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正欲 の商品レビュー

4.3

1736件のお客様レビュー

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  2. 4つ

    613

  3. 3つ

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2022/10/13

あってはならない感情なんて、この世にはない。 偏見や争いはなくならず、悪者が悪者でいるのも、悪魔と名付けるのも、辿り着く理由はみんな自分を守るためなんだと思う。 そう思うと何の「意見」もできなくなる。マイノリティを理解して欲しい人も、気づかれたくない人も、マイノリティを理解し...

あってはならない感情なんて、この世にはない。 偏見や争いはなくならず、悪者が悪者でいるのも、悪魔と名付けるのも、辿り着く理由はみんな自分を守るためなんだと思う。 そう思うと何の「意見」もできなくなる。マイノリティを理解して欲しい人も、気づかれたくない人も、マイノリティを理解しようとする人も、それを批判する保守的な人もいるけれど、いつだって多数派のモラルが良い立場につくだけ。どんなに善良だと思える言葉や態度でも傷つく人は必ずいるし、どんなにマイノリティを理解しようとしても、マイノリティの中にも様々なんだから、もう他者なんて理解できない。そう、理解できない存在として受け入れるのが良いんじゃないか?ただ、1ピースでも分かり合えた気分で自分以外の他者と繋がっていることで、明日も生きていける気がする。 以下、気に入った文。 『この世に生きている人は皆、宗教が違う』 『多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。 自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。 時に吐き気を催し、時に目を瞑りたくなるほど、 自分にとって都合の悪いものがすぐ傍で 呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。』 『幸せの形はそれぞれ。多様性の時代。自分に正直に生きよう。そう言えるのは、本当の自分を明かしたところで、排除されない人たちだけだ。』

Posted byブクログ

2021/04/11

1行1行に刺さる言葉があり終始感情を揺さぶられた。 マジョリティの驕りを痛烈に表現していて、マイノリ視点で語られる物語では無自覚な言動にひたすらに苦しめられる。 あなたはおかしいと非難されることもつらいけど あなたはおかしいけど許容してあげますって態度もそれ以上に腹が立つ。 ...

1行1行に刺さる言葉があり終始感情を揺さぶられた。 マジョリティの驕りを痛烈に表現していて、マイノリ視点で語られる物語では無自覚な言動にひたすらに苦しめられる。 あなたはおかしいと非難されることもつらいけど あなたはおかしいけど許容してあげますって態度もそれ以上に腹が立つ。 理解されることを諦めた果てに何も言わないから理解できない、何を考えているかわからないと非難される事の地獄。 みんなが互いを理解し合う関係なんてのは到底叶わない、言動や態度が間違っているかもしれない誰かを傷つけているかもしれないという自覚と住み分けしかないと思う。 ただこれを意識して生活する事の大変さ、一度マイノリティの苦しみを味わってしまえば常に周囲の人の背景に気を使わなければならなくなる。 無自覚にマジョリティとして生活することが最も楽で賢い生き方なのかもなぁ、、、

Posted byブクログ

2021/04/11

『男性で、五体満足な異性愛者』に生まれ落ちた自分から見た社会が、あるいはその見方自体が、本当に「正しい」ものなのか?登場人物の立場は変われど、1行1行問いかけられ、冷や水をかけられ続けている感じがして終始ヒリヒリとした読書体験だった。 「多様性」の素晴らしさや、逆に危うさを語る...

『男性で、五体満足な異性愛者』に生まれ落ちた自分から見た社会が、あるいはその見方自体が、本当に「正しい」ものなのか?登場人物の立場は変われど、1行1行問いかけられ、冷や水をかけられ続けている感じがして終始ヒリヒリとした読書体験だった。 「多様性」の素晴らしさや、逆に危うさを語るニュースや論評はわく目にするが、小説として接することでより他者の、当事者の立場に感情移入して読むことができたと思う。「頭では理解している/知識としては持っているつもり」の防御線を飛び越して感情をダイレクトに揺さぶる傑作だった。流石朝井リョウ。。。

Posted byブクログ

2021/04/11

大人になってある程度社会を理解した気になっていた自分がいかに想像力のない人間だったのか、突きつけられた。自分はまともな側にいると思い、知らぬ間に他人をジャッジしてカテゴライズして安心した気になっていた。そして自分が異常な方へとジャッジされないように行動してきた気がする。ただ、人間...

大人になってある程度社会を理解した気になっていた自分がいかに想像力のない人間だったのか、突きつけられた。自分はまともな側にいると思い、知らぬ間に他人をジャッジしてカテゴライズして安心した気になっていた。そして自分が異常な方へとジャッジされないように行動してきた気がする。ただ、人間は群れることで安心感を得る動物であることも事実だと思う。だから、"繋がり"が必要なのだろうか。きっと、この本に書かれている問題は人類が存在し続ける限り解決しないことなのだと思う。もうこれを読む前の自分には戻れない。 "多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。" "だけど誰もが、昨日から見た対岸で目覚める可能性がある。まとも側にいた昨日の自分が感じた項目に、今日の自分が苦しめられる可能性がある。"

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2021/04/11

朝井リョウ10周年を記念した本作だが、タイトルが最も作品を表している。多様性が促される昨今、朝井リョウの視点で描くそれぞれの人間の裏側は健在だ。 今だからこそ読むべき一冊といえる。

Posted byブクログ

2021/04/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 特殊な性癖・フェティシズムを持つ社会的マイノリティを題材にした小説。特殊な性癖を持つからと言って、社会的な交際ができないのか(社会性を持たないのか)、そしてそれが当人にとって自死を考えるほどの孤独な事象なのか、という疑念は私の中にあるのだが、その疑念はこの小説を読んでも結局わからない。しかし、検事が接する被疑者を通じて常に自問する「性癖の有無に関わらず、社会的な法規範から逸脱した行動は法に則って裁かれるべき」という正義を元にした思考停止を常に自覚しなければならないのだろう。  LGBTの人権運動が声高に叫ばれる中、社会的マイノリティはマイノリティらしく、露出しない狭いコミュニティの中でそれなりの自由を享受しつつ欲望を満たしているのが普通だろう。彼らがマイノリティゆえに持つことのできる視点こそがダイバーシティであり、この小説を読むことを通し、自分がどの視点で物を見ているのか、そしてこの登場人物の誰に共感するのか、誰に嫌悪を抱くのか、その好悪の揺れを見つめること自体が小説を読むことの意味であると思う。朝井リョウの小説は、登場人物の対照がいつも鮮やかで、俯瞰的に読むととても良いのだが、これはマイノリティの当事者から見るとどう見えるのだろうか?各人物の造形はどうしても表層的な印象を受けてしまう。「桐島、部活辞めるってよ」のスクールカーストは自分もすごく当事者として読むことができたのだが、こちらはあまり共感的には読むことが難しかった。

Posted byブクログ

2021/04/10

凄まじかった。自分の傲慢さとかそういうものを突きつけられた。ああ、これからどうやって生きていこうかなともう一度考える機会になった。

Posted byブクログ

2021/04/10

朝井リョウさんの本は読んだことがありませんでしたが、インターネットで見かけた、オンリーワンのつらさに関する記事を見て、自分の想像力のなさを、見せつけられた気がしたのを覚えています。 多様性、ダイバーシティという言葉はよく聞きますが、全部救えるほど、両手は大きくなくて、どうしたっ...

朝井リョウさんの本は読んだことがありませんでしたが、インターネットで見かけた、オンリーワンのつらさに関する記事を見て、自分の想像力のなさを、見せつけられた気がしたのを覚えています。 多様性、ダイバーシティという言葉はよく聞きますが、全部救えるほど、両手は大きくなくて、どうしたって掬った水は溢れてしまう。 わかり合おう、と言いながら、許容範囲を広げようのように使われて、「でもあなたの「それ」は違うから」という声が聞こえてくる。 きっとこの本は、そんなテーマを持って生まれた本なのだろう、と私は思います。 冒頭の事件を見て、あぁ、そういう本なのか、なんて思っていましたが、読んでいるうちに、彼らの頭の中を見ているうちに、単純なことではない、という事実を知らされます。 マイノリティの受け皿は、これからもどんどん広がっていくと思います。 ただその受け皿が広がっても溢れていく人がいる。 そのとき、受け皿は「あなたは異常者」だと、何度も突きつける暴力となるのです。 ----- 読んでいるうちに、文章が主人公たちの叫びのように聞こえてきて、時間を忘れて読み進めてしまいました。 今まで読んだ本の中で、誰ともテイストが違っていて、そして、自分と年齢が近いので、ここまで考えられることに、ちょっと憂鬱な気持ちになりました。 しかし、自分よりも、ずっと優れている人間がいるという現実は、明日への活力になる気もします。

Posted byブクログ

2021/04/13

簡単に言ってしまえば、この本をすべての人が読めば、ヒエラルキーやいじめといった学生に親しみの深い(と認識されがちだが全ての人間関係の根幹にある)問題はなくなるのではないかと思う。 けれど同時に、こんなにも考え込む人が増えてしまったら、世界は臆病な人ばかりで何も挑戦できなくなってし...

簡単に言ってしまえば、この本をすべての人が読めば、ヒエラルキーやいじめといった学生に親しみの深い(と認識されがちだが全ての人間関係の根幹にある)問題はなくなるのではないかと思う。 けれど同時に、こんなにも考え込む人が増えてしまったら、世界は臆病な人ばかりで何も挑戦できなくなってしまうのでは、そしてしまいには動かなくなってしまうのではないかとも思う。 だから、やっぱり一定数の人には何も疑うことなく鈍感なままで、そのきらきらとした目と胸を輝かせて生きてほしい。 でも、この本が世に出されたことには大きな意味があると思う。 きっと私のように、この本がこの星との摩擦になった人は沢山いるはずだから。

Posted byブクログ

2021/04/08

何者を読んだ時に受けた衝撃とはまた別の衝撃を受けました。 多様性を認め合おうという風潮が溢れる中で、その多様性というものは自分の想像性の範囲内のものでしかないという現実を突きつけられた気がします。

Posted byブクログ