なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない の商品レビュー
心が疲れたときの一冊。本全体を貫く絶妙なメタファーで、自分の心の傷を、うまく迂回しながら捉えさせてくれる。
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『居るのはつらいよ』の臨床心理士・東畑氏による書き下ろし作品。 フィクションに再構成したクライアントの体験や彼らとの会話を事例として扱いつつ、生きづらさを感じる心と向き合うための「7つの補助線」を章を追うごとにひとつずつ紹介していく。個々人が「小舟化」して孤立しやすい現代の状況と...
『居るのはつらいよ』の臨床心理士・東畑氏による書き下ろし作品。 フィクションに再構成したクライアントの体験や彼らとの会話を事例として扱いつつ、生きづらさを感じる心と向き合うための「7つの補助線」を章を追うごとにひとつずつ紹介していく。個々人が「小舟化」して孤立しやすい現代の状況とリンクし、寓話仕立てのストーリーが全体を覆う。専門用語の使用は意図して抑制され、万人向けの「読むカウンセリング」を目指した著作として読める。 各章で順に登場する「補助線」は、「処方箋/補助線」「馬/ジョッキー」「働くこと/愛すること」「シェア/ナイショ」「スッキリ/モヤモヤ」「ポジティブ/ネガティブ」「純粋/不純」の七つ。冒頭とあとがきでも触れられるとおり、現在広く注目を浴びる「生き方本」「セルフヘルプ本」「自己啓発本」といった書籍を意識して作られている。それらが「処方箋」に当たるとすれば、本書は「補助線」の役割を担う。著者は「処方箋」の効能を否定せず認めつつ、他方で人生に悩む人々にとって同様に重要な「補助線」への理解へと導く。 7つの補助線の要素はいずれも、一方の要素がその即効性などで現代社会において高く評価される反面、他方が軽視、または無視されている。そのような、現代において価値が忘れられつつある視点を再評価してリマインドすることも本書の指針となっている。かつ、そのことが、心に悩みを抱える個々人の問題のためにありながらも、広く資本主義が徹底された現代の問題と連動していることを示唆する。 読み物としての本書の重要な性質として挙げられるのは何といっても、わかりやすさへの工夫だろう。具体的にはまず、全体をゆるく包む寓話仕立てのストーリーにあり、夜の荒海に放り出された「小舟」に付き添う著者が、私たちに「7つの補助線」を手渡すことで、無事に心の危機を脱出するまでをサポートする展開が導入を助ける。次に、「7つの補助線」とマッチする形で提示される、著者のカウンセリング経験をもとにしたクライアントの経験が、具体的な問題や「補助線」の利用法へのイメージを促す。もうひとつは、専門用語の抑制や丁寧語による語り口調、改行の多様を選択したことによる読みやすさにある。部分的に「心理学では」「社会学では」といった形で補足することはあっても最低限にとどめ、広い読者と向き合うことを何よりも優先する。 終盤で著者は、本書を貫くのは「も」の思想だと明かす。 「それは現実の複雑さを切り捨てて、シンプルにするためではありません。白と黒に分けるのは、黒を捨て、白にしがみつくためではない。 「も」の一文字を堅持し続けるためです。」 この思想と呼応して、七つの補助線のうちのひとつは、実は紹介される以前の本書の初期から登場している。それは「複雑な現実を複雑に受け止めることを可能」にするものであり、「七つの補助線」は「複雑な現実にケース・バイ・ケースで折り合うためのやり方を見つけ」て実現するために用いられる。 そして、「7つの補助線」を使用することの最終的な目的は「幸福」にある。 本書では、「幸福とは何か」という問いへの回答までもを用意して、読み手に応えようとする。 『居るのはつらいよ』に感銘を受けての本書だった。読みやすさと一般への意識でいえば、フランクでコミカルに書かれていた『居るのはつらいよ』よりもさらにリーダブルである。かつそのうえで、即効性に訴えるわけではなく(むしろその対極にありながら)、できるだけ多くの読者にとって実践的であろうとする徹底した意志がうかがえる。期待を裏切らない内容だった。
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2022/03/16リクエスト 1 今の時代の私達は、夜の荒波に小舟で放り出されたようなもの。 昔は地域や大家族、親戚などみんなが同じ船、大船に乗っていた。 その例えはよくわかり実感する。 筆者はコラムニストではないので、もっと心理学に寄った内容を期待していた。
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家族、キャリア、自尊心、パートナー、幸福……。 心理士として15年、現代人の心の問題に向き合ってきた著者には、強く感じることがあります。 それは、投げかけられる悩みは多様だけれど、その根っこに「わたしはひとり」という感覚があること――。 夜の海をたよりない小舟で航海する。そん...
家族、キャリア、自尊心、パートナー、幸福……。 心理士として15年、現代人の心の問題に向き合ってきた著者には、強く感じることがあります。 それは、投げかけられる悩みは多様だけれど、その根っこに「わたしはひとり」という感覚があること――。 夜の海をたよりない小舟で航海する。そんな人生の旅路をいくために、あなたの複雑な人生をスッパーンと分割し、見事に整理する「こころの補助線」を著者は差し出します。 まるで本当に著者が隣にいて、カウンセリングを受けているような感覚で読める本でした。 自分の心に平穏をもたらすために、5つの補助線をひくと、あら不思議。一辺倒に感じていた悩みに、別の側面が見えてきて、違った見方ができる。すると、少し気持ちが軽くなる。 シンプルな方が良いようなイメージがあるけど、心は複雑にすることでより冷静に向き合うことができるという発見があった。 悩みが深い人は、カウンセリングを受けるのが一番いいと思うけれど、まずはこの本を読んで、心を色んな方向から捉えてみるのも良いと思う。
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