図書館島 の商品レビュー
・ソフィア・サマター「図書館島」(創元推理文庫)の解説、乾石智子「ジュートを捨てる」の冒頭にかうあつ た、「『図書館島』は、根気を要求する本だ。わたしのような凡人には、一気読みなんか到底無理。」(523頁)その理由は、「まず改行が少ない。会話文もなかなか出てこない。それでもってこ...
・ソフィア・サマター「図書館島」(創元推理文庫)の解説、乾石智子「ジュートを捨てる」の冒頭にかうあつ た、「『図書館島』は、根気を要求する本だ。わたしのような凡人には、一気読みなんか到底無理。」(523頁)その理由は、「まず改行が少ない。会話文もなかなか出てこない。それでもってこの厚さ。」(同前)とある。一々納得である。最近の文庫本は活字が大きい。しかも分冊が多く、本書だと本文500頁超であるから、最低でも上下2分冊にはならう。乾石の作品でも2冊 分くらゐになるはずである。厚い。改行と会話が少ないのは最近の作品には少ない。昔はかういふのが結構あつた。ほとんど現役ではないが、大江健三郎などは最後はこれが極端になつてゐたから、読みにくいつたらありやしない。どこまでも改行なしで続いていくのに疲れ果ててしまふことしばしばであつた。しかも晦渋な文体、読み通せずに止めてしまつたことも何度かある。本書はあれほどではないが改行は少ない。時間はかかつたけれども読み通すことはできた。一行あきの、内容そのものが変はるところ、節であらうか、が意外に多いのも私にはありがたかつた。読んだら書くことにしてはゐるものの、やはり読んでも書けないものは多く、本書もそれかと思つたのだが、乾石の文章から何か書けるかもしれないと思つて始めたのがこの文章であつた。 ・乾石は「ジュートを捨てる」と書いた。ジュートとは何か。例の如く、本書巻末にも用語集がある。「ジュート【キ】 『各人の外なる魂』とされる、キデティの人々が祈りを捧げる人形。」(531頁)すると、こけしとか、もしかしたらオシラ様のやうなものか。よく分からない。本文を見ると、「『ヴァロンって何だかわかったわ。』と彼女は言った。『ジュー トよ』」(456頁)とある。ではヴァロンとは何かと用語集を見る。「ヴァロン【オ】 本。『言葉を収めた部屋』という意味。」 (530頁)彼女といふのはジサヴェト、現実世界では主人公とほとんど関はりを持たない、不治の病に冒されたキデティの娘であ る。しかし死後、彼女は天使(幽霊?)となつてから主人公につきまとふ。我がためにヴァロンを書けといふのである。つまり文字を持つオロンドリアの人々には本が祈りの対象になるのに対して、文字を待たないキデティの人々にはより具体的に祈りの対象が必要で、それが人形であるといふことであらうか。ジサヴェトにとつて本の形のヴァロンは、たぶん自伝如きものであるがゆゑに、己が祈りの対象となる。主人公に天使が見えるのは、教へられて文字を覚えはしても、基本的には文字を持たないキデティの一人であるため なのであらう。ここに文字の宗教と伝承の宗教の戦ひがある。主人公は本来文字を持たない。しかも天使を見る者は、文字を持つ側からすれば異端である。だから、最後は南の故郷に逃げる。その時には、主人公は己が言はば使命を全うし、それゆゑに文字のあるなしの戦ひを止揚してゐる。ヴァロンを書いた。そして焼却した。さう、これが戦ひを止揚したといふことではないのか。一見すると皆まるく収まつた、言はばハッピーエンドである。主人公も穏やかな生活に入つた。チャヴィ、先生(「用語集」532頁)であるらし い。チャヴィはジュートを持たない人である。かくして乾石のタイトルが思ひ出される。「ジュートを捨てる」とはこれをいふのであらう。乾石はジュートを「価値観ではあるまいか。」(528頁)と書いた。さうかもしれない。しかし、結局、私と同じことを言つ てゐゐるのではないか。個人的には戦ひ等を止揚してといふ方が好きなのだが、といふ程度のことで……。
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固有名詞の乱立に戸惑う。 原題は A stranger in OLONDRIA だろうと思うけど、なぜこの邦題になったのだろう。
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ファンタジーやSFは、いかにその物語の世界観に浸れるかが個人的なポイントとなっております。どれだけスゴイと言われる作品でも、何が起こっているのかわからないとその面白さがわからないというか。また、物語に入り込むのにどれだけ時間がかかるかも、その作品を楽しめるかどうかのポイントになり...
ファンタジーやSFは、いかにその物語の世界観に浸れるかが個人的なポイントとなっております。どれだけスゴイと言われる作品でも、何が起こっているのかわからないとその面白さがわからないというか。また、物語に入り込むのにどれだけ時間がかかるかも、その作品を楽しめるかどうかのポイントになります。あまりよくわからないと飽きちゃうんですよね…こらえ性の無い人間なので。 と言う訳で本作品。最初の胡椒園での暮らしはまだソウナンダーと読んでいたのですが、港町に行くあたりで正直ついていけなくなりました。というか一つの文章が長い。形容詞が多い。一人称で進むので、正直主人公に共感できないと、コイツ何言ってんだ、で、今の状況はどうなってるのよ?という事がなかなか理解できず断念。後半面白く盛り上がっていくのかもしれませんが、無理でした。
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再読。 成仏できない亡霊の語る物語。を始めとして入れ子のようにたくさんの物語があって複雑なタペストリーを眺めているような気がした。
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