密やかな結晶 新装版 の商品レビュー
最初から最後まで、ずっと息を潜めて読みました。静かな、でも惹きつけられる物語。消滅は悲しいことのはずなのに、悲壮さを感じさせない言葉の連なり。 主人公と、R氏やおじいさんとのやりとりは、時に温かく、でも切なくて、美しく。 小川洋子さんの物語は、読んだあと不思議と心が落ち着きます。...
最初から最後まで、ずっと息を潜めて読みました。静かな、でも惹きつけられる物語。消滅は悲しいことのはずなのに、悲壮さを感じさせない言葉の連なり。 主人公と、R氏やおじいさんとのやりとりは、時に温かく、でも切なくて、美しく。 小川洋子さんの物語は、読んだあと不思議と心が落ち着きます。
Posted by
リボン、オルゴール、切符、本…。 次々に今まで存在していたものが消滅していく島に暮らす主人公の女性と、消滅したものの記憶を消せない男性の話。 昨日まであったものがある日突然消滅し、その記憶すらなくなってしまうなんて想像もつかない世界も、淡々とした筆致で綴られると現実に起きているか...
リボン、オルゴール、切符、本…。 次々に今まで存在していたものが消滅していく島に暮らす主人公の女性と、消滅したものの記憶を消せない男性の話。 昨日まであったものがある日突然消滅し、その記憶すらなくなってしまうなんて想像もつかない世界も、淡々とした筆致で綴られると現実に起きているかのような不思議な気分になる。 情景を描く言葉が繊細で美しい。
Posted by
何かを失うこと、誰かを亡くすこと、つまり喪失とはどういうことなのかを深く考えさせてくれるし、教えてくれる一冊。 実際に喪失感に打ちひしがれている人にも癒しをもたらしてくれるのではないだろうか。 小説世界が心地よく、読み終わりたくないと思いつつも読み通した一冊でもあった。
Posted by
密やかな結晶 小川洋子 毎日何かを消滅していく島に住む小説家が主人公。島には消滅しない人もいる。その人は秘密警察に捕まる。 小川洋子さんがアンネに傾倒していたことからもオマージュを感じる。主人公が描く小説の主人公は声を失っている。 消滅していくことは自然なことであり受け入れてい...
密やかな結晶 小川洋子 毎日何かを消滅していく島に住む小説家が主人公。島には消滅しない人もいる。その人は秘密警察に捕まる。 小川洋子さんがアンネに傾倒していたことからもオマージュを感じる。主人公が描く小説の主人公は声を失っている。 消滅していくことは自然なことであり受け入れていくしかできない。忘れているだけと考えることもできるが。 構成に関して小川洋子さんの作品にしては、他者との会話が多い印象を受ける。彼女の特徴であるFPS視点は継続されており、物語に没入させられる。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
切なくやるせないが、どうしようもないほど綺麗な物語だった。人物の対比構造がその切なさを際立たせる。 自分は、「記憶のある世界に取り残された」R氏の側に立たされたような気持ちになり、本当に、報われないような、そんな気がしてしまって少し辛かった。普段ミステリか幸せで穏やかなものを読むので。だが、それでも流れるような言葉の綺麗さに圧倒され、スッキリと読み終わることができた。名作と言われるのも肯ける。
Posted by
素晴らしいとしか言いようがない 非現実的な内容だけど自分もこの物語にいたって感じるくらいに描写が分かりやすい 恐ろしいことが淡々と進んでいく 自分も登場人物との思い出があったかのように錯覚する 上手く言えない よかった
Posted by
その島では少しずつ色々なものが消滅していく。その記憶も。 いつまでも読んでいたい美しく心地よい文章が切ない。頬を瞼を撫でるような優しい手で、喉をやんわりと、けれど確かに締めつけるような錯覚。読後にはそっと息を吐いて目を閉じたくなるような、そんな。
Posted by
読了後はしばらく呆然としてしまった。 「消滅」していく世界に順応し、徐々に自分の心と体がばらばらになっていく様は非常にみていて苦しかった。 読む人によって解釈は変わりそうな気がする。
Posted by
物語自体はあまり心に響かなかった。 が、作者の訴えたいことがなんとなく感じられ、自分はどうあるべきか、考えさせられた。
Posted by
この島では当たり前にあったものが次々と消えてしまう。ただ母だけがそれを覚え続けることができていた。母は幼いわたしに消えてしまったものについてたくさんのお話をしてくれた。リボン、鈴、エメラルド、切手、香水、、、。そしてそのものについて持っているのものがあると秘密警察に没収されてしま...
この島では当たり前にあったものが次々と消えてしまう。ただ母だけがそれを覚え続けることができていた。母は幼いわたしに消えてしまったものについてたくさんのお話をしてくれた。リボン、鈴、エメラルド、切手、香水、、、。そしてそのものについて持っているのものがあると秘密警察に没収されてしまう。記憶がある人もだ。 そして母は連れていかれ父は亡くなった。 わたしはある時から知り合いを匿うことになった。やがてどんどん秘密警察は人を狩るようになる。 「いつかは記憶の行き先が見えてくるとでもいうみたいにね」 『でもね、いつまで待っても何も見えなかったの』
Posted by