世界は「関係」でできている の商品レビュー
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量子力学が分かりにくい。ニュートン力学など従来の考えではとうてい納得いかない。 多くの人の共通した認識ではなかろうか。本書もこの観点、筆者も通った道から説明をしている。そもそもこの導入が罠である。もっとも私達の多くはこの文脈からしかのみこの山を登れない。この山は様々な状態を内包している。しかしそこにはすぐには気づかない。 第五章にて、ボーアの直感をあらゆる自然現象に拡張した記述として以下を挙げている。 ― 以前は、あらゆる対象物の属性は、たとえその対象物と、ほかの対象物との相互作用を無視したとしても定まると考えられていたが、量子力学は、その相互作用が現象と不可分であることを示している。どんな現象であろうと、明瞭に記述するには、その現象が発現する相互作用に関係するすべての対象物を含める必要がある。 ― ニュートン力学を是としているがそもそもそれが間違いである。工学を学んだ者なら誰でも知っている。つまり、ニュートン力学通りの実験は行えない。必ず誤差が生じる。つまり、ニュートン力学はある可能性を無視した理想でしかない。重力による落下を考える。観測系に含まれるのは、空気抵抗だけではない。そもそも重力は私たちに一定に働いていない。近くに重力物があれば相互作用してしまう。 本書では外側から見る観察者もいないとしている。つまり物理学とは常に一人称である。内側から外側を記述しているに過ぎないという。 これもしんであるあ。たまたま、一人称でも三人称でも同じに結果になる。それがニュートン力学という認識である。つまり、特殊解のはずのそれを一般的であるとし、そこから普遍して考えるからおかしなことになる。 私たちのコミュニケーションはうまくいかないことが多い。それは自分が正しい。もしくは、自分のものの見方を、他者もしていると勘違いしている時に生じる。 絶対はない。全ては相対的である。ただし、同じ系での相互作用を経験している別の存在とは、同様な知見を持っている可能性は高い。よって相互作用する中で、互いの認識を合わせられる可能性は高まる。ある程度の合意のが生じることで、語り合う、という相互作用が生じる。 これはヴィトゲンシュタインの言うところの言語ゲームに他ならない。 私たちは本書を簡易に理解する方法がある。ニュートン力学などに依拠する認知や理解は、世界を楽に認知するための方便である。確かに近似はするが正解では無い。 より小さいものの理解は、観測するための系の影響が無視できない。様々な実験の不可思議さは、その実験が世界の在りようのいったんをたまたま極端な形で提示しているのに過ぎない。 世界は不確定かつ確率的にしか観測できない。エンタングルメントは生じる。その事実があるに過ぎない。 問題は特殊解であるニュートン力学的な理想で記述しようとする無謀さである。 そう考えると、一切皆苦。空。等の仏教世界も量子力学の世界を解釈するのに使われるのも納得である。
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『世界は「関係」でできている』――つまり縁起(えんぎ)である。量子力学が仏教に迫る様は、古い経典をありがたがって読むだけの既成仏教に鞭を振るう。しかも悟りから遠ざかった僧侶どもが語る縁起は概念に過ぎず、量子力学の観測やデータには遠く及ばない。 https://sessendo.h...
『世界は「関係」でできている』――つまり縁起(えんぎ)である。量子力学が仏教に迫る様は、古い経典をありがたがって読むだけの既成仏教に鞭を振るう。しかも悟りから遠ざかった僧侶どもが語る縁起は概念に過ぎず、量子力学の観測やデータには遠く及ばない。 https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2024/07/29/140116
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すべてはタイトルに集約されるように、物事は関係において成立し、私が生きているか死んでいるかそれ自体はわからない。相手との関係においてのみ成立するということ。 また、今この瞬間の私の行動がこの世界、今後の時代に少なからず影響を与えている。
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物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。 東大OPACには登録されていません。 貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください 返却:物性研図書室へ返却してください
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世界は「出来事」でできているという話。長いか短いかで私たちには違って見えるが、お茶会も石も同じ出来事。そして出来事同士が相互に影響しあっているというのがこの世界だそうだ。よくわからないが、私の短い人生の中でこのことを直感的に想像出来る日が来るだろうか。地球がくるくる回っているということを、想像している時のように。
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あらゆる物が他との関係において観測される事象ということだろうか。モノからコトへみたいな。ナーガールジュナの空の思想が少しだけイメージできた気がした。 ただ、文章はちょっと文学的すぎるかもしれない。物理的な内容にあまり突っ込まず雰囲気だけ書いてある感じ。やや冗長で、この内容なら半分...
あらゆる物が他との関係において観測される事象ということだろうか。モノからコトへみたいな。ナーガールジュナの空の思想が少しだけイメージできた気がした。 ただ、文章はちょっと文学的すぎるかもしれない。物理的な内容にあまり突っ込まず雰囲気だけ書いてある感じ。やや冗長で、この内容なら半分以下のページ数で説明できるのではと思った。
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自然はわたしたちの形而上学的な偏見よりもはるかに豊かなのだ。自然のほうが、わたしたちよりずっと豊かな想像力をもっている
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レビューはブログにて https://ameblo.jp/w92-3/entry-12801503549.html
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シュレディンガー、ボーア、アインシュタイン、ドブロイ、パウリ…等、20世紀前半の科学者が量子力学をめぐって大発見をした。流れるように進む学問。 その熱気が伝わる内容、および 量子力学の基礎について関係性で説明する内容。 前者はよく書けている、後者は難解。 読了70分
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『時間は存在しない』の、ループ量子重力理論の研究者カルロ・ロヴェッリの本。 量子力学の発端の、生き生きとした歴史を示す導入は読みやすいが、第2章後半から、この世界構造は何なのか、という量子論にとって避けられない根源的な問いへの思索となり、難解になっていく。ここからは読者を選ぶよう...
『時間は存在しない』の、ループ量子重力理論の研究者カルロ・ロヴェッリの本。 量子力学の発端の、生き生きとした歴史を示す導入は読みやすいが、第2章後半から、この世界構造は何なのか、という量子論にとって避けられない根源的な問いへの思索となり、難解になっていく。ここからは読者を選ぶように思われる。 量子力学は情報理論だ、関係だ、「空」だと言われても、それが物理事象とうまく接続できない読者としては、わかった気になるようでならないようで、著者の思索に振り回されて困惑する。世界の本質の思索において、物理は哲学と無縁ではいられない、と頭でわかってはいても。それでも、思想の網を広く持つことが重要だ、という物理学者の主張に触れる点では興味深い。第三部の生命や脳についての議論はやや踏み込みすぎる気もするが、シュレディンガーなどを踏まえると、それも物理学の思想の到達点ではあるのかもしれない。 この本で知った知見として、量子論の記述する現実は、相対性理論の示すように相対的なものだ、「間主観性」だ、ということ。これをカギに、今後の量子論の本に触れていきたい。
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