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「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ の商品レビュー

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19件のお客様レビュー

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2022/11/04

『させていただく』について敬語の歴史的変遷、多用されることによる違和感など分析した書籍。私自身、『させていただく』の多用が気になる方で、なるべく使用したくないと思っていた。ただ多用される理由が、それまでの敬語が敬意漸減という避けられない変化にあること、謙虚な自分を示すためであるこ...

『させていただく』について敬語の歴史的変遷、多用されることによる違和感など分析した書籍。私自身、『させていただく』の多用が気になる方で、なるべく使用したくないと思っていた。ただ多用される理由が、それまでの敬語が敬意漸減という避けられない変化にあること、謙虚な自分を示すためであることと記されており納得した。前者は言葉の変化として自然な流れだと思うが、後者の理由は今の生き方を反映しているようで、息が詰まるようだなと思った。人はインターネット、SNSの普及などから多くの恩恵を受けているが、一方で精神的には相当大きな変化を強いられていて生き辛くなっているような気がする。

Posted byブクログ

2022/06/25

1990年代から拡大した「させていただく」という敬語。 それがどのような背景で広がったのか、言語的に何を意味するのかを追った本。 「『させていただく』の語用論」という本を新書むけにリライトしたものであるようだ。 私にとって勉強になったのは、敬語の体系の整理。 いわゆる伝統的な敬...

1990年代から拡大した「させていただく」という敬語。 それがどのような背景で広がったのか、言語的に何を意味するのかを追った本。 「『させていただく』の語用論」という本を新書むけにリライトしたものであるようだ。 私にとって勉強になったのは、敬語の体系の整理。 いわゆる伝統的な敬語の体系(尊敬・謙譲・丁重・丁寧・美化)に加え、授受動詞(やる、くれる、もらうのやりもらい動詞)により、相手との距離をコントロールするというところだ。 ただ、伝統的な敬語が、身分の差を前提にしていて、授受動詞の方は現代のその場限りの上下関係の表現に即しているというのは、実感としてわからない。 そのやりもらいの動詞、主要なものはおおよそ、次のような形で登場したという。 中世 ~てくれる 中世~近世 ~てくださる 中世末 ~てもらう 近世末 ~ていただく 近代 ~させていただく 交代は、敬意漸減(使い過ぎにより敬意を感じられなくなること)による。 おもしろいのは、「~させていただく」の用法の変化。 前節部(「~」の部分)に入る言葉は多様化している。 一方、後接部の表現は、ほぼ「ます」が続くだけの、言い切り形に収れんする方向に変化していっているという。 一言でいえば、用法がワンパターンになるということだ。 これは、本書には出ていない言葉だけれど、要はコンビニ敬語と同じで、作り方が簡単な形一つに特化して使用が集中していったということだろう。 なぜ違和感を感じる人が多いかという分析もある。 筆者は、この表現について、使われる必然性を説きつつ、人間関係の疎遠化による自己愛的な敬語とみている。 自分の感じる違和感が少しわかった気がする。 私自身は、敬語のバリエーションを重視する傾向がある。 一つの言い方で押されることで、一つの関係性に閉じ込められる気がして、息苦しい。 また、一つの敬語のパターンで語られるとすれば、ある意味ぞんざいに扱われている気がしないでもない。 すでに、「~させていただく」は私の中で敬意漸減が起こっているのかもしれない。 新書ということを意識して、きちんと用語の定義がなされているところがよかった。

Posted byブクログ

2022/06/04

「させていただく」が汎用化している背景、さらには、敬語の主体のあり方が変わってきている分析、読んでいてなるほどと感じました。

Posted byブクログ

2022/04/05

コミュニケーションの変化が生んだということに納得できた。また、聞き手によって受け止め方は様々なので、余り気にしても仕方ないとも感じた。

Posted byブクログ

2022/04/06

「させていただく」new wordかと思いきや、1871年の落語のその使用が確認されていると言う。 しかし1990年代に使用が増加したのは確か。 聞くたびに違和感を持っていたのだが、大学教授がコーパスを使用した「させていただく」等の使用例と多くの人から取ったアンケート結果から、そ...

「させていただく」new wordかと思いきや、1871年の落語のその使用が確認されていると言う。 しかし1990年代に使用が増加したのは確か。 聞くたびに違和感を持っていたのだが、大学教授がコーパスを使用した「させていただく」等の使用例と多くの人から取ったアンケート結果から、その言葉の使用について深く解析をしていることから、やはり一般的にも気になる語用法だったのかがわかる。 面白いのが、言葉から人間関係の変化を理解しようとする試み。 本書によると、敬語が相手に対してより自分の丁寧さを示す表現へと変化していると言う。 「させていただく」は「させる」(許可)と「もらう」(恩恵)の敬語形「いただく」からなる。先につく動詞(前接部)は多様性に富むが、聞き手が関与できるものかどうかで違和感の大きさに通じる。そして後の言葉はそれほどのバリエーションがなく、 「させていただきます」と言う言い切り形が増加し定型化したので、場合によっては「俺に許可を求めとるんとちゃうんかい」と腹を立てるおっさんも出てくる。 「させていただく」ブームは「丁寧な自己」で自分を守り、他者と繋がることを避けるコミュニケーションが増加している表れと言える。 違和感を数式を用いて解くがごとく、みごとに説明してくれていると思うが、やや冗長すぎたかな。

Posted byブクログ

2022/03/04

使われている理由はなんとなく分かっていた事だったけど、言葉というのは徐々に進化したり劣化したりするんだというデータがあり面白い。文法的な説明が沢山あり、苦手なのでこんがらがる

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2022/02/23

よく耳にし、意識せずに使用している「させていただく」という表現と背後にある敬意漸減という語の宿命と、それに対応する話者の対応としての敬意のインフレ。 「させていただく」の本来的な意味の要素であった使役性、恩恵性、必須性が、使用とともに任意的なものになり、その最先端がおのののかの「...

よく耳にし、意識せずに使用している「させていただく」という表現と背後にある敬意漸減という語の宿命と、それに対応する話者の対応としての敬意のインフレ。 「させていただく」の本来的な意味の要素であった使役性、恩恵性、必須性が、使用とともに任意的なものになり、その最先端がおのののかの「しっかり整わせていただいた。最高!」。そして文末表現調整に見える、「させていただく」の敬意漸減の兆し。まさに変化の只中にある「させていただく」についての言語学者のライブレポートとしておもしろかった。終盤は言語の社会学的な視点の印象。Brrown&Levinsonのポライトネスの概念より、そのもとになったGoffmanの「表敬」と「品行」に対応した見方が「させていただく」と他の敬語の捕捉にマッチする様がどこかアツイ。 自分としては、本来的な用法を基本にしながら、状況をうかがいつつ、本来の要素を外して用法を拡大する運用としてみたい。 言語学について理解のある人であれば問題ないだろうけど、「使い方」という表題は”正しい”使用法を求める人に勘違いされないか少し不安…。これは言語学自体の問題のような気もするけれど。

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2022/02/21

初めはいいのだが、だんだんくどくなるのが、専門家。 「させていただく」は自分のために。「帰る」の謙譲語がないから、「帰らせていただく」になる。 KADOKAWAの本の表紙カバーは反り返って邪魔。他の出版社のはならないのに。「本日は大安なり」も、KADOKAWAだった。反り返ってひ...

初めはいいのだが、だんだんくどくなるのが、専門家。 「させていただく」は自分のために。「帰る」の謙譲語がないから、「帰らせていただく」になる。 KADOKAWAの本の表紙カバーは反り返って邪魔。他の出版社のはならないのに。「本日は大安なり」も、KADOKAWAだった。反り返ってひどくて、

Posted byブクログ

2022/01/10

違和感を覚える人も多い「○○させていただく」について(自分も場面によっては強く違和感を覚える)、語用論の観点から分析している本。 著者が以前に出版した学術書の内容を非専門家向けに噛み砕いて解説しているため、内容の妥当性を保ちつつ、非常に読みやすい。 敬語に遠隔性と近接性があっ...

違和感を覚える人も多い「○○させていただく」について(自分も場面によっては強く違和感を覚える)、語用論の観点から分析している本。 著者が以前に出版した学術書の内容を非専門家向けに噛み砕いて解説しているため、内容の妥当性を保ちつつ、非常に読みやすい。 敬語に遠隔性と近接性があって、これらの調節の自由度が高いために「させていただく」の人気があることや、「させて」と「いただく」が統合的に運用されており、その後に続く語の多様性が損なわれていくことが平板的な表現を招き、特に働き盛りの世代からの人気が少ないこと、そもそも全ての敬語は「敬意の漸減」を免れ得ないことなど、興味深い分析結果がたくさん披露されている。 また、「させていただく」の運用についてのみならず、語用論のアプローチ自体の概説書になっているのも面白い。「言葉は生き物だから」という言葉自体ももはや耳慣れすぎて若干食傷気味だけれど、語用論アプローチがこれほどまでに丁寧に言葉の運用のされ方や変遷を描くことができるのか、ということを発見できて感動した。 さらに、ゴフマンの理論が用いられており、社会学を専攻していた身からしても親近感を覚えた。 言葉の運用について、それを排他的に扱うでもなく、称揚するでもないような眺め方は、人間をよりよく理解しようという人文学・社会科学の根幹に適切に則ったものだな、と感じた。

Posted byブクログ