シャギー・ベイン の商品レビュー
作者の自伝的小説らしい。作者=シャギーではないにしろ、作者が社会的に成功しているということで、読み切れた気がする。 子供は親を選べない。どうしようもない母親だが、最後まで見捨てなかった少年。
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世のアルコール依存症に悩む人々に是非読んで欲しい凄い小説。失踪日記(吾妻ひでお)や今夜すべてのバーで(中島らも)に並ぶアル中文学の大傑作。 主人公シャギー・ベインの母はエリザベス・テイラー似の美人。この女が主人公以上に物語の核なんだが、ちょっとしただらしない性格で、そのだらしなさからアルコールに溺れていき依存症となる。 アグネスの周囲の人々がまた本人以上にクズみたいなヤツばかりで、浮気性でハラスメント要素をもつ夫シャグをはじめ、アグネスの酒を助長する連中ばかり。 一度は断酒を決意するアグネス、1年以上も成功した断酒をぶっ潰したのはシャグと同じタクシードライバーのユージーン。多分こいつが作品中一番の大失敗男で、アグネスの周囲にいるクズ連中よりはよほど紳士なのだが、なんで吞ますかなぁ…。他人の努力を悪意なく最悪のタイミングで潰してくる奴っているよねぇ。 シャギーは母のせいで、そして自分の性癖のため、貧困生活やヤングケアラーであることもとんでもなくひどい人生を送りつつも、最後まで母に寄り添っていく。母との離別は可哀そうだが、もうちょっとマシな…せめて飢えず凍えずキチンと睡眠をとれる生活を送って行って欲しい。 しかし、酒はほんま人生狂わせるし、止めようと少しでも考えたことがる人は、はよ止めた方がいい。そして酒を呑まない生き方をしている人に呑ませるような行為は絶対してはいけない。酒だけでなく、人に何かを勧めるという行為には慎重を期した方が良い。
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長い長い地獄。リアンが登場してきてくれてせめてよかった。スコットランドの宗教対立は、映画ベルファスト、それにセルティックファンダムって本、そしてpop life podcastの海外サッカー回を聴くとすごく深まると思う。
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分厚さの大半は「シングルマザーと自分、それを取り巻く1980~90年代の英国の荒んだ空気」 自伝というからリアルに描かれた迫力がビンビン響いてくる。 だが、国情の違いも加わり、共感を得、感動はしなかった。 日本でもつとに言われるヤングケアラー。 内容自体は古い歴史にもちょいちょ...
分厚さの大半は「シングルマザーと自分、それを取り巻く1980~90年代の英国の荒んだ空気」 自伝というからリアルに描かれた迫力がビンビン響いてくる。 だが、国情の違いも加わり、共感を得、感動はしなかった。 日本でもつとに言われるヤングケアラー。 内容自体は古い歴史にもちょいちょい登場する、いわば小説ネタ。それを逆手に感動をうらんかなはまっぴらごめんと思っているだけに痛みだけが残った読後。 自分の過去を言語に置き換え綴って陽の目を当てたいという筆者の努力は才能だけでなく、並大抵の努力が有ったと思う・・しかし、同じ環境に有って正反対の反社会的環境で蠢いたり、あの世に行ってしまった人間の方がはるかに多い事は想像に難くない。 グラスゴーはよく映画の舞台にも登場する炭鉱町が多い。作品は架空の町乍ら、情景の描写がが巧み、登場する男どもがろくなもんが居ないのも同じ・・ロックミュージシャンも多いし。 エリザベステイラー似というだけで相当な美形は想像できるがそれを基にした感じが強いアグネスの・・50歳を前にした骸、棺を燃やす箇所は寒々としたもの。踏み台にしてぼろくずの様に捨てたシャグ・ユージンは当時,炭鉱の町では一般的な男の姿という感が強かった。
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イギリス・グラスゴー。日本人の私からしたら、全く知らない土地なのに、読み進めるうちに懐かしいような気がしてくる。家の中のことが近所に筒抜けで、格好なんてつけない。ただ自分のままで生きている。必死で生にしがみついている。そういう階層の人間たちが集まっている。裸で人生を進んでいる人た...
イギリス・グラスゴー。日本人の私からしたら、全く知らない土地なのに、読み進めるうちに懐かしいような気がしてくる。家の中のことが近所に筒抜けで、格好なんてつけない。ただ自分のままで生きている。必死で生にしがみついている。そういう階層の人間たちが集まっている。裸で人生を進んでいる人たち。 貧しいということの、泣きたくなるような悲しさ。お金がないということが心を貧しくし、しかしそれと反比例するように生が色濃くなっていく。 作者の自伝的小説というのは、ある種の性格を持ち合わせている。強烈なメッセージを主張したいがために書いたわけではないのに溢れ出てしまう感情の大波。こういうものは、津波のあとの町のように、読者の心を塗り替えてしまう。訳者あとがきで書かれていたが、作者は"どうしてもこの物語を自分の中から取り出す必要があった"と語っている。この物語を体から取り出さなければ、一人の人間として形を保っていられなかったのだろうと思う。 600p超えの大作の、一文一文に薄く暮らしが編み込まれているような文章で、読みにくくはないのに進むごとに物語が染み込んでいくのを感じた。 訳者あとがきを読むことで一層物語が愛おしく思えると思う。最後のページまでぜひ読んでほしい。
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サンサーラが頭の中でなる小説。 ザ・ノンフィクションを観てるみたい。 読んでいて辛くなる時間が多かった。 一方でアグネスがシャギーを取り返しにシャグのもとに訪れ、ゴミ箱を投げつけるシーンは痛快ですらあった。 アグネスが亡くなるシーンがとても印象的。 絶望の果ては静寂と愛が残った。 自分はこんな人生送りたくないし、自分の娘にもこんな目には合わせたくないが、小説の中では絶望の人生も必死に命の輝きを放っていたように思う。
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タイトルはシャギー・ベインだけど、本当の主人公はシャギーの母アグネス。 貧しい肉体労働者の一人娘として生まれたアグネスは、歯並びは悪かったが、エリザベス・テーラー似の美人でスタイルも良く、言葉遣いもきれいで、ファッションセンスもあった。ハンサムではないが誠実で真面目な男と結婚。二...
タイトルはシャギー・ベインだけど、本当の主人公はシャギーの母アグネス。 貧しい肉体労働者の一人娘として生まれたアグネスは、歯並びは悪かったが、エリザベス・テーラー似の美人でスタイルも良く、言葉遣いもきれいで、ファッションセンスもあった。ハンサムではないが誠実で真面目な男と結婚。二児をもうける。 ここまでなら、まあ普通の良い人生。 だけど人間は愚か。そんな平凡で退屈な毎日に嫌気が差し、性的な匂いをプンプンさせるタクシー運転手シャグと子連れで駆け落ちしてしまう。 が、こいつが浮気、DVをするろくでなし。ここから彼女の転落が始まってしまう。この運転手との間に生まれたのがシャギー。 シャグに捨てられアルコール依存症が悪化、どこまでも落ちていき、第一子の娘は結婚することでこの家庭を出ていくが、残された長男リークと次男シャギーはこの母と運命を共にせざるを得ない。 ここが本当に辛い。頼るべき親が男と酒のことしか考えられないため、いつもお腹をすかせ、学校にも行かず、進学もできず、母が飲んで死ぬんじゃないかと不安でいっぱい。 しかもマッチョな価値観が支配する寂れた炭鉱町でシャギーは「普通の男の子」ではない。「オカマ」「おねえ」と呼ばれるような、なよなよした男の子だ。本人も自覚しており、何とか「普通の男の子」になれないかと努力を続ける。サッカーに興味は全くないのにサッカー選手や試合の記録を暗記したり、「普通の男の子」の歩き方を練習したり。 多様性を認められるって豊かさの証なんだな、と。貧しくて、肉体的強さが男の価値である社会は、そうでない男に存在価値を認めない。(女も男に魅力のある女が価値ある女である。)障害があったり、肉体は丈夫でもホモセクシャルだったりする者も同様に排除されるだろう。 だからアグネスがもてるのも、ある意味「女である」ことの価値だけしか認められていないから。そして、その価値がすごく高かったから、価値が下がったと感じてアルコールに救いを求めたのである。 ただ、この母を、息子たちはあきれ、諦めながらも、見捨てない。 それは母が本当は子ども達を愛していることがちゃんと伝わっているから。そしておしゃれで美人で本来は朗らかな母が大好きだから。 祖父ウリーが死ぬとき、べろんべろんに酔っ払って登場するシーン、初めて断酒に成功していたのに、禁を破ってしまうシーンは忘れられない。 読んでいて、これは映画になるなと思った。シャギー役は演技力が必要。アグネス役は美貌と演技力を兼ね備えた40代の女優ならやりたい役だと思う。 荒れ果てたグラスゴーの貧民街の団地も目に浮かぶ。 映像化可能という点で、小説として満点とは個人的にはいかないが、しかし、いい小説だと思う。 アグネスへの哀惜、狂おしいほどの母への愛が伝わってくる。 巻末の解説にはアグネスはギリギリ毒親ではないと書いてあったが、毒親だと思う。 しかし、完璧な人間も完璧な親も存在しない。 毒親ではあったが、子どもへの愛情を疑わせなかったという点で立派だった。 リークもシャギーもたとえどんなに成功しても社会の底辺で生きる人々を他人とは思えないだろう。たとえアルコールや薬物の依存症であっても、体を売って生きているとしても、それには相応の理由があるのだと、理解できる。 毒親だし、客観的に見ればろくでもない女だった。 しかし、彼女の命はこの小説で輝いている。それだけでも素晴らしいと思える。
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これはとめどもなく続くアルコール中毒者であるアグネスの生態記録、アグネスを見放せない一途に健気に寄り添う子供のシャギー、このノベルは諦めずアグネスを見守り更生させたいが出来ないもどかしいシャギーの気持ちに沿って根気よく読み続けないといけない。徒労感が残り消化不良のまま読み終える。
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長編の時代小説を思わせる重量感(616ページ)、勢いよくめくるとシワになりそうな薄っぺらいページの紙。聖書みたいと思ったのも束の間、中身は数々の背信行為で溢れかえっていた。 「誇り高く、いつも周囲を魅了していた。貧しさが国全体を覆っていくなか、彼女は家族をまとめようと必死だった...
長編の時代小説を思わせる重量感(616ページ)、勢いよくめくるとシワになりそうな薄っぺらいページの紙。聖書みたいと思ったのも束の間、中身は数々の背信行為で溢れかえっていた。 「誇り高く、いつも周囲を魅了していた。貧しさが国全体を覆っていくなか、彼女は家族をまとめようと必死だった」 あらすじは、主人公シャギー・ベインの母親アグネスのことを健気な風に記している。だが本書は、こちらの予想を遥かに超えるアグネス像を突きつけてきた。 誇り高く?貧困をものともしないフリをして着飾り見栄を張っているようにしか見えない。「誇り高い」はさすがに誇張している。 家族をまとめようとする?自分の思い描く理想の家庭、と言うよりも理想郷を追求するせいで 周りは離れていき、(これまた長い長い)中盤まで深刻なアルコール依存に苛まれた。 どうしようもない寂しさが満たされないと気持ちが暴走しちゃうのは分からなくもないが、控えめに言っても母親は情けなく映り、同情の念もわいてこなかった。膨大なページ数も手伝って、不毛地帯を歩き続けている気分。と思いきや、一文先で急展開していることがあるから油断ならない。 そんなどうしようもないアグネスも、シャギーにとってはこの世でただ一人の母親。(幸い子供のことは愛している) 彼は彼女の「誇り高い」ところを見放すどころか長所と捉えた。そしていつまで経っても彼女のことを信じている。はっきり言って、こんなの奇跡。 もっと衝撃的だったのは、本書が自伝的小説であるということ。幼かった著者は作中のシャギー同様、母親のアル中を食い止めようと奔走。彼女の伝記を書くというゲームに母親と興じることで注意を引こうとしたという。 母親を愛する一方でどこかで「あってはならない」と思っていたのかな。ニットウェア・デザイナーとして活躍する傍らで本書を書き上げたのだった。 気持ちが晴れぬまま、今は様々な疑念が渦巻いている。 劣悪な家庭環境のみならず、著者も日常生活に横たわるカトリックとプロテスタントの障壁に苦労したんだろうか。(例えば通っている学校の系統がお互い違うと、仲良くなれなかったり信用して貰えなかったり。この背景はあとがきが丁寧に解説してくれている。→あ、逃げた) アグネスや著者の母親のような立場に少しでも近づけば、彼女らの心の乱れを理解できるようになるのだろうか。 長い旅路を終えたが、安息の地には辿り着かなかった。
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シャギーの生きるイギリスの時代背景が、沈みゆく日本の姿と重なって見えた。 母を必要とする年齢のシャギー。少し歳上の兄弟たちと母の関係性が時間と共に変化していく様子から、シャギーと母との関係の未来を予感させ、読んでいて終始切なかった。
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