実力も運のうち 能力主義は正義か? の商品レビュー
民主主義国家の格差 拡大のメカニズム 能力主義と教育投資 新たな世襲貴族体制 公正の装いをまといながら既得権益層の固定化が進み、社会体制の自壊が進む これは人類の歴史の必然のようだ それにしてもサンデル先生の見識 本質への切り込みはお見事
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前半は分からない用語が多くちょっとしんどかった。読むにつれて米国の学歴社会の熾烈さを理解できた。これは日本社会にも言えるし、自分の中の無意識な価値観に響いた。あらゆる労働の尊厳を評価し合える社会を実現する明確な解はないけど、一人一人が認識することが大切。
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金融業界への批判がまさしくその通りという感じだった。資本主義においては、「人の価値」が収入で定義される側面があるのではと感じていて、それであるなら金融業界の人はそれほどまでに価値があるのか? 能力主義が蔓延ることで、能力のない(価値がない)とされる人々は言い訳ができず、ますます生...
金融業界への批判がまさしくその通りという感じだった。資本主義においては、「人の価値」が収入で定義される側面があるのではと感じていて、それであるなら金融業界の人はそれほどまでに価値があるのか? 能力主義が蔓延ることで、能力のない(価値がない)とされる人々は言い訳ができず、ますます生きづらくなる。それだけでなく、富める人々は自分の努力や才能のおかげなので対価を得て当然だと傲慢になっていく。それが健全で平和な世界であるはずがない。激しく共感できた。 ではどうすれば良いか、という点はそこまで具体的に書かれていないため消化不良感があるが、自分で考えていきたいと思う。そして願わくば今の社会の「勝者」の人にこそ読んでほしい。
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オーディオブックで読了。アメリカンドリームの虚構は「やりたいことを仕事にする」と似てるのかなぁとふと思ったり。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
人間の社会は不平等である。 身分制・階級制の社会では、不平等はその身分・階級に所以している。生まれながらの身分は如何ともし難く、再生産されるため不平等が固定化する。 これは是認できないものとして、生まれながらの身分にかかわらず才能と努力とによって成果を挙げることで誰もが報われる社会を目指す。自由な社会と能力主義とはほとんど同義に見えて、今日ではあまりにも当たり前のことになっている。 しかし、不平等は解消されない。能力主義は不平等を否定していない。 不平等の正当化の論拠が変わっただけ。しかも、能力主義の下での不平等は、勝者に『自分は自分が得た富に値する』という自負を与える。敗者は努力が足りなかったとされ、『持たざる』ことの責任を負わされて自尊心をさらに傷つけられる。 能力主義の下で、本来は勝者と敗者が流動的に入れ替わらなければならない(アメリカンドリームで)が、勝者と敗者は世代を超えて受け継がれようとしており、固定化している。 リベラル派は、それでも能力主義を信じている。 これは能力主義の問題ではなく、能力主義を実現するための制度設計の問題であると考える。もっと教育を。みんなが大学に行けるようにすべきである、と。 アメリカ人の大半は、大学を経ずに労働に就いているというのに。大学に行って仕事をするのがそんなに偉いのか。 アメリカンドリームとはアメリカ人全員の希望だったはずなのに、能力主義はこうして社会を分断した。その後、ポピュリストが台頭し、トランプ大統領の誕生に至る。 筆者は、能力主義という価値観が分断を生み、非エリートと呼ばれる人々の尊厳を傷つけているという。また、能力主義の土台となっている学歴偏重主義も問題視する。こうした現状認識を踏まえて、いくつか具体的な提言(大学入試は足切りだけしてあとはくじ引きでいいとか、所得税は無くして金融取引や資産課税に変えるべきだ、など)をする。 この辺りの提言は、理解はできるものの”””大胆だな”というの以上の感想が出てこない。 その他、勝者が『才能と努力が報われた』と自認する意識とキリスト教の”救済”との接続、能力主義の下でのグローバリゼーションの推進なども解きほぐされる。 自分は勝ち組だと思っている人には今一度謙虚さを、自分は負け組だと思っている人には外形的な価値判断から抜け出して今一度尊厳を。
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能力主義の考え方が進む中で、 勝者は努力したから当然なのか?・敗者は努力が足りなかったのか? という疑問を問いかけてくる本だった。 努力したから上手くいったのだと考えることは、心地が良く、誰にとっても平等であるように見える。 しかしそういった考えが周りを見下すことを正当化し、...
能力主義の考え方が進む中で、 勝者は努力したから当然なのか?・敗者は努力が足りなかったのか? という疑問を問いかけてくる本だった。 努力したから上手くいったのだと考えることは、心地が良く、誰にとっても平等であるように見える。 しかしそういった考えが周りを見下すことを正当化し、敗者を追い詰めていく。それらがポピュリズムなどの考えが力を持つ要因となったのだと考えさせられた。
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日経ビジネス2021516掲載 毎日新聞202158掲載 産経新聞2021523掲載 日経新聞202165掲載 プレジデント2022218掲載 評者:山口周(独立研究者、パブリックスピーカー)
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サンデル教授の新刊が出たということで、連休中に読んだ。 アメリカにおける能力主義追及が引き起こしたことについて、政治的側面に止まらずにまとめられている一冊。 著者は能力主義を全否定してる訳ではないが、当初の思惑と異なる方向に能力主義が進み、それが結果としてエリート層の傲慢に繋が...
サンデル教授の新刊が出たということで、連休中に読んだ。 アメリカにおける能力主義追及が引き起こしたことについて、政治的側面に止まらずにまとめられている一冊。 著者は能力主義を全否定してる訳ではないが、当初の思惑と異なる方向に能力主義が進み、それが結果としてエリート層の傲慢に繋がっていったということが、読んでいて伝わってきた。 著者は労働の尊厳を取り戻すこと、共通善が大事だと主張する。共通善の具体的なことはいまいち触れられていないのだが、ここで挙げられていることは対岸の火事とも思えないと感じた。 少し本題からずれるが、個人的に科学を勉強するほど環境問題について意見が割れたという調査結果が、驚きだった。 科学者でもトンデモが出てくるのも、この理論からなのか…
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米国で広がる経済格差について道徳的観点、特に能力主義(功績主義)を切り口に論じている。 能力主義(功績主義)とは、過去の成功した行為(功績)に応じて分配を決定するというものである。本書の解説にも書いている通り、能力主義で扱われる能力とは、人々に潜在する能力のことではなく、過去に...
米国で広がる経済格差について道徳的観点、特に能力主義(功績主義)を切り口に論じている。 能力主義(功績主義)とは、過去の成功した行為(功績)に応じて分配を決定するというものである。本書の解説にも書いている通り、能力主義で扱われる能力とは、人々に潜在する能力のことではなく、過去に行った行動による功績のことであることは注意しなければならない。能力主義では、歴史的背景より、功績はその人の必然的な結果であり、功績によって得られた報酬は独占できると考えられている。 能力主義は功利主義及び学歴社会と混ざり合い、人々の学歴に応じて所得が分配され、所得の高さによって、その人の価値が決定するというイデオロギーが形成されていく。 このイデオロギーが、能力主義の勝者である高学歴高賃金のエリートには奢りを、低学歴低賃金の労働者には辱めを与える原因となっている。 米国では、アメリカン・ドリームをはじめとする能力主義が歴史的に支持されており、「機会の平等化」が推し進められている。そして、その起点となっているのが大学である。人種や貧富の差に関わらず、能力のあるものが入学することで社会的流動性の高い社会の実現を目指していた。 しかし、現在のアメリカでは高学歴の大学に行くのは高収入の家庭の子供が大半で、低所得の家庭の子供はレベルの高い大学はおろか、大学入学もままならないのが現状である。 この事実が、労働者の能力主義に対する不支持を加速させ、能力主義を熱烈に支持する民主党ではなく、エリートを批判するドナルド・トランプが大統領選挙で勝利した一因になった。 能力主義による副作用に対して、筆者は二つの案を示している。 一つ目は、学歴信仰の抑制だ。具体的には、一定の入学適正を認められた者の中からランダムに入学者を決定することで、学歴に誰が見ても分かる偶然性を挿入することだ。この学歴の偶然性は学歴を功績と分離することを狙いとしている。 二つ目は、能力主義を功利主義と切り離すことだ。具体的には、労働者には政府から追加所得を与え、金融資産には多くの課税を与えることだ。これによって、所得と社会的価値には関係性がないことを、政治的に表明することが目的である。 筆者は能力主義それ自体を否定している訳ではない。現在の大学入試制度による社会流動性の低下と功利主義に基づく功績を批判している。筆者の目指す能力主義社会では、「尊厳の平等化」を目標とする。その社会では、功績は共通善に道徳的な行動によって規定される。現在と違い、功績が所得の数値によって優劣が決定するものではない。道徳的という曖昧な基準になるため、エリートや労働者を問わず市民が等しく、自身の功績を誇れる社会になるだろうというものである。
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どちらかというと能力主義の立場だったが、個人主義が強く、著しい格差社会が現状であるアメリカを見ると、その弊害も小さくない。 個人的に興味深かったのは、大統領選2016の文脈。能力主義が進んだことで、それに対抗するトランプが勢いづいたこと。本書のテーマとも言える。 このあたりは...
どちらかというと能力主義の立場だったが、個人主義が強く、著しい格差社会が現状であるアメリカを見ると、その弊害も小さくない。 個人的に興味深かったのは、大統領選2016の文脈。能力主義が進んだことで、それに対抗するトランプが勢いづいたこと。本書のテーマとも言える。 このあたりはロールズの著書なども読みながら理解を深めていきたいところ。
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