ルポ「命の選別」 の商品レビュー
印象的だったのは出生前診断NIPTに対して「不安ビジネス」との批判しているところ。 美容外科が次々とNIPT事業に参入する理由として、利益率の高さが挙げられているのも医療としての倫理が置き去りにされ、ビジネスとしての側面が強いから。 NIPTは本来、親が安心して将来を考えるため...
印象的だったのは出生前診断NIPTに対して「不安ビジネス」との批判しているところ。 美容外科が次々とNIPT事業に参入する理由として、利益率の高さが挙げられているのも医療としての倫理が置き去りにされ、ビジネスとしての側面が強いから。 NIPTは本来、親が安心して将来を考えるための技術であるはずが、ビジネスとして過度に商業化され、親たちの不安を煽る仕組みが広がっている現状は非常に問題だと感じた。親たちが冷静に選択できる環境作りと、十分なサポート体制の整備が急務だと思った。
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出生前診断には目先の利益、妊婦へ不安を煽る。思っていたより広まっているのだな。 特に興味深かったのは障害者を拒み施設反対運動をする地域住民の話。地価が下がるという根拠のない話から何をするか分からない危険因子を取り除く…など言い分は様々で説明会は聞く気がないから意味をなさないとか...
出生前診断には目先の利益、妊婦へ不安を煽る。思っていたより広まっているのだな。 特に興味深かったのは障害者を拒み施設反対運動をする地域住民の話。地価が下がるという根拠のない話から何をするか分からない危険因子を取り除く…など言い分は様々で説明会は聞く気がないから意味をなさないとかみんなで一致団結して工事を妨害するのが楽しいといった当事者の声など知ることができて良かった。 中には地道な努力で地域の反対者を味方につけられた例もあって希望もあった。お互い許し合うことができるなんてすごいじゃないか… 何かを排除したい気持ちにフォーカスを当てた本を読みたくなった。
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毎日新聞の記者さんが書きおろしたもの。よく調べられていて、日頃あまり小説以外読まない私が気になり手に取って読了。障害を持った方に関わっているため、考えさせられる内容ばかりだった。
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技術の進歩と市場経済と差別が混ざり合う現代の優生思想の複雑さを勉強した。 出生前診断の話はあまりにも色々な思惑が絡まり合いすぎて愕然とさせられた。 障害者への社会の冷たさと障害を抱えながらも幸せに生きる人々のエピソードに心を大きく動かされた。 じっくりこれからも考えないといけな...
技術の進歩と市場経済と差別が混ざり合う現代の優生思想の複雑さを勉強した。 出生前診断の話はあまりにも色々な思惑が絡まり合いすぎて愕然とさせられた。 障害者への社会の冷たさと障害を抱えながらも幸せに生きる人々のエピソードに心を大きく動かされた。 じっくりこれからも考えないといけない。
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感想 境界線のあちら側とこちら側。特定の目的のために設定された境界は別の目的にも転用されうる。それが差別意識へとつながる。社会と個人の問題。
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社会的な問題と認識しつつも何となく詳細を知ることを避けていた事例がいくつも。端から見てるときは言えることも当事者となったら逆のことを言ってるかもしれない。自身も無意識に命の選別をする思想を持ちうると考えると怖い。今まであまり読んでこなかった類いの本なので、今後はもう少し読み広げた...
社会的な問題と認識しつつも何となく詳細を知ることを避けていた事例がいくつも。端から見てるときは言えることも当事者となったら逆のことを言ってるかもしれない。自身も無意識に命の選別をする思想を持ちうると考えると怖い。今まであまり読んでこなかった類いの本なので、今後はもう少し読み広げたい。
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2020年秋出版。 毎日新聞での連載を基にまとめられた一冊。 仕事の関係で購入し、その章のみ読んで積読していたが、改めてこのテーマについて考えたくなって読了。 日本において優生思想がどのように事象化しているか、障害者差別、出生前診断、遺伝子操作などわかりやすい問題を取り上げながらまとめられていた。 様々な学識者、当事者、関係者の意見やデータを用いて客観的な裏付けを試みながらも、全体のトーンとしては作者の主観が強めに感じられた。 個人的な発見は、「病気にならないようにすべき」と考えることが優生思想に繋がるのかを考えさせられたところ… 苦痛が強い、寿命が短いなどの重大な病気にならないように願うこと、防ごうとすることは、本書によれば、行きすぎると今その病で生きる人の存在の否定に繋がるとも考えられる。 障害は社会モデルで考えれば「人」と「環境」の間にあるものだから、環境側を変化させれば無くなる。そうすれば、障害のある人の存在を否定したり、障害のある状態を防ごうと望んだり、治すべきという概念はそぐわなくなる。 一方、病気はその人の状態像であるから、防ぎたい・治したいという概念が排除しきれない。 作者は、心身の安寧を願うことと、個人の排除は異なるものとまとめていたが、引き続き考えたい問いだと感じた。
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優生思想をめぐる近年の主な出来事を取材した内容である。 障がい者施設の設立反対運動は明らかな差別であるから、間違いであり到底共感できないが、その他の事案については、自分の立場が違えばどう考えるだろうか。特に自分が遺伝病を持っていて子どもに受け継いでしまう可能性が高い場合などは。 やまゆり園の施設内の実態は目に浮かぶようであった。精神科病院や高齢者施設でも同じようなことを目にしている。管理者の責任は大きいと思う。 技術が発達すればするほど、使う人間の品格が問われるのだと思った。技術革新や拡がりを妨げることはできないだろうが、海外ではOKなのにという安易な考えはやめたい。現在進行形な規制などと並行して、(この問題に限ったことではないが)子どもたちへ考えさせる教育をしていくことが、誰もが暮らしやすい世界につながるのではないか。
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1996年まで「優生保護法」という法律が存在 したのはご存知でしょうか。 要は、特定の障害や疾患のある人を「不良な 子孫を産む可能性のある人」として、不妊治療 させていたのです。 つまり障害者達を差別していたのです。 残念ながら、この差別意識は今でも様々な形で 表れています...
1996年まで「優生保護法」という法律が存在 したのはご存知でしょうか。 要は、特定の障害や疾患のある人を「不良な 子孫を産む可能性のある人」として、不妊治療 させていたのです。 つまり障害者達を差別していたのです。 残念ながら、この差別意識は今でも様々な形で 表れています。 その最悪の例が2016年の相模原殺傷事件です。 この本ではその最悪の例とは別に、密かに進み つつある差別意識=優生思想の事例をいくつも 取り挙げます。 「出生前診断」「遺伝子のゲノム編集」さらに 障害者施設建設をめぐる地域住民との争いまで 様々です。 このような問題は当事者意識を持つことが難し いと思います。 しかし誰もが目を背けず向き合うことが大切で す。 そんな気づきと投げかけのきっかけとなる一冊 です。
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普段あまり光の当たらない出生前診断、障害者施設の実態等について丁寧に取材した本。 非常に難しい問題だと感じる。 障害者施設に反対するような人々の態度は論外だとしても、障害を持って生まれてきた人は苦労して生きていかなければならないことは多いだろう。 それを心配して、出生前に検査...
普段あまり光の当たらない出生前診断、障害者施設の実態等について丁寧に取材した本。 非常に難しい問題だと感じる。 障害者施設に反対するような人々の態度は論外だとしても、障害を持って生まれてきた人は苦労して生きていかなければならないことは多いだろう。 それを心配して、出生前に検査を行おうとする人達、その心配をビジネスにする人達、問題は複雑で、何が正しいのか考えさせられる。 ただ、障害を持つ人、持たない人という二元論で考えるのは良いことではなく、それぞれの状況によって考えていくべきということは間違いないと思う。
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