百花 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
大恋愛を全部見たからアルツハイマーにかかる話はすべて泣けてくる シングルマザーということもあって愛情を求めているような母親の言動が息子と母の奇妙な関係を明らかにしていく。 息子が中学生の頃、ある日急に1年間いなくなった。ピアノを習いにきた男性との駆け落ちのような不倫だった。息子は母親がいなくなった部屋を整理している最中に見つけた日記から真実を知る。 不倫相手(大学教授)が神戸の大学に単身赴任することになり、百合子はボストンバック一つほどの荷物でついていく。そこでは愛されることを求めた幸せな日々を送っていた。しかし、1995年の阪神淡路大震災が起き全てが壊れた世界を見て泣き叫んでいるとともに、息子の名前を呼んでいた。 母親は不倫していても、無意識のうちに息子が1番大切だった。 最後のなぎさホームに入った後の話は母親の夢と現実が入り混じっており、読み手も不思議な感覚に襲われた。 記憶を無くしつつある母は息子が小さい頃の記憶ははっきりしており、何度も何度も "あの子は甘い卵焼きとハヤシライスが好きなのよ" と繰り返していた。 認知症になってしまった人は最終的には自分のこともわからなくなってしまう。だから、かろうじて覚えているずっと昔の記憶の話ばかりしてしまうが、この小説ではそれがミソだった。
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【現代に新たな光を投げかける、愛と記憶の物語】「あなたは誰?」息子を忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく息子。ふたりには、忘れることのできない“事件”があった──。
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