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リボルバー の商品レビュー

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464件のお客様レビュー

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2021/05/29

幼い頃から美術が好きな母に育てられ、美術に携わる仕事がしたいと、パリでオークション会社に務める冴の元に、これまでの美術史を覆すものだというものが持ち込まれる。 その真贋を見極めるために冴はゴッホとゴーギャンの間に横たわる歴史と相見えることとなる。 たゆたえども沈まずと同じくして...

幼い頃から美術が好きな母に育てられ、美術に携わる仕事がしたいと、パリでオークション会社に務める冴の元に、これまでの美術史を覆すものだというものが持ち込まれる。 その真贋を見極めるために冴はゴッホとゴーギャンの間に横たわる歴史と相見えることとなる。 たゆたえども沈まずと同じくしてゴッホにまつわる事実に基づいたフィクション。 フィクションとわかっていても胸が踊る展開にページをめくる手が加速した。 正解などない途方もない世界で生きたふたり。ふたりの喜びも苦悩もきっと誰にもわからない。 今わかるのは素晴らしい画家とその支えになる人たちがいたこと。その人たちはもうこの世にいないこと。その人生にはそそれぞれ様々な出来事があり、交差することもあれば向き合うことも背を向けることもあったこと、ただそれだけ。 そこからこのような物語を紡いでくれた原田マハさんに敬服する。

Posted byブクログ

2021/05/28

パリ八区にある、小さなオークション会社「キャビネ・ド・キュリオジラ」(CDC)に勤務する高遠冴(さえ)。 冴は大学で美術史を学びゴッホとゴーギャンのアルルにおける相互影響についての博士論文を書いています。 冴の元に50代のサラ・ジラールと名乗る女性が一丁の拳銃(リボルバー)を持...

パリ八区にある、小さなオークション会社「キャビネ・ド・キュリオジラ」(CDC)に勤務する高遠冴(さえ)。 冴は大学で美術史を学びゴッホとゴーギャンのアルルにおける相互影響についての博士論文を書いています。 冴の元に50代のサラ・ジラールと名乗る女性が一丁の拳銃(リボルバー)を持ってきます。 サラは「このリボルバーはフィンセント・ファン・ゴッホを撃ち抜いたものです」と言います。 オークション会社社長のギローは「ゴーギャンがゴッホに対する嫉妬から撃ち殺したのなら辻褄が合う」などと言い出します。 冴は、「ゴッホとゴーギャンは表面的に反目し合うことはあっても、心の底では深い友情で結ばれていたのでそれはありえない」と言います。 2011年にはアメリカで『ファン・ゴッホの生涯』というゴッホの他殺説の本が出ているそうです。 この本はフィクションですが、あり得たかもしれないゴッホとゴーギャンのもうひとつのサラという女性の物語です。 この本の主人公である冴とサラ、そしてこの作品の作者である原田マハさんの願い。 フィンセントも、ポールも、決して不幸のうちに人生を終えたのではなかったと信じたいという気持ちが伝わってくる奇跡の一瞬をとらえた物語でした。

Posted byブクログ

2021/05/28
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※このレビューにはネタバレを含みます

パリの小さなオークション会社で働く主人公冴の元に『これはゴッホが自殺した時に使ったピストルです。』と錆び付いたリボルバーが持ち込まれる所から話は始まる。 本当にそれはゴッホが自殺した時に使ったリボルバーなのか… そしてそのリボルバーを持ち込んだ持ち主は何者なのか、どんな意図があるのか… 調べていくうちに行き着く疑惑。 ゴッホは本当に自殺したのか? 実は殺されたのではないのか? 題材からしてワクワクせずには居られないこのテーマをアート小説を書かせたら右に出る者は居ないマハさんが書くのだから堪らない! まるで今目の前に見せつけられたかのように描写されるゴッホとゴーギャン2人の傑作。 その絵画に流れる深い物語。 そしてゴッホとゴーギャンと言う歴史的画家2人の血の通ったやり取り。 これが本当の話だとしたら歴史は確かにひっくり返る。 でもタイムマシーンでもない限りこの謎はきっと永遠の謎。今すぐにでもオーヴェール=シュル=オワーズ村に行って『あの並木道』に立ってみたい。

Posted byブクログ

2021/05/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

原田マハの芸術小説に外れなし。 多くの小説に描かれてきたゴッホとゴーギャンの物語に、新たな「事実が」。 弱小オークション会社に持ち込まれたさび付いた拳銃。それが「ゴッホの胸を撃ち抜いたリボルバー」だという。 ゴッホとゴーギャンの研究をしている日本人女性、冴がその真実に迫る。ってなんというスリリングな設定だ。 芸術に疎い私でもゴッホとゴーギャンの絵を目にしたことはあるし、二人が一時期一緒に暮らしていたことも、ゴッホの耳削ぎ事件のことも知っている。けれど、ゴッホの死についてはぼんやりとしか知らない。 そのぼんやりとした「死」はアート史上最大のミステリだと言われる。なぜ、どうやって、死んだのか。 その秘密に原田マハが迫る。 オークション会社のスタッフである冴の研究者としての姿勢。膨大な資料の中から必要なものを選び出す眼。ひとつひとつの文献に丁寧に当たるその真摯な姿勢に思わず姿勢がのびる。 会社員である以上、会社にとっての利益を考えなけばならない。大手で活躍する友人へのライバル心もあろう。けれどその前に一人の芸術を愛する者であり研究者である、そのはざまにある冴のゆるぎない信念の凛とした美しさに惚れる。 それにしても、あぁ、もうこれが「本当のこと」としか思えない。この物語こそがあの日、あの時、あの場所で起こった「事実」だとしか。 芸術に生きる、いや、芸術の中でしか生きられなかった二人の男の、熱く濃い命が鮮やかによみがえった。 読み終わった後、自分が黄色い世界の祝福の中にいる気がした。

Posted byブクログ