1984年に生まれて の商品レビュー
言葉にできない。不思議とも違うし、哲学のような、今まで感じたことのない感覚をもつ小説でした。 中国で資本主義化が始まったという1984年に生まれた主人公と、文化大革命を経験した父の物語。 時代、社会の中でどうしようもないこと、現代を生きる中でも価値観や格差、競争の中での生きづら...
言葉にできない。不思議とも違うし、哲学のような、今まで感じたことのない感覚をもつ小説でした。 中国で資本主義化が始まったという1984年に生まれた主人公と、文化大革命を経験した父の物語。 時代、社会の中でどうしようもないこと、現代を生きる中でも価値観や格差、競争の中での生きづらさ。 読んでいると苦しくなるばかりなのだけれど.. 主人公と共に自由について考え、本当の自由に気づいていき…主人公が悩み、心病み、どん底を味わい苦しみ、そこから自ら気づき立ち上がって進んでいく姿に心震えました。 13章目。 洪水のように溢れる言葉たちに衝撃を受ける..胸にどすんと響くような。 「自由っていうのはとどのつまり心の中のことだから。」 著者の自伝的小説ということで、中国の社会で生きる人々のリアルな様子、リアルな気持ちが描写されていてすごく興味深かったし、知ることができてよかったです。 また、翻訳の言葉や文章がとても綺麗で、すっと入ってくるのが心地よかったです。 「人の理性的選択というのは、目にしたものすべての中で最も合理的に見えるものを選択してそれを信じること、それから目にしたあらゆる方法の中で最も理知的と思われるやり方でそれを行うこと。このプロセスで一番大切なのは、実はどうやって選択したかということではなく、何を見たかということ。」 「これまで私は仕事というものをひどく誤解していた。どの仕事にも事実の美しさというものが存在することが見えていなかった。事実の美しさに深く分け入って初めてその意味の美しさが目に入るのだ。もう少し早くこのことがわかっていたならば、こんなに回り道をしなくて済んだかもしれなかった。ただ話を元に戻すとら心の中に目を向けてみれば、この世には回り道などないのである。」
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自意識について、極めて生真面目に、というか、恐ろしく誠実かつ明晰に考え、それがこの上なく率直に語られている。小説としては、構成がかっちりし過ぎているのかもしれないが、自我と世界について、こんなにうまく語られたのを見たことはない。また、改革開放から現在に至るまでの中国の社会状況を知...
自意識について、極めて生真面目に、というか、恐ろしく誠実かつ明晰に考え、それがこの上なく率直に語られている。小説としては、構成がかっちりし過ぎているのかもしれないが、自我と世界について、こんなにうまく語られたのを見たことはない。また、改革開放から現在に至るまでの中国の社会状況を知る上でも有用。ちなみに、「訳者あとがき」はネタバレなところがあるので、後から読んだ方がよい。
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「折りたたみ北京」が面白かったので、その作者の自伝「的」小説と思って読んでみた。 ある家族3世代の人生を通して、近代の中国のリアルな庶民の生活の様子や考えなどがわかって、たいへん興味深かった。 私は1970年代後半の生まれなので1984年生まれの作者の方が若いのに、両親の世代でも...
「折りたたみ北京」が面白かったので、その作者の自伝「的」小説と思って読んでみた。 ある家族3世代の人生を通して、近代の中国のリアルな庶民の生活の様子や考えなどがわかって、たいへん興味深かった。 私は1970年代後半の生まれなので1984年生まれの作者の方が若いのに、両親の世代でも文革や改革開放などを経験している。両親の世代というとつい最近に感じてしまうので、つい最近までこんなに大変な時代だったのだということが改めて実感されて、びっくりしてしまった。そして、世代によってこれほど体験が異なっていたら、世代間で価値観や感覚を共有するのは難しいだろうなと思った。 以前、日本のテレビ番組で、日本に出稼ぎにきている中国人の男の人を追ったドキュメンタリーを見た。自分はつつましい生活をして病院に行くお金も節約して、稼いだお金のほとんどすべてを中国の妻と娘に送っていた。帰国する費用も節約しているので、10年以上妻や娘にも会っていないと言っていた。彼の望みはただ一つ、娘が自分や妻よりも良い人生を送ること。自分の人生を犠牲にしても、次の世代がより良い人生を送ることを願う人がいるなんて思いもよらなかったので、大きな衝撃だった。この本を読んでいて、なんとなく、そのドキュメンタリーの中国人男性のことを思い出した。 作者の小さいころにはすでに海賊版で日本や香港、台湾の音楽や漫画(ドラえもんやベルばらなど)が出回っていて庶民も楽しんでいた等、1980年代のリアルな中国の日常が垣間見えたのも興味深かった。2000年代の大学生の生活なども、思ったよりも私たちと違わないという発見があって面白かった。 …という風に読み進めていったら、最後に「え?」という仕掛けがあって、さすがSF作家だなと思ったし、私などにはとても追いつけないような頭の良い人だと思った。 これは、自伝「的」じゃなくて、自伝「体」小説なんだそうだ。 こんなこと書いちゃって当局に目をつけられたりしないんだろうかと心配してしまうような箇所もあったので、あくまで自伝風の小説ということにしておいた方がよいのかなと穿った解釈までしてしまったが… 文庫になったら買って、また読んでみたい。
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1984年に生まれた女性の半生が自伝の形で綴られた長編小説です。彼女の抱える苦悩と鬱屈、社会へ自分自身を馴染ませることへの抑圧感などを、中国の近代社会の変遷を背景に綿密に描いています。 作中には彼女自身の半生だけでなく、その父親の人生も描かれています。現在の彼女の視点では自由人...
1984年に生まれた女性の半生が自伝の形で綴られた長編小説です。彼女の抱える苦悩と鬱屈、社会へ自分自身を馴染ませることへの抑圧感などを、中国の近代社会の変遷を背景に綿密に描いています。 作中には彼女自身の半生だけでなく、その父親の人生も描かれています。現在の彼女の視点では自由人であるかのような父親が、どのような人生を送っていたのかがわかるにつれて、彼自身もその時代のさまざまなものと闘ってきたのだと知れます。 このふたりの半生を重ねてつづりあげて一つの道筋を示す過程だけでも相当な読み応えなのですが、最終章にひとひねり加えられていることで、収束したかに見えた物語にもう一つ大きな環が加わります。このスパイスを加えた、作者自身の視野の広さ、物語を作りあげるという技のダイナミックさが凄いな、と感じました。 さまざまな規制が強まる中で、この作品も相当に気を遣いながら描写されているように感じました。その社会の生きにくさをダイレクトに感じる中で、ひとりの女性が「自由」を獲得し、生き直していく姿を描いたことは、ひとつのメッセージなのかもしれないとも思いました。 訳文がとても滑らかな文章で、傍注も細かく入っていて、読みやすさが常にありました。翻訳に尽力された方々へも敬意を示したいです。
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※このレビューにはネタバレを含みます
折りたたみ北京で著者の作品に初めて触れて、今回こちらを読んでみた。 折りたたみ北京の紹介やこの本のあとがきにもある通り、SFと文学、その両ジャンルを素晴らしい形で両立させていると感じた。 恥ずかしながらオーウェルの1984年は、読んだ当時自分にはまだ難解すぎて理解がほとんどできなかった。 今作は1984年ほどではないにしても、読むのにかなり時間を要してしまって、途中から小説なのか自伝なのかよく分からなくなったまま読み進めており、最終章のウィンストンとの対話シーンによってようやく小説、しかもSF小説であったことを思い出した。 SF的要素が描写に占める割合はかなり小さいものの、最後は見事にSFとして成立させていて、読み終わった後、素直にやられた…と思った。(もちろん良い意味で)
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文学ラジオ空飛び猫たち第37回紹介本。 郝景芳は1984年生まれの中国を代表するSF作家。「折りたたみ北京」で知られています。今作は自伝体小説。ジョージ・オーウェルの「1984」へのオマージュでありながらほぼ純文学です。中国の歴史に翻弄される父と、2000年代に生きる娘の長い道の...
文学ラジオ空飛び猫たち第37回紹介本。 郝景芳は1984年生まれの中国を代表するSF作家。「折りたたみ北京」で知られています。今作は自伝体小説。ジョージ・オーウェルの「1984」へのオマージュでありながらほぼ純文学です。中国の歴史に翻弄される父と、2000年代に生きる娘の長い道のりの物語。自由とは何か?を考えされられます。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/37-1984-ev4dud
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表紙と装丁に惹かれて本屋さんで偶然手に取ったのだけれど、とんでもなく素晴らしい小説に出会えました。一日一章ずつ、ゆっくり味わって読みましたが、じんわりくるというか、奥行きがあるというか、重層性があるというか、そういう感じが自然に滲んでるお話で、もう虜です。こんなにloveと思っ...
表紙と装丁に惹かれて本屋さんで偶然手に取ったのだけれど、とんでもなく素晴らしい小説に出会えました。一日一章ずつ、ゆっくり味わって読みましたが、じんわりくるというか、奥行きがあるというか、重層性があるというか、そういう感じが自然に滲んでるお話で、もう虜です。こんなにloveと思ってしまえる文芸書は今年初めて。しかも偶然見つけるという出会い。 中国文学を読むのは多分初めてでしたが(高校の時の漢文以来?)、今後、アンテナ広げて色々読んでみたくなりました。
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私が一番詳しい中国の時代の話でほぼ同じ年代の人なので逐一情景が目に浮かぶ。少しの表現で当時の匂いまで感じられる。今まで読んだ中国の小説の中ではかなり良かったけれど、うーん...絶賛されるほどではなかったかな...
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二〇〇六年、春。大学卒業を目前に進路を見失っていた軽雲は、父・沈智の暮らすプラハに来ていた。二つの時代の中国社会に翻弄され、父と娘は、人生の分岐をさまよい続ける―(e-honより)
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「折りたたみ北京」を以前に読んで素晴らしかったので、本書を手に取りましたが良い意味で内容は裏切られました。これはSFの殻を被っていますが、各人物の心理描写と細部まで作り込まれ匂いがしそうな情景描写に圧倒されました。特にメンタルで病んでその後復活したような経験をお持ちの方なら、多く...
「折りたたみ北京」を以前に読んで素晴らしかったので、本書を手に取りましたが良い意味で内容は裏切られました。これはSFの殻を被っていますが、各人物の心理描写と細部まで作り込まれ匂いがしそうな情景描写に圧倒されました。特にメンタルで病んでその後復活したような経験をお持ちの方なら、多く首肯されるのではないでしょうか。90年代に仕事で半年強中国に住んでいましたので、その時の記憶と重ね合わせて、ことごとく「そうだよなぁ」と心で頷きました。私にとっては最高レベルでココロに刺さった作品となりました。この本に出会えて良かったです。
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