レニーとマーゴで100歳 の商品レビュー
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『レニーとマーゴで100歳』 著者 マリアンヌ・クローニン 訳者 村松 潔(むらまつきよし) 舞台は終始、英国グラスゴーの病院です。 病院スタッフに見つからない様にゴミ箱をあさり一通の手紙を拾う老婦人と、その場面に出会し起点を効かせて彼女を助ける少女との偶然の出逢い。 互いに印象的だった二人は、院内の高齢者向けのアートスクールで再会し、終末期医療を受ける17歳の少女レニーと83歳の老婦人マーゴの、二人合わせて100年分のストーリーを絵にするという共同制作が始まります。この素敵な思いつきは、少女レニーの提案です。 物語の中では、二人の人生が交互に語られていきます。マーゴの語る83年分の人生は(病院を飛び出して)、過去を一年一年描き出します。レニーはこれから続いたであろう人生の長い年数を、マーゴの語りの聞き手となることで、あるいは自分の経験のように感じていたのかもしれませんね。 結末がわかりきっているだけに、二人が生きてきた合わせて100年分の人生を、取りこぼさずに読み進めていきたくなります。 17歳のレニーはスウェーデン生まれ、7歳の時にイギリスのグラスゴーに移住します。複雑な家庭環境にあり、そして思春期で死に直面する彼女は、クールで、自分の考えを神父アーサーにぶつけていきます。周囲の人々に対しても、達観した見方をしていて少女とは思えないくらいですが、そうやって強がることで自分を維持しているようにも思えます。 マーゴとの出会いのシーンでは、起点を効かせる彼女の判断力、行動力がクールで可愛らしいです。 レニーのこれからの人生を、もっと知りたかったと思える魅力的な少女です。(周囲の人たちとしては、振り回されている間は大変でしょうけれど、笑) そして、老婦人のマーゴの83年分の人生。穏やかな雰囲気を感じさせる老婦人の想い出は、彼女の生きた時代を象徴するような出来事に翻弄され、信頼した女(ひと)を晩年になっても愛し続けている姿など、その起伏に富んだ人生が語られていきます。人生半ばからのちょっと個性的な(笑)天文学者との運命的とも言える出会いからは、穏やかで楽しい雰囲気があり微笑ましかったです。 病院の礼拝堂の神父アーサーとレニーのやり取りや、アートクラスの臨時雇いピッパの人生もクロスしながら、この本に深みを加えています。 そして。終盤は、やはり涙が溢れました。 60点の作品の完成を祝う会が開かれ、レニーは作品を鑑賞する周囲の人々の姿に対して、自分の葬式を見ているような感覚にとらわれます。〈わたしはもっとやりたかったのに。もっとたくさんのことをやりたかったのに。〉という、押し殺してきた感情が表現されています。それでも彼女は取り乱さず、その場から離れることで、心を落ち着ける行動を取ります。ともすれば、無神経にもその他の人々の様な行動をとってしまうかもしれない自分に、クールな少女レニーの行動はハッとさせられました。 最終話『マーゴのおやすみ』。一通の手紙が繋いだ二人の出逢いは、少女レニーが先立ち、マーゴもまた大手術を控えています。 レニーはぬいぐるみの豚のペニーをマーゴに残していました。怖がらなくてもいいようにと。 最後まで、互いへの思いやりが溢れていますね。 そして二人はそれぞれチケットを手に、人生のターミナルから旅立っていきました。 読み終えるのに時間がかかってしまいましたが、温かな気持ちが残っています。よい読書の時間でした。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 作者について。 あとがきに、『マリアンヌ・クローニンへのインタビュー』が記載されています。ここで、この本を書くのに六年あまりかかったこと、お気に入りの本のこと、泣かされた本のこと、笑わわされた本のことなどが語られています。訳者の松村潔さんのあとがきからも、この本の魅力がとてもよく伝わってきます。素敵な作品をありがとうございました。
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17歳の少女レニーと83歳のマーゴット、終末期患者の病棟で出会い、2人合わせて百歳であることを祝い、これまでのそれぞれの1年の思い出を語り1枚の絵に描く。命の終焉が迫っているにも関わらず、いや死を常に意識せざるを得ないからこそレニーもマーゴットも燃え尽きる前の蝋燭のように生き生き...
17歳の少女レニーと83歳のマーゴット、終末期患者の病棟で出会い、2人合わせて百歳であることを祝い、これまでのそれぞれの1年の思い出を語り1枚の絵に描く。命の終焉が迫っているにも関わらず、いや死を常に意識せざるを得ないからこそレニーもマーゴットも燃え尽きる前の蝋燭のように生き生きと輝きながら、人生という贈り物を友情と愛で鮮やかに彩る。 Your heart is beating and your eyes are seeing and your ears are hearing. You’re sitting in this room completely alive. And so you’re not dying. You’re living. 「あなたの心臓は動いているし、 目は見えているし、耳は聞こえている。あなたは完全に生きた状態でこの部屋に坐っている。だか ら、あなたは死にかけているわけじゃない。あなたは生きているのよ」
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最近読んだ外国文学3作品(「年年歳歳」「過去を売る男」と当作)はブクロクでの評価が高かったので楽しみに読んだのだけれど、やはり、とても良かった。良いと感じる物語は色々な要素を含んでいて、且つ、一つ一つの要素が深いので、読後に様々な感情が湧き上がってきてまとまりがつかなかったり、余...
最近読んだ外国文学3作品(「年年歳歳」「過去を売る男」と当作)はブクロクでの評価が高かったので楽しみに読んだのだけれど、やはり、とても良かった。良いと感じる物語は色々な要素を含んでいて、且つ、一つ一つの要素が深いので、読後に様々な感情が湧き上がってきてまとまりがつかなかったり、余韻に浸っていたかったりで、なかなか感想を書きにくい。 上質な物語に出会えたことに感謝。
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終末期患者の17歳の少女レニーと83歳の老婦人マーゴが出会い、ふたりで100年分の人生を100枚の絵に描く。 マーゴの人生が波乱万丈に描かれているのに対して、レニーの振り返る学校や家庭の話は少なく寂しく、病院での出来事が中心になる。病院の時間が長いことがわかる。 ふたりで100歳...
終末期患者の17歳の少女レニーと83歳の老婦人マーゴが出会い、ふたりで100年分の人生を100枚の絵に描く。 マーゴの人生が波乱万丈に描かれているのに対して、レニーの振り返る学校や家庭の話は少なく寂しく、病院での出来事が中心になる。病院の時間が長いことがわかる。 ふたりで100歳100枚の絵だから、83対17の数の差がつらい。もしレニーがマーゴの年齢まで生きることができたらいろいろ体験をして美しい人生があったはず…と考えてしまう。 レニーはマーゴの話を聞きながらその人生をなぞることで、得られない人生を生きたのだ。 死に確実に向かいながら怖じ気づかないようにユーモアを持って立ち向かおうとするレニーがいとおしく切ない。現実は厳しく死への歩みの描写に胸が潰れる。マーゴの最後の言葉は「あなたは死ぬことをはるかに楽しいものにしてくれた」穏やかな気持ちで本を閉じた。
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83%マーゴの話。 状況描写がしつこく感じてしまったり、途中、長く感じてしまったけど、マーゴの夫のハンフリーとの最後の思い出や、レニーの死に、最後はしっかり良い話だなー、と思わされた。 「夜を怖れるにはわたしはあまりにも星々を愛しすぎている」
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電車の中で読んでいたのに、思わず涙が溢れてしまった物語。レニーとマーゴがそれぞれ生きた、そして共に生きた100年のお話。
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病院内のアートセラピーで出会った17歳の少女レニーと83歳のマーゴは、出会った瞬間友達になった。 2人の年齢は合わせて100歳! そのことに気づいた2人は(もうすぐ死ぬと言われている2人は)、自分たちの100年分の人生を絵に描こうと思いつく。 この物語はそんな歳の離れた2人の、人...
病院内のアートセラピーで出会った17歳の少女レニーと83歳のマーゴは、出会った瞬間友達になった。 2人の年齢は合わせて100歳! そのことに気づいた2人は(もうすぐ死ぬと言われている2人は)、自分たちの100年分の人生を絵に描こうと思いつく。 この物語はそんな歳の離れた2人の、人生と愛と絆の物語だ。 作者の友人などが評するように「面白い(ファニー)」な作品(私はレニーとマーゴのユニークさが好きだ)だが、彼女たちの振り返る人生は酸いも甘いも苦みもあり、切なさもある。面白いが、けして面白いだけではない。喪失や悲しみもあるのだから。 ーマーゴは何しろ83歳だから、その分たくさんの出会いと別れと二度と戻らない存在と、心の中に愛する人を残して…たくさんの思い出がある。ー 何より2人は死にかけていてー特にレニーはまだ17歳。「わたしはなぜ死ぬの?」とアーサー神父に切実に問うこともある。それでも彼女の心は自由で、残り少ない生命を全力で駆け抜けるべく、絶対安静の状況になってもやりたいことをやろうとする。 そういった描写は、裏表紙で梨木さんが評しているように、「これは明らかに「健康な」「若い人」が書いたフィクションである」。 レニーはとても終末期患者には見えないし、物語の最初は病院内をちょこまか動き回っていて、長いこと入院していたわりに容態の悪化も急だ。 しかしフィクションだからこその、彼女の終末期患者らしくない振る舞いが、彼女のように生き抜けたら…と勇気をくれる。 そんな彼女たちの100年分の人生は濃厚だ。 病院という、特に容態の悪い彼女ら(特にレニー)には、多くの制限がある。変化のない病棟では、時間の流れにも鈍感になる。 その中でユニークなことを思いつき、精一杯やりたいことをやり、お互いの物語を語り合い、お互いの物語のなかに旅をするレニーとマーゴ。 そして2人を温かく見守り、応援する、同じくアートセラピーを共にする他の80代の患者たちや、レニー担当の新人看護師に、アーサー神父。 彼女たちの心の中に大切にいる家族たち。 彼らがあってこそ、レニーもマーゴも、美しい人生を胸に抱いていられたのだと思う。 「あなたに会うまで、死にゆくのがこんなに楽しいとは思わなかった。」 最後の最後に、そんな彼女の気持ちが沁みてくる。 彼女たちの人生に祝福を…。 いや、祈るまでもない。 彼女たちに祝福がなければ、誰にあろうか。
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裏表紙の梨木香歩さんの表にあるように、これはフィクションなんです、なんですが、よくできたフィクションで、私はハンフリーとの別れに泣きました。 「わたしはときにはハンフリーの会いを当たり前のものと見なしたが、それはだれかに愛されているとほんとうに革新できるときにしかできないことだろ...
裏表紙の梨木香歩さんの表にあるように、これはフィクションなんです、なんですが、よくできたフィクションで、私はハンフリーとの別れに泣きました。 「わたしはときにはハンフリーの会いを当たり前のものと見なしたが、それはだれかに愛されているとほんとうに革新できるときにしかできないことだろう。わたしは彼が満足しているのを知っていたし、自分もそうであることがわかっていた」 アーサー神父のコメントもよかった。レニーを笑わせてくれて。
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終末期の、17歳のレニーと83歳のマーゴが、お互いの人生を語りなぞって合わせて100歳分豊かに生きる。 生と死と愛。重いテーマだけど、正直で軽やかなファンタジーのようで、ある意味明るい。 すぐ近くにある死に向かっていても豊かに今は生きている。話を聞くことでする新しい体験と共感と伴...
終末期の、17歳のレニーと83歳のマーゴが、お互いの人生を語りなぞって合わせて100歳分豊かに生きる。 生と死と愛。重いテーマだけど、正直で軽やかなファンタジーのようで、ある意味明るい。 すぐ近くにある死に向かっていても豊かに今は生きている。話を聞くことでする新しい体験と共感と伴走。風変わりで魅力的な登場人物。 なんか書きたい感想を書けてないけど、今回はこんな感じで。
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タオルを用意して一気読み。ターミナル(終末期ケア病棟)での日々の物語が、先日父親を送った場所を彷彿させてやるせなかった。感想を書いてる今も胸に込み上げるものがある。 繊細ながら生きる本質を突くレミーがとても魅力的に描かれていて、単なる感傷的な物語に終わらない。1日1日を愛おしむ様...
タオルを用意して一気読み。ターミナル(終末期ケア病棟)での日々の物語が、先日父親を送った場所を彷彿させてやるせなかった。感想を書いてる今も胸に込み上げるものがある。 繊細ながら生きる本質を突くレミーがとても魅力的に描かれていて、単なる感傷的な物語に終わらない。1日1日を愛おしむ様に暮らしたい。
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