パンとサーカス の商品レビュー
何の因果か、この本を読み終えた翌日に元総理は射殺された。 東京新聞等で連載された小説。産経や読捨で連載したら大変な騒動になるだろう。話の根底に流れている考えは、”世襲で無能な男が首相に収まると、政府のマフィア化は進み、不正は公然と行われるようになったにも拘らず、国民はサイコパスに...
何の因果か、この本を読み終えた翌日に元総理は射殺された。 東京新聞等で連載された小説。産経や読捨で連載したら大変な騒動になるだろう。話の根底に流れている考えは、”世襲で無能な男が首相に収まると、政府のマフィア化は進み、不正は公然と行われるようになったにも拘らず、国民はサイコパスに洗脳されたかのように、その無為無策の政権を支持し続けた”という世界観だ。 少年時代からの幼馴染、火箱空也と御影寵児。空也は広域暴力団火箱組の跡取り息子で、人材派遣会社で社会勉強中。寵児は秀才で東大法学部を経て留学し、CIAで働くことになる。その二人がそれぞれ異なる立場を最大限に生かして、日本の世直しを敢行する。とんでもない実力行使も有り、胸躍る展開。 中国とアメリカとロシアの間で上手く立ち回る必要があり、この国にとって外交は大昔から重大事であるが、現在は全てを米国に依存しているというか支配下にある為どうすることもできない。唯一の頼みは経済なのだが、それも今や先細り状態。それでもほとんどの国民は政権を強力に支持し続けている。もっともリベラルは迷走を続けたり、政権にすり寄りおこぼれを頂戴しようとの狙いが有ったりで、泥沼にどんどん足を踏み入れつつあるからどうしようもない。 自主独立国家の確立など、本当に小説の中でしか有り得ないだろう。明日の選挙結果を見るまでもなく…
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ローマ帝国の詩人の言葉をタイトルに据えたところで著者の強烈な皮肉が炸裂している。 パン(食い物というか経済的利益)とサーカス(享楽)ばかりを追い求め、政治的無関心から市民が愚民化してしまいローマ帝国を没落に導いた歴史を現代日本に重ね合わせた「妄想」小説と言っていい。 しかし、妄想...
ローマ帝国の詩人の言葉をタイトルに据えたところで著者の強烈な皮肉が炸裂している。 パン(食い物というか経済的利益)とサーカス(享楽)ばかりを追い求め、政治的無関心から市民が愚民化してしまいローマ帝国を没落に導いた歴史を現代日本に重ね合わせた「妄想」小説と言っていい。 しかし、妄想に過ぎないと思うか、難を避けて実名を記さず「小説」としていると捉えるかは読む人の自由。 史上最長の長期政権がもたらしたものは、結局この国を「日、没する国」にしただけという憤りが、500頁を超える分厚い本を書いた著者の原動力になっている。 ただ、その結果として、いまの時代の空気をあまりにも強く出しているがために、この小説の命脈はそれほど長くないかもしれない。 数十年後、この国が平和で真の独立国として「日、出る国」に再生したときに、苦難のときに書かれた小説として読み返されることを願うばかりである。 分厚い本だが、こなれた語り口の日本語は読みやすい。
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痛快な小説だった。 希望の物語だった。 こういうものを読みたかった。 で、現実世界をどうするかだ。
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愚民政策に慣れ、変えられるという希望を失った多くの主権者たちの中で、希望を持って闘うのは、高校時代に世界の敵を意味するコントラ・ムンディという秘密サークルを作った同級生二人。おのおのヤクザとCIA所属。さらに支援先は大学時代に培った名門女子高出身同級生の記者、議員秘書、弁護士、警...
愚民政策に慣れ、変えられるという希望を失った多くの主権者たちの中で、希望を持って闘うのは、高校時代に世界の敵を意味するコントラ・ムンディという秘密サークルを作った同級生二人。おのおのヤクザとCIA所属。さらに支援先は大学時代に培った名門女子高出身同級生の記者、議員秘書、弁護士、警部の人脈に広がり、自国のことは自国で決めるという言葉にするとすごく当たり前のことなのに、いざ行動に起こすと命懸けの闘争になりました。一連の計画を終えて、大きな成果につながったのかはともかく、愚民は目覚めなければならないという強烈なメッセージを受けとりました。
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ひゃー、長編もろもろ疲れました。 上下巻にしてもよかったんでは(笑) これを新聞連載していて、皆さんついていけたのでしょうか? 著者の帯、「私の暴走にどうかお付き合いください」 があるから、なんとか読了しました。 しかし、最後が尻すぼみ。 今の日本を憂いていても、どうせ思い通...
ひゃー、長編もろもろ疲れました。 上下巻にしてもよかったんでは(笑) これを新聞連載していて、皆さんついていけたのでしょうか? 著者の帯、「私の暴走にどうかお付き合いください」 があるから、なんとか読了しました。 しかし、最後が尻すぼみ。 今の日本を憂いていても、どうせ思い通りにならないのですから、いっそ最後はもっととっちらかしてしまってもよかったのでは。 といろいろ思いながらも、一抹のうすら寒さを憶えながら本を閉じました。
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作者の「暴走」に付き合いました。まあ長かった。 アメリカの望むままに沖縄の基地どころかひと続きの島嶼部の大幅な基地化まで推進していく日本の政治に大きな懸念をもっているが、「日米同盟の先にあるのは中日戦争、米軍は出動せず、日本だけが再びの敗戦を喫する」との見立てに同感だ。右側のみな...
作者の「暴走」に付き合いました。まあ長かった。 アメリカの望むままに沖縄の基地どころかひと続きの島嶼部の大幅な基地化まで推進していく日本の政治に大きな懸念をもっているが、「日米同盟の先にあるのは中日戦争、米軍は出動せず、日本だけが再びの敗戦を喫する」との見立てに同感だ。右側のみなさん、どうやったら中国に勝てるのさ。ん、敵基地攻撃能力ってか。かかか。 戦争はあかんよ。
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図書館本で返却期日が迫ってきて必死に読んだが内容が面白かったので退屈せずに読み進めた。 典型的な左翼思想の考えだが特におかしいとも思えず目指す結果は同じでもアプローチの仕方がい色々あるんだなと思う。 兎に角この作家は内容が面白いので読んでても飽きがこない。エンターテイメント性...
図書館本で返却期日が迫ってきて必死に読んだが内容が面白かったので退屈せずに読み進めた。 典型的な左翼思想の考えだが特におかしいとも思えず目指す結果は同じでもアプローチの仕方がい色々あるんだなと思う。 兎に角この作家は内容が面白いので読んでても飽きがこない。エンターテイメント性が伊坂作品にも通じる所があるのか。 まだ 読んでない作品も興味が沸いた。
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新聞で毎日楽しみに読んだが、デビュー作「やさしい左翼のための嬉遊曲」以来の踏み込んだ政治小説だなと思った。結局、若い時の思いはいつまでもその人の中核として埋み続くものなのだなと。 現代の政治に対する失望は多くの人が感じるところではあるが、作者もまたその一人として、清濁合わせ飲んで...
新聞で毎日楽しみに読んだが、デビュー作「やさしい左翼のための嬉遊曲」以来の踏み込んだ政治小説だなと思った。結局、若い時の思いはいつまでもその人の中核として埋み続くものなのだなと。 現代の政治に対する失望は多くの人が感じるところではあるが、作者もまたその一人として、清濁合わせ飲んででも政治をbetterなものにしたらどうかという提言、と読んだ。 私もその姿勢に共感する。
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