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人でなしの櫻 の商品レビュー

3.5

42件のお客様レビュー

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2023/05/19

少女を誘拐監禁して自らの芸術を高めようとする親子の物語。 誘拐監禁は一人の人生を破滅させる行為で、周囲の人たちも不幸になる犯罪です。 映画でシリーズ化された「完全なる飼育」も見ていないのですが、自分としては嫌いなテーマです。 ただ、遠田さんらしく腥く艶かしくどす黒い人間の業をフ...

少女を誘拐監禁して自らの芸術を高めようとする親子の物語。 誘拐監禁は一人の人生を破滅させる行為で、周囲の人たちも不幸になる犯罪です。 映画でシリーズ化された「完全なる飼育」も見ていないのですが、自分としては嫌いなテーマです。 ただ、遠田さんらしく腥く艶かしくどす黒い人間の業をファンタジックな世界観であぶりだしているところだけはさすがだと思いました。

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2023/05/18

江戸川乱歩に「人でなしの恋」という作品がある。本作にそれと同じ「人間の業」を感じた。 途中までは世の男達が夢見るファンタジーを描いたものかと思った。清秀の何もかもかなぐり捨てた行動から鬼気迫るものとなり、蓮子の造形も神秘性を帯びる。画家には自己を突き動かす衝動が必要。清秀が蓮子に...

江戸川乱歩に「人でなしの恋」という作品がある。本作にそれと同じ「人間の業」を感じた。 途中までは世の男達が夢見るファンタジーを描いたものかと思った。清秀の何もかもかなぐり捨てた行動から鬼気迫るものとなり、蓮子の造形も神秘性を帯びる。画家には自己を突き動かす衝動が必要。清秀が蓮子に見たものはその「スイッチ」だったわけだ。 作中作で「蓮情」が挿入されている。俗物の天才が身内の秘部を暴く。彼は清秀にとっては落ちた偶像に成り下がるが、そのおかげで清秀は自分が観てるものを自覚する。 画廊主の浅田檀の存在が救いだ。MoMAが買った「人でなし」を願わくば観たい。

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2023/04/25

なんとも凄まじい物語でした。 八歳の少女を誘拐、人身売買、監禁……飼育 この設定に嫌悪拒絶する方には読めない作品です。 そんな読み手の感情は想定内だと言わんばかりの今回の遠田作品…「狂気」と「愛」 誰もが知る老舗料亭の主人である父親が殺された… 殺したのは11年監禁されていた...

なんとも凄まじい物語でした。 八歳の少女を誘拐、人身売買、監禁……飼育 この設定に嫌悪拒絶する方には読めない作品です。 そんな読み手の感情は想定内だと言わんばかりの今回の遠田作品…「狂気」と「愛」 誰もが知る老舗料亭の主人である父親が殺された… 殺したのは11年監禁されていた女・蓮子だった。 そして蓮子に魅入られた日本画家の息子・清秀は自らの作品の為に蓮子を連れ出し…と、息子もまた拉致監禁と言う同じ道に堕ちていくんです。 人生を壊され心を壊された蓮子 身勝手な欲望のみで蓮子を買った父親は鬼畜、とにかく許せない。 ただここから画家・清秀の凄まじい狂気の世界に読んでるこちらもドップリとはまって行くんですよ 全身全霊で求める相手を失った蓮子が同じように自分を求める清秀に囚われていきます。 とにかく絵を描きあげさせてあげたい! 落款押して絶命させてあげたい! 地獄に堕ちても蓮子を描くと言った清秀と蓮子 これも狂気の末の一つの愛の形でした。 そう思うわたしはかなり歪んでます(*_*)

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2023/02/18

遠田劇場、狂い咲き。 父親と絶縁状態だった日本画家の竹井清秀に掛かって来た一本の電話。 駆け付けた先で目にしたのは父親の遺体と八歳で誘拐され十一年間監禁されていた全裸で震える少女。 読者の不快感など想定内だと言わんばかりに物語の衝撃度は更に加速する。 忌み嫌いながらも己の空...

遠田劇場、狂い咲き。 父親と絶縁状態だった日本画家の竹井清秀に掛かって来た一本の電話。 駆け付けた先で目にしたのは父親の遺体と八歳で誘拐され十一年間監禁されていた全裸で震える少女。 読者の不快感など想定内だと言わんばかりに物語の衝撃度は更に加速する。 忌み嫌いながらも己の空洞を埋めるかの如く父の生き様をなぞる清秀。 芸術へ向かう迸る熱量と承認欲求、生への執着、あらゆる感情の渦が混然一体となって迫り来る。 淫靡で禍々しい描写に息苦しさを伴う一方で清秀の哀しみが伝染し胸が詰まる。 凄まじいまでの人間の業の深さに圧倒された。

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2023/02/03

個人的には遠田潤子先生作品ってアンチェルの蝶とか鳴いて血を吐くとかの時期が“遠田潤子らしさ”が出てる気がして好きなんですけど、今回はちょっとだけその原点回帰みたいな雰囲気があったな…と思う やっぱり遠田潤子作品にはドロドロの血の因果がないと…

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2023/01/23

とにかく描写がいい意味で生々しい。 不完全な2人が出会い、心の穴を埋めるように互いを求め合う。 主人公は理性と本能の間で葛藤しながら画家としての欲望を抑えきれずにヒロインの絵をさながら獣のように描き続ける。主人公から見たヒロインの表現が緻密で繊細で色鮮やかな主人公のフィルタを写し...

とにかく描写がいい意味で生々しい。 不完全な2人が出会い、心の穴を埋めるように互いを求め合う。 主人公は理性と本能の間で葛藤しながら画家としての欲望を抑えきれずにヒロインの絵をさながら獣のように描き続ける。主人公から見たヒロインの表現が緻密で繊細で色鮮やかな主人公のフィルタを写し出しているかのようなイメージを掻き立てられた。芸術家というのはみんなそんなものなのだろうか。 1つのことを突き詰めて納得のいくまで自己を表現し続ける芸術家は、自分の中で羨望の対象であったが、この物語を通してむしろそうとしか生きられない可哀想な生き物のようにも見えた。

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2023/05/28

題材的に面白という言葉は適切ではないけど、他に何と表現して良いのかわからない。 本の中に(その世界)に入り込める。 現実ではなくあくまで空想の世界として読んだ。 蓮子は、絵を描く・料理を創る道具の一部であって、蓮子を通して自分を見ているのかなぁと思った。 絵の表現と言うと篠田...

題材的に面白という言葉は適切ではないけど、他に何と表現して良いのかわからない。 本の中に(その世界)に入り込める。 現実ではなくあくまで空想の世界として読んだ。 蓮子は、絵を描く・料理を創る道具の一部であって、蓮子を通して自分を見ているのかなぁと思った。 絵の表現と言うと篠田節子を思い出す。篠田節子だったら、どう表現するのか気になる…。もっと鬼気迫る感じになるのだろうか。

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2022/09/27

初めて手にした作家さんだったが、この物語のテーマが私には理解できなかった。 非現実的な事件から物語は始まるのだが、主人公の日本画家である清秀の行動、心の変遷には客観的な動機が不明であり、必然性に欠けた物語と言わざるを得ない。 芸術を探求する気持ちから起こった蛮行を描くのであれば、...

初めて手にした作家さんだったが、この物語のテーマが私には理解できなかった。 非現実的な事件から物語は始まるのだが、主人公の日本画家である清秀の行動、心の変遷には客観的な動機が不明であり、必然性に欠けた物語と言わざるを得ない。 芸術を探求する気持ちから起こった蛮行を描くのであれば、その心の葛藤を描いて欲しかった。

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2022/08/30

狂気を孕んだ芸術家モノが好きなので、この作品はかなり好きだ。大衆に嫌悪される要素がこれでもかと盛り込まれてるけど、好きだ。 読み応えのある文章力のせいかもしれない。そして女性が書いてる、というのも一因かもしれない。 好きだ。

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2022/08/15

すさまじいものを読まされた。まさに一気読み。もうすごい、すさまじいとしか言われぬ。105頁の描写など、震えた。『廃墟の白墨』もすごかったが、もっと凄い。しかしこの作家、さらに凄いものを書きそうだ。目を離されぬ。惜しむらくは、初版故か、何箇所か誤植があったこと。特に282頁の最終行...

すさまじいものを読まされた。まさに一気読み。もうすごい、すさまじいとしか言われぬ。105頁の描写など、震えた。『廃墟の白墨』もすごかったが、もっと凄い。しかしこの作家、さらに凄いものを書きそうだ。目を離されぬ。惜しむらくは、初版故か、何箇所か誤植があったこと。特に282頁の最終行は解せぬ。

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