戦争はいかに終結したか の商品レビュー
戦争終結のジレンマ 現在の犠牲を許容して根本的な解決を図る 現在の犠牲を最小限にして妥協的な和平に持ち込む 妥協した場合、将来の危険が残るが、それも織り込むことはできるのか 日本の場合は武力行使は必要最小限となっているとおり、相手国に対して現在の犠牲を強要することは難しい。一方...
戦争終結のジレンマ 現在の犠牲を許容して根本的な解決を図る 現在の犠牲を最小限にして妥協的な和平に持ち込む 妥協した場合、将来の危険が残るが、それも織り込むことはできるのか 日本の場合は武力行使は必要最小限となっているとおり、相手国に対して現在の犠牲を強要することは難しい。一方で日本の弱点は損害受任度の低さにある。日本国民は他国の危険に対して、現在の犠牲を払うほど安全保障に興味がないように感じる。また、将来の危険を考えることができるのは余裕のあるものだけで、高齢化が進む日本では難しい。 日本の平和を考えると、経済面で税金という国民の負担=現在の犠牲を払い、抑止力という将来の安全を買うことが、当面の戦略になるのだろう。
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戦争と平和を考える際には「いかに戦争を起こさないか」だけでなく起こってしまった戦争を「いかに終わらせるか」について考えることが重要。終戦を分析する著者のフレームは非常にわかりやすい。戦争の終結には「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」の両極の間のどこかで着地することになる。この...
戦争と平和を考える際には「いかに戦争を起こさないか」だけでなく起こってしまった戦争を「いかに終わらせるか」について考えることが重要。終戦を分析する著者のフレームは非常にわかりやすい。戦争の終結には「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」の両極の間のどこかで着地することになる。この着地点の決まり方には紛争当事者間のパワーバランスやさまざまな事情が当然絡まり合うが、特に重要なのが勢力的に主導する側から見た時の「将来の危険」と「現在の犠牲」のそれぞれがどの程度の大きさで評価され得るかという観点。このシンプルなフレームに沿って、WW1、WW2(欧州、太平洋)、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸・アフガン・イラク戦争という20世紀以降の主要な戦争の分析がなされる。過去の戦争について理解度がグッと増したと共にウクライナやガザなど現在起こっていることについて考える際の解像度を上げることができた。読んで良かったと強く感じる一冊。
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戦争は優勢勢力側が「現在の犠牲」と「将来の危険」のどちらを重視するかによって「紛争原因の根本的解決」で終わるか、「妥協的和平」で終わるかどちらかで終わる、という理論的枠組を使い第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争などを解説してます。 現在の犠牲の代表...
戦争は優勢勢力側が「現在の犠牲」と「将来の危険」のどちらを重視するかによって「紛争原因の根本的解決」で終わるか、「妥協的和平」で終わるかどちらかで終わる、という理論的枠組を使い第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争などを解説してます。 現在の犠牲の代表的なものは兵士の死ですが、これを算数の計算問題のように扱う戦争というものにやりきれない気持ちです。 戦争をいかに終わらせるかは大事なことですが、戦争をいかに始めさせないか、がもっともっと大事だと思いました。
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戦争を終結に至らせる要因を、「紛争原因の根本的解決」「妥協的平和」とし、それを見積もるものを「将来の危険」「現在の危険」と分類する。 第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争をこの評価軸で分析し、総括する。 なるほどなあ、...
戦争を終結に至らせる要因を、「紛争原因の根本的解決」「妥協的平和」とし、それを見積もるものを「将来の危険」「現在の危険」と分類する。 第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争をこの評価軸で分析し、総括する。 なるほどなあ、と思わせる。 現実に侵攻している、ロシアの侵略、イスラエルの進軍にも当てはまる気がする。 問題は、その「危険」「原因」の認識が現実に合ってるかどうかだという気がした。特に、「根本的解決」という言葉には欺瞞を感じる。そう思ってるだけで、勘違いの可能性が極めて高い。 特に、敵と味方を間違える天才、大米帝国においては。 あとなあ、先の大戦での大日本帝国の終戦への道筋が若干違和感あって。天皇がかなり積極的に動いてる。これまで読んで来た本では、そうではないと理解している。 まあ、「天皇制」と言ってるレベルで感じるところはある。
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フレームとして歴史的な叙述を取っており、筆者が冒頭に提示する分析軸を忘れると、歴史をただ振り返っているような感覚にもなります。 とはいえ、様々な戦争の歴史から学べることは多く、改めて納得するようなかたちで戦争を終わらせることがいかに難しいか、再認識出来ました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
帯に小泉悠さんが載っていたのでウクライナ戦争の行く末も念頭に購入。 購入動機の不純性はさておき、面白い内容でした。 本書では戦争の終わり方を「権力政治的アプローチ」と「合理的選択論的アプローチ」の2つの視点から解釈し、これまで発生した戦争にこれらを当てはめて説明します。 「権力政治的アプローチ」は軍事力を中心としたパワーバランスを重視する視点、「合理的選択論的アプローチ」は交戦勢力間の合理的な費用対効果の算定を重視する視点ですね。要は戦争は軍事的に強い側が一方的に弱い側をボコって終わるだけではなく、損害に見合ったリターンを得られるのか?の観点も終わり方を左右する、という考え方でしょうか。 そのため(特に後者の視点により)、主に軍事的に強い側においては ”二度と起ち上がれないよう徹底的に相手を叩きのめすのか、それともある程度妥協して和平を結ぶのか” のジレンマが生じます(これを本書では「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」と呼びます)。 そして第一次大戦からイラク戦争までの主要な戦争を題材に、このジレンマのはざまに揺れる交戦各国の状況(心境)と戦争終結に至る過程が説明されます。 しかし実際の戦争の構図はそう単純ではありません。本書は基本的に上記の整理構造をとりますが、様々なファクターが複雑に絡み合うそれぞれの戦いの歴史は読みごたえがあります。 個人的にはベトナム戦争の章が複雑かつ緊迫感があり、面白く読みました(アメリカを中心とする西側は圧倒的な軍事力を有していたものの、北ベトナムの背後にいるソ連や中国との全面対決というリスクと、反戦運動に揺れる国内政治という不安定要素にさいなまれます。共産側も北ベトナムの無謀ともいえる強硬姿勢に対し、西側との全面対決を望まないソ連や中国の微妙な姿勢が一線を画します。そしてこれら各国の繊細な心境と打算にお構いなく戦況は動きます・・・)。 戦争が終わるに際して必ず上記の構造が当てはまるかどうかは断言できないと思いますが、戦争終結のロジックを構造的にわかりやすく整理している点が興味深いのと、実際の戦争に当てはめた説明は納得感があり面白いです。 またそれぞれの戦争の、終結に至る経緯や内幕がある程度詳細に記載されており、歴史を学ぶという点でも参考になる1冊だと思います。
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出口戦略を考える上で必要な大国間戦争の歴史を総復習できる本でもあった ------- 紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ 優勢勢力の将来の危険が大きく現在の犠牲が小さい場合は紛争原因の根本的解決の極みに傾き、将来の危険が小さく現在の犠牲が大きい場合は妥協的和平の極みに傾...
出口戦略を考える上で必要な大国間戦争の歴史を総復習できる本でもあった ------- 紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ 優勢勢力の将来の危険が大きく現在の犠牲が小さい場合は紛争原因の根本的解決の極みに傾き、将来の危険が小さく現在の犠牲が大きい場合は妥協的和平の極みに傾く 戦争終結は早期になされればいいというわけでもない 平和の回復にとって重要なのは、それがどのような条件によってもたらされた戦争終結かということである
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賢者は歴史に学ぶというが、本書を参考に現在勃発している戦争を終結させることができれば良いと強く思った
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或る本を読んでいて、その中に別な本に関する言及が在ると、少し強い興味が湧く場合も在る。そしてその興味が湧いた本を紐解くと、それがまた非常に興味深いという場合が在る。こういうのを「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶのだと思う。本書はそういう「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶ経...
或る本を読んでいて、その中に別な本に関する言及が在ると、少し強い興味が湧く場合も在る。そしてその興味が湧いた本を紐解くと、それがまた非常に興味深いという場合が在る。こういうのを「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶのだと思う。本書はそういう「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶ経験をさせてくれた一冊だ。 本書は「在りそうで、存外に無い?」という感じの、重要と思われる主題を論じている。「読書の発見、歓びが拡がる」ということと無関係に、単独でも非常に価値が高いと思う。 本書を知ったのは『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』という本を読んでいた時だった。『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』の著者による対談が収録された本に、対談の相手の一人として本書『戦争はいかに終結したか―二度の大戦からベトナム、イラクまで』の著者が登場していた。 2022年2月以降のウクライナでの戦争は1年半以上も続き、「終わらない…」という様相を呈してしまっている。そういう中で「終結?」、「停める?」というようなことが上述の本の対談で論じられていた。 戦争の目的を追求して戦闘が繰り広げられる等の展開が在る。そういうことをすると「現在の犠牲」というようなモノが生じることから免れられない。「現在の犠牲」に「何処迄耐える?」ということになってしまう。どんなに犠牲を払っても「将来の危険」を排すべく戦争の目的を追求するという考え方と、「現在の犠牲」を回避すべく妥協的な和平の工作を試みるという考え方が事案の両極のように存在して、両者の間の色々な形での「終結」が図られたのが、これまでの戦争の歴史で、これからの戦争もそういうことになるのであろう。 ウクライナ、ロシアの戦争に関して言えば、上述書に在るのだが、両陣営は各々に「将来の危険」を排しようと「現在の犠牲」を払い続けていて、「一体、何処迄?」というようになって行くのだと思われるが、互いに排しようとしている「将来の危険」は「非常に高いハードル」になってしまっていて、収束に向けた協議が巧く進められない状態に陥って時日を経てしまっている訳だ。 本書に出くわした経過の事柄で少し文字数が嵩んでしまった。が、こういう他の本で呼んだ事柄を踏まえて本書を興味深く読んだのだ。 題名に「二度の大戦からベトナム、イラクまで」と在る。文字どおりにこれらの戦争に題材を求め、戦闘を停めて行く、終結を図るという過程に注目し、「現在の犠牲と将来の危険を勘案して考えた」というような経過に光を当てようとしているのが本書の内容だ。 本書では、第1次大戦、第2次大戦の欧州関係、第2次大戦の日本関係、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争からアフガニスタンやイラクに至る一連の戦争というような形で「各戦争の終結」が論じられている。 総じて思わざるを得ないのは「“始める”こと以上に“終える”ことが難しい」のが戦争というモノであるということだ。そして“終える”ことへのイメージが貧しいままに“始める”に至った戦争は、殊に敗れた側にとっては「ロクなモノではない…」というように終始してしまう。 甚大な犠牲が払われた種々の戦争に関して「その終結」という角度で観て、振り返るというのも有益だと思うのだが、「現在の犠牲と将来の危険を勘案して考える」というようなことは、応用範囲が広いというようにも思う。様々な好ましくない状況から抜け出して行こうとする場合の考え方として有用かもしれない。 「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶ経験をで、なかなかに有益な一冊に出会えて善かった。
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防衛省防衛研究所主任研究官による、分析、劣勢の場合は、受け入れるしかないが、優勢の場合は、将来に渡る禍根を断つか、これ以上の消耗を避けて、妥協するか選択しなければならない。 唯一のベトナムでの敗戦では、相互撤退から、単独撤退に条件を緩和し、自分だけの単独講和に近いかたちをとらざる...
防衛省防衛研究所主任研究官による、分析、劣勢の場合は、受け入れるしかないが、優勢の場合は、将来に渡る禍根を断つか、これ以上の消耗を避けて、妥協するか選択しなければならない。 唯一のベトナムでの敗戦では、相互撤退から、単独撤退に条件を緩和し、自分だけの単独講和に近いかたちをとらざるをえなかった。 あまり条件を緩和し過ぎるとまた同じ戦争をしなければならないし、厳しい過ぎるとしなくて良い消耗をしなければならない。
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