地中の星 の商品レビュー
♪つばめよ 地上の星は 今 何処にあるのだろう ~ツッコミ~それは「地上の星」(中島みゆき)でしょ! でも、このタイトル、多分意識したものなのでしょうね。 明治末期から昭和初期にかけて、日本で最初の地下鉄作りを舞台にした小説。地下鉄なので地上では無く「地中の星」。 主人公は計画...
♪つばめよ 地上の星は 今 何処にあるのだろう ~ツッコミ~それは「地上の星」(中島みゆき)でしょ! でも、このタイトル、多分意識したものなのでしょうね。 明治末期から昭和初期にかけて、日本で最初の地下鉄作りを舞台にした小説。地下鉄なので地上では無く「地中の星」。 主人公は計画を立案・推進した地下鉄の父・早川徳次です。彼の胸像も銀座駅の余り人目を引かない場所に在るそうですが、様々な創意工夫によって日本初の工事をやり切ったものの今や忘れ去られた技術者や現場監督も主要な登場人物です。このあたりも「地上の星」の歌詞に通じるところがあります。 その他にライバル五島慶太(東急)が居たり、渋沢栄一や、最後には若き日の佐藤栄作(当時、鉄道省監督局総務課長)まで顔を出し、なかなか重層的な作りになっています。 要所に顔を出す奥さんの軻母子(かもこ)さんも味が有ります。 そして、相変わらずテンポが良い。なんのストレスも無くサクサク読めます。ただ余りに読み易いぶん、どこか「深み」が足らないような気がしてしまうのが欠点です。
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東京の最初の地下鉄をつくった人々の物語。今でも名前のよく知られた人々もそうでない人も仕事として打ち込んだ結果として地下に穴を掘り線路を敷き鉄道が走り、それが今でもそっくりそのまま東京の生活の一部になっている。近代化のロマン、創意工夫、ビジネスに突き動かされた人々の熱いドラマを門井...
東京の最初の地下鉄をつくった人々の物語。今でも名前のよく知られた人々もそうでない人も仕事として打ち込んだ結果として地下に穴を掘り線路を敷き鉄道が走り、それが今でもそっくりそのまま東京の生活の一部になっている。近代化のロマン、創意工夫、ビジネスに突き動かされた人々の熱いドラマを門井慶喜の淡々とした文章が語る。 今ある日常の世界の歴史的背景を少し深く知ることができるようになる、門井慶喜作品の安定的なクオリティ。
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「家康江戸を建てる」に次ぐ私にとって門井慶喜の二冊目の本。東京に日本で初めての地下鉄を造った早川徳次の物語り。この世で最初の仕事をしたいと路面電車が走る東京の地下に36才の男が時の有力者を説き伏せ、資金づくり、役所への申請、日本で初めての地下鉄工事を完成し、時局により、国策的私企...
「家康江戸を建てる」に次ぐ私にとって門井慶喜の二冊目の本。東京に日本で初めての地下鉄を造った早川徳次の物語り。この世で最初の仕事をしたいと路面電車が走る東京の地下に36才の男が時の有力者を説き伏せ、資金づくり、役所への申請、日本で初めての地下鉄工事を完成し、時局により、国策的私企業の営団になるまでが綴られている。この話しの中で個性的な人物が描かれているも、期待した程に早川という人物や物語りの行方に引き込まれなかった。時の経過に応じた説明的な筋書きに少し傾き勝ちからだろうか?
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「銀座線初めて物語」とか「地下鉄初めて物語」というべきか。 様々の困難にも負けず、浅草ー新橋間の地下鉄道を本邦で初めて開通させた主人公の存在がなければ、各地に広がる地下鉄網は違っていたかもしれない。 全編を通して漂うそこはかとない明るさとユーモアは作者独特のものだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ひとつのプロジェクト、しかも前代未聞のことを成し遂げようとする場合、一人では絶対にできない。 沢山の見えない地中の星(技術者たち)がいるからこそ、未来の扉が開かれる、そんなロマンを感じました。でも当事者たちは苦しくて大変なんでしょうけども。 単なるフィクションでなく派閥争いなど生々しくかつ人間の弱さや強さが伝わってくる話でとっても良かった。 周りに反対されてもプロジェクトを立ち上げ推進した者、前代未聞のプロジェクトのためにどうすれば安全でかつ迅速にできるか考え実行していくもの、プロジェクトのために支援するもの、何一つ欠けてもなし得なかった。 そのパズルのピース一つ一つは日の目に出ないのかもしれない。でもそれらが合わさったときとんでもないものが出来上がる。そうやって人は進化していく、そう思いました。 これは是非とも映画化して欲しい。
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地下鉄の父早川徳次と工事に命をかけた職人たちを描いたノンフィクションノベル。 現在の地下鉄銀座線の原型東京地下鉄道かを上野浅草間で開通したのは昭和2年。地上鉄道に比べて圧倒的に工費のかかる地下鉄を事業として起こし実現する早川徳次と本邦初の工事に苦闘する職人たちの姿が描かれる。 ...
地下鉄の父早川徳次と工事に命をかけた職人たちを描いたノンフィクションノベル。 現在の地下鉄銀座線の原型東京地下鉄道かを上野浅草間で開通したのは昭和2年。地上鉄道に比べて圧倒的に工費のかかる地下鉄を事業として起こし実現する早川徳次と本邦初の工事に苦闘する職人たちの姿が描かれる。 実は当初の計画では新橋から品川まで第一京浜を通ることに。資金難から新橋止まり。別に東京高速鉄道が渋谷から築地までの計画で渋谷新橋間を開通させている。 両者の対立から官が、介入し営団となっている。今も民営化されたとはいえ東京地下鉄の株主にその影響が見てとれる。 筆者は忘れられた歴史の狭間の人物を描くのに定評がある。題名のとおり目に止まらない地中に隠れた星に光をあてた傑作でした。
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今でこそ当たり前のようにほぼ毎日使う地下鉄。 通勤、通学、お休みの日に出かける足として無くてはならない存在で、地下鉄がないなんて言う日常は現代人からしたら考えられない事。 そんな庶民の足として馴染んでいるこの地下鉄を初めて東京の地下に通そうと思った早川徳次。 各地の交通量の調査か...
今でこそ当たり前のようにほぼ毎日使う地下鉄。 通勤、通学、お休みの日に出かける足として無くてはならない存在で、地下鉄がないなんて言う日常は現代人からしたら考えられない事。 そんな庶民の足として馴染んでいるこの地下鉄を初めて東京の地下に通そうと思った早川徳次。 各地の交通量の調査から地盤の調査、資金集め… 何よりも1番苦労したのが人と言う反対の壁。 自分の足下に穴を掘り鉄の塊を通すと言う事は、有り得ないし穴が空いて落ちてしまったらどうするのだと言う恐怖が凄く当時は誰も相手にしてくれなかった。 その夢物語をコツコツと諦めずに貫ぬき完成させたからこその今! そして、早川さんだけでなく実際に東京の地下に穴を掘り地下鉄を通していった名も無き工事現場の人達。 この本を読んでから地下鉄に乗ると、なんだか色々な思いが込み上げてくる。
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渋沢栄一さんに関連付けた人で本を出されたかったのかもしれませんが、題材の人物が薄かった。(今まで豊臣秀吉や徳川家康など壮大な題材が私にはヒットしていたので…)その分野では有名な人ではあるのでしょうが、正直存じ上げていませんでした。(そもそも本当に実在した人?) 地下鉄が作られた...
渋沢栄一さんに関連付けた人で本を出されたかったのかもしれませんが、題材の人物が薄かった。(今まで豊臣秀吉や徳川家康など壮大な題材が私にはヒットしていたので…)その分野では有名な人ではあるのでしょうが、正直存じ上げていませんでした。(そもそも本当に実在した人?) 地下鉄が作られた経緯など、その歴史が綴られています。
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煮物に出てきた豆を見て、早川徳次は決心がわいた。土の中にトンネルを作り、線路を敷いて鉄道を走らせよう。 しかし、資金繰りや交通調査、地質調査など様々な困難が待ちうける。ようやく、工事にこじつけたのが、上野ー浅草間。工事を始めようにも、路面電車や車が通っている下で工事をするので、大...
煮物に出てきた豆を見て、早川徳次は決心がわいた。土の中にトンネルを作り、線路を敷いて鉄道を走らせよう。 しかし、資金繰りや交通調査、地質調査など様々な困難が待ちうける。ようやく、工事にこじつけたのが、上野ー浅草間。工事を始めようにも、路面電車や車が通っている下で工事をするので、大変なことだらけ。早川徳次をはじめ、技術者や工事関係者、渋沢栄一など多くの人の手を借りながら、地下鉄開通まで奮闘していく。 日本で本格的に地下鉄が誕生したのは、昭和二年東京にある現在の銀座線、上野ー浅草間です。それに至るまでの奮闘、そこから延伸や直通など銀座線の誕生物語が描かれています。 史実を元にした物語ですが、特にエンタメ性を入れることなく、事実をそのまま小説を盛り込んでいるので、大袈裟な脚色はなく、淡々としている印象がありました。 早川徳次をはじめ、技術者など複数の視点から物語が進行します。資金面に奮闘する早川、技術面での地下鉄完成までに至る様々な苦悩など数多くの人たちが携わっていたことに感謝しなければと思わせてくれました。 個人的には、線路を敷く奮闘劇だけでなく、電車を製作する奮闘劇も加えて欲しかったです。 それでも上野ー浅草間約2.2kmという短さではありますが、色んなものが詰め込まれていたと思うと、感慨深いなと思いました。 鉄道好きとしては、開通当時の時代にタイムスリップしてみたいなと思いました。その頃の雰囲気や人物など、今とは全然違っていたと思いますが、当時としては最先端だった地下鉄や駅、改札口をこの目で見てみたくなりました。
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