怪異猟奇ミステリー全史 の商品レビュー
欧米から日本に至るミステリーの系譜。 オカルト、エログロ、ゴシック、擬似科学、変態性欲などを切り口に、次々と書名を挙げつつ展開される博覧強記の面白さ。どれもこれも読みたくなる。 広義のミステリを扱うので、エンタメ小説の流れが見て取れます。
Posted by
タイトル通り「ミステリー全史」にはなってるんだけど、「怪異猟奇」という文字に期待して読むとちょっと違うかなあと。さすがその道の専門家だけあってゴシック小説の始祖『オトラントの城』から始まる小説史の流れを当時の思想宗教なども絡めてわかりやすく解説してくれる。大まかに前半が西洋小説史...
タイトル通り「ミステリー全史」にはなってるんだけど、「怪異猟奇」という文字に期待して読むとちょっと違うかなあと。さすがその道の専門家だけあってゴシック小説の始祖『オトラントの城』から始まる小説史の流れを当時の思想宗教なども絡めてわかりやすく解説してくれる。大まかに前半が西洋小説史で後半が19〜20世紀初めの日本の探偵小説(幻想小説)史といったところ。ただ、なんというか、まるで講義を聴いてるような感じで、個人的にはお勉強感が強かった。特に期待したエログロ小説に触れた紙幅がさほどなかったのが残念。まあ風間氏もおっしゃる通り美女の切断死体がほとんどだったのだろうけど。作品のあらすじについて触れている部分があまりないのでブックガイド的なものを期待すると肩透かしを喰らいます。 【目次】 第一章 ゴシックこそがミステリーの源流 第二章 恐怖の二つのタイプ 第三章 ポーとセンセーション・ノベル 第四章 スピリチュアリズムとオカルト探偵 第五章 ドイル、そしてフロイトへ 第六章 内なる獣人、吸血鬼、火星人 第七章 黒岩涙香と翻案小説 第八章 ホームズとルパン、そして捕物帖 第九章 日本SFの始祖、押川春浪と武侠冒険小説 第十章 文豪たちの探偵小説 第十一章 雑誌「新青年」と江戸川乱歩、そして〈変態〉 第十二章 乱歩とエログロ・ナンセンスの時代 第十三章 探偵小説から推理小説、そしてミステリーへ 第十四章 〈新本格〉の登場、時代はパラミステリーへ? 参考文献、人名・作品名索引つき
Posted by
怪異猟奇ミステリの文学史。古い時代から連綿と受け継がれてきたミステリの歴史ですが。結局のところ、結論はこれに尽きるのかも。 「純文学以外の面白小説はみな探偵小説のひとくくり」 なんだかんだいっても、とにかくミステリはおもしろい。それに尽きます。
Posted by
内容が好みで良かった。 古い小説は青空文庫で読めそうなのがいくつかあったから興味のあるやつをとりあえずダウンロードしてみた。
Posted by
前半部(第一~六章)が欧米編、後半部(第七~十四章)が日本編と分けられてはいるが、実のところメインは後半部の日本編であって、前半はミステリーのみならず怪奇幻想やSF、ホラーの源流たる18世紀のゴシック・ロマンス「オトラントの城」から、明治時代に日本へ輸入されるまでの大まかな流れを...
前半部(第一~六章)が欧米編、後半部(第七~十四章)が日本編と分けられてはいるが、実のところメインは後半部の日本編であって、前半はミステリーのみならず怪奇幻想やSF、ホラーの源流たる18世紀のゴシック・ロマンス「オトラントの城」から、明治時代に日本へ輸入されるまでの大まかな流れを述べた、という印象。ウェルズ「宇宙戦争」が出たところで唐突に日本編に入っちゃうし。 帯にある「異端の文化史」として、あるいは「幻想文学史の一側面」として読む分には面白いが、タイトルの“ミステリー”よりも“怪異”“猟奇”というワードに食指が動いた自分としてはやや肩透かし。さすがに20世紀の欧米モダン・ホラーについて触れられるとは思わずとも、“猟奇”とあればサイコホラー系やその周辺について言及されるだろうと期待しちゃうじゃあないですか。 ……勝手に期待した自分が悪いんだけど。 著者には『ホラー小説大全』をアップデートした令和版を出してほしいもので。
Posted by
ゴシック小説からオカルト・猟奇趣味・犯罪興味の視点から探偵小説が語られていく。本格・スパイ・ハードボイルドなどの視点はない。 話の流れとはいえ疑似科学であるフロイトの理屈で綾辻行人眼球綺譚を解説するのには辟易した。作者本人も妄想といっているが。 モダン・ガールとバラバラ死体を<切...
ゴシック小説からオカルト・猟奇趣味・犯罪興味の視点から探偵小説が語られていく。本格・スパイ・ハードボイルドなどの視点はない。 話の流れとはいえ疑似科学であるフロイトの理屈で綾辻行人眼球綺譚を解説するのには辟易した。作者本人も妄想といっているが。 モダン・ガールとバラバラ死体を<切断>で解説する後半あたりから言葉遊びが増えてきて気持ち悪くなってきた。全史とあるが作者の趣味嗜好・コメントが全面に出ている。 猟奇趣味が嫌いなのに怖いもの見たさで手に取ったのが間違いであった。相当人を選ぶ。
Posted by
2022年発行、新潮社の新潮選書。前半は、西欧の18世紀のゴシックものか19世紀までの流れ。これが第6章まで。そして7章以降が明治以降の日本の流れ。西欧の方は目になじみのない作家も多く出てくる。日本の方はだいたい目にしたこがある作家が多いが、古い作家を中心にみたことがない作家も。...
2022年発行、新潮社の新潮選書。前半は、西欧の18世紀のゴシックものか19世紀までの流れ。これが第6章まで。そして7章以降が明治以降の日本の流れ。西欧の方は目になじみのない作家も多く出てくる。日本の方はだいたい目にしたこがある作家が多いが、古い作家を中心にみたことがない作家も。怪奇猟奇の話といえども当然文学史の流れに沿っている。当たり前の話なのだが、少し新鮮である。
Posted by
ミステリーの系譜が一望できる良書です。次から次へと流れるように作品が紹介されており、博覧強記という表現がふさわしいと思います。私は「これは知ってる、これは知らない」とメモを取りながら読みました。ブックガイドとしても良い本ですね。
Posted by
2022-03-10 こういうのはササッと読むに限る。 裾野の広い「ミステリー」の源流をたどる旅。欧米での源流から、翻案を経て日本で広がるさまを外観。ぼんやりとしていた自分の知識がスッキリまとめられていた。
Posted by
タイトルは一見おどろおどろしいが、"怪異"といい"猟奇"といい、日常普通のことではないと考えれば、ミステリーやホラーの領域と言っても良いだろう。 本書は二部構成で、前半は欧米篇。ゴシック小説の始祖『オトラント城』から始まり、ゴシック・...
タイトルは一見おどろおどろしいが、"怪異"といい"猟奇"といい、日常普通のことではないと考えれば、ミステリーやホラーの領域と言っても良いだろう。 本書は二部構成で、前半は欧米篇。ゴシック小説の始祖『オトラント城』から始まり、ゴシック・ロマンスの代表作家アン・ラドクリフの紹介(折しも最近『ユドルフォの城』が翻訳された)。terror(心理的恐怖)とhorror(生理的、肉体的恐怖)との違い。ポーとイギリスのセンセーション・ノベルの流行。スピリチュアリズムとオカルト探偵の登場。進化論の対概念の退化論の流行とロンブローゾの生来性犯罪者説、観相学、骨相学さらに優生学へ。 後半は日本篇。黒岩涙香の翻案小説。ホームズとルパンの紹介と捕物帖。SFチックな政治小説。谷崎、春夫、芥川等の探偵小説と乱歩の登場。 大正末のこの時期に〈変格〉ものが受けた文化的背景として、"変態心理"、"変態性欲"があるとする。不健全なものを好む性向。特にうなずかされたのは、乱歩が好んで描写した、死体を切断され晒される猟奇殺人事件の被害者、モダンガール。父権制社会の反逆者モガは見せしめのために虐殺されるのだ。 夢野、小栗等の戦前の探偵小説黄金時代を紹介した後、最終章は〈新本格〉からパラミステリー?へ。 〈新本格〉以降の日本作品はほとんど読んだことがないこともあり、正直この辺りの記述は駆け足過ぎて良く分からなかった。 ブックガイドの役割は十分あると思うが、欧米篇と日本篇の関係も切れてしまっていて、あまりこの分野に関心がない読者には分かりづらそうだ。
Posted by
- 1
- 2