壁とともに生きる の商品レビュー
ヤマザキマリさんに興味を持ち、「国境のない生き方」「仕事にしばられない生き方」を読みつつ安部公房の「砂の女」を読んだ。その後に読んだこの本は、安部公房が表現する自由の壁、世間の壁、革命の壁、生存の壁、他人の壁、国家の壁を解説してくれる。この本のおかげで安部公房文学の神髄に触れるこ...
ヤマザキマリさんに興味を持ち、「国境のない生き方」「仕事にしばられない生き方」を読みつつ安部公房の「砂の女」を読んだ。その後に読んだこの本は、安部公房が表現する自由の壁、世間の壁、革命の壁、生存の壁、他人の壁、国家の壁を解説してくれる。この本のおかげで安部公房文学の神髄に触れることができたから、ヤマザキさんの分析力たるや、凄いものを感じる。
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※このレビューにはネタバレを含みます
人間の負の側面、社会の負の側面に、きちんと目を向けられているのか。 これを知っている人と、知らないでいる人とでは、思考や選択のベクトルが全く変わってくるのではないかと思う。 ヤマザキさんの人間・社会を見る目は鋭いな、と思うがフィレンツェでの極貧期に安部公房に出会いどっぷりと浸かったことが、表層的なことだけでなくその裏にあることに思考を巡らせることに繋がったのではないかと思う。 現実を生きる力をくれる文学が好きだ。 私自身は青春期には安部公房には出会わなかったのだけれど、人間の弱さや社会の厳しさを突き付けてくる文学に出会い、自分を省みることができた。青春期の良き文学との出会いは大切だなと思った。
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生きていく上での壁をテーマに、安部公房作品を通して、ヤマザキマリさんの経験を加味して、作品の解説本。パンデミックで生きづらさが表面化されてきて、この本読んで頭の中がすこし整理できた部分があった。安部公房作品読んでみたくなりました。
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高校の時、友人からすすめられて積読してしまった『砂の女』 世界的にも評価されているし、1度はしっかり読んどきたいと思い、購入して読んだ。 読んでみてこの感覚私にもあると。 田舎にいた高校時代、良くも悪くもみんな知り合い、悪いことや奇抜なことは出来ません的な思いを抱いていた。 ...
高校の時、友人からすすめられて積読してしまった『砂の女』 世界的にも評価されているし、1度はしっかり読んどきたいと思い、購入して読んだ。 読んでみてこの感覚私にもあると。 田舎にいた高校時代、良くも悪くもみんな知り合い、悪いことや奇抜なことは出来ません的な思いを抱いていた。 それが嫌で、大学から家を出て、今に至る。が、果たしてそれから逃れられたのか?は怪しい。 仕事、人の親、自治会員、常識、世間体、色んな正しいと言われていることに囲まれている自分。 読んだことはないが、ドストエフスキーも壁から逃れても、また壁があり、そこからのがれることは出来ないとな。 なるほど。 では、どうすれば? そんなことを深掘りした読んでみた。 今の考えは、自分で考えることを手放さない、ということかな。 人がいう正しいを、自分はどう思うか、表明しないまでも、考えようと、抗おうと思う。
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イタリアで出会った『砂の女』から、 安部さんにぞっこんになったマリさんの6つの「壁」をテーマとした思索本です。 自由・世間・革命・生存・他人・国家を切り口に、 不条理なこの社会をしたたかに生きる気づきをもらえます。 安部公房の人生概観もできました。
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「砂の女」は自由と不自由について書かれた本だと思うが、ヤマザキさんは「壁」をキーワードに彼女の視点から解説してくれている。 “自由を求めるのであれば、そこに必ず普通している不安や不条理から目をそらしてはならない、それが安部公房文学の核心” 安部公房の作品が本当に好きなんだろうし、...
「砂の女」は自由と不自由について書かれた本だと思うが、ヤマザキさんは「壁」をキーワードに彼女の視点から解説してくれている。 “自由を求めるのであれば、そこに必ず普通している不安や不条理から目をそらしてはならない、それが安部公房文学の核心” 安部公房の作品が本当に好きなんだろうし、文章自体も表現が多彩で読みやすかった。 読書感想文ってこういうふうに書けばよかったんだ。 ドストエフスキー:壁は曲がる方向を教えてくれる。 壁の外(自由):不安や不条理と向き合うこと。
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期待に反しておもしろく読めた。 安部公房は何作か読んでいるはずだがほとんど覚えておらず、これのおかげで思い出せたのもあったし、あらためて読みたいと思った。
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安部公房は、昔「カンガルーノート」を読んで、よくわからない気持ち悪い話だなぁと思って終わってしまった。ただその時も、何とも言えない魅力があるとは思っていた。 今回この本を読んで、安部公房を再読したいかと言えば、正直言って読みたくない。残酷描写が多いし、オチも救いがなく、読んで辛...
安部公房は、昔「カンガルーノート」を読んで、よくわからない気持ち悪い話だなぁと思って終わってしまった。ただその時も、何とも言えない魅力があるとは思っていた。 今回この本を読んで、安部公房を再読したいかと言えば、正直言って読みたくない。残酷描写が多いし、オチも救いがなく、読んで辛い気持ちになるのは見えている。きっと私のメンタルはそこに耐えられないのだと思う。 そういう意味で、著者のヤマザキマリさんは強い人なのだと感じる。安部工房が活躍した戦後の時代も、人々は皆強かったのだろうか。そのエネルギーに憧れはするけども、わたしにはとてもまだまだと言うところかな。 印象に残ったのは、「箱男」では、都会の周囲の人々が無機質な砂のメタファーなのでは、というところ。人々の中にいても、気にされない、自由にしていいよと言われるのは、ある意味不自由で、孤独なのだなと思った。
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ヤマザキさんの溢れる安部公房愛が、どのページからも感じられた「安部公房案内」。 安易な希望、わかりやすい絶望を求めてはいけない、「この試練をさけては、たとえ未来に希望をもつ思想に立つにしても、その希望は単なる願望の域を出るものではない」と言う安部公房は、今の私たちに何を語って...
ヤマザキさんの溢れる安部公房愛が、どのページからも感じられた「安部公房案内」。 安易な希望、わかりやすい絶望を求めてはいけない、「この試練をさけては、たとえ未来に希望をもつ思想に立つにしても、その希望は単なる願望の域を出るものではない」と言う安部公房は、今の私たちに何を語ってくれるのだろうかと思った。
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なかなか評価が難しい。安部公房のガイドブックとして実にタメになる本だと思う。だが、安部公房の小説とはそのスジだけを整理すると「ナンノコッチャ」なところがあるというか、他人の見た夢を聞かされているようなとっつきにくさがあると思うのだ。むろんそんなストーリーの面白さを超えて登場人物や...
なかなか評価が難しい。安部公房のガイドブックとして実にタメになる本だと思う。だが、安部公房の小説とはそのスジだけを整理すると「ナンノコッチャ」なところがあるというか、他人の見た夢を聞かされているようなとっつきにくさがあると思うのだ。むろんそんなストーリーの面白さを超えて登場人物や語り手が編む思弁の濃さにこそ魅力があるわけで、そうした「濃さ」に確かに肉迫している本だと思うがゆえに厳しい戦いを強いられた本とも言えるのではないか。もちろん、私はこの本を読んで安部公房にもっと迫りたくなった。それこそ著者の大手柄だ
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