婿どの相逢席 の商品レビュー
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若旦那の鈴之助が良い人で、それがストーリーに優しさを与えていて読んでいて心地良かった。 お婿さんがこういう扱いを受けているとなんだかとても大変そうな気がするけれど、お嫁さんは今でもこんな扱い珍しくもないところが、人って進歩しないんだなと思ってしまった(笑) そしてこれは私がひねくれてるのかもしれないけれど、鵜三郎が目の前に現れたからお喜根とお寿佐は感極まっているだけで、致し方なかったにせよこういうことができる人はこの先も変わらないと思う。 私が鵜三郎なら具合が悪くても帰るし、まして五十両は受け取らないな。
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両想いのお千瀬と結婚し逆玉と言える婿入りを果たした鈴之助だったが逢見屋は女系の仕出屋で男には子種以外の価値を見出しておらずとても当たりがキツい。お千瀬だけは評価している鈴之助のコミュ力で、頑なな女たちを攻略していけるのか?/この手の話でいつも思う。なんで皆自分の中で秘めてしまうん...
両想いのお千瀬と結婚し逆玉と言える婿入りを果たした鈴之助だったが逢見屋は女系の仕出屋で男には子種以外の価値を見出しておらずとても当たりがキツい。お千瀬だけは評価している鈴之助のコミュ力で、頑なな女たちを攻略していけるのか?/この手の話でいつも思う。なんで皆自分の中で秘めてしまうんやろう、と。他人って、けっこう頼りになるもんやし、当事者やったとしても意外にタフなもんなんやけどな。ま、その辺の見極めはせんとアカンけど、秘密にするということ自体が一種の裏切りやしうっかりしたら信頼を失うことになるから。 ■逢見屋についての簡単な単語集 【相逢席/あいあいぜき】知己や縁者が集い美味しいものを食べながらくつろいでもらいたいというのが逢見屋の信条でもある。それ自体はお千瀬も鈴之助もいいことだと思っている。 【当たり前】《おばあさまやお義母さんが抗っているのは、世間のことあたりまえなんだ》p.292。《あたりまえこそが、もっとも恐ろしい敵となり得る。》p.292 【安房蔵/あわぞう】逢見屋の主人。お寿佐の夫。 【井桁屋】海苔問屋。主人が亡くなり三人の子どもの相続争いが激しい。孫のいとこ同士、おいぬ、芳郎、おはなはいたたまれない思い。 【伊奈月】ライバル店。主人が倒れ若だんなはちょっと焦っているのかもしれない? いまいちパッとしない味になった。 【鵜三郎】伊奈月の若だんな。 【閻魔参り】一月十六日、閻魔堂の初縁日。この日と七月十六日の二日間だけは地獄の鬼も休むので此岸でも藪入りの日となって奉公人たちの休日となっている。 【逢見屋】仕出屋の大店。代々女が取り仕切っている。利益率は一割五分、少なっ!! 【翁煎餅/おきなせんべい】翁屋の商品。砂糖の甘味が上品。お千瀬の好物。 【お喜根/おきね】逢見屋の大女将。 【おすが】逢見屋の婆や。鈴之助を気に入っていないようだ。 【お丹/おたん】逢見屋の次女。スタート時十七歳。鈴之助には当たりがキツい。《棘の正体は、いわば憤懣だ。》p.117 【お千瀬】逢見屋の長女。スタート時二十一歳。鈴之助を婿に迎えた。鈴之助に惚れているがその才を見込んでもいる。《このままでは逢見屋は、あと十年もたないかもしれない》p.31 【お寿佐/おひさ】逢見屋の女将。お千瀬の母。 【お桃/おもも】逢見屋の三女。スタート時十一歳。 【幸吉】奉公人。泰介の弟。 【権三】板長。 【杉之助】鈴之助の兄。三兄。お気楽っぽい趣味人。 【鈴之助】小さな楊枝屋「吉屋」の四男坊だが逢見屋の長女お千瀬の婿に迎えられた。お千瀬によると《人の気持ちを和らげて、その懐にするりと入っていく。それが鈴さんの、たぐいまれな才なのですよ》p.30。往来を歩いているとよく道を聞かれる。ああ、それは僕もそうです。 【泰介/たいすけ】奉公人。幸吉の兄。昨年なんらかの事件があったらしい。 【負の気持ち】《怒り、悲しみ、迷い、苦しみ。この手の負の気持ちには、まったく同じに通ずるものがある。》《どれも、ひとりよがりってことさね》p.204。逆に、他人と共有できる感情は「笑い」。 【竜平】伊奈月の板前らしい。泰介のトラブルの相手。 【留守居茶屋】大名家の留守居役の外交の場。ひたすら贅沢になっている。その風潮が江戸の料理屋を牽引し豪華主義に移行しつつある。逢見屋はその風潮には乗らない方針。ゆえにいまだ仕出屋を名乗っている。
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男尊女卑では無いが,女性の身分が、低い時代日本の時代。 女傑とは言えないが、女系で、商いをして来た。 婿養子といえども、婿殿に、采配を束ね、縁の下の力持ちになるのが、奥ゆかしいとされていたのだが……… 料理屋の 長女の千瀬に一目惚れされた楊枝屋の四男坊 鈴之助。 どちらも...
男尊女卑では無いが,女性の身分が、低い時代日本の時代。 女傑とは言えないが、女系で、商いをして来た。 婿養子といえども、婿殿に、采配を束ね、縁の下の力持ちになるのが、奥ゆかしいとされていたのだが……… 料理屋の 長女の千瀬に一目惚れされた楊枝屋の四男坊 鈴之助。 どちらも、相思相愛に! トントン拍子で、話は進むのだが、 男は商売に口を挟む事は出来ない、隠居同然の生活。 義理の母から小遣いを貰い、それで、大人しく、鎮座ませませの生活。 形だけの若旦那の鈴之助。 でも、おっとりとしていて、難題を、解いて行く話に、ついつい、読むのが止まらない。 そして、 作者西條奈加氏、さり気なく、四季の事を話の中に盛り込んでいる。 素晴らしい。 若い人は、正月にしめ縄もしない風潮だが、…… 小正月にしても、いい歳の人でも、知らない人もいる。 雛祭りの話にしても、そして、七五三にしても、その由来的なものをさらりと、書き記している所は、見事である。 最後の結末には、少し展開が大きくなったけど、めでたしめでたしである。 さてさて、次に誕生する子供は、跡継ぎになってくれるのだろうか?と、要らぬ心配をしながら、読み終えた!
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ドンピシャ好みのお話でした。人畜無害で凡庸な若旦那。その実自覚なしの天性の人たらし。二話目から始まる不穏な影が思った以上に重い問題だったけど、それも彼の本音が解きほぐし万事解決とは行かなくても、良い方向に動き始めるっていうエンディングは良かった。勘がよくてお人好しのこの人が女性上...
ドンピシャ好みのお話でした。人畜無害で凡庸な若旦那。その実自覚なしの天性の人たらし。二話目から始まる不穏な影が思った以上に重い問題だったけど、それも彼の本音が解きほぐし万事解決とは行かなくても、良い方向に動き始めるっていうエンディングは良かった。勘がよくてお人好しのこの人が女性上位家系のこの店で今後どうなっていくのかめちゃくちゃ続きを読みたい。
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相思相愛のお千瀬の実家である仕出屋の大店に嫁いだ鈴之助を待ち構えていたのは、ほぼ隠居生活。持ち前の気質とお千瀬と共に、新しい生活を切り拓いていく。 鈴之助の人となりもよければ、逢見屋の仕出屋としての在り方も素敵。 板長の権三さんと泰介、幸吉が、わたしの中でぐっと来た登場人物たち...
相思相愛のお千瀬の実家である仕出屋の大店に嫁いだ鈴之助を待ち構えていたのは、ほぼ隠居生活。持ち前の気質とお千瀬と共に、新しい生活を切り拓いていく。 鈴之助の人となりもよければ、逢見屋の仕出屋としての在り方も素敵。 板長の権三さんと泰介、幸吉が、わたしの中でぐっと来た登場人物たちです。 特別な折の馴染みの店があることも、それに応える逢見屋の心意気もすてきだな。
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女系家族の仕出屋「逢見屋」に婿入りしたが、 その次の日から、女将連中から、 「何もするな」と言い渡された婿の奮闘記。 ほのぼのとした、というか、主人公の婿どの、 鈴之助が、とても、ほのぼのとしたキャラで、 何だか、つるつるっと読めてしまった。 何の取り柄もない、平々凡々と評さ...
女系家族の仕出屋「逢見屋」に婿入りしたが、 その次の日から、女将連中から、 「何もするな」と言い渡された婿の奮闘記。 ほのぼのとした、というか、主人公の婿どの、 鈴之助が、とても、ほのぼのとしたキャラで、 何だか、つるつるっと読めてしまった。 何の取り柄もない、平々凡々と評される鈴之助だが、 相思相愛の妻、千瀬のため、日々起こる、ちょっとした 騒ぎに真剣に取り組み、そして、いつの間にか、 逢見屋のいびつな慣習をひっくり返す働きを…。 鈴之助の裏表のない、素直なキャラが、 とても心地よい。 女連中にくさされても、何のその。 アホのように聞こえるが、実に、愛すべき人物で、 作品の中では、人たらしとされているが、 読んでいるワタシが、もう、たらされているのかも。
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2024年 初読みに相応しく、心温まる内容だった。 小さな楊枝屋の四男坊、鈴之助が、相思相愛のお千瀬と祝言した。 お千瀬は、大店の仕出屋『逢見屋』の跡取り娘で、鈴之助は、入婿として『逢見屋』に入った。 祝言の翌日、隠居から申し渡された事。 誰もが羨む、逆玉の輿の筈が・・。
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鈴之助の人となりが魅力的。 大店の娘さんと結婚し、婿入りした途端、お店は女たちで回すから、引っ込んでおくように言われる。 そんな中でも、飄々と立ち回る姿が、面白かった。
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跡継ぎは男性、女性は一歩下がって主に仕えるもの、そんな江戸時代にも逞しい女性はきっといたはず。 部屋住みの四男坊、鈴之助が婿養子に入った仕出し屋は二代目と三代目が商いの才に恵まれなかった上に道楽者で、三代目に至っては若い女と駆け落ちして借金を残して消えてしまうという、、、。 三代...
跡継ぎは男性、女性は一歩下がって主に仕えるもの、そんな江戸時代にも逞しい女性はきっといたはず。 部屋住みの四男坊、鈴之助が婿養子に入った仕出し屋は二代目と三代目が商いの才に恵まれなかった上に道楽者で、三代目に至っては若い女と駆け落ちして借金を残して消えてしまうという、、、。 三代目の妻にたまたま商才があったのか、何とか持ち堪え、いくつかあった問屋を始末し借金を返済して唯一仕出し屋だけは残す事ができた。 そして。 唯一、残った仕出し屋はもう男なんぞに任せておけないとばかりに、この先もずっと女将に継がせると決めたのだ。 江戸時代は圧倒的に男性が多かったという。男性中心が当たり前の時代に、逞しい女将たちが立ち回る「蓮見屋」のような家族が存在していたら、ちょっとうれしい、と私は思った。 しかし、物語の中の主人公である鈴之助は、鷹揚な性格であったのにさすがに、 「鈴之助、そなたをどうして婿に迎えたかわかりますか? これといった取り柄や才もなく・・・平々凡々の、つまらない男です」と、義母に言われ、祖母には、 「・・子作りに励むより他は、くれぐれもよけいなマネなどしないように」と、達せられ、悄然とうなだれるのだった。 想いを寄せていた、優しくて器量良しの娘にプロポーズされて、逆玉の輿と思いきや、やはり世の中はそんなに甘くないのだ。 平々凡々な鈴之助の長所を見抜いたお千瀬がすごいと思う。そして、長年「蓮見屋」に仕える、婆やの、おすが。 登場場面は少ないが、好きだわー!おすがさん。 おすがなくして、鈴之助とお千瀬の出逢いもなかった訳で。 義父と共にけちょんけちょんな扱いであった鈴之助だったが、蓮見屋の歪な氷山を少しずつ溶かしてゆくのだった。
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安心して読める、西條さんの江戸モノ。 小さな楊枝屋の四男・鈴之助は、相思相愛のお千瀬の生家、大店の仕出屋〈逢見屋〉にめでたく婿入りとなります。 ところが、そこは代々女将が商売を仕切るしきたりで、祝言の翌日に“家業に関わってくるな”と、言い渡されてしまい・・・。 まだまだ”家は男が継ぐ”のが世間的に多数派の中、その逆で“男はすっこんでろ”ってな家風の〈逢見屋〉。 ある意味、お小遣いをもらってプラプラしていてもOKなので、“ヒモ気質”の男性には堪らない境遇といえばそうかもなのですが(汗)。 最初はぞんざいに扱われ、肩身の狭い思いをしていた鈴之助ですが、妻のお千瀬からの愛情を支えに、持ち前の人柄の良さと周りを和ませる気質を活かして、奉公人や義妹たちと心を通わせるようになっていく展開で、鈴之助の〈逢見屋〉の役に立とうとする健気な様子に“鈴之助、頑張れ!”と応援しながら読みました。 商売モノあるある(?)で、同業者〈伊奈月〉からの謎の嫌がらせがあったりもするのですが、後半で〈伊奈月〉の若主人の出目と〈逢見屋〉の驚きの繋がりが明らかになり、結果、心温まるラストに繋がるのが良いですね。 個人的に、気の強い次女のお丹と“うさ兄さん”は相性が良さそうなので、お丹が〈伊奈月〉再生のお手伝いをすれば良いかも!と思いました。 さらに、鈴之助の実兄(三兄)の杉之助もなかなかええキャラだったので、是非続編を希望したいです~。
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