壁とともに生きる の商品レビュー
昔から、大好きな作家の安部公房氏の本 砂の女・壁・他人の顔・箱男 一番大好きというか、忘れられないデンドロカカリアクレピディフォリア。 不条理な感じが忘れられない作品ばかりです。
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敬愛する作家についての思いの丈を気になる現代作家が語る、当然面白い。 ヤマザキ氏のルーツや経歴について今まで知らなかったことも多く、そういった側の視点だけでも得るものはあるような。 一方で、安部公房に限らずとも自分の人生の紆余曲折に沿った作家がいて、「あの作品はこう、この作品はこ...
敬愛する作家についての思いの丈を気になる現代作家が語る、当然面白い。 ヤマザキ氏のルーツや経歴について今まで知らなかったことも多く、そういった側の視点だけでも得るものはあるような。 一方で、安部公房に限らずとも自分の人生の紆余曲折に沿った作家がいて、「あの作品はこう、この作品はこう’みたいな語りが出来るのは羨ましい。アーティストという商売柄もあろうが。
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「個人の実存」という安部公房の一貫したテーマを、個人と個人以外を隔てる「壁」という切り口で読み解く書評。著者の青年期の境遇が安部公房自身のそれと著作のテーマにシンクロしたということで、読み込みの深さや思索の濃さの度合いが高く、ここまで書物を自分事として読み込むことができれば、読書...
「個人の実存」という安部公房の一貫したテーマを、個人と個人以外を隔てる「壁」という切り口で読み解く書評。著者の青年期の境遇が安部公房自身のそれと著作のテーマにシンクロしたということで、読み込みの深さや思索の濃さの度合いが高く、ここまで書物を自分事として読み込むことができれば、読書体験としては最高なことだと思う。
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ヤマザキさんも公房さんも大好きだが、蘊蓄はゲップかな。本棚の奥から赤線いっぱい引いた箱入りの「箱男」手に取る。「100分で名著」もよかったが、より深まった。コロナ禍、ロシア。社会不安高まっている今こそ公房作品と思う反面、進歩のない人間に自分含めて愛想尽かす。
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漫画家のヤマザキマリさんの安部公房論。彼女の人生とリンクした作品の紹介があります。「砂の女」を始めとして数多くの作品が登場します。 ヤマザキさんについては、イタリアに住んでいる漫画家という印象ぐらいでしたが、この本を読みこれまでの半生のエピソードにまずびっくりしました。17歳で絵...
漫画家のヤマザキマリさんの安部公房論。彼女の人生とリンクした作品の紹介があります。「砂の女」を始めとして数多くの作品が登場します。 ヤマザキさんについては、イタリアに住んでいる漫画家という印象ぐらいでしたが、この本を読みこれまでの半生のエピソードにまずびっくりしました。17歳で絵画の勉強のため単身イタリアに渡り、まもなく生活能力に欠けたイタリア人の詩人と同棲していたと言う事実。17歳と言ったらまだ高校生で、女の子。異郷の地に本人の希望とは言え一人やる親がすごい。それも多分仕送りなどはないのか、はたまた少ないのか極貧の生活をしていたようですから、その年齢の大人度が自分とは比べ物にならない!と感嘆しました。そんな環境で出会った小説が「砂の女」。ですからこれは読むべき時期にぴったり合致したのでしょう。 確かに私も若い頃に安部公房は読んだ記憶があります。他にも小松左京、カフカ、ニーチェ…ちょっとジャンルは異なりますが、不条理だとか虚無だとかに何故か憧れ⁈本質は理解できないまま、その小説の雰囲気だけが残っている有り様ですが…彼女の場合はそれを実感していることに凄さがあります。 ヤマザキさんが「砂の女」に代表されるテーマ「壁」は、現在の世の中においては当に物理的にも精神的にも物事を隔てる象徴です。傍目には合理的とは思えないロシアのウクライナ侵攻や人間のコミュニケーションを阻害する感染症の蔓延など世界は、不穏な様相を呈している中にあって、どう考え行動していけばいいのか… 便利さや様々な情報が瞬時に手に入るツールもありながら、そのため息苦しさに喘ぎ、蟻地獄のような閉じた世界に籠る人々。人と違うことを恐れ、孤独では生きられない私たち。 安部公房は…そうした孤独で自由な存在が世間と足並みをそろえて動くのではなく、考え方や行動が一律でなくとも、価値観が違っていても共生していける社会が民主主義社会だと…言わんとしているのではとヤマザキさんは述べています。以前にマルクス・ガブリエルさん(哲学者)が「SNSは民主主義を損なう」と述べていましたが、なるほどこのことか、と思いあたりました。 元々人と群れるのが苦手で、天邪鬼気質の私には、何故皆、他の人と同じじゃないと不安なのか、始終繋がっていることがそんなに良いことなのか疑問だったので、この考えには納得です。 どんな世界、場面においても壁が立ちはだかっており、それは表からも裏からも見える世界があることを自覚したいものです。
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