わたしたちが光の速さで進めないなら の商品レビュー
韓国の若手(93年生まれ)女性作家によるSF短編集。テッド・チャンやケン・リュウに通じる作風。7編を収録。 「巡礼者たちはなぜ帰らない」「スペクトラム」「共生仮説」「わたしたちが光の速さで進めないなら」「感情の物性」「館内紛失」「わたしのスペースヒーローについて」を収録。 登...
韓国の若手(93年生まれ)女性作家によるSF短編集。テッド・チャンやケン・リュウに通じる作風。7編を収録。 「巡礼者たちはなぜ帰らない」「スペクトラム」「共生仮説」「わたしたちが光の速さで進めないなら」「感情の物性」「館内紛失」「わたしのスペースヒーローについて」を収録。 登録数・レビュー数が多い本作。すでに的確な意見がたくさん書かれてあるので、自分が書くことは何もなさそう。一口にSFといっても多様な内容があるけれど、この一冊で大半がカバーされてしまうほど守備範囲が広い。古典的なSFから現代のリアルな課題になりつつある技術革新を新しい感覚で捉え直し、人肌が恋しくなるような叙情を残して物語に折りたたむ。皆さんがあげているように、「館内紛失」は良かったよね。意識とは何かという難しいテーマを問いつつ、最後は愛と理解という人間的な落とし所で締めくくる。これは人気が出るのも納得、最近新しい本も出たようだし、今後も要注目だろう。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
短編のせいか、いまいち主人公の感情に没入できないので星3つまで。 主人公たちの思考や行動が、自分と違う感じ。 SFガジェットは楽しい。韓国SFだからという区別・差別意識はおこらない。 以下、ガジェットねたばれ ・巡礼者たちはなぜ帰らない:ヒト胚デザインからの地球脱出ユートピアからの望郷 ・スペクトラム:代替わりする異星人とのコンタクト 色による伝達 ・共生仮説:地球外生命体が 赤ちゃんと共生 ・わたしたちが光の速さで進めないなら:ワームホール航路から外れた宇宙移民星 ・感情の物性:ユウウツ体 を人はなぜ買う? ・館内紛失:人格のデータ格納 ・わたしのスペースヒーローについて:人体改造した宇宙飛行士は海の中でも生きる
Posted by
どこか今と地続きのような世界を描くSF短編集。とても面白かった。地球外生命体との接触、共存。進化した人類に残るヒエラルキーの書き方。ふと宇宙に思いを馳せる小説。良かった。
Posted by
柔らかで、感情を揺さぶられる。純文学的な趣がある。一編一編が大変読み応えがあり、しっとりとした読後感。めちゃくちゃ好み。読み終えたあと、ふうっとその人物たちについて、思いを馳せてしまう。正統派SFなのだけれど、ミステリー的な謎が出てくるのがよい。 この作品の人々は、現代の人たちと...
柔らかで、感情を揺さぶられる。純文学的な趣がある。一編一編が大変読み応えがあり、しっとりとした読後感。めちゃくちゃ好み。読み終えたあと、ふうっとその人物たちについて、思いを馳せてしまう。正統派SFなのだけれど、ミステリー的な謎が出てくるのがよい。 この作品の人々は、現代の人たちと地続きと感じる。だから、相手が理解ができず、それを探ることにもなる。 どんなにテクノロジーが進んだって、やっぱり相互理解は最後まで問題として残りそうだ。
Posted by
がっつりと宇宙を舞台にしたものから、技術の発達した近未来まで7編。 着眼点が好きなのは『感情の物性』、『共生仮説』が話として好きだな〜。
Posted by
正統派SF小説。ストーリーも楽しいし、登場人物も個性的で面白い。けれど翻訳本というのは言い回しだったり、状況表現だったりがしっくりこなくて、気を遣って読むので、面白さが半減してしまう。
Posted by
本屋で、最近は韓国の女性作家が活躍しているという印象から一冊読んでみようと思ったが、普通の小説は重たそうということでSFにした。結論から言ってしまうと、完全にSFだが、一方で女性や障害者などのマイノリティの問題も扱っていた。未来の科学技術にわくわくする一方で、主人公が女性であるこ...
本屋で、最近は韓国の女性作家が活躍しているという印象から一冊読んでみようと思ったが、普通の小説は重たそうということでSFにした。結論から言ってしまうと、完全にSFだが、一方で女性や障害者などのマイノリティの問題も扱っていた。未来の科学技術にわくわくする一方で、主人公が女性であること故に直面する問題にも共感して、とても面白かった。
Posted by
愛に満ちたSF短編集。 言語体系がまるで違う異星人という絶対的な他者、存在さえ気づかないまま共生し影響を受け続けていた未知の存在、数万光年離れた距離、もう会えない人の残像、ユートピアではないけれど愛するに足るまだ見ぬ世界、自分が抱える感情を目で見えるもの手で触れられるものとして捉...
愛に満ちたSF短編集。 言語体系がまるで違う異星人という絶対的な他者、存在さえ気づかないまま共生し影響を受け続けていた未知の存在、数万光年離れた距離、もう会えない人の残像、ユートピアではないけれど愛するに足るまだ見ぬ世界、自分が抱える感情を目で見えるもの手で触れられるものとして捉えたいという切ない願望。 自分の理解の外にあるものに向き合おうとするときの必死さ優しさや、自分が何を望むのか自己と向き合う毅然とした振る舞いに、ヒューマニティが溢れていて、胸がきゅっとなるお話ばかりだった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
SF小説短編集 ・巡礼者たちはなぜ帰らない 愛や生物の多様性について考えさせられるお話 環境が変われば気持ちも変化する。だんだんと真実が明 るみになってくる様が楽しい。 ・スペクトラム 祖母が宇宙を漂流し宇宙人としばらく暮らしたお話 彼ら宇宙人と生活する事によって生態が多少なりとも分 かり、彼ら独特の情報伝達手段が面白い。 言葉には言霊が宿ると言うが色にも言葉の様な意味が ると聞いた事がある。 彼らからしたら宇宙人である祖母の事を『それは素晴 らしく、美しい生き物だ』と書いてあったくだりは心動 かされた。 ・共生仮説 精神生命体に物心が付くまで共生しているお話 確かに物心が付く前の記憶は定かでは無いけども、一見 すると害がありそうだけど共生できていて、それまで気 付くことが無かったからそれも有りなのかな…。 ・わたしたちが光の速さで進めないなら 廃線になったけど家族が待つ遠い星まで帰りたお話 表題作。家族に会いたい気持ちが痛いほど分かる。狂お しいほど会いたいのだろうと思うけど1人の力ではどう にもならないもどかしさ。さいごは何を思って宇宙船で 飛び立ったのだろうと思い馳せた感動作です。 ・感情の物性 感情を簡単に作ってしまう物の話 結局は麻薬みたいな立ち位置だと思うけどな… 絶望のどん底にいる時に楽しい気持ちを作り出せたら… と思うけど結局幸せにはなれないよなぁ。 ・館内紛失 亡くなった後も擬似人格として故人に会えるけどデー タを紛失したお話。 これは紛失なのか?って思ったけど、タイトルなので ね。某F F Xの異界みたいなニュアンスなのかな、個人 的には思い出は優しいから甘えちゃダメなの。って思っ てます。 いい思い出の無かった母親のデータに妊娠しても親心が 芽生えない主人公が母親と共感したかったんだろうな。 『今なら… お母さんのこと理解できるよ』 最後はちょっと感動しました。 ・わたしたちのスペースヒーローについて 叔母が行けなかった宇宙にあるトンネルを抜けて遠く に行くお話。 トンネルを抜ける際の圧力に耐える為、義体化して体を 強化するって少し憧れるけど、訓練をして人類の期待を 背負うのはとても過酷な事なんだろうなって容易に想像 できる。 話逸れるけど義体化する技術って病気の人を助けられる よなーなんて思っちゃうし、義体化してるわけだからも し大会とか出てもパラリンピックとか障害者として出る のだろうか?なんて考える訳で… あとがきを読んだらポロッと涙が流れてしまいました…。
Posted by
良いSFに会った!早く文庫化してほしい。切なさや孤独などの余韻の残る女性的な小説でありながら、設定のしっかりしたSF。たったひとつのさえたやり方に似てる。今まで読んだSFで主人公の内面を語るものは、倫理とか社会性に向いてしまってこういう繊細さはなかったと思う。 赤ちゃんの脳波とリ...
良いSFに会った!早く文庫化してほしい。切なさや孤独などの余韻の残る女性的な小説でありながら、設定のしっかりしたSF。たったひとつのさえたやり方に似てる。今まで読んだSFで主人公の内面を語るものは、倫理とか社会性に向いてしまってこういう繊細さはなかったと思う。 赤ちゃんの脳波とリュドミラの惑星「共生仮説」、異星人ルイとの生活「スペクトラム」、感情の物性、母の世界とのインデックス「館内紛失」あたりが印象的。
Posted by