実力も運のうち 能力主義は正義か? の商品レビュー
アメリカにおけるメリトクラシーによる分断の構造がわかりやすく、事実の積み重ねとても丁寧に書かれている。なぜトランプ政権が生まれたのかについて非常にわかりやすく書かれている。負け組として虐げられた人々の心を掴んだのが億万長者のトランプってところがすごい皮肉だ。それを愚かな選択と見下...
アメリカにおけるメリトクラシーによる分断の構造がわかりやすく、事実の積み重ねとても丁寧に書かれている。なぜトランプ政権が生まれたのかについて非常にわかりやすく書かれている。負け組として虐げられた人々の心を掴んだのが億万長者のトランプってところがすごい皮肉だ。それを愚かな選択と見下しているうちは分断は解消されない。成功は実力出なく環境下も含めた運のおかげでけんきょになるべきというのは賛同できるが精神論なのでなかなか一般にはなかなか受け入れられないと思う。 日本でも分断という言葉が流行っているがアメリカと日本では程度がぜんぜん異なっていて、日本分断が進んだ時は、極左、あるいは極右政党が躍進すると思う。
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謙虚さと相互理解が大事っていう本。 マイケル・サンデルの本はおそらく初めて読んだけど、読みやすく面白かった。 能力主義や機会の均等が真に平等で理想的な社会を作る訳ではない、と。 あと、労働の承認の場としての尊厳の重要性。 p. 40 能力主義的なおごりは勝者の次のような傾向を反映している。すなわち、彼らは自らの成功の空気を深く吸い込みすぎ、成功へと至る途中で助けとなってくれた幸運を忘れてしまうのだ。頂点に立つ人びとは、自分は自分の手にしている境遇にふさわしい人間であり、底辺にいる人々もまたその境遇にふさわしいと言う独りよがりの信念を持ちやすい。 p. 265 コナントが始動させた選別装置を解体したければ、能力による支配体制は、同時に二つの方向で専制をふるうと言う点に留意すべきだ。頂点に登りつめる人の場合、不安をかき立て、疲れ切ってしまうほどの完璧主義に導き、もろい自己評価を能力主義的なおごりによってどうにかごまかすよう仕向ける。置き去りにされた人には、自信を失わせ屈辱さえ感じさせるほどの敗北感を植えつける。 これら二つの専制には、共通の道徳的根源がある——我々は自分の運命に個人として全責任を負うと言う不変の能力主義的信念だ。成功すれば自分自身の手柄であり、失敗しても自分以外の誰も責められない。 自己責任というこの厳しい考え方は、やる気を奮い立たせるように思えるものの、連帯と相互義務感覚を芽生えにくくもする。こうした感覚を身に付けていれば、現代の不平等の拡大に立ち向かえるはずなのだ。 p. 311 課税は、たんに歳入を増やす方法というだけではない。共通善への価値ある貢献として何を重んじるかという社会の判断を表現する方法でもある。
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能力主義がもたらす格差と労働の尊厳を蝕む「値する」という考え方。 出世のレトリック、選別装置となった大学、問題点は見えていてもその解決はとても難しい。 人はとにかく承認を欲する。 つくる者と受け取る者とは、富裕層と貧困層のどちらをさしているか。雇用を創出する富裕層がつくる者と主張...
能力主義がもたらす格差と労働の尊厳を蝕む「値する」という考え方。 出世のレトリック、選別装置となった大学、問題点は見えていてもその解決はとても難しい。 人はとにかく承認を欲する。 つくる者と受け取る者とは、富裕層と貧困層のどちらをさしているか。雇用を創出する富裕層がつくる者と主張するリバタリアンに対して、実体経済に貢献せず莫大な棚ぼたの利益を手にしているのは富裕層なのではないかとの反論。今は後者の反論の方が腹落ちする。
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人種や性別・出自によらず能力の高いものが平等に成功できる、賢い人は偉いという「メリトクラシー」は、低収入の仕事は低価値・努力しなかった自分が悪い、という論理を導く。高収入家庭の子弟が高学歴という現実、自力ではなく社会が与えてくれた幸運なのに。 頑張れば報われる・能力が高ければ恩...
人種や性別・出自によらず能力の高いものが平等に成功できる、賢い人は偉いという「メリトクラシー」は、低収入の仕事は低価値・努力しなかった自分が悪い、という論理を導く。高収入家庭の子弟が高学歴という現実、自力ではなく社会が与えてくれた幸運なのに。 頑張れば報われる・能力が高ければ恩恵に値する、ことの重大な欠陥が理解できました。日本はアメリカほどじゃないそうだけど、頑張っても報われない・能力があっても一寸先は闇だから?
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『ルターのより一般的な主張は、アウグスティヌスと同じく、救済はすべて神の恩寵の問題であり、善行であれ儀式の遂行であれ、神の歓心を買うためのいかなる努力にも影響されないというものだった』 『聖体を拝領したりミサに出席したり、あるいはほかの方法で自分の功績を神に納得してもらうことでチャンスを増そうとするのは、神への冒涜と言っていいほどおこがましい行為なのである』 『ルターと同じく、ジャン・カルヴァン(彼の神学はピューリタンに霊感を与えた)は、救済とは神の恩寵の問題であり、人間の能力や功罪によって決まるものではないと考えた』 これらからあるように、ルターもカルヴァンも、救済は人間側の問題ではなく、神の方の問題であると主張している。しかし、この思想は宗教の改革者にとってはそうでないかもしれないが、より一般の信徒には「自分は救済に選ばれているのだろうか?」という疑念を抱かせた。そして、この疑念から、『カルヴァン派の信者はある種の労働倫理へと導かれた。あらゆる者が天職について働くよう神に召されているのだから、その召命に従って熱心に働くことは、救済のしるしなのだ』というように、逆説的に救済を人間の問題にしてしまったと、ヴェーバーは主張している。 天職に就いている者は、本来「神に選ばれている」から天職に就いているはずだが、天職に就くことではじめて「神に選ばれる」というように勘違いされて、労働倫理となっていった。そして、こうした労働倫理から、資本力の増加、資本主義の芽生えとなった。 こうした労働倫理から、労働と努力自体が責務というような価値観を生み出す。これはもはや宗教的な意味合いもほとんど持たないだろう。 『予定説というカルヴァン主義者の考え方や、救済のしるしを求める不安な探索を離れ、労働と努力そのものが責務となったのだ』 『つまり、成功を収める人びとの権力や富は神の介入のおかげではない──彼らは自分自身の努力と苦労のおかげで出世する──ものの、その成功は彼らの崇高な美徳を反映しているというのだ』 そして現代アメリカの「繁栄の福音」では、『神は信仰に対して富と健康をもって報いると教える。神の恩寵は自力では獲得できない神秘的な贈り物であるなどとは考えず、人間の主体性と意志を強調する』ものとなった。宗教の世俗化なのか? 私のようなエリート(自分では全くそうは思っていないのだが客観的には間違いなくエリート層だろう)が読むと大いに自己肯定感を削がれる一冊。エリート層は高度な教育を受けさせることでエリート層を再生産する。それにより教育による一種の貴族制度が生まれる。公平世界仮説のことを信じているとは思っていないのだが、それでも心の底では「自分の努力でのし上がった」というような思い上がりがあることに気付かされた。
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現在の世界に蔓延る学力社会へ一石を投じる本です。 是非読んで欲しいです。 最後の解決策というか持論が稚拙だったのが惜しかったです。 学生時代から社会人に至るまで、あらゆる人に学習の機会を提供するのが政府の真の役割になる気がします。
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不平等だから平等にしたのにさらに不平等になるカラクリ。アメリカの経済を歴史的に俯瞰で解説されていました。貧富の差が拡大した原因として教育問題、平等不平等問題、金融優先社会の問題点から丁寧に説明してあります。後半は機会の平等ではなく条件の平等を解決策としていました。能力主義、功利主...
不平等だから平等にしたのにさらに不平等になるカラクリ。アメリカの経済を歴史的に俯瞰で解説されていました。貧富の差が拡大した原因として教育問題、平等不平等問題、金融優先社会の問題点から丁寧に説明してあります。後半は機会の平等ではなく条件の平等を解決策としていました。能力主義、功利主義、市場主義、テクノクラート的能力と道徳的判断、アファーマティブアクション、歴代の大統領が口にする「あなたは値する」の言葉、そしてアメリカン・ドリーム。他人事のように読んでいましたがアメリカだけでなく、高学歴や金融企業でたくさんの資産を手にしたのは自分が努力したからだ!という日本人は是非読んでほしいと思いました。
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能力主義は平等なのか?と問い、そうではないことをデータに基づき述べた1冊。昨今問題になっている社会の分断の一要因にも通ずるところがあるように思う。
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マイケル・サンデルにずっと興味を持っていたので、手に取ってみた。 現代社会に蔓延している実力主義が正義に則っているかどうかを、様々な政治哲学思想から議論していく話。 自分も学力偏重的な考え方を持っている。その一方で、私は世界の多様性を尊重したいとも考える。しかし、それはサンデ...
マイケル・サンデルにずっと興味を持っていたので、手に取ってみた。 現代社会に蔓延している実力主義が正義に則っているかどうかを、様々な政治哲学思想から議論していく話。 自分も学力偏重的な考え方を持っている。その一方で、私は世界の多様性を尊重したいとも考える。しかし、それはサンデルからすると、矛盾している。学歴もまた、多様性としてみなさなければならない。また、私たちは謙虚であり続け、共通善のために働き続けなければならない。
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アメリカにおいて、学歴ベースのメリトクラシーがいかにして非大卒労働者から労働の尊厳を奪い、結果としてトランプ政権を誕生させたかが分かった。絶望死といったトピックがメリトクラシーと連結しているということもはじめて認識した。 能力における評価をなくしましょうというわけではなく、能力を...
アメリカにおいて、学歴ベースのメリトクラシーがいかにして非大卒労働者から労働の尊厳を奪い、結果としてトランプ政権を誕生させたかが分かった。絶望死といったトピックがメリトクラシーと連結しているということもはじめて認識した。 能力における評価をなくしましょうというわけではなく、能力を評価してしまうシステムの中に運要素を介在させる事により、成功者の過剰な自意識を抑え、たまたまシステムに評価されてうまくいった人とそうでない人の間の尊厳における距離を小さくするという考え方はなるほどと思った。 解説にあるように、ここではじめて能力主義と訳されているメリトクラシーは原語では功績主義に近いもので、スキルや功績、能力がごちゃ混ぜになって「能力主義」として語られている日本では、より困難な課題に直面している可能性があるなと思った
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