地中の星 の商品レビュー
現在の東京メトロの前身である東京地下鉄道は大正時代に創業された。本作は東洋初の地下鉄建設に関し「日本地下鉄の父」と呼ばれた早川徳次や建設に関わった人びとの人間ドラマである。作品の表現手法はNHKのヒット番組「プロジェクトX」そのもの。タイトルも中島みゆきの番組主題歌「地上の星」を...
現在の東京メトロの前身である東京地下鉄道は大正時代に創業された。本作は東洋初の地下鉄建設に関し「日本地下鉄の父」と呼ばれた早川徳次や建設に関わった人びとの人間ドラマである。作品の表現手法はNHKのヒット番組「プロジェクトX」そのもの。タイトルも中島みゆきの番組主題歌「地上の星」をもじったものと思われる。 早川は、早稲田大学出で南満州鉄道で修行後、中央官庁である鉄道院に入り、その後は栃木の左野鉄道や大阪の高野登山鉄道を再建した。彼には大望があり、欧州を視察、帰国後は東京でロンドンにあるような地下鉄建設に乗り出す。計画当初は「地盤が軟弱」という意見、庶民の恐怖心もあり、誰からも共感が得られなかったが、大隈重信や渋沢栄一の協力、銀行からの資金援助を得て、なんとか株式会社を設立する。 だが、建設にあたっては関東大震災、崩落事故、資金不足、大正天皇の崩御など様々な苦難が待ち受けていた。 それを乗り越える過程で描かれているのは、土留め、杭打ち、履工、掘削、コンクリート施工、電気設備といった現場に携わるリーダーたちの活躍。前人未到の難工事に挑む彼らの葛藤、衝突、矜持を伝えることに力点が置かれている。 また、工事の過程で「スキップホイスト」、「エンドレスバケット」、「ベルトコンベア」、「ATS」など新しい技術、百貨店の地下フロア直通の地下駅設置といった新しいアイデアの創出があり、情熱と知恵で前進する人間のたくましさも伝わってきた。 終盤には、早川の地下鉄工事の技術を後発者の有利を生かして横取りするかのような五島慶太の新線建設、営団という形での国による乗っ取りもあった。最終で五島は早川を尊敬していたことを明らかにし、現場監督、技術者、無数の人足たちを「地中の星」と称し、そのほとんどが、いま、肉眼で見えないと結んでいる。まさに、感動的な「プロジェクトX」のエンディングそのものであり、頭の中に中島みゆきの歌声が響き渡った。
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最初に読み始めて期待したよりは、全体的にさらっとした時系列物語、という感じはあったかな。 実際はかなりの山あり谷ありドラマものだと思うけど。 しかし、地下鉄のような代物を、まさかの100%民間企業が起こしたとはなぁ。 官→メトロのイメージが強かったから、無知で恐縮ながら、そこが...
最初に読み始めて期待したよりは、全体的にさらっとした時系列物語、という感じはあったかな。 実際はかなりの山あり谷ありドラマものだと思うけど。 しかし、地下鉄のような代物を、まさかの100%民間企業が起こしたとはなぁ。 官→メトロのイメージが強かったから、無知で恐縮ながら、そこが改めて驚きでした。 まぁでも、毎日乗っている者として、読んでよかったです。
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『#地中の星』 ほぼ日書評 Day762 早川徳次という人は、シャープの創業者と地下鉄の父と、同姓同名で2人いたことを初めて知った。 本作は後者による日本初の地下鉄創業から、「強盗慶太」に会社を乗っ取られるまでのノンフィクション小説。 金が無ければ頭を使え。考えに考え抜い...
『#地中の星』 ほぼ日書評 Day762 早川徳次という人は、シャープの創業者と地下鉄の父と、同姓同名で2人いたことを初めて知った。 本作は後者による日本初の地下鉄創業から、「強盗慶太」に会社を乗っ取られるまでのノンフィクション小説。 金が無ければ頭を使え。考えに考え抜いておれば、自ずから方策が見えてくる…と口で言うのは簡単だが、それを地でいっているエピソードの数々が驚き。 手本にしたロンドンの地下鉄にもなかった新機軸として三越直結の駅を作る構想も驚き。 ただ、実際に路線が通ったのは上野の松坂屋が早かった。とはいえ、三越に義理を通すため、上野松坂屋前ではなく、上野広小路という駅名とし、三越と繋いだ際に改めて「三越前」を称したというのも、ドラマである。 https://amzn.to/49FsAi1
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『東京、はじまる』と同じ作者で 一応「地下鉄の父」と称される 早川徳次(のりつぐ)を主役にすえながら 工事に関わった脇役の人々の目線も たくさん描かれている。 文章の感じがちょっとルポっぽいのよね。 もちろん脚色入っているでしょうが ドキュメンタリーを読んでいる感じがします。 ...
『東京、はじまる』と同じ作者で 一応「地下鉄の父」と称される 早川徳次(のりつぐ)を主役にすえながら 工事に関わった脇役の人々の目線も たくさん描かれている。 文章の感じがちょっとルポっぽいのよね。 もちろん脚色入っているでしょうが ドキュメンタリーを読んでいる感じがします。 逆に、あまり誰かを英雄扱いするような 書き方にはなっていなくて あっさり退場したりするものだから 「そのあとどうなった!」とモヤる部分も。 けど、難工事を機転で乗り切ったり 資金調達の苦労があったり ライバルとの紆余曲折があったりの 一大プロジェクトは読み応えがありました。 (題名、わざとつけてるよね?) 余談ですが、シャープ創業者も 同じ「早川徳次」→読み方はとくじ 最初アレ?と思ったら 本当に偶然の同姓同名なんだ〜。
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最初のワクワクが読み進めるにつれ、 薄まってしまったのが残念。 徳次を中心にもっと盛り上がるかと思ったが、 そうじゃないのか。 もちろん地下鉄を作るにあたっては 歴史に名前が残らない多くの人の力がある。 分かっているけど、 結局誰に寄せればいいのか分からず。
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はじめは主人公が明確で物語の筋が分かりやすかったのに段々と色んな人の視点や思惑が増えてコトが進むだけで、最終的に物語としての着地が分かりづらかった印象です。それでも当時の世界観や匂いみたいなものをリアルに感じられて地下鉄にかける情熱を感じました。 地下鉄で銀座や新橋に行ってみたく...
はじめは主人公が明確で物語の筋が分かりやすかったのに段々と色んな人の視点や思惑が増えてコトが進むだけで、最終的に物語としての着地が分かりづらかった印象です。それでも当時の世界観や匂いみたいなものをリアルに感じられて地下鉄にかける情熱を感じました。 地下鉄で銀座や新橋に行ってみたくなる1冊です。
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東京に地下鉄を作った人々の物語。テーマはとても面白そうだったのだけど、実際読んでみたらキャラクターもストーリーもあまり魅力を感じられず。淡々と事実を追って読んだという印象。小説としてもっと楽しみたかったかな。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
銀座線の物語。 地下鉄の父、早川徳次の物語というだけでなく、日本で初めての地下鉄工事の建築物語としての方が強くて面白かった。 工事面に関してはその工法手順から輪唱になぞらえたり、海外設備だけでは不十分で日本独自の設備や工法が取り上げられたりと、技術好きからはおいしい話ばかりでした。 ただ、ラストの一文にあるように、実際に工事を施工した人々の名は地中の星として埋もれていて、作者が素敵な登場人物として創作してくれたことは素晴らしいと思います。
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日本で最初の地下鉄(銀座線)を作った時の話で、テーマとしては凄く興味があり、タイトルにも惹かれたのだが、最後まで読みきれなかった。 当時の東京の盛り上がりはすごかったんじゃないかな。 機会があれば再読しよう。
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