ひきこもり図書館 の商品レビュー
(2024/10/29 2.5h) p.216 「「ひきこもり図書館」は、現実に建てたとしても、ひきこもっている人は家から出ないわけで、訪れる人はあまりいないかもしれません。 そこで、本で作ってみました。ひきこもっていても手にとれるように。」 あとがきから引用 わたしは引...
(2024/10/29 2.5h) p.216 「「ひきこもり図書館」は、現実に建てたとしても、ひきこもっている人は家から出ないわけで、訪れる人はあまりいないかもしれません。 そこで、本で作ってみました。ひきこもっていても手にとれるように。」 あとがきから引用 わたしは引きこもりです。 とはいえ、図書館へ本を借りに出かけられるくらいの引きこもりです。中高と不登校で、そこからいまは無職で、家族以外とは接点がなく、断続的に6年間ほどは社会的な引きこもりといえます。 編者は13年もの間の引きこもりであったと言います。難病のためとあるので、理由なく引きこもるわたしとは質のまったく違う引きこもりと思います。 ただ、本書に集められた作品はどれも共感できるものばかり。 編者が偏りのないようにと注釈しながらも、SF 作品が多く集められたのは、引きこもりというもの自体が浮世離れしたものであるからか。 今年2024年ノーベル文学賞に輝いたハン・ガンの短編は、ノワールの重みが感じられます。韓国だからと一括りにするのは浅ましいかもしれませんが、映画作品にもみられるような特有のじっとりした雰囲気が印象的でした。 斎藤真理子が訳出書き下ろしというのも豪華で素敵ですね。 特に好きな作品は、 ・星新一「凍った時間」 ・梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」 ・ハン・ガン「私の女の実」
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ひきこもり図書館…。 なんとも興味深いタイトル。 今まで読んでいない作品と出会うことができました。 中でも梶尾真治さんの「フランケンシュタインの方程式」はおもしろさもあるけど、ゾッとします。 ノーベル文学賞受賞されたハン・ガンさんの「私の女の実」なぜか亡くなった母とのことが...
ひきこもり図書館…。 なんとも興味深いタイトル。 今まで読んでいない作品と出会うことができました。 中でも梶尾真治さんの「フランケンシュタインの方程式」はおもしろさもあるけど、ゾッとします。 ノーベル文学賞受賞されたハン・ガンさんの「私の女の実」なぜか亡くなった母とのことが思い出されました。 実は長男、ここ数年引きこもっているせいか、親子の物語を読んだりして、私自身が何かしらの救いを求めていたり、子供を理解したい、という思いにかられています。 編者頭木さんのあとがきと作品解説。寄り添うような優しい語り口。読んでいて、息子の気持ちに私も少し、近づけた、かな? そして、これからも自由に、作品を楽しんで読んでいこうと思います。
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こないだ読んだ村井理子さんの本で知った本。面白かった。難病で13年間引きこもり生活を送ったという頭木弘樹さんが編んだアンソロジー。散文詩から昔話からSFから漫画まで、いろいろあって面白かった。特に桃太郎にいろいろなバージョンがあるというのも初めて知った。口伝の昔話なんだからそりゃそうか。それにしても鬼退治に行く前で終わるとは。梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」、ハン・ガン「私の女の実」が特に印象的。カフカのひきこもり名言集も良かった。私も今、憧れのひきこもり、ニート生活だもんなぁ。
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仕事も散々な状態でコロナになり鬱々としていて引きこもりたいと思って手に取った本。 病床生活からの一発見 萩原朔太郎作 何よりも良いことは病気が一切を諦めさせてくれることだ。•••健康の時、私は絶えず退屈している。なすべき仕事を控えて、しかもそれに手がつかないから退屈するのだ。とこ...
仕事も散々な状態でコロナになり鬱々としていて引きこもりたいと思って手に取った本。 病床生活からの一発見 萩原朔太郎作 何よりも良いことは病気が一切を諦めさせてくれることだ。•••健康の時、私は絶えず退屈している。なすべき仕事を控えて、しかもそれに手がつかないから退屈するのだ。ところが病気をしてから、この不断の退屈感が消えてしまった。
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悲喜交々 ってな事で、頭木弘樹 編の『ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語』 ◎萩原朔太郎「死なない蛸」 ◎フランツ・カフカ「ひきこもり名言集」 ◎立石憲利「桃太郎――岡山県新見市」 ◎星新一「凍った時間」 ◎エドガー・アラン・ポー「赤い死...
悲喜交々 ってな事で、頭木弘樹 編の『ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語』 ◎萩原朔太郎「死なない蛸」 ◎フランツ・カフカ「ひきこもり名言集」 ◎立石憲利「桃太郎――岡山県新見市」 ◎星新一「凍った時間」 ◎エドガー・アラン・ポー「赤い死の仮面」 ◎萩原朔太郎「病床生活からの一発見」 ◎梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」 ◎宇野浩二「屋根裏の法学士」 ◎ハン・ガン「私の女の実」 ◎ロバート・シェクリイ「静かな水のほとりで」 ◎萩尾望都「スロー・ダウン」 ◎頭木弘樹「ひきこもらなかったせいで、ひどいめにあう話」 ハン・ガンさんの私の女の実が良かったな。 うん、良かった あとのやつは、ぼやぁ~と読んどったんでうる覚え 星さんのやつじゃったかな、ひきこもりって1人じゃ出来ないんよね。 衣食住どれも他の誰かがサポートしないと出来ないって。 ある日突然人類が自分1人になったら、それはもうひきこもれない。 全て自分で何とかせんといけん世界になる。 1人の世界に成りたいのを望んでたけど実際そうなったらどうなんじゃろね ひきこもりの感情がわしには分からんから、何とも言えんけど もし、わしがひきこもりになったら周りのサポートに感謝しながらひきこもろう 2022年46冊目
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今、外に出るのが億劫なので「部屋から出られない人のための」という副題に惹かれて手に取った。ひきこもりの経験もあるが、編者の方のように長くはないせいか、あまり響かなかった、それとも今、私の心が何かを受け取る余裕がないのかもしれない 『雨月物語』の「吉備津の釜」が面白かったので、『...
今、外に出るのが億劫なので「部屋から出られない人のための」という副題に惹かれて手に取った。ひきこもりの経験もあるが、編者の方のように長くはないせいか、あまり響かなかった、それとも今、私の心が何かを受け取る余裕がないのかもしれない 『雨月物語』の「吉備津の釜」が面白かったので、『雨月物語』を読んでみたいなあと思った
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目次 ・死なない蛸 萩原朔太郎 ・ひきこもり名言集 フランツ・カフカ ・桃太郎 岡山県新見市 立石憲宗・編著 ・凍った時間 星新一 ・赤い死の仮面 エドガー・アラン・ポー ・病床生活からの一発見 萩原朔太郎 ・フランケンシュタインの方程式 梶尾真治 ・屋根裏の法学士 宇野浩二 ・私の女の実 ハン・ガン ・静かな水のほとりで ロバート・シェクリイ ・スロー・ダウン 萩尾望都 ・ひきこもらなかったせいで、ひどいめにあう話 頭木弘樹 部屋から出たくない人ではなく、出られない人のためのアンソロジー。 書かれているのは、なんらかの状況に閉じ込められて出ることができない人、または蛸。 『死なない蛸』は見開き2ページのほんの短い小説なのだけど、それを読んでいるときに、ふと子どもの頃によく歌っていた「ひとくい土人のサムサム」って歌を思い出した。 いろいろと今の時代にはアウトの曲ですが、谷川俊太郎の詩と寂しいメロディーがそうさせたのかしら。 『赤い死の仮面』は、死に至る感染症から逃れるために引きこもる話。 あら、最近の出来事みたいじゃない? なんて思って読んでいたけれど、現実よりはるかに怖い顚末でした。 『フランケンシュタインの方程式』は、あらすじを見て、これは『冷たい方程式』の系列の話だなとすぐに分かったので、自分なりにフランケンシュタインをイメージしてストーリーを予想しました。 結論としては、私のは『フランケンシュタイン』ではなく『占星術殺人事件の方程式』でした。 あはは。 タイトルがネタバレなのに、「そうきたか」というところに落とすのは、さすがプロ。 『屋根裏の法学士』ってタイトル見て、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』のオマージュかと思ったら、乱歩の方が宇野浩二のファンだったのね。 で、この主人公って、中二病じゃん。 大正時代にもいたのね、こういう人。 一番閉塞感が強く感じられたのが『私の女の実』。 夫は妻の身体に痣が出来ていることに気づきもしなかった。 病院に付添うこともなかった。 自由にここではないどこかへ行きたかった妻を縛り付けているという自覚もなかった。 結局どこへも行けなかった妻は、ようやく夫に優しく世話をされるようになる。 それは解放?復讐?それとも…。 家族との縁が薄かった夫が最後に感じたのは喜び?悲しみ? いかようにも読める、懐の深い小説でした。 『スロー・ダウン』 深い孤独と現実感の喪失。 体験したことないはずなのに、すっと心になじんでいくような気がするのは、絵の力なのだろうか。 私は耐性がある方だと思うけど、実際被験したらどうなるのかなあ。 考えると、怖い。
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「ひきこもり」という言葉から一般的に想像するのとは違う、入院や宇宙船内での生活を含めた「社会から遮断された生活」をしている人々の話。 「部屋から出られない人のための12の物語」という副題がついていますが、病気や宇宙船内、そして自らの意志によるひきこもりであれば本も読めると思いま...
「ひきこもり」という言葉から一般的に想像するのとは違う、入院や宇宙船内での生活を含めた「社会から遮断された生活」をしている人々の話。 「部屋から出られない人のための12の物語」という副題がついていますが、病気や宇宙船内、そして自らの意志によるひきこもりであれば本も読めると思いますが、育児中に外に出られなかったときは、本を読む余裕なんてなかったなあ、と思います。 病気も私の場合は目だったので、やはり本は読めませんでしたが。 元教え子を訪ねて韓国(ソウル)に行ったとき、教え子家族が住んでいる高層マンション群に泊めてもらったので、韓国文学の「私の女の実」の妻の気持ちが一番理解できた気がします。 また、「鬼退治に行かない桃太郎」も面白く、 紹介されていた『桃太郎話 みんな違って面白い』を読んでみたいです。 SFはやや苦手ですが、「フランケンシュタインの方程式」は面白かった! 萩尾望都の「スロー・ダウン」。「手の感覚」は私には理解できませんが、「感覚遮断実験」は興味深い。 日本に住んでいると、ほぼ日の出から一日が始まりますが、緯度の高い地域で、まだ暗いうちから学校が始まったり、まだ明るいのに寝る時間だったり、不思議な気持ちを味わったこともあります。それはじきに慣れましたが、閉じ込められた真っ白な空間だったらどうでしょう。 いろいろなジャンル、しかも時代や国の異なる話がつまっているので、普段なら手を出さないような話もとりあえず読んでみることができたのはよかったと思います。
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ひきこもりのアンソロジー。 ひきこもりを否定することはない。 なんらかの事情があるのだから…。 出たくなければ出なくてもいいじゃないか、と思うほうである。 自分もいつ、突然に引きこもるかもしれないわけで。 それは、わからない。 ひきこもらずに一生を終えるかもしれないし…。 どう...
ひきこもりのアンソロジー。 ひきこもりを否定することはない。 なんらかの事情があるのだから…。 出たくなければ出なくてもいいじゃないか、と思うほうである。 自分もいつ、突然に引きこもるかもしれないわけで。 それは、わからない。 ひきこもらずに一生を終えるかもしれないし…。 どうなるかはわからない。 たとえば、萩原朔太郎の「死なない蛸」は、存在しないものと思われると悲しいが、魂はある。 たしかにそこに居る、自分がわかってれば良いじゃないかと思わせる。 想像以上のかなり上をいくのが、ハン・ガンの「私の実」である。植物で活きた心地になるならばそれを完成形というのだろうか。 萩尾望都の「スロー・ダウン」は、感覚遮断実験を描いているが、特に手の感覚の凄さをあらわしている。 誰かの手に触れることですべての機能が目覚めるかのような…。 意識しなくとも握るという感覚は、ずっと残るのだろうか。 とても不思議な感覚で読み終えた。
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私は高校中退後に数年間ひきこもり状態でいたことがあり、その時は本当に最悪だった。 人間不信に加え、大学で何か学びたいわけでもなく、かといって、やりたい仕事もなく、ただ推理ものやファンタジー小説を読んでいただけの日々に、これも生きているということになるのだろうかと、思ったものだ。...
私は高校中退後に数年間ひきこもり状態でいたことがあり、その時は本当に最悪だった。 人間不信に加え、大学で何か学びたいわけでもなく、かといって、やりたい仕事もなく、ただ推理ものやファンタジー小説を読んでいただけの日々に、これも生きているということになるのだろうかと、思ったものだ。 そんな事があったもので、もしその時に本書を読んでいれば、果たしてどうなっていたのかということに興味を持ち、本書を読んでみたわけなのだが、まず惹き付けられたのは、カフカの「ひきこもり名言集」と、宇野浩二の「屋根裏の法学士」だった。 ただ、カフカは正直ざっくりし過ぎた表現が響かなかったが、宇野浩二は良かった(両者の共通点は、ひきこもりに正しいも間違いもないということ。まあ本人の責任は伴うが)。 読んでいて、思わず想像してしまう、そのダラダラ感と太々しさ。けれども、おそらくそれは彼自身の虚構と精一杯の見栄であり、本音は切ないものも秘めていたのだろうなと感じさせる、その心情に胸が締め付けられて、大正7年当時に書かれたというのも、とても励みになった。 また、萩原朔太郎の作品が二点収録されていたことも印象的で、「死なない蛸」は、彼自身、周りから謂れのない距離を置かれていたことに対する、存在価値の普遍性を吐露したように感じさせ、「病床生活からの一発見」は、正岡子規の無味平坦な歌への理解にも共感したが、それ以上に、侮辱された一婦人の為に腹を立て、悲しくなって泣いたエピソードに彼の優しい人柄を感じさせ、昔読んだ、鯨統一郎の「月に吠えろ!」を思い出した。 そして、星新一の「凍った時間」は、ムントの無表情な表情の奥に垣間見える、心と涙に胸を打たれ、見た目だけで判断される悲しみは、まるで障がい者に対するそれのようにも思われ、梶尾真治の「フランケンシュタインの方程式」は、一転してコントを観ているような面白さが印象深いが、所々のブラックな味付けで軽い内容にはしておらず、ポーの「赤い死の仮面」(品川亮の新訳)は、自分の事だけ考えていると、こうした報いを受けるといった教訓ものっぽく見えたのが、ポーの作品にしては意外に感じられた。 それから、ハン・ガンの「私の女の実」は、『ここではないどこかへ』ということの、夢と現実の辛さを思い起こさせる一方で、一欠片の自由も感じさせた、私にはとても沁みる内容で、このアンソロジーの為に初訳してくださった、斎藤真理子さんには感謝しないといけない。 最後に、まさかここで初読みできるとは思わなかった、萩尾望都の漫画、「スロー・ダウン」。 そこには極限状況に置かれた者しか分からないような、確かな真実の在処を教えてくれた気もしたが、それとは別に、ここでの『手』の存在には、おそらく当時の私にとっても、誰かに差し伸べて欲しかったと思わずにはいられなかった、確かな真実の訪れのようにも感じられた。
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