鯨の岬 の商品レビュー
河崎秋子さんのお話は文章から匂いがしてくる。 この作品だけじゃなくどれもこれも嗅覚が鋭利になるような感覚。 北海道を舞台にした作品で、いわゆる本州の人が想像するような広くて穏やかな大地というよりは、暮らしていないとわからない暗さを孕んだ面を描くのがものすごく住んでいるものとして...
河崎秋子さんのお話は文章から匂いがしてくる。 この作品だけじゃなくどれもこれも嗅覚が鋭利になるような感覚。 北海道を舞台にした作品で、いわゆる本州の人が想像するような広くて穏やかな大地というよりは、暮らしていないとわからない暗さを孕んだ面を描くのがものすごく住んでいるものとしてもリアルに感じられる。根室や霧多布には行ったことがないので河崎さんの作品を読むたびに訪れてみたいなと思っている。
Posted by
打ち上げられた鯨。 ガスが溜まる。 遺骸が膨らむ。 爆発。 漂う腐敗臭。 里帰りの際にふと生まれた意識の隙間。 誘われるように向かった故郷で巡る記憶の旅の果てに見るもの――。 《鯨の岬》 江戸時代。 ロシアの南下政策に危機を感じた江戸幕府は、 蝦夷地の調査のために訪れた幕府...
打ち上げられた鯨。 ガスが溜まる。 遺骸が膨らむ。 爆発。 漂う腐敗臭。 里帰りの際にふと生まれた意識の隙間。 誘われるように向かった故郷で巡る記憶の旅の果てに見るもの――。 《鯨の岬》 江戸時代。 ロシアの南下政策に危機を感じた江戸幕府は、 蝦夷地の調査のために訪れた幕府の役人と、 はるか北の地で暮らす和人との交流を描く。 《東陬遺事》
Posted by
常に北海道を舞台に、歴史を含んだ物語を綴られている河崎秋子さん。 今回手にした『 鯨の岬 』も、北海道を舞台にした中編2話の構成となる。 第一話『 鯨の岬 』 札幌に住む主人公の奈津子は、息子夫婦が共働きということで孫の蒼空の世話を押し付けられていた。 小学校から帰ってきた蒼空は...
常に北海道を舞台に、歴史を含んだ物語を綴られている河崎秋子さん。 今回手にした『 鯨の岬 』も、北海道を舞台にした中編2話の構成となる。 第一話『 鯨の岬 』 札幌に住む主人公の奈津子は、息子夫婦が共働きということで孫の蒼空の世話を押し付けられていた。 小学校から帰ってきた蒼空は、二世帯住宅の自宅には戻らずに、奈津子の住まいで両親が帰宅するまで過ごしていた。 流石に時折気苦労を感じることもあって疲労感に苛まれるのだが、夫の援助は全く期待できなかった。 奈津子は月に一日、母親が入所している釧路の施設に出かけることにしていた。 釧路に向かう途中、小学生の時に住んでいた霧多布へ向かうことにした。 その浜に打ち上がった鯨が腐敗し、膨らんだ腹が裂けて爆発を起こし、見物していた奈津子や友達たちは、飛び散った鯨の血や肉片を浴びた記憶があったのだが⋯。 がしかし、奈津子は何かその記憶に納得し難いものを感じ続けていたのだ。 第二話『 東陬遺事(とうすういじ) 』 江戸後期の文政時代、蝦夷地の多目的価値調査のため、幕府の役人である山根平左衛門は、野付(知床半島と根室半島の中間に位置)に赴任した。 平左衛門が駐在する通行屋では、下働きの男が4人、女中が2名、そして5歳ほどの娘が彼を迎え入れた。 男の一人が弥輔と称し、その姉にたづ、娘はりんと呼ばれたたづの娘だった。 弥輔は幕府から預かっている3頭の馬の世話もしていて、子供の頃に凍傷で足の指を無くしていたのだが、仕事ぶりは熱心な男だった。 姉弟は、幼い頃に両親を亡くし、その後の苦労を伴った生き方に特別の絆を抱いていた。 ある日、幕府から授かった馬の一頭が、流氷の間に前足を挟み、脱出できずに足掻いていた。 弥輔は幕府からの大切な馬を亡くしてはと、身を挺して馬を助けるのだが、そのために弥輔は命を落とす。 弥輔の人間性を認めていた平左衛門は、姉のたづの面倒を見ようとするのだが、たづは頑なに断るのだ。
Posted by
鯨が爆発する、ということは何となく知っていた。 この文庫に収録されている「鯨の岬」「東陬遺事」どちらも、北海道の歴史を元にしたネタから練られた掌編で、読み進めるにしたがってほうほうと頷くことが増えていった。 特に「東陬遺事」は、江戸時代の道東という未知の領域の話だったのでとても楽...
鯨が爆発する、ということは何となく知っていた。 この文庫に収録されている「鯨の岬」「東陬遺事」どちらも、北海道の歴史を元にしたネタから練られた掌編で、読み進めるにしたがってほうほうと頷くことが増えていった。 特に「東陬遺事」は、江戸時代の道東という未知の領域の話だったのでとても楽しめた... というと語弊があるけど、知らない知識を得られて幸せな時間だった。
Posted by
クジラ爆弾で人は死なない。 いまいちオチがよく分からない内容だったのと、後半の話は過酷な北海道での生と死を描いた作品だが、迫力はあるものの自分には合わない内容だった。
Posted by
表題作と短編一編が収録されています。読みやすいのは表題作ですが、北海道の自然を感じられるのはもう一つの方。
Posted by
内容は悪くないのですが、何を訴えているのかを匂わす雰囲気もなかったため展開が大きく変わってびっくりしました。少々読みづらいと感じました。 それにしても辛い経験はそんなにキレイサッパリ記憶から消えるものなのでしょうか?共感は難しいと思いました。 もう一方の短編は、なんのけじめをつけ...
内容は悪くないのですが、何を訴えているのかを匂わす雰囲気もなかったため展開が大きく変わってびっくりしました。少々読みづらいと感じました。 それにしても辛い経験はそんなにキレイサッパリ記憶から消えるものなのでしょうか?共感は難しいと思いました。 もう一方の短編は、なんのけじめをつけたかったのか、わからない。ただただ悲しい物語と思いました。
Posted by
普通の60代くらいの主婦の話で嫁の愚痴とか老後の不安とかの話かと思いきや、とんでもない事実が明らかになり、読んだ後も衝撃の余韻にしばらく浸ってました。時代小説の方も全然違う雰囲気でしたが、思わぬ展開と描写力で、一気に引き込まれました。解説も良かった。
Posted by
二篇の短編を読み終え、ほぉと息を吐く。 圧巻だった。 どちらも北海道東部、釧路地方が舞台。河﨑氏が生まれた別海町が近い。 記憶ってよく小説のテーマとなるのは、やはりとても不可思議だから。歳をとるにつれ記憶は夢のように錯綜していく。しかしどんなに忘れてしまったように思えることもそ...
二篇の短編を読み終え、ほぉと息を吐く。 圧巻だった。 どちらも北海道東部、釧路地方が舞台。河﨑氏が生まれた別海町が近い。 記憶ってよく小説のテーマとなるのは、やはりとても不可思議だから。歳をとるにつれ記憶は夢のように錯綜していく。しかしどんなに忘れてしまったように思えることもその人の中から消滅はしないのだよな。認知症の母を訪ね釧路に行くも、ふと記憶を取り戻すために進路変更、霧多布まで足を伸ばす主婦の話、「鯨の岬」。 孫が観ていた鯨の爆発の動画から、まずは鯨の腐った臭いを思い出し記憶のトンネルに入り込んでいくのがおもしろい。 もう一篇の硬質な引き締まった文調は、北国の寡黙な厳しさそのもの。しかし、熱くて懐深い。生きとし生けるものの命の熱量が届くからかもしれない。北海道、開拓された大地。辺境の地の孤独と他者への寛容が伝わってきた。
Posted by
ずいぶん平和な雰囲気で、「こういう河﨑さんの著作もあるのか」と思っていたら、いい意味で裏切られ、呆気に取られた。これぞ河﨑作品!
Posted by
