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人類の起源 の商品レビュー

3.7

62件のお客様レビュー

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2023/07/29

古代人ゲノムの分析は、スヴァンテ・ペーボが2022年にノーベル賞を取ったことで世の中の注目を集めた。ネアンデルタール人と現代人との混血の証拠や、デニソワ人の進化上の位置づけを明らかにするなど傑出した成果を残し、人類史の精度を格段に進歩させたまさに同賞に値する研究だ。 この本は、ペ...

古代人ゲノムの分析は、スヴァンテ・ペーボが2022年にノーベル賞を取ったことで世の中の注目を集めた。ネアンデルタール人と現代人との混血の証拠や、デニソワ人の進化上の位置づけを明らかにするなど傑出した成果を残し、人類史の精度を格段に進歩させたまさに同賞に値する研究だ。 この本は、ペーボらをはじめとした研究で、古代人のゲノム分析手法が確立されたことによって明らかになった人類の足跡について、現在分かっている最新の情報をまとめたものである。 著者の篠田さんは2007年に『日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造』という本を出されたが、そのころから比べると数多くのデータが取得されたことからより精緻な結論が出ている。同書も2019年に改訂版が出されたようなので、日本人の起源を知るにはそちらの方がより多くの情報が詰まっているのだろう。 本書は、ネアンデルタール人、デニソワ人といった旧人と現生人類であるホモ・サピエンスとの関係、ホモ・サピエンス誕生の地アフリカでの人類の発展と出アフリカ、そしてより多くのデータがそろっていると思われるヨーロッパ・ユーラシアへの人類の進出(農耕と牧畜の拡大、ヤムナム族の進出)、アジア・オセアニア、日本列島集団の構成 (縄文と弥生の二重構造モデル)、アメリカ先住民の出自、と一通りの人類の旅路について記載されている。これらから、これまでの遺跡や人骨に頼った研究とは一段階も二段階も精度と確度が上がった人類史が確立しつつあるということがよくわかる。 こういった類の本として、デヴィッド・ライクの『交雑する人類』がある。実は、こちらの本の方が読み物として面白い。一方で本書は、新書という制限もあるのかもしれないが、研究からわかった事実を淡々と記載しているという印象がある。事実を網羅的に知るにはこちらの方が効率的だという言えるかもしれない。その意味では良書だと思う。 著者は、あとがきで、「民族」間の遺伝子の違いよりも、個々人の違いの方が大きく、遺伝子的な違いに価値をおくべきではないと強調する。遺伝子研究において集団の優劣にその研究が使われてしまうことに強い懸念を持っている。例えば、ネアンデルタール人出自の遺伝子の割合は、地域によって大きく異なる。特にアフリカ人には出アフリカ後に交雑があったという経緯から当然ほとんど含まれない。ネアンデルタール人由来の遺伝子には人間の能力に何か違いをもたらすものが含まれている可能性もある。このことをもって集団の優劣につなげて議論されることを懸念しているのだ。おそらくそれから目を逸らすのではなく、より”正しい”理解を持つように啓蒙することが重要だと思う。 また、この本で取り上げられた古代人の遺伝子解析ができる研究所は数少なく、人も資金も多くかかり、十指に満たないビッグ・ラボでしか実施できないということが書かれている。このことで研究がある地域に偏ってしまわないようにとは思う。 なお、日本列島集団の分析プロジェクトが2022年で終了し、その成果を発表出るだろうということだ。自分が属する集団がどのように形成されたのか、その遺伝特性とはどのようなものなのかというのは興味のあるところである。 ---- (参考) 『交雑する人類―古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(デイヴィッド・ライク)のレビュー https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4140817518 『ネアンデルタール人は私たちと交配した』(スヴァンテ・ペーボ)のレビュー https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/416390204X 『日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造』のレビュー https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/414091078X

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2022/11/18

人類をDNA分析、いわゆるゲノム分析から分けたものである。類似度は%でしか表せないし、ごく少数のサンプルから分析するということはあるものの、わかってきたことは多い。ただ、日本人に関するものがわずか50ページにも満たないということで、なかなか身近には感じられない。

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2022/08/27

感想 過去を知り今の見方を知る。偏見や差別を打破する第一歩は事実に虚心坦懐に向き合うこと。科学は未来への道標ともなるか。

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2022/12/11

遺跡から発掘した人骨に残されたDNAを解析することに寄って、人類の起源が明らかになり始めている。ホモ・サピエンスのDNAを、一番近い種であるデニソワ人やネアンデルタール人と比較したときにサピエンス固有のDNAは、全体の1.5~1.7%程度にすぎない。また、地域によって、サピエンス...

遺跡から発掘した人骨に残されたDNAを解析することに寄って、人類の起源が明らかになり始めている。ホモ・サピエンスのDNAを、一番近い種であるデニソワ人やネアンデルタール人と比較したときにサピエンス固有のDNAは、全体の1.5~1.7%程度にすぎない。また、地域によって、サピエンスは、デニソワ人やネアンデルタール人のDNAを2%程度持っているが、これは交雑によるものと考えられている。 人類がアフリカから出ていったのは複数回に及ぶと思われる。 日本列島への人類の進出は、縄文人が先に入って、後で農業文明を持た弥生人が入って縄文人を追いやった、という単純な構図ではなく、縄文人自体も複数回の進出の混合したものだし、弥生人の進出も一回ではない。 同じく、アメリカ大陸への人類の進出も、数万年にわたって複数回行われていた。

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2022/05/08

人類史の激動の時代になったことを実感しました。 SDGsがキーワードとなって、人類、世界中の人々が、共通にサステナビリティを考える時代となったこともあり、その共通性を科学的に意識出来るように、なったことはとても重要だと思う。 世界中の国の教科書に、人類の、ホモサピエンスの変遷をし...

人類史の激動の時代になったことを実感しました。 SDGsがキーワードとなって、人類、世界中の人々が、共通にサステナビリティを考える時代となったこともあり、その共通性を科学的に意識出来るように、なったことはとても重要だと思う。 世界中の国の教科書に、人類の、ホモサピエンスの変遷をしっかりと記載できるようになリ、皆が理解することで、世界の人々のサステナビリティに関わる今後の取り組みが飛躍出来るように思う。

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2022/05/05

私自身の大好きな分野であり非常に興味深く読ませていただきました。今後のさらなる研究成果に期待します。

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2022/04/30

人類の起源の真実に近づく過程の中間報告ーー著者は本書をそう位置づける。今や骨片からでも、堆積物からさえもゲノムを検出できるようになったと言う。日進月歩の分野であり、多くの説が塗り替えられた。科学は間違うものと言う著者の姿勢は誠実だ。人類の歩みが以前考えられていたよりもずいぶん複雑...

人類の起源の真実に近づく過程の中間報告ーー著者は本書をそう位置づける。今や骨片からでも、堆積物からさえもゲノムを検出できるようになったと言う。日進月歩の分野であり、多くの説が塗り替えられた。科学は間違うものと言う著者の姿勢は誠実だ。人類の歩みが以前考えられていたよりもずいぶん複雑だということ、未解明のこと、今後解明されるだろうことが随分と多いという印象を受けた。「世界中に展開したホモ・サピエンスは、遺伝的にはほとんど同一といってもいいほど均一な集団である。」この圧倒的な科学的事実は世界をかえるだろうか?

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2022/04/03

古人骨に残されたDNAを解析して、ヒトがどのように移動してきたかを読み解く。古代DNA研究って凄いですね。ネアンデルタール人は教科書に出てきたから知っていたけど、デニソワ人という人類も登場して、面白かった。

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2022/04/01

「人類の進化史、ホモサピエンスの拡散と集団の成立を”古代ゲノム解析”によって分かってきたこと」を解説した内容。 ゲノムの解析が人類の歴史を大きく書き換えつつあることが分かる。 人類史、出アフリカの詳細、ネアンデルタール人やデニソワ人との混合、そして日本人の構成と歴史についても詳し...

「人類の進化史、ホモサピエンスの拡散と集団の成立を”古代ゲノム解析”によって分かってきたこと」を解説した内容。 ゲノムの解析が人類の歴史を大きく書き換えつつあることが分かる。 人類史、出アフリカの詳細、ネアンデルタール人やデニソワ人との混合、そして日本人の構成と歴史についても詳しい。日本人についてわれわれ(私など)が抱いてきたある意味定着した概念が大きく書き換えられるデータがゲノムの解析により生じている。 非常に興味深い内容でした。

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2022/02/24

今はミトコンドリアDNAから先に進んで核DNAを解析する時代に入っているということを初めて知った。科学技術の発達を仕入れとかないと、この手の話題についていけなくなるな、と自分のアンテナ感度をチューニング中。

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