡すぎて面白味がない。居酒屋で友達の愚痴を聞いているような、やるせなさを感じた。
Posted by
幻想的で美しい描写に目を奪われていると、不意に現実と繋がる「痛み」を差し向けてくるような。 表題作と『卒業の終わり』が特に好き これは……心の奥に刺さって抜けない「棘」になりそう 中高生の頃に読んでたら救われたか狂ってたかの二択だったと思う
Posted by
真っ白な、それでいて少し仄暗いような世界に小さな銀色のホログラムの花びらが散っているような、 読んでいるとそんな感覚に包まれる、とっても惹き込まれる作品集。 とくに表題作と、対になる「卒業の終わり」が好き。 「最果ての実り」もお気に入りです。 全ての作品を通して、ことばも文章...
真っ白な、それでいて少し仄暗いような世界に小さな銀色のホログラムの花びらが散っているような、 読んでいるとそんな感覚に包まれる、とっても惹き込まれる作品集。 とくに表題作と、対になる「卒業の終わり」が好き。 「最果ての実り」もお気に入りです。 全ての作品を通して、ことばも文章もとにかく美しい。 歌人として活躍されている川野さんの詩的な文章は、最初馴染むまで少し読みづらくも感じたけれど、物語や世界観にぐっと引っ張られて何度も目を通していくうちにすっかり没入していた。 (私はその美しいことばたちの辞書を持っていないので、すっと入ってこない文章もあって少し悔しかった。) 表題作 無垢なる花たちのためのユートピア 歳を取らない少年たちのユートピアは果たして本当に楽園か。 1人の少年の死から徐々に明らかになる真実はあまりにも救いがなく残酷、そしてこの物語、全て語られないところで終わる。 彼は、彼らはどうなってしまったのかと思いを馳せるも、どうにも幸せな結末は思いつけない。 だけれども美しい。宝石の国を読み進めている時の気持ちに近いものを感じるし、宝石の国が好きな人はこの作品も好きだと思う(私がそうなので、という理由でしかないが) 特に冬薔薇には幸せになって欲しいんだけどな…… 「卒業の終わり」では、現実離れしたディストピア的世界のなかで、現実で確かに感じたことのある女の子の友達への嫉妬や羨望や執着のような感情がまざまざと描かれる。 そしてそんな絶望的な世界の中、男性たちの人生を支え彩り散っていくためだけに社会に存在させられる女性たちの姿に、そんな一生を教育によって納得させられている姿に、主人公共々怒りを覚えずにはいられない。 希望のあるラストを迎えたことはせめてもの救いだったが、でもこの物語の「私」はもう助からないのでは…… 6作すべて、幸せ円満ハッピーエンドなどではなく、なんとも救いがない。 「最果ての実り」なんてもう本当に救いがない。でももうため息が出るほど美しい。 美しく残酷な世界と耽美なことばたちにうっとり。私はとても好きです。 著者のエッセイ、「かわいいピンクの竜になる」も読んでみたいと思う。
Posted by
多くの装丁画を手掛ける山田緑氏の表紙があまりにも素敵。 やっぱり綺麗な青色は、目を引く。 表題作、その青にふさわしい無垢な少年たちのユートピアのような世界、と見せかけて…という物語。 先生的立ち位置の老人たちのおぞましさ、残酷な世界、不確かさでコーティングされた真実に翻弄される...
多くの装丁画を手掛ける山田緑氏の表紙があまりにも素敵。 やっぱり綺麗な青色は、目を引く。 表題作、その青にふさわしい無垢な少年たちのユートピアのような世界、と見せかけて…という物語。 先生的立ち位置の老人たちのおぞましさ、残酷な世界、不確かさでコーティングされた真実に翻弄される主人公…。 結局誰が好きで、誰を守りたくて、誰に心を奪われていたのかなんて、自分にだって分からない。 「白昼夢通信」人形、竜の血、幻想的なヴェールに包まれたまだ見ぬうつくしいひと。それだけでは終わらないのが、川野芽生文学のようだ。 「人形街」うつくしい彼女を、人形にしてしまいたくないがために、傷つけ続ける男の欲望は許されるのか。 ”生”を投げ出して物言わぬ人形になりたがる彼女は、幸せなのだろうか。 誰にも分からないし、きっとどれも正解には足りえない。 「最果ての実り」機械の男と、植物の少女の邂逅と、永遠の別離。 世界の終わりに描かれた、誰も覚えていない神話、って感じですごいな…。 「いつか明ける夜を」一番断片的だし、際立って幻想小説してる気がする。 馬と少女なんてオタクはみんな好きでしょ。 「卒業の終わり」表題作が一種BLの様相を呈しているのに対して、こちらはちょいと百合風味。 女子高設定だし。 しかしてその女子高の真実とは…うーんディストピア。 搾取されるために生き長らえさせられるのは、知性を持ってしまったゆえに幸福とは限らなくなってしまった。 思考停止した瞬間に、生きることもできず、死に方を選ぶこともできなくなってしまう。 ただの幻想小説だけではない、若い”現代”を生きる女性の描く物語群だなあと思った。
Posted by
ディストピア小説。ハッピーエンドなんて一つもないけどその中でもがきおかしいと思いながら生きている人たちの話。 誰かに支配されたり決められるのなんかおかしい。 わたしは生きたいように生きるという意志がひしひしと感じられた。
Posted by
独特の世界観を繊細で独特の雰囲気がある文章が彩り、臨場感があって面白かった。独特な設定なぶん話が入りにくい部分もあったので設定を駆使した長編作品も読んでみたいと思った。
Posted by
表紙のような世界観の小説たち。最初と最後は対になっているかのような少年たちの話と少女たちの話。少し長め。 間の四つは短めの短編で、これまた独特の世界観。 表紙の内側、そでのところに幻想文学の新鋭とかかれていたけど、幻想!まさにその通りと思いました。 私は好みじゃないけど、こういう...
表紙のような世界観の小説たち。最初と最後は対になっているかのような少年たちの話と少女たちの話。少し長め。 間の四つは短めの短編で、これまた独特の世界観。 表紙の内側、そでのところに幻想文学の新鋭とかかれていたけど、幻想!まさにその通りと思いました。 私は好みじゃないけど、こういう話が大好きな人はいそう。使われている語彙も綺麗だし、言い回しも丁寧。 オススメは中学生から。というか、中高生の一部がコアに好みそう。
Posted by
短編集でした。 少年たちが登場する「無垢なる花たちのためのユートピア」が最初のお話なんですが、気になる流れで終わってしまったのでモヤモヤしました。
Posted by
事前知識なしに読み始めて、著者が歌人と知る。 あまた出てくる漢字の花の名前や和語が趣深くはあるが、こちらの無教養ぶりが身につまされる。たぶん全部ルビなしで読めて、花の画像が浮かぶような知識があったら、言葉として描写されていない部分の情景や人物のたたずまいなども明確にわかるのにと思...
事前知識なしに読み始めて、著者が歌人と知る。 あまた出てくる漢字の花の名前や和語が趣深くはあるが、こちらの無教養ぶりが身につまされる。たぶん全部ルビなしで読めて、花の画像が浮かぶような知識があったら、言葉として描写されていない部分の情景や人物のたたずまいなども明確にわかるのにと思うと残念。 分野としては苦手分野。『ポーの一族』とか『私を離さないで』を思い浮かべた。 6つの短編のうち、よかったのは最後の「卒業の終わり」 p49 *白菫を信じることは、と金雀枝(えにしだ)が低い声で言った。白菫に何の欠点もないと信じることじゃない。 p88 *上へ上へと昇っていって、光があまりに強くなったときに、無垢の花苑を持たないものは正気を失う。 p101 *雪と埃は似ていて、埃と積み重なるページも似ていて、図書室や書庫というのは目に見えないものがしんしんと降り積もっていった気配に充ちている。あるいは、蛤の履いた息が蜃気楼になるって言うでしょ、本にも本の呼吸があって、それが雪の蜃気楼みたいなものを作っているような気がする。わたしは本の吐く息のその冷たさが好きで、自分の体も冷えていっていつか一冊の本になれるんじゃないかって気がして。 p322 雲雀草が在籍する女学園では、花鴉先生が「才能を生かしなさい」と言い続けた。 卒業後、世間には若い女性だけがかかる病気があって、成人後最大7年で女性が死ぬと知らされる。学園内だけは無菌だ。それを知った雲雀草は自分たちの受けた教育はまったくの無意味だった、なのになんのため? とかつての同級生 月魚に問う。それに対して月魚は *「受けた教育と思い出は、外の世界でどんないつらいことがあっても生徒を救うだろう、と花鴉先生は言っていたんだよ」
Posted by
短めの小説がいくつか入ってたけど、私は最初と最後の作品が心に残った。 特に最後の作品。 今の時代の女性の生きづらさをファンタジーをまじえて表現されていて、少し苦しい。 作品ごとに文体が変わったりするので、新鮮。 どれもこれも、言葉の紡ぎ方が美しく、とても透明感を感じる文章だっ...
短めの小説がいくつか入ってたけど、私は最初と最後の作品が心に残った。 特に最後の作品。 今の時代の女性の生きづらさをファンタジーをまじえて表現されていて、少し苦しい。 作品ごとに文体が変わったりするので、新鮮。 どれもこれも、言葉の紡ぎ方が美しく、とても透明感を感じる文章だった。
Posted by
- 1
- 2