正しい女たち の商品レビュー

千早茜(著者)

2022/12/10

連作短編集。不倫や暴言吐いたりする間違ったことする男の人がやられ気味。いい気味〜とも思ったり。でも「幸福な離婚」は男の人が不倫される側でしたね…

「温室の女たち」では4人グループで学生から社会人まで仲良くやってきた女の子たち。仲が良いから全部話すし、口出すし。その辺の空恐ろしさを感じる話。でも私も大人になったから分かりますが、学生時代は同じでもそれぞれ歩む人生は変わるんだと。それを他人が口出すのは果たして仲が良いのか、というとこでしょうか。

2022/12/13

離婚が決まっている夫婦の残り少ない日々を描いた「幸福な離婚」が一番印象に残った。
別の人生を歩むことになって初めてパートナーの良さが見えてきたり、互いを思いやり穏やかな生活ができるようになるのが切なかった。
けれどこの時間が離婚後一人で過ごす日々を後押ししてくれるのだろうか。
あと痛快だったのが「描かれた若さ」。
女性は若いことがすべてだと言わんばかりの失礼な中年男が主人公の短編で、男性に年齢をあげつらわれて中傷された経験を持つ女性におすすめしたい。

2022/10/09

「30代の自分はもう何にも揺るがない大人になると思っていた」

みんな自分の思う正しさを追求しながら、どこか他人を窺っているのかも。
SNSで更に拍車が掛かってるように思う。

嫉妬や眺望、諦観…他人事とは思えないリアルなあれこれ。

2022/09/07

幸福な離婚が良かった。名前よ。
わたしの腕に気付いたら一体なんて言うのだろう。わたししか気付かないけれど、もう。だからわたしはずっとひとりなのだよな。

嗅いだり、触れたり、舐めたり、鼓動や声を聴いたり、そのひとの存在に感覚のすべてを集中させる行為や欲求をなんて呼べばいいのだろう。

2022/05/29

「幸福な離婚」が一番良かった。
今の関係が何の工夫もなく続いていくわけはなくて、日々のメンテナンスや振り返りがないと、関係を維持することって難しいはず。そんなことを改めて考えさせられた。
終わりがみえていると、人は相手に優しくなれる。ぶつかっても仕方が無いし、意味が無いないから。でもそんな関係はどこか寂しい。
明日命が終わると分かっている人に対して、冷たい言葉などかけない。それと同じような感覚で、寂しい。

2022/05/24

★3.5

はじめての千早茜さん

決して読後感がスッキリするわけじゃないし、現実離れした物語も中にはあるのに、部分部分でめちゃくちゃ現実に近いような皮肉感とかどろっと感が出てきて、そこに引き込まれて一気読み

短編集なんだけど短編ごとというより
一冊通して、次はどんな普通とか正しさとかが表現されてくるんだろうというどきどき感もあった

温室の友情、桃のプライド、描かれた若さ
は、女性が一度は通るダークサイドの気持ちがあらわになっていたし、
海辺の先生　と、偽物のセックスの繋がりはそうくるか！！と思ってなんだかぞわっとしたのと、佐倉先生目線で物語を書いて欲しいなとい気持ちと。
偽物のセックス　は一番リアルじゃないのにリアルが体現されていて、いい意味での読後感の気持ち悪さたるや。最後の描写がリアルすぎて頭から離れないわ。
幸福な離婚は、こんな離婚できたらいいのにね、と離婚考えたことある人は思うだろうな。立て直せるんじゃないの？と思った人は、しあわせに生きてる証拠だね。どうしようもない時はどうしようもないんだよ。

普通、とか、みんな、とか、正しい、とか、息苦しいね、ほんとに。

そしてこんな感じで短編同士が繋がっているタイプの短編集、とてもすき

2022/05/04

4人の普通の女の子たち、という設定がすでにぐさぐさくるよね。
大学までエスカレーター式の私立の中等部で出会った、太っても痩せてもなく、目立って愚図でも飛びぬけて優秀でもない普通の女の子たち。

｢幸福な離婚｣がよかった。
〝正しい状態ではない今、わたしの心は穏やかだ。〟
結婚生活の最期を看取ろうとするふたり。
ひやひやしたものは底に沈めたまま、うえのぬるいところをすくうようにして。
終わりが見えているから優しくなれる、大切にできる、ってどうしてなんだろうね。

あとお休みの日の朝ごはんが美味しそう。土鍋ご飯とたくさんの細々したおかずたち。千早茜さんっぽくてグッとくる。

2022/04/30

「幸福な離婚」が心に残っています。
離婚までの間、お互い幸せな中で過ごしているのに、最後に別れがあるのはやっぱり悲しいし離れがたいと思いました。
離婚があるからこそ、残りの期間は楽しく過ごそうと二人の中で決めて、お互いの許せなかった部分を許して、上手に過ごしていく。もしかしたら、こうすれば上手くいったんじゃないか、という期待も芽生えて、寄りを戻したい気持ちになるのではないかな、と思いましたが、その気持ちには蓋をして。。
相手の信頼を失わないように誠実に生きて、大切なものを大切にしたいと思いました。

2022/03/19

「幸福な離婚」が良かった。自分にも思い当たる節があったりして、ぐさっときた。彼氏と同棲中なので、こうならないよう日々をもっと大切にしようと思った。

どのお話も自分が経験していなくても、主人公に気持ちに共感できる部分があって、わかる〜ってなった。

「描かれた若さ」はフェミニズム的なかんじで良かった。男の人は一度これを読んだ方がいい。自分のことを棚に上げて、ジャッジする側やと思っている人が多すぎるので。

千早茜さんの文章好きかも。他の本も読んでみたい。

2022/02/12

短編集６編
中学時代からの女の友情のあり方を描いた「温室の友情」
セックスレスの男から見た隣の夫婦の正しいセックスの「偽物のセックス」が良かった。
最後の「描かれた若さ」は心の底をえぐるような怖さ。
どの作品も心の深い闇を覗いているようだった。