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夏物語 の商品レビュー

4.1

274件のお客様レビュー

  1. 5つ

    85

  2. 4つ

    100

  3. 3つ

    45

  4. 2つ

    7

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    3

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2021/11/09

登場するすべての人がいとおしい 生きるということが果てしなくいとおしいと思わせてくれた やっぱり生きていきたいと思った そう思わせてくれる読書にこそ価値がある

Posted byブクログ

2021/11/09

2021.10.25〜11.9 読了 今このタイミングでこの本を読まねばならない、そんな確信めいたものを感じて600頁超の分厚さに挑んだ。 「命を生むこと、女としての生き方」という男の自分には現実味を帯びることがなかったテーマ。読んだ後には、男女問わず知っておかなければならな...

2021.10.25〜11.9 読了 今このタイミングでこの本を読まねばならない、そんな確信めいたものを感じて600頁超の分厚さに挑んだ。 「命を生むこと、女としての生き方」という男の自分には現実味を帯びることがなかったテーマ。読んだ後には、男女問わず知っておかなければならないテーマだと感じた。 少なくとも自分の想像力が及ばなかった箇所は多くあった。 川上さんの文体のおかげか背景描写の緻密さ故か、登場人物それぞれの個性が立っていて 皆人生に対して立ち向かったり苦悩したり笑い合っていたり、どの人にも人間らしさを強く感じた。リアルだ。 「すべての子どもは親のエゴで生まれてくる」と登場人物に言わしめる切れ味の鋭さが、だからこそ「まだ会ったことのないあなたに会いたい」と切実に思う気持ちを引き立てているのだろう。 「普通」にガツンと横殴りを入れる作品、というか自分はガツンと殴られた気がした。ので、読んで大変良かった一冊。

Posted byブクログ

2021/11/03

すごく気持ちの揺れることがあっても、まっすぐ手を伸ばしてくれる人達がいる。そう信じていいんだ、と思わせてくれる。 たとえそんな人になかなか巡り会えなくても、ボイジャーを思えば、頑張れるかもしれない。 一方で、始めから損なわれた善さんのような人に会うかもしれない。そういう人を抱きし...

すごく気持ちの揺れることがあっても、まっすぐ手を伸ばしてくれる人達がいる。そう信じていいんだ、と思わせてくれる。 たとえそんな人になかなか巡り会えなくても、ボイジャーを思えば、頑張れるかもしれない。 一方で、始めから損なわれた善さんのような人に会うかもしれない。そういう人を抱きしめる方法を持っているだろうか。 第1部が必要なのかなあ、と思いながら読んでいたけれど、第2部の終盤に緑子がぶちかましてくれるし、その後の展開のベースになっていることが分かる。だから手に取った方は、まずは半分くらいまで読まれることをお薦めしたいです。

Posted byブクログ

2021/10/31

「乳と卵」に続く物語だったとは。(読み終わった後に他の方のレビューで知る‥。) 「乳と卵」はとにかく文体が読みにくかった記憶しかなく、おかげでしばらく作者から遠ざかっていたのだが、どうやら本書は評判が良さそうなので再チャレンジのつもりで手にとった。 会話文は大阪弁(標準語のシーン...

「乳と卵」に続く物語だったとは。(読み終わった後に他の方のレビューで知る‥。) 「乳と卵」はとにかく文体が読みにくかった記憶しかなく、おかげでしばらく作者から遠ざかっていたのだが、どうやら本書は評判が良さそうなので再チャレンジのつもりで手にとった。 会話文は大阪弁(標準語のシーンもあるが)でとにかくテンポ良く、しかし全体的には主人公夏子の落ち着きが投影されていてすっと物語に入り込めた。 自分の子どもに会いたい、子どもを産みたいという欲求に支配されていく夏子と、両手をあげて賛成する遊佐、そんなことより小説を書くのがあなたの使命だと迫る仙川、子どもを生む行為は暴力的だと言い切る百合子、それぞれの女たちの全てが正しく全てが切実。

Posted byブクログ

2021/10/30

読み終わった後、静かな震えが湧いてくるような小説。あたたかくて力強い。 あと2日で出産予定日の私には、赤ちゃんがこれを読み終わるまで待っていてくれたような気がした。 産むこと、命をつくりだすことについて、自分もかなり葛藤したり考えたりしたはずなのに、お腹が大きくなるにつれて目の...

読み終わった後、静かな震えが湧いてくるような小説。あたたかくて力強い。 あと2日で出産予定日の私には、赤ちゃんがこれを読み終わるまで待っていてくれたような気がした。 産むこと、命をつくりだすことについて、自分もかなり葛藤したり考えたりしたはずなのに、お腹が大きくなるにつれて目の前の現実に流されてぼんやりとしていた。 それにもう一度向き合わせてくれたお話だったように思う。 逢沢さんの折り目正しさや清潔感、好ましい造詣が、会話の端々とかちょっとした描写から浮かび上がってきて、彼を好きになることがとても自然で感情移入できた。 それに比べて、恩田のいやらしさと不潔さの描写の徹底的なこと。川上未映子さんは会話を描く力がすごい、こういう人いそう、そしてすごく嫌、リアルな気持ち悪さ。 恩田の髪の不自然なべたついた質感と対比して、 逢沢さんの暑い夏にたなびく髪が印象的。 夏子が大阪で、古い家の面影を追っているときに入った逢沢さんからの着信は、まるでその場に自分がいるかのように胸が高鳴った。 そこからの逢瀬、そして観覧車。 2人のなんてことない会話が、ボイジャーとか宇宙に浮かぶレコードの話なんかの会話が、うつりゆく窓からの景色と共に流れていく様子が目の前に浮かび、それはとても美しかった。 観覧車の終わりかけの 「父が生きている間に本当のことを知って、その上で、僕の父はあなたなんだと伝えたかった」という告白も含めて、なんだかとても尊い時間に立ち会ったような気がした。 2人が覚えてた4月23日の完璧な一日もそうだし、この観覧車一周ぶんの時間もそうだけど、退屈で暗いことも多い人生には稀にとっても美しい瞬間、完璧な瞬間っていうのがあって、 それを死ぬまでにいくつか集めていくというのも「産まれてくることは本当にいいことなのか?」って文中で繰り返される問いへのひとつの答えなんじゃないのかな。 善さんの、生まれてきて良かったと思えない、なぜ自分より子供が幸せな人生を送れると思うのか、そんなの馬鹿げた賭けだ、という主張も たしかにその通りで、その通りなんだけど、それでも、人生にはとても美しい瞬間とか、尊い時間というのがあるから、賭けかもしれないけどええい、大丈夫だと。うまく言えないけど。 あと、すごく共感したのが、出産を間近に控えた夏子の気持ち。 これほんまに出せるんかなと正気に戻る瞬間もあるけど、あんまりそれ以上のことが考えられない感じ。お湯の中でふわっと素麺の広がる感じ。 歳をとって、遠くないうちに自分は死ぬかもなぁと思うことと近いのかもしれない、一番死に近づく出産というイベント。 そのことについて考えようとしても、ふかふかのわた布団でくるまれるように、なにもひとつも考えられなくなる感じ。 めっちゃわかる、言い当ててくれてありがとうと思った。 人生が変わるすごいこと、おそらくとても痛くて大変で世界が変わることが間近に迫っているのに、なんだか現実感がなくてぼんやりしてしまう感じが、本当にその通りで。 遊佐さん、紺野さん、仙川さんなど、登場してくる女たちもみんな奥行きがあって良かった。 子どもについて、人生について、肯定否定それぞれの立場で登場してくる彼女たちに色々考えさせられて。 これから自分はどうなるんだろう、そして赤ちゃんはどんな人生を送るんだろう、わからないことだらけだけど、とにかくドンと構えて、起こることを受け止めて、その時良いと思うことを選択して、力を入れすぎず生きていこう。そんなふうに思った。

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2021/10/27

「乳と卵」の登場人物たちのその後の話。主眼は、女性性、妊娠や出生に関するテーマ。「生まれててこなければよかった」(反出生主義)という物語の骨組と各登場人物の「子どもを持つということ」に対する意見の相違や心情の変化を通して、自分の住む世界と違う世界の話ではないことを思い知る作品。

Posted byブクログ

2021/10/27

第一部の関西弁が読みづらく、 なかなか読み進められなかったけれど 第二部に入り考えさせられる内容に引き込まれた テーマが重く、 自分にとって身近な題材ではなく十分に消化しきれてないので もう一度時をおいて読み返してみたいと思う

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2021/10/24

読むのがしんどくなって、何度も閉じては開いて…夏に読み終わらせようと思っていたのに気付いたら秋になっていました。。 自分にとっては、結婚して子供を授かるということが大きな幸せの形の一つだと思っていて、夢でもある。だから子供を作るということが独りよがりの考えなのだという感覚を持つ...

読むのがしんどくなって、何度も閉じては開いて…夏に読み終わらせようと思っていたのに気付いたら秋になっていました。。 自分にとっては、結婚して子供を授かるということが大きな幸せの形の一つだと思っていて、夢でもある。だから子供を作るということが独りよがりの考えなのだという感覚を持つ人の気持ちを知って、衝撃だった。そしてこの話全体的に、衝撃と胸抉られるシーン多くて辛かった。 子供はいつかちゃんと授かるものだと思っていたけれど、こんなに苦しんで苦労して、考え抜いても授かるチャンスのない人だっていて。その一方で当たり前のように授かる人もいて。その違いは一体何なのかと。分からないけれど、子供を授かり育てるということにきちんと責任と覚悟を持ち、愛する人に生まれてくるべきだと思う。 夏子が全編通してぐるぐるぐるぐる色々なことを考えて行ったり来たりしているのが、とても焦ったくなってしまったけれど、子供を産むことを決断する場面は良かった。彼女の生き方に共感はできないけれど、彼女なりの幸せを見つけて掴もうと努力したことが素敵だと思う。

Posted byブクログ

2021/10/20

どうしても「乳と卵」と比べながら読んでしまい、今度は長篇ということもあってあちらにあったような緊迫感が、文章の面でも物語の面でも薄らいでしまったような感じをうけた。語り手もだいぶ饒舌(説明的)で、精子提供のことを考えているとテレビでその特集がはじまる、といった展開も雑だと思う。こ...

どうしても「乳と卵」と比べながら読んでしまい、今度は長篇ということもあってあちらにあったような緊迫感が、文章の面でも物語の面でも薄らいでしまったような感じをうけた。語り手もだいぶ饒舌(説明的)で、精子提供のことを考えているとテレビでその特集がはじまる、といった展開も雑だと思う。この、特にはじめに指摘した弛緩した感じというのは、もしかしたらある種の余裕さみたいなもので、それが小説に拡がりをもたせるのかもしれないが、個人的にはどんどん白けてしまって途中で読むのをやめてしまった。

Posted byブクログ

2021/10/17

TIME誌の「ベストフィクション10作品」の一冊と知り読んだ。 540ページ以上のボリューム、これだけあったら途中でやめたくなる事もありそうなものだが、そうならず読み進めることが出来た。 結局夏子は子供に会いたい想いを遂げる訳だが、それに至る一連のプロセスに解釈出来ないところが多...

TIME誌の「ベストフィクション10作品」の一冊と知り読んだ。 540ページ以上のボリューム、これだけあったら途中でやめたくなる事もありそうなものだが、そうならず読み進めることが出来た。 結局夏子は子供に会いたい想いを遂げる訳だが、それに至る一連のプロセスに解釈出来ないところが多く、心に残る一冊となった。 第一部で緑子が卵を自分の頭に、ぐしゃわと叩きつける流れは、思いもよらぬ展開となり意表を突かれた。 現在読売新聞の朝刊に最新作を連載中だが、今をリードする小説家の一人なんだろうなというのが分かる様な気がする。

Posted byブクログ